映画「IT イット THE END “それが見えたら終わり”」を視聴してきました。
2017年に公開され、大ヒットした1作めの続編で前作から27年後、復活したペニーワイズを完全に消滅させるため、大人になったルーザーズクラブのメンバーがデリーに戻ってきます。
果たして今回は完全にペニーワイズをやっつけることができるのでしょうか、というストーリーですが、ネタバレをあかしてしまえば、今回で完全にペニーワイズをやっつけてしまえます。
ただし、その代償として二人のメンバーが命を落とすことになるのですが…。
170分近くに及ぶ超大作で、そのことに対しての反応は概ね好意的なようですが、僕のように小説や1990年のテレビシリーズで内容を知ってしまっている人にとっては、その長さが気になってしまうと思います。
映画自体の内容に関しては、楽しめるものではあったものの、一つだけどうしても気になる事がありましたので、そちらを感想として紹介していきたいと思います。
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簡単なあらすじとキャストの紹介
スティーブン・キングの小説「IT」を映画化し、世界各国で大ヒットを飛ばしたホラー「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編にして完結編。
前作から27年後を舞台に、ビル、ベバリーら大人になった「ルーザーズ・クラブ」の面々が、再び「それ」と対峙するさまを描く。
小さな田舎町で再び連続児童失踪事件が起こり、「COME HOME COME HOME(帰っておいで……)」という、「それ」からの不穏なメッセージが届く。
幼少時代に「それ」の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちは、27年前に誓った約束を果たすため、町に戻ることを決意するが……。
大人になったルーザーズ・クラブの面々を演じるのは、ビル役のジェームズ・マカボイ、ベバリー役のジェシカ・チェステインら。
監督は、前作から引き続きアンディ・ムスキエティが務めた。脚本も、人気ホラー「死霊館」シリーズも手がけるゲイリー・ドーベルマンが続投。
ペニーワイズ: ビル・スカルスガルド
ビル: ジェームズ・マカボイ
ベバリー: ジェシカ・チャステイン
リッチー: ビル・ヘイダー
マイク: イザイア・ムスタファ
引用「映画ドットコム」
IT 2 のネタバレとペニーワイズの狙いを考察
すでに周知の事実ですが、この映画はスティーヴン・キングの小説を映画化したものです。
ですので、小説を読んでいれば、どのような展開になるか、どんなネタバレかは容易にわかってしまうわけです。
もちろん、小説と異なる部分もあるわけですが、大きく変更したわけではありません。
また小説も1986年、30年以上も前にに出版されたものですので、それなりの数の人が、実際に読んでいるわけではないでしょう。
まぁ、1作めのヒットを受けて小説を手にした人もかなりいるとは思いますが。
それはさておき、映画の話しに戻りますと、小説の中では説明不足だったところ、とくにスタンリーがなぜ冒頭で自殺をしてしまったのか、をより視聴者に納得できる形で掘り下げた理由を付け加えるなど、がありました。
では、少し詳しめの映画ストーリーのネタバレを紹介していきたいと思います。
IT 2 のネタバレ
2015年、ルーザーズクラブのメンバーがペニーワイズを倒した1988年から27年後、デリーの街で不可思議な行方不明事件が発生し始めます。
そのことがペニーワイズの復活と関係があることに気がついたマイクは、デリーを出ていったメンバーに連絡をし、街に戻ってくるように言うのでした。
マイク以外のデリーを離れた6人は、1988年の夏にペニーワイズと戦った記憶をなくしつつあり、ただただ怖い思いをした、という記憶だけしか持っていません。
ひとりデリーに残ったマイクだけが、ペニーワイズの正体を探り出し、完全に封じ込める方法を探し出そうと27年もの年月を過ごしていました。
そしてなんとか探しだした方法が、ペニーワイズが宇宙から「恐怖の光」として、その後にデリーの街となる地に降り注いだとき、この地域に住んでいた先住民達が封じ込めようとして用いた封印の方法。
その儀式の方法は、じつは先住民たちがペニーワイズや「恐怖の光」に対して使ったとき、封印することはできず、失敗に終わったのですが、マイクはそのことをほかのルーザーズクラブのメンバーに伝えずに、これでペニーワイズを封印できる、と説得します。
その儀式をするために、27年前の夏、ペニーワイズと戦ったときの思い出の品を集める必要があるということで、「なぜか」一人ずつ、その品を取りにデリーの街に繰り出すことになるのでした。
映画の前半は、思い出の品に関する出来事や今も心を蝕むトラウマ、そして一人で行動するメンバーに対するペニーワイズの恐怖攻撃で話が展開していきます。
しかしペニーワイズの攻撃は、彼らを抹殺したり、精神的に決定的に打ちのめすまでは至りません。
映画の展開上、それが当たり前のように見ていましたが、今から考えるとより残酷なペニーワイズの狙いがあったからなのではないか、と思うようになりました。
そう思ったのは、映画の後半、メンバーがペニーワイズを倒そうと対決をしたシーンで明らかになります。
というのもマイクが他のメンバーに説明した封印の儀式では、ペニーワイズを倒すことができなかったからでした。
そしてこの封印の儀式が効かないことをすでに知っていたペニーワイズは一度は封印されたかのように振る舞い、最後の最後で儀式を無効化して嘲笑うのです。
ペニーワイズの狙いとは
人が失望を感じるときの一つに、成功すると信じていたものが失敗に終わったときというものがあります。
とくにIT チャプター2の場合、子供の頃に味わった思い出したくもない恐怖、そしてデリーから離れてしまえば、その恐怖に襲われることがないことを知ってしまったマイクを除く5人にとって、わざわざ命の危険を犯してペニーワイズに対峙する必要はないといえるでしょう。
それでもあえてペニーワイズに立ち向かうことを選んだのは、マイクが見つけ出した儀式を遂行すれば永遠にペニーワイズを封じ込めることができるから、と説明されたからです。
しかもその儀式以外にペニーワイズを倒す方法がなかった状態ですので、儀式が失敗して、さあどうする?となったとき、プランBがありません。
さらにマイクが真実を隠していた事、先住民たちがすでに失敗しており、失敗する確率があったことを知ってしまった。
これは5人の感情として「マイクを疑う・不信感を持つ」事になってしまいます。
メンバーがお互いを信用し、固い絆で結ばれていればいるほど、ペニーワイズにとって付け込むスキはなくなるわけですが、逆に気持ちが離れ、ばらばらになってしまえば、個々に対処していくことが容易になります。
つまり、ペニーワイズはこの瞬間をすでに予想していて、デリーの地下という他に逃げ場がない場所で、ルーザーズクラブの面々を絶望に陥れ、一人ずつ処理していくつもりだったのでしょう。
ですから、儀式に必要な思い出の品を一人ひとりで集めていたメンバーに対して、恐怖を植え付けることはしても、手にかけたり、精神的にとどめを刺したりはしなかったのだと思います。
絶望の状態からペニーワイズに打ち勝った訳とは
そんな状態からルーザーズクラブのメンバーはペニーワイズに打ち勝つことができました。
その過程を見ていると、メンバー全員の絆というより、長い間秘めていた個人の思いが表に出てきたためではないか、と思います。
ベバリーとベンの関係が一番わかりやすい例で、思い出の品として持ってきたベバリー宛の詩が実はベンからであった、ということをベバリーが27年の歳月を経て、知ることになります。
しかもベンの思い出の品は、ベバリーがベンと初めて会話したときにサインをした卒業アルバムのページ。
このことで、二人がお互いの気持を知ることができ、より強い絆で結ばれることになりました。
もう一方はエディーとリッチー。
対決のシーンではそれほどわかりやすく、誰もが気がつくわけではなかったですが、リッチーが、じつはゲイでエディーのことをずっと思っていたことがわかります。
エディーはデリーを離れたあと、結婚していることからゲイではないと思えるものの、ペニーワイズとの闘いの中、リッチーに降り掛かった危険に対して、それまで恐怖で動けなかったことが多かったのに、その際にはペニーワイズに逆襲してリッチーを救っています。
ただし残念なことに、その結果としてエディーはペニーワイズに、致命傷を与えられてしまい、最終的には亡くなってしまうわけですが。
すべての事件が終わったあと、リッチーは隠していたエディーへの思いを自分自身で認めます。
これもルーザーズクラブのメンバーがペニーワイズを倒すことができた強い思いの一つだったのではないか、と思うわけです。
IT 2 の感想
視聴した感想ですが、映画は楽しめました。
ですが、正直にいって、ちょっと長いな、と集中力が途切れた時がありました。
それは、ペニーワイズと「恐怖の光」がマイクの封印の儀式を打ち破り、大きな蜘蛛の姿になった頃です。
思わず、時計を確認してあとどのくらい上映時間が残っているのか、確かめてしまいました。
前半のデリーの街の中を儀式に使う思い出の品を個々に探して回るという展開のは、個人的な評価として半々だと感じましたね。
このような展開にすることで、メンバー一人ひとりがペニーワイズと対峙をして、新たに恐怖におののくシーンを映画内に組み込めたのは、良かったと思います。
いくらペニーワイズの恐怖攻撃が与えられたとしても毎回毎回メンバー全員が揃っていたのであれば、映画の絵として視聴者が感じる恐怖は半減してしまうでしょう。
だからこそ、個々に行動して、というスリラー映画では死亡フラッグすぐに立ってしまうようなシチュエーションをストーリー上、必然とにしなくてはならなかったのだと思いました。
が、だからこそ、納得できない点が2つ、僕の中で生まれてしまいました。
その2つについての感想を述べていきましょう。
皆で行動することがペニーワイズへの一番の対応策
1作めでもビルが明言していますが、
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皆で信頼しあって、グループとして行動することこそがペニーワイズに対抗する最善の策
です。
それのことを守ったからこそ、1作めでもペニーワイズに打ち勝つことができました。
それが、チャプター2で、メンバーが一人ひとり、ペニーワイズと対峙して恐怖を味わうシーンが必要だから、ということが最大の理由であるかのような、とってつけた個々での行動の必然性に、僕には納得できなかったのです。
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儀式で使うための思い出の品は、一人で入手しないといけない
そんな取ってつけたような設定では、理由付けとして不条理だと思います。
何ら納得できる理由ではなく、「なぜ?」という疑問に対しての答えが、
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そう決まっているから
というような、問答無用な感じしか、しません。
タイムラインの矛盾
もう一つ納得できないのはタイムラインの矛盾。
というか、一連の出来事を挿入することで、タイムライン的に辻褄が合わなくなってしまった部分、といったほうがいいかもしれません。
1988年の夏、最初に下水に通じる廃墟の館でペニーワイズに襲われ、なんとか逃げ出したメンバーが、今後どうするかで意見が別れてバラバラになった後に起こった出来事に関する思い出の品を集めることになっていました。
ですが、実際にそれぞれの思い出の品を見てみると、ベバリーの品は、全くその時に起こった出来事とは関係ありません。
ビルの品も、違うと言っていいでしょう。
ベンのもそうです。
ベンの思い出などは、学校の中で起こっていますが、あの当時すでに夏休みで学校は閉まっていたはずです。
ベバリーに化けて学校の中でペニーワイズがベンを追い回していたわけですが、ベバリーの髪型はすでにショートです。
夏休み前の修学日、ベバリーがベンの卒業アルバムにサインした際にはベバリーはロングヘヤーでしたので、あの出来事は確実に夏休みに入ってから。
そしてペニーワイズがベンを襲っているので、ルーザーズクラブがペニーワイズを倒した日よりも前に起こっているはずです。
つまり1作めの作品中の時間に起こった出来事となるのですが、それを1作めの中で見せず、2作目にだけ登場させるのは、少しルール違反ではないでしょうか。
エディーの出来事にも同じことが言えると思います。
腕の骨を折ってからの出来事で、薬局に薬を取りに行った帰りに起こったと思われます。
あんな、恐怖がトラウマとしてかなり後々まで尾を引きそうな出来事であったにもかかわらず、1作めでは薬局から家に帰ってやっていたことは、ギブスの上に書かれた「負け犬」という意味の「Loser」の「s」の文字を「v」に変えて「Lover」にしていただけ。
薬局の地下であんな出来事があった後、ギブスの上の文字なんてそれほど気にならないと思いますけどね。
間違いなく1作目の際に、2作目の脚本は考えられておらず、そのために2作目で新しいエピソードを入れなくてはならなくなった後、話としてつながらない、もしくは不自然な構成になってしまっているのが、残念でした。
ルーザーズクラブは呪いから解き放たれた?
映画を見終わってよくよく考えると、ペニーワイズが完全に消滅されずにいた27年間、デリーを離れた6人はペニーワイズの呪いの影響にあったのではないか、と思えてきます。
ビルはホラー作家として成功はしているものの、作品の最後を仕上げる事ができないという悩みを抱えています。
ベバリーは虐待していた父親と同じようなタイプの夫を持ってしまっていましたし、ベンは建築家として成功してはいたものの、閉所恐怖症や対人恐怖症のような印象を受けました。
エディーは超過保護な母親の影響から抜け出せず、結婚した相手も母親と同じようなタイプの女性でしたし、スタンリーはマイクからの電話の後、自殺をしてしまったことから一番鮮明に記憶を残していたのではないか、と思われます。
リッチーも成功していたものの、孤独なような印象を受けました。
何より大きな秘密を抱えたまま、そのことを認めようとしていないのが多分、孤独の原因ではないかと思います。
またメンバー7人中、はっきりと分かっているだけで、4人が結婚していますが、誰も子供に恵まれていません。
1990年のTVシリーズ版ではマイクは結婚して子供もいたものの、事故で家族を亡くしているという台詞があり、デリーに残った影響を強く受けているのでは、と思わざるを得ない27年間を過ごしていました。
誰にも子供ができていない、ということはペニーワイズの呪いの影響と考えるのが一番しっくり来ると思います。
こうやって見てみるとデリーを離れたメンバーもそれほど幸せな生活を送っているわけではなさそうです。
そしてそれこそが、ペニーワイズの呪いの影響ではないか、と思えるのでした。
とはいえ、リッチーがゲイであったことはペニーワイズの呪いとは、あまり関係がないのではないか、と思いますが。
まとめ
もともとオリジナルはチャプター2の冒頭、マイクがメンバーにデリーに戻るように連絡をするところから始まり、それによってそれぞれのメンバーが27年前にあった恐怖の出来事を思い出す、という展開でした。
それを映画では子供の頃の出来事と大人の出来事を完全に時系列に並べて描いているため、ストーリーの流れは独自のものが出来上がったと感じました。
その独自性をオリジナルの流れにも沿わせないといけないという縛りがあったために、1作めから繋がりがきちんと合わない、という印象を受けるようになったのではないか、と思います。
とはいえ、完結編として楽しめますし、1作目の話の続きとしてペニーワイズとどう決着をつけるかにおいて、きちんと話を終えていたと思いました。
巷では続編を期待して「チャプター3は?」という声もあるようですが、小説が存在しない以上、今の所、実現はないという見方が監督やプロデューサー・出演者などの意見です。
が、スティーヴン・キングが同意する、例えば彼が脚本を担当するなどの動きがあれば、続編の可能性は出てくるのではないでしょうか。
個人的には続編よりも、チャプター 0、ペニーワイズと「恐怖の光」が地球に到着したあたりからの話のほうが、興味がありますけどね。
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