映画ドリームのネタバレ感想とあらすじ!マーキュリー計画前後の宇宙開発競争説明も!

映画

ネタバレ感想 1 宇宙開発競争はアメリカとソ連の冷戦の一部

この映画を楽しむために、まず1960年前後の宇宙開発競争について予備知識をいれておく
ことをおすすめします。

宇宙へロケットを飛ばす技術は、アメリカとソ連の核ミサイル開発競争と関係のあることを
ご存知でしょうか?

ロケットは言ってしまえばミサイルで、その先に宇宙船や人工衛星を取り付けると宇宙
開発ロケットになり、爆弾や核爆弾を搭載すれば、兵器になります。

アメリカとソ連が競ってお互いをミサイルで攻撃できるように技術を高めていったおかげで
両国ともに宇宙に衛星を打ち上げることができるようになりました。

最初に衛星を打ち上げたのはソ連で、1958年スプートニクという人工衛星を打ち上げに
成功します。それまでアメリカこそが世界一の技術を持っていると自負していましたが、
その自信は根底から覆され、それまで軍隊が行っていたロケット打ち上げ事業は文民統制
のもとNASAで行われるようになりました。

そんなアメリカをあざ笑うかのようにソ連は犬を宇宙へ送ることを成功させ、また初めて
の有人宇宙飛行も1961年4月に成功させます。

アメリカはその後、同年5月に有人宇宙飛行を成功させますが、同年8月ソ連は1日の宇宙
滞在を成功させています。

映画の中にあるジョンが3回周回軌道を回った打ち上げは翌年の1962年におこなわれていて、
初期の宇宙開発競争はソ連の方に分があったと言わざるをえない結果となっています。




ネタバレ感想 2 黒人女性がNASAで働いていた理由

映画の舞台となっている1961年のアメリカといえば、黒人の差別問題に対してマーティン・
ルーサー・キング・ジュニアやマルコムXなど、黒人リーダーが差別撤廃運動を行っている
最中の時代です。

映画内でもトイレが白人専用と有色人種専用と別れていたり、バスの中で白人用の椅子、
有色人種用の椅子と別れていたり、図書館ですら有色人種が借りられる本が限られていた
いることが描かれています。ウォータークーラーですら「白人専用」、「有色人種用」と
書かれていましたし。

そんな時代にNASAで黒人女性が働いていたというのは、映画の最初に出てきた白人警官と
同様、驚きました。

しかし背景を知ると納得でした。

NASA前身のアメリカ航空諮問委員会(NACA) でも多くの女性が計算士として働いており、
それが戦争で人手不足になると、四の五のと言ってられなくなって黒人女性を使うように
なったのです。

その名残から、NASAでも黒人女性が計算士として雇われていました。

この計算士というのは、当時数学者がつける職業の一つで、それまでは教師になるしか
なかったのが、計算士という職につくことで教師の3倍の給与をもらうことができたそうです。

コンピュータがまだなかった時代、人の手によって計算するしか方法はなく、飛行機の
設計士や技術者であった男性は、自身が思いついたアイデアを数字によって証明していく
時間が惜しくなっていき、計算は女性にさせたという背景が計算士は女性というイメージを
つけていったのでした。

映画の中でもポールがキャサリンに重要な情報を隠して、確認計算だけしていればいい、と
言い放つシーンは、キャサリンが黒人だからだけではなく、女性でもあるので、出たセリフ
ということがいえます。

つまり、「僕考える人、君確認する人」ということでしょうか。

ちなみにこのポールという人物は、ヴィヴィアンとともに実在する人物ではなく、その
当時の価値観やそれに伴う行動がどういったものになるかをわかりやすく見せるために
創作されたキャラクターだそうです。

ネタバレ感想 3 いろいろと実際とは違う、映画用の見せるための演出

映画は、黒人差別に屈せず、自分の能力を武器に立ち向かい、やがてまわりを認めさせて
自身の位置を確立するという、清々しいストーリーになっています。

エンターテイメントとして、とても引き込まれますし、爽快感もありますが、幾つかは
映画のために書き換えられたストーリーで、実際とは違う事がわかっています。

例えば、白人専用と有色人種専用に分かれたトイレ。
実際、アメリカ社会の中でそういった公共トイレは、1961年には存在していましたが、
NASAの中では、前身のNACAから改組された際にそういった差別的施設は取り払われたそう
です。

また、有色人種専用のトイレを映画のキャサリンのように使用していたのは、実際は
メアリーで、キャサリンは白人専用と書かれていないトイレを使用していたそうです。
書かれていなかったのは、キャサリンが来るまで白人しかいなかったかららしいのですが、
遂にはクレームが出されたそうです。
しかしキャサリンが無視をしていたら、そのクレームは取り下げられたとのことでした。

そのメアリーは学校に編入するために裁判所命令を勝ち取ったのではなく、実際は市役所に
もちこんで、編入を許可させました。そして1958年にエンジニアになっていますので、
実際には映画の舞台になった1961年には既にエンジニアでした。

ところで、エンジニアとしてメアリーはNASAにいたわけですから、ジョンが衛星軌道上を
回っている最中に耐熱防護壁に関して警告灯がついたときには、彼女が活躍して問題を
解決するのかな、と思いましたが、全くそんなことはなく、メアリーがこのマーキュリー
計画に直接関わって貢献したというはっきりした描写がなかったように思うのは、僕だけで
しょうか?

この他にも映画での演出と実際にはちがうことが幾つかありますが、別の記事でそれは
紹介したいと思います。











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