映画「パーム・スプリングス」はタイムループ・ロマンスコメディを題材にしている作品です。
タイムループを扱っているため、同じ状況や出来事を何度も何度も繰り返すことになります。
そんなある意味、逆に制限のあるシチュエーションでものの見事に伏線を張り巡らせ、あっと驚く展開を用意していました。
今回はそんな映画「パーム・スプリングス」で作品中にいくつも張り巡らされた伏線と、それを回収するネタバレシーンを紹介していきたいと思います。
映画「パーム・スプリングス」の伏線とその回収シーンをネタバレ解説!
映画「パーム・スプリングス」で気が付くいくつかの伏線を紹介していきたいと思います。
これから紹介する伏線とその回収シーンは、いわゆる本作品の一番面白い所であります。
完全なネタバレになりますので、まだ映画を見ておらず、視聴して楽しみたい方は、読み進めないことをおすすめします。
映画「パーム・スプリングス」の詳しいあらすじを知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
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ストーリー最大の見せ場となる秘密の伏線と回収シーン
まずは映画のストーリーで一番の見せ場となる驚きの展開に関する伏線とその回収シーンを紹介しましょう。
サラが結婚式に終始憂鬱な表情でいたこと
映画が始まり、結婚式で喜びに包まれている新郎と新婦。
そしてその家族や友人達。
そんな中で新婦の姉サラだけが、浮かない顔をして、飲みすぎではと思えるほどのお酒を飲んでいました。
普通、妹の結婚式であれば、姉であるサラもお祝いしたいと思うはずですが、そんな様子は全くなく、その理由が気になってしまいます。
妹と不仲なのか、家族の中で孤立しているのか。
もしかすると新郎はもともとサラの恋人で妹に取られたのか?
などと、いろんな疑問が頭の中を駆け巡りました。
実際、サラはタラに比べれば親に迷惑をかける問題児だったようですが、だからと言ってそれほどタラといがみ合っている様子はありません。
ともすると、サラのほうだけが気にしていて、タラは別に何とも思っていないのかも、と思えるほどでした。
サラに関する疑問も、ナイルズが登場してさらにちょっかいを出し始めたころから、関心は別のものに移っていきましたが、その理由は謎のまま、伏線として映画は進むことになるのでした。
サラが朝早くに自分の部屋にいなかったこと
ナイルズによってタイムループに囚われてしまったサラ。
すでに過ごした11月9日の朝に目を覚ましたことで、大混乱してしまいます。
一体何が起こったのか、理解できないまま、家族に今の状況を確認しようとしていました。
そんなサラと親との会話の中で、
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「今朝は早起きだったんだな。6時に部屋に行ったがいなかったようだけど、どこか出かけていたのか?」
と聞かれています。
その問いに対してサラは、
-
「散歩に出かけていた。」
と、答えますが、この答えはよくよく考えるとおかしいことに気が付きます。
というのも、もし朝早くに目を覚まして散歩に出かけていたのであれば、タイムループが始まる11月9日の朝の目覚めは、その時になっていないといけません。
つまり、この会話が行われる少し前に、11月9日として初めて起きたのが真実であり、それよりも早い時間に早起きして散歩に出かけたというのは、真っ赤な嘘となるのでした。
が、この会話はタイムループに囚われてしまったサラがその事態を飲み込むために、ナイルズのもとに押しかけていくというスピーディーな展開の前に、視聴者が深く考える余地を、上手く消してしまっています。
結果この時点では、サラが早朝自分の部屋におらず、どこにいたのか?という謎について、深く考えることができない視聴者がほとんどであったと思います。
ただ純粋に自分の事だけを考えて行動しタイムループ脱出を目論むも
タイムループから抜け出す方法として、サラは、自分の欲望にだけ正直に行動をすればいいのではないか、と思いつきます。
そして結婚式での誓いの言葉の前に、進行を止め、タラの耳元で何かを伝えるのでした。
が、結局はその方法でも脱出は成功せず、いつものように11月9日の朝がやってきます。
残念がるサラでしたが、ナイルズのほうは、サラが一体、何をタラに言ったのかが気になっていました。
しかしその内容は明かされず、脱出をあきらめたサラがナイルズに付き合って、自分が置かれた世界と状況を利用して、最大限楽しむ事に心変わりしてしまいます。
サラがタラにいったい何を言ったのか?
それは後々、はっきりとするのでした。
回収シーンはサラの不貞行為
この上記3つの伏線の回収シーンは、サラとナイルズが結ばれた後の朝に、明かされるのでした。
実はサラは、結婚式が行われる日の前の晩に新郎であるエイブと不倫関係を持ってしまっていたのです。
そのため、サラは11月9日の朝は毎回、エイブのベッドで目を覚ましていたのでした。
この重大な秘密があったからこそ、サラは結婚式で浮かない顔付きの表情で至り、11月9日の朝に自分の部屋にいなかったりしたわけです。
タラに結婚式で耳打ちした話も、実はこのことをタラに伝えたのでしょう。
こうして、映画のストーリー内で最も驚愕させられる秘密によって、冒頭で感じたいくつかの不自然な疑問が氷解するのでした。
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サラがタイムループから抜け出す決心をしたもう一つの理由
サラがタイムループから抜け出す決心をしたのは、今の状況で幸せになったとしても毎朝新郎エイブとの不貞行為をしたことを思い出させることになるからでした。
特に幸せと感じられず、自暴自棄になってやってしまった不貞行為だったと思います。
それでも翌日の結婚式では罪悪感にずっと囚われていたわけですが、タイムループにとらわれ、ナイルズと一緒に過ごすうちに、都合よく忘れることができたのでしょう。
でも、結局はずっと忘れられるわけはなく、朝起きてベッドでもたもたしていたらエイブによって、11月8日の夜、何をしたのかを絶対に思い出すことになってしまいます。
だからこど、サラは絶対にタイムループから抜け出さなくてはならないわけですが、それ以外にも、実はナイルズと何度も関係を持ったことも大きなきっかけだったと思われます。
時間軸でいえば、妹の結婚相手である新郎と不貞行為、妹の結婚式への参加、その間、ずっと罪悪感に苛まれている、ということになります。
であるのに、結婚式であった見ず知らずの男性であるナイルズとも関係を持つ。
しかも、ナイルズは繰り返し何度でもサラの相手をした、と告白しています。
その時のサラはタイムループにとらわれていないサラであったため、何度繰り返してもサラにとっては最初で最後、ということになります。
が、彼女にとってみれば、昨夜の不貞行為で罪悪感を一日中感じていたにもかかわらず、連夜で行きずりの行為をしたことになります。
どうしたってタイムループから抜け出し、これからの未来では同じ過ちを繰り返さない、人間的成長をした人物になりたい、と強く思っても不思議はないでしょう
ナイルズが何度もサラと関係を持ったことが感じられる伏線
始めは嘘を言っていたナイルズですが、それが嘘であると感じられるセリフやふるまいが事前にいくつか読み取ることができる伏線があります。
それではその伏線を一つずつ見ていくことにしましょう。
ナイルズがした結婚式での完璧なスピーチ
結婚式の披露宴でサラが急にスピーチを振られて慌てふためくシーンがあります。
父親のセリフもあるとおり、おそらく事前に予定されていたのにサラがうっかり忘れただけだとは思いますが。
何はともあれ、サラは全く考えていなかったこともあり、何をしゃべっていいのか分からず困惑している状態。
ここでナイルズが現れ、スピーチの代役を引き受けて大盛り上がりを引き出しました。
これをナイルズの視点から見てみましょう。
ナイルズは何度も同じ結婚式を経験しているので、ここでサラがスピーチを振られ、しどろもどろになってしまうことを知っています。
ですから、ここで助けることができれば第一印象は良くなるはずです。
しかも、その後、サラと会話をすることは難しいわけではありませんので、そこで彼女の反応を見て、スピーチの内容を彼女に刺さるようなものにすることは難しくありません。
何しろ、何度でもリセットしてチャレンジできるわけですから、時間はかかっても最適解は必ず見つかることができるのです。
スピーチだけでなく、ダンスフロアを横切ってサラのもとに近寄ってくることも、そこで何が起きるのかわかっているわけですから、絶妙なタイミングでのダンスや酔っぱらって転びそうになった人のヘルプも、難しいことはありません。
逆にそれを見せることで、サラを驚かせ、感心させることができます。
そして事実、映画の中でナイルズは、そのように行動していました。
何が言いたいのか、というと、ナイルズは何度もできるリセットを利用し、完璧にサラに言い寄ることのできる行動パターンを確立させることができていたという点です。
そんな努力を払っておきながら、ただ親しくなるだけ、ということはないでしょう。
特に明日が来ないナイルズですので、何のために女性を口説き落とそうとしているのかは、一目瞭然だといえます。
ロイの襲撃
そんな中、サラがタイムループに囚われてしまった理由は、ロイの襲撃でした。
ロイは、同じくタイムループに囚われてしまった人物として、ナイルズの命を狙っていますが、毎回毎回、現れるわけではありません。
ナイルズが何回目かはわからないもののサラとお楽しみをしていた際に、たまたま表れてナイルズに襲い掛かったのでしょう。
つまりロイの襲撃は、ナイルズがサラと何度も行動を共にした可能性がある事の伏線だったわけです。
少し話は逸れますが、ロイに襲われ、傷ついたナイルズが洞窟に入っていった理由は何だったのでしょうか?
それは痛みから解放されるため、だと思います。
肩と足に弓矢を受け、死ぬほどではないもののかなりの傷を受けたナイルズは、かなりの痛みがあったでしょう。
眠るか死ぬかすればリセットされ、痛みから逃れられるのですが、死ぬほどの傷ではないし、意識が飛ぶほどでも無し。痛みで寝られるわけもない状態です。
そんなナイルズが痛みから逃れられる方法は、赤い光の中に入っていってリセットさせること。
それをサラの前でやってしまうことで、彼女もタイムループに囚われてしまう可能性があるわけですが、おそらく、そこまで頭が回らないほどの痛みがあったのでしょう。
サラに助けを探しに行ってもらうように頼むなど、いくらでもサラをあの場から遠ざける方法はあったと思います。
が、それをしていないということは、それを考え付くだけの余裕がなかったから、と受け取るのが自然でしょう。
回収シーンはナイルズの告白
ナイルズがサラに嘘をついていたことを告白したことで、はっきりするわけですが、そうなると、あれもこれもこういう意味だったのか、ということもわかってきます。
つまり先に述べたように、映画ではナイルズがサラの窮地をスムーズに救い、彼の彼女が不倫していることをサラに見せたことで、話しかけるきっかけを作って、サラのガードを下げさせたのですが、これは何十回という試行錯誤の結果、サラと一夜の関係を持つために、ナイルズが選択すべき最良のパターンだったということです。
映画では映し出されていませんでしたが、失敗してサラに興味を持ってもらえない、話すだけで終わり、といった結末を何度も迎えたのでしょう。
しかしそこは、ビデオゲーム感覚でリセットして失敗を修正し、あらゆる手を尽くして攻略していったに違いありません。
そしてロイの襲撃は、タイムループに囚われているロイの、予測できない出現によって、イレギュラーが発生したわけです。
だからこそ、二度とタイムループに他人を巻き込まないでおこうと決めていたナイルズの決意とは裏腹にサラがタイムループに囚われてしまったのでした。
サラが電話でタイムループを抜け出す方法を伝る伏線と回収シーン
タイムループからの脱出する仮説理論を構築したサラは、動物で実験して成功の確証を得ます。
今度は自身で試し、本当に抜け出せるのか、抜けだした先がどこに通じているのかを確かめることになります。
ナイルズはというと、先の見えない未知に恐怖し、リセットができない冒険をすることに臆病になっていました。
あまりにタイムループの世界での生活が長くなりすぎ、そこでの快適さに慣れ切ってしまっていたのでしょう。
一人決行すると決めたサラは、式も披露宴も終わりに近づいたころ、誰かに電話をかけていました。
話しているというよりメッセージを残しているようなしゃべり方でしたが、彼女がタイムループから抜け出す方法を見つけ出したことを伝えている内容でした。
サラが電話していた相手
このシーンを初めて見た時、ナイルズに対してメッセージを残し、彼女がいなくなった後、心変わりをして後を追いかけてこられるように、方法を伝えておいた可能性を考えました。
おそらくナイルズがサラと一緒にタイムループから抜け出そうとしなかったのであれば、11月9日の朝に起きた時、サラはどこにもいない、という世界になっていたでしょう。
サラの家族も探すものの誰も見つけられず、連絡も取れず、おそらく結婚式に参加したくなくなって、リゾート地から抜けだしたに違いない、という結論をつけて、サラ無しで結婚式を行っていたと思います。
そんな奇怪な行動をしてしまいそうな雰囲気は、サラにはありましたし、なんとなく家族の中でも浮いている存在であるというにおわせもありました。
11月9日以降の未来が存在しない世界ですので、家族もそれ以上の心配はすることはありません。
メインイベントである結婚式を無事済ませようとすることに集中すると思われます。
映画はというと、ナイルズが心変わりをし、サラを追いかけて二人でタイムループを抜け出しました。
となると、たった一人タイムループの世界に残されたロイは、どうなってしまうのか?
大きな疑問が残ってしまったわけです。
回収シーンはエンディングクレジットで
しかし映画は、そんな可哀そうなロイを見捨てたりはしませんでした。
サラがメッセージを残したのはロイであったことが、エンディングロールの途中に挟まっている映像で、明かされるのです。
もしかすると、サラは念のため二人にメッセージを残したのかもしれません。
何はともあれ、ロイもタイムループの世界から抜け出し、愛する我が子の成長を見ることができることになるのでした。
タイムループものとしてとても面白い作品に仕上がっていると感じた映画「パーム・スプリングス」
その理由は綿密に計算されて張り巡らされた伏線にあったと思います。
そしてその伏線の回収シーンで明らかになった事実を元に考えると、実は映画で実際にスクリーン上に映し出されていた以上のことが繰り広げられていたことがわかるのでした。
そんな奥深いストーリーが映画「パーム・スプリングス」の隠された魅力だと感じた次第です。
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