映画ストーリーオブマイライフわたしの若草物語のネタバレ感想!原作を知らなくても楽しめる?

ヒューマンドラマ

映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」を視聴してきました。

世界的に有名で1868年に発表されたルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説を映画化した作品です。


子供のころに、漫画で読んだ記憶がちょっとだけ残っており、4人姉妹の誰だったかが、髪を売って金策したシーンだとか、父親が南北戦争に兵士として参加しているというくらいしか知識がないまま、映画を見てみました。

前評判がよいことは知っていたのですが、原作を知らなくても楽しめるかどうか、正直、少し不安に感じながらの視聴でした。


今回は、ネタバレ感想を、原作を知らなくても楽しめるかどうか、僕個人が感じたことも含めて、紹介していきたいと思います。







映画「ストーリーオブマイライフわたしの若草物語の」予告動画はこちら



映画「ストーリーオブマイライフわたしの若草物語」の簡単なあらすじ

「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再タッグを組み、ルイザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語」を新たな視点で映画化。

南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の4姉妹が織りなす物語を、作家志望の次女ジョーを主人公にみずみずしいタッチで描く。


しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。

女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。

性別によって決められてしまう人生を乗り越えようと、思いを寄せる幼なじみローリーからのプロポーズにも応じず、自分が信じる道を突き進むジョーだったが……。


幼なじみローリーを「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ、長女メグを「美女と野獣」のエマ・ワトソン、末っ子エイミーを「ミッドサマー」のフローレンス・ピュー、ジョーの人生に大きな影響を与えるマーチ叔母をメリル・ストリープがそれぞれ演じる。


第92回アカデミー賞では作品賞はじめ計6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。


引用:「映画ドットコム








映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のネタバレ感想

映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」は、全体的に、とても楽しめた映画でした。


1868年発表の作品、しかも作品の中で南北戦争が起こっていますので、舞台は1860年代のアメリカです。

ですが、160年も前の話であるのに、今に通じる女性の問題を、ここまで見事に描き切っているのには、驚きました。


気になった場面の感想を一つ一つ紹介していきましょう。

男性目線で見るとメグの夫ジョンのつらい立場が身に染みる

原作をほとんど知らないまま映画を見たため、詳しい背景が分からずに、このシーンを見ていました。

4姉妹の長女メグは、ローリーの家庭教師をしていたジョンと結婚します。

が、その結婚生活は貧しいもので、ぜいたくなど以ての外。

しかし友人と買い物に出かけたメグはとてもきれいな布地を見つけてしまい、どうしても買わずにはいられなくなって、大金を払って購入してしまいます。


そのことをジョンに打ち明けるのですが、その際に感極まってしまい、貧乏生活がもう耐えきれない、と感情的になってしまうのでした。

それを聞いたジョンは無駄遣いを怒るどころか、メグに貧乏生活を強いてしまっている自分のふがいなさを謝ります。


この場面、同じ男としてつらいものがありましたね。

ジョンはメグと結婚した時、愛する妻にこんな生活を送らせたいとは思っていなかったはずです。

しかし、現実は厳しく、思うように生活はよくなっていきません。

ジョンの描写シーンは少なかったですが、まじめそうですし、浪費家でもなさそう。
激高して妻に手を挙げるDV男のような様子も皆無でした。


そんなジョンが、愛する妻が望んでいる生活を送らせてあげられないという事実を突きつけられたなら、謝るしかしないでしょう。

おそらく心の内は、とても傷付き、情けなさでいっぱいになっていたに違いありません。


この映画のテーマの一つとして女性が可能な経済活動の少なさ、という問題があります。

メグのように貧乏な現状で、この時代、その現状を打開しようと妻にできることは、夫の尻をたたいてけしかけることだけ。

自分で仕事についたりビジネスを起こしたりして、お金を稼ぐということはまずもって不可能です。


この、夫の尻を叩くくらいしかできないという、限られた選択肢、それもことは直接的には問題を解決することができない現状に、とてもストレスを感じていたことだと思います。

そしてそれは、性差別に問題がある、という考えに行きつくのは、至極普通の流れでしょう。


一方で、男性として言わせてもらうとすると、すでに自分自身で責任を感じていることに対して、奥さんから更なるプレッシャーを受けなければならないのは、かなり厳しいものがあります。


特にジョンのように、まじめな男性であればあるほど、開き直れず、ストレスを発散させられず、自分の情けなさだけを責めてしまいそうですし。

もちろん、成功できないでいるジョンに、すべてとは言いませんが、何かの問題があるのでしょうから、彼の責任ではあるのですが。


そしてメグのように、お金に困らない生活をしたいと望んだ時、自分では何もできないというもどかしい状態におかれていたこの時代の女性として、一時の感情に任せてジョンに本音をぶつける時間があっても、それはそれで仕方がないのかな、とも思いました。

「内助の功」でしか成功したかどうかが分からないもどかしさ

日本のことわざで「内助の功」というものがあります。

    「家庭において、夫の外部での働きを支える妻の功績」

という意味ですが、日本でも女性が直接世に出て何か成功をつかみ取る機会が限られていたため、旦那を助けて旦那の成功できるような環境を作り、旦那の成功をもって、自分の成功とする、という価値観があったからこそ、このような言葉が生まれたのでしょう。


この言葉がある日本人である僕には、1860年代という時代背景とメグの立場のことを考えると、まさに「内助の功」を尽くしてジョンが成功するようにするしかないのでは、と視聴しながら思ってしまっていました。


一方で後々、いろいろと考えると、「内助の功」でできることの限界も存在することに気が付きます。

それは妻となった女性が、直接的ではなく、間接的にしか成功へのプロセスにかかわれないということです。

つまり、成功へたどり着くために一番重要な要素である夫の資質というものによって、成功できるかどうかが決まってしまう部分が大きく、たとえ妻の「内助の功」能力が優れていたとしても、時間がかかってしまう場合があったり、始めから無理という場合もあるからです。


いわゆる

    「笛吹けども踊らず」

状態ですね。


どれだけ助けても全く成長しない男性もいますから、そんな男性を夫にしてしまった女性の責任、ということはたやすいですが、だったら女性も直接成功するための外での活動を認めてほしい、という主張は至極まっとうなことだと思います。


もちろん、「若草物語」の時代には、それがまず不可能であったがために、メグやジョー、エイミーがそれぞれの方法で違った努力と苦労をしたわけですが。


日本のことわざ「内助の功」


それを持ち出して、夫の成功こそ妻の努力の成果、と考えることはわからなくもないですが、その考えで夫婦として成功をつかむためには、女性のほうに明らかにより多くの制約が課せられていると思わざるを得ませんでした。

こんなことを考えながら、「内助の功」に当たる英語の言葉がないことにも思わず納得していたのでした。

結婚が問題というより女性の財産権が認められていないことが問題

映画の中で、ジョーが盛んに結婚に対して否定的でいたことに、少し疑問を感じたのです。

時代的に女性の送れる人生のパターンは、ほとんど一通りといって良かったでしょう。

    いい旦那を見つけて結婚すれば、女性にとって幸せな生活が待っている。

確かにジョーでなくてもそんな世間一般に信じられ、だれもが口にしていたセリフは聞き飽きてヘドが出る、と感じてしまいます。


メグがいい例で、確かに愛情面ではこれ以上のないパートナーをつかんだかもしれませんが、結婚してから苦労なく生活できているわけではありません。

結婚すればしたでこれまで経験したことのない、新しい問題が持ち上がってくるものです。


エイミーが言っていましたが、この時代、女性がお金を稼ぐ手段はおろか、稼いだとしてもそれを保有し続けることのむつかしさに問題があるのでは、と感じました。

結婚すれば、女性が持っていた財産は男性のもの。

これではマーチ叔母さんではないですが、金持ちの女性が結婚したいとは思いません。


今でこそ、北米では、結婚後も女性の財産権が認められていて、たとえ離婚したとしても、結婚後に気づいた財産の半分を受け取る権利があります。

もちろんこの権利によってここの部分は男女平等になりましたが、まだまだそれ以外、例えば就職の機会に関して男女差があることは、だれもが認める部分です。


ただ、この時代の男女差別の象徴として、結婚がどうしてもやり玉に挙げられてしまっているのは、仕方がない部分はあるにしても、そこまで悪者にしなくても、と思ってしまったのでした。

人とは違うことをしないといけないつらさ

そして結婚をしないことを選んだジョーは、結婚すれば女性は幸せになれるという考えを毛嫌いしながらも、その当時結婚することについて、女性の人生の常識と考えていた一般的な周りの女性、特に姉妹から取り残されていくことにとても孤独感を感じていました。


この時代、男女格差の象徴として結婚というものがあり、その格差是正のために戦うことを選んだジョーにとって、象徴である結婚はできるものではありません。

しかし、結婚は愛し合った男女がそれを一生かけてまっとうするという誓いみたいなものであり、本来格差の象徴ではないと思うのです。


また結婚には、結婚によってしか得られない幸福感もあります。

特に家族との楽しいひと時、は結婚をしないと得られないものであり、かつて子供時代に4人姉妹で楽しく遊んだ思い出も、両親の結婚というものがあって、ジョーが楽しむことができたものです。


その姉妹も大人になり自分たち自身の家族を持つことで、子供のころに味わった家族のぬくもり、幸せを母親という立場から見ることになるわけですが、結婚をしないと決めたジョーには、それを味わう機会は全くなくなってしまったのでした。

だからこそ、結婚に対する世間の考えにうんざりしながら、だれもいなくなった屋根裏部屋、かつて4姉妹が楽しく遊んだ思い出の場所にただ一人残された時の孤独感をとんでもなく重いものに感じたのでしょう。

その孤独感を埋めるためだけに結婚をしようか、と心変わりをしたジョーの気持ちもわからなくなない、と思った瞬間でした。







原作を知らなくても後半はのめりこんで楽しめる

原作をほとんど知らないまま、有名な「若草物語」を今回視聴したわけです。

原作を知らなくても楽しめるかどうか、について、僕個人が感じた感想を紹介していきましょう。

    「南北戦争時代のアメリカでの4姉妹が成長していくお話」

程度の知識しかありませんでした。

その知識だけで見始めると、正直はじめは戸惑いました。


映画の視聴後からいろんな記事などを読んで分かったのですが、監督のグレタ・ガーウィグは小説の映画化に当たり、小説では時代順に進んでいるストーリーを映画に取り入れることをあきらめた、と語っています。

その理由は、時間的制約で不可能だったから。


映画という2時間前後のお話の中に、小説の内容すべてを詰め込むことは、それこそ不可能です。

そのため、ストーリーの途中、ジョーがすでにニューヨークで一人暮らしをし、小説家を目指しているところから話は始まったのでした。

そして過去を思い出す回想シーンとして、4人が一緒に住んでいた子供時代を映し出す手法を取っていたのです。


そのことを知らないで見始めたため、はじめはそのことが分からず、話についていくのが精一杯でした。

でないと、頭の中がこんがらがって、訳が分からなくなってしまいます。


ですので、メグが長女、ジョーが次女であることはわかりましたが、ベスとエイミーを逆に考え、エイミーが3女でベスが末っ子だと思っていました。
その間違いに気が付いたのはベスが死んだ後、しばらくしてからでした。


が、やがて、状況がわかり、ストーリーが時間的につながり始めると、物語はがぜん、面白くなっていきます。

特に今回主人公として描かれたジョーと、メグとエイミーとの対比、特に結婚に対する考え方の違いの面白さに引き込まれました。

ジョーはいったいどういう決断をするのだろう、とエンディングまで一気に見入ってしまったのです。


原作を知らなくても楽しめるかどうか、ですが、最初の30分くらいは、少し面食らうかもしれません。

特に4姉妹の顔や体つきがほとんど変わらないため、過去の話なのか、今の話なのか、分かりづらいのも原因だと思います。

とはいえ、たった4、5年の期間しかないので、それほど変わるわけではないでしょうが。


しかしそこを乗り切り、ストーリーとその時間的順番を理解するとがぜん、面白くなります。

できれば、最初の30分を乗り越えて、ぜひ最後まで見てほしい作品です。

まとめ

映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」

長編小説を映画化した作品ですので、原作シリーズの一部を使って、小説で描かれていたテーマの一つに焦点を当てざるを得ませんでした。

「男女格差」「男女不平等」という問題を1860年を舞台に浮き彫りにし、実はその問題は160年経った2020年になっても完全に解決していないことを世界に向けて訴えています。


原作を知らないままの視聴でも、十分楽しめる映画でした。

最初の30分ほどは、過去の回想シーンがたくさん含まれることもあり、時間の流れを把握するまで、戸惑うかもしれません。

が、時間的ストーリーが自分の中で確立されると、4姉妹の性格の違い、そこからくる行動の違い、そしてその違いが生み出す現状の違いを鮮やかに対比してみることができるので、とてもストーリーに引き付けられると思います。


一度見終わった後、余韻をかみしめ、今また、もう一度見てみたいと思える作品でした。












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