映画アナと雪の女王2で登場したノーサルドラのモデルはサーミ人

ディズニーアニメ

映画「アナと雪の女王2」では、エルサが自身の魔法のルーツを見つけ出す話になっています。

ネタバレですが、簡単に説明すると自然の力を使いこなせる魔法の民、ノーサルドラ人の血を引いているから、という設定になります。

このノーサルドラ人、映画の中ではアレンデールの北方に住んでいて、自然の力を魔法のように使いこなせるという話でしたが、実際は暴走気味の自然の力、エレメンタル達から身を潜めるように生きているように描かれていました。

その他にも顔立ち、衣服、居住施設、放牧を中心としている生活様式など、アレンデールの人々とはかなり異なった人種として描かれていますが、彼らのモデルは存在するのでしょうか?

今回はノーサルドラのモデルになった人々のことを紹介していきたいと思います。







ノーサルドラのモデルはサーミ人

「アナと雪の女王」、「アナと雪の女王2」がスカンジナビア、それもフィヨルドがあることからノルウェーを意識して舞台にしていることは明白です。

では、スカンジナビアにノーサルドラのモデルになるような人々が存在しているのでしょうか?

その答えは、「YES」です。

彼らの名前はサーミ人

昔からスカンジナビアのラップランドと呼ばれる地方に住んでいた人々です。


こちらがそのラップランドと呼ばれる地方になります。

サーミ人の歴史

その歴史は大変古く、ローマ帝国時代に書かれた歴史書「ゲルマニア」に登場しています。

基本的に「アナと雪の女王2」のノーサルドラ人のようにトナカイの放牧で生計を立てていましたが、スカンジナビアにアレンデールのような王国が出来上がり始める1200年代から、昔ながらの生活が変わりはじめます。

いくつかの王国によって定められた国境のため、単一であった民族はバラバラとなり、また彼らに税の徴収が課せられます。


さらに1700年代半ば、それまで曖昧でも大きな問題にならなかった国境を明確に定める条約がデンマーク・ノルウェー王国とスウェーデンの間で取り決められました。

その条約によってサーミ人の権利と生活様式は侵害されなかったのですが、サーミ人の多くが定住することを選び、結果、

    大規模トナカイ遊牧専業民の山岳サーミ
    農耕・牧畜・狩猟・漁労を行う低住民の海岸・森林・河川・湖サーミ

の2つに分かれることになります。


1700年代後半になると、スウェーデン領で北方への開拓や植民が進み、それに伴ってサーミ人が活動できる地域が少なくなったことで、自身も定住し、スウェーデン化を受け入れたサーミ人も多くいたそうです。


その後、ロシア帝国によるスカンジナビア半島侵攻によって、それまで簡単に越境することができた国境が完全に閉鎖されることとなり、放牧によって生計を立てていた山岳サーミ人は、それまでの伝統生活を諦めざるを得なくなっていくのでした。

またサーミ人の狩猟文化も、狩猟動物の乱獲による減少によって完全に破壊されてしまうのでした。

さらにソ連の誕生によって、ソ連領に組み込まれたサーミ人の土地に住んでいた人々のほとんどがフィンランドに移住したという歴史もあります。

サーミ人の今

現在ではフィンランドを中心にサーミ人のアイデンティティの確立、もしくは獲得を目的としたサーミ議会やサーミ代表団といった組織が活動しています

ソ連誕生によるサーミ人のフィンランド移住といった背景からサーミ人の活動がフィンランドを中心としているようです。

フィンランドでは1992年に「サーミ言語法」思考され、「サーミ人本草案」が規定されていて、その中でサーミ人としての定義が決められました。

それは、

    ・ラップ税と呼ばれるサーミ人に課せられていた税金を支払っていた人々の子孫
    ・本人、両親、祖父母に少なくとも一人がサーミ語を第一言語として学んだ人がいる者

というもので、民族を規定するものを言語にある、としているのです。


これによって、何らかの理由で外国人がサーミ語を第一言語として学んだ場合でも、その人物がサーミ人になってしまうことになるのですが、サーミ人からは大きな不満や批判もなく、受け入れられたのでした。

クリストフの衣装もサーミ人をモデルに!?

「アナと雪の女王」のクリストフの衣服は、アレンデールの人々が着ているものと少し違うことに気がついたでしょうか?

雪山で氷を採取し、それをアレンデールに持ってきて生計を立てているクリストフですので、防寒の効いた衣服を着用していることは、容易に想像がつきます。

上着など、かなりふわふわであたたかそうですが、実はクリストフの衣服のデザインは、サーミ人の伝統衣装をメインとして作り出されていたのです。


サーミ人の伝統衣装として特筆されるべきはコルトと呼ばれる豊かな色彩の上着にあります。

主に女性の手によって織られたフェルト地の上着で、地方ごとに細かく違っていました。
ですので、上着の色や飾り付け、帽子のデザインなどを見ることで、その人物がどの村の出身かが、だいたいのことが分かるほどでした。


これらを合わせて見ると、完全に白人であるクリストフがサーミ人の衣装を着ていることに対して、いまハリウッドで流行りの政治的正しさに引っかからないか、という問題が起きそうなのでは、と心配になるかもしれません。

政治的正しさとは、たとえば2020年公開予定の実写版リトルマーメイドのエリアル役が黒人が務めることに賛否が沸き起こったり、という問題です。

が、クリストフとサーミ人の間には、そのような問題は起こりえませんでした。

なぜならサーミ人であることの条件は、サーミ語を第一言語として学んだかどうか、によるため、クリストフのような白人でもサーミ語を第一言語として学んでさえいれば、サーミ人ということになるからです。

ある意味、かなり画期的な考え方のように思えてきますよね。

アナと雪の女王2はサーミ人に敬意を払っていた

また、「アナと雪の女王2」を制作するに際し、ディズニーはサーミ議会と契約書を交わした、というニュースが流れました。

「アナと雪の女王2」において、サーミ人をモデルとして登場するノーサルドラの人々の描かれ方に、サーミの伝統と文化に敬意を払って行われているか、という問題を起こさないようにするための契約で、映画の制作にサーミ人側からコンサルタントがついたとのことです。

たとえば「アナと雪の女王」、「アナと雪の女王2」でオープニングに流れ、ノーサルドラの人々がエレメンタルを鎮めたエルサを迎えるような儀式でコーラスとして流れた曲はサーミ人のプロフェッショナルミュージッシャンによって作曲されている程です。


とはいえ、よくよくストーリーを見てみると、サーミ人をモデルとしたノーサルドラ人の描かれ方は、虐げられた民という印象を持たざるを得ません。

エレメンタル達と共存していく方法を知っていたとはいえ、住まいはテント。

武器として持っているのは、基本的に木の棒で、製鉄の技術は持ち合わせていないようです。

トナカイの放牧と狩猟、木の実、山菜、キノコ類の採取、川での漁労で生計を立てていると見て間違いないでしょう。

魔法が使えるから、原始的な生活でも大丈夫、と思いたいのですが、不思議な霧によって魔法の森の中に閉じ込められて以来、エレメンタルから身を隠して生きながらえた様子も伺えます。


そして、エレメンタルたちが怒っている理由が、エルサとアナの祖父に当たるアレンデールのルナード王が、ノーサルドラ人を騙すために建設したダムなわけですが、それにしたって、ノーサルドラ人も騙されただけなわけですから、森に閉じ込められたのは彼らになんの落ち度もないのに、とばっちりもいいとこです。


最優的に映画の最後ではハッピーエンドになってはいますが、このストーリーでサーミ人側からクレームがなかったということは、「サーミ人は常に自然とともに生きる」という強いメッセージなのかもしれませんね。

まとめ

「アナと雪の女王2」で登場したノーサルドラの人々。

彼らのモデルとなった民族は、スカンジナビアの北方に住むサーミ人でした。

そして実は前作の「アナと雪の女王」でもクリストフの衣装や、ヨイクと呼ばれるコーラスのような歌もサーミ人の伝統的なものをモチーフにしていたのでした。

さらに「アナと雪の女王2」ではサーミ人の団体とサーミの文化を尊重して映画内で表現するという取り決めまで、ディズニーは行っています。

そこまで忠実にサーミのすべてを映画の中に取り入れ、ノーサルドラの人々を表現したのでした。

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