映画「ティーンスピリット」は僕の好きなエル・ファニングが主演する、典型的な十代の女の子のサクセスストーリーという内容で、正直期待をしていました。
が、実際に見てみると、かなり残念な内容になってしまっていました。
ストーリーでこれまでと同じような内容以上にできず、だからこそなにか奇抜なものを、と試した結果、それが狙い通りにはならずに、より残念な方向へ突っ走ってしまった、そんな映画になってしまったと感じました。
エル・ファニングが本格的な歌唱シーンに取り組んだ、ということを売りにしているようですが、そのシーンが出てくる頃には、あれがクチパクであろうが、彼女の本当の声であろうが、どうでもいい、と感じている自分がいたのでした。
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ティーンスピリットの簡単なあらすじとキャストの紹介
「マレフィセント」「20センチュリー・ウーマン」のエル・ファニングが主演し、本格的な歌唱シーンにも挑戦した青春音楽ドラマ。
イギリスのワイト島で、移民として母子家庭で育った内気な少女ヴァイオレット・バレンスキは、現実の世界から自分を解き放ってくれる音楽を心のよりどころに生きていた。
ある時、国際的に有名な人気オーディション番組「ティーンスピリット」の予選が地元で行われることを知ったヴァイオレットは、退屈な田舎町を抜け出して歌手になる夢をつかむため、オーディションに挑む決意をするが……。
監督・脚本は、名匠アンソニー・ミンゲラを父に持ち俳優としても活躍するマックス・ミンゲラ。製作に「ロケットマン」「リトル・ダンサー」の俳優ジェイミー・ベル。
ヴァイオレット・ヴァレンスキ: エル・ファニング
ヴィラド: ズラッコ・ブリッチ
ジュールズ: レベッカ・ホール
引用「映画ドットコム」
映画ティーンスピリットの感想 – 失敗に移った目新しさ
いわゆるこれまでもよくあるストーリーの映画。
うだつの上がらない田舎の女の子が自分の才能を信じ、幸運な出会いもあって成功していくサクセスストーリーです。
そんな使い古されたストーリーをいまさら使うため、なにか目新しいものを、と思ったのかもしれません。
イギリスとアメリカの合作品であることも、関係しているかもしれませんが、とにかく画面が暗い。
ジャンル的には英語圏で「Chick Flicks(チック フリックス)」とよばれる、少女向けの映画になります。
であれば、もっと明るい画面にすればいいのに、と思うのですが、それだと逆にこれまでにあった同様の映画となんにも変わらない二番煎じそのものになってしまうと恐れたのでしょう。
だから敢えてあのような映画全体を暗い映像でまとめきったのではないか、と邪推してしまいました。
しかし、その努力も虚しく、映画はとんでもなく暗い雰囲気のまま進んでいきます。
ヴァイオレットとヴィラドの出会いのシーンも、場末のバーで呑んだくれている怪しげな中年男性に彼の車で送ってもらうという行為は、身の危険を感じて、という理由はあったとしても、なにかトラブルに巻き込まれるのではないか、というハラハラドキドキ感がたまりませんでした。
他にもバーで、同年代の友人がメンバーのバンドの演奏を見に行くシーンもなにか悪いことが起きるのではないか、という不安感を常に感じながら見ていましたし、決勝でロンドンに行き、そこでも前夜にバーで深酒をして、前回の優勝者の男子シンガーといちゃつくシーンも少女向けとは思えないほどのダークな雰囲気を醸し出していました。
そしてそういったすべての負の印象が、本編であるヴァイオレットが大会で勝ち進んでいく過程をより劇的に見せるような相対性など全く感じず、逆に大会で勝ち進んでいくことが、淡々と描かれていて、共感してのめり込むことはありませんでした。
僕自身、エル・ファニングはすきな女優の一人です。
だからこそ、この「ティーンスピリット」に期待した物がありました。
典型的なストーリーで、途中に挫折はするものの、周りの仲間や家族の支えで立ち直って最後に優勝する、そんなわかりきったお話でも良かったのです。
他にこの映画の感想を述べている人の多くは、エル・ファニングを見るためだけに価値がある映画、エル・ファニングのファンのための映画、とコメントしているのを見かけますが、僕はせっかくエル・ファニングを使った理由がないように感じました。
正直、誰でも良かったと思いましたし、だれでもこれといって代わり映えはしなかったのではないかとも思いました。
エル・ファニングが出演しているこれまでの映画で、「カルヴェストン」であったり、「ビガイルド 欲望の目覚め」のほうが、彼女の演技が生かされていたように思いましたが、今回の「ティーンスピリット」では、なぜエル・ファニングが主演でなければならなかったのが、僕には伝わってきませんでした。
映画ティーンスピリットのネタバレ – 何の意表もない、使い古されたストーリー
映画のストーリーもなんにも目新しくない、使い古されたものでした。
田舎に住む音楽好きの女の子がオーディション番組に参加し、昔有名な歌手だった老人から手ほどきを受けて決勝まで進む。
決勝に参加するために来たロンドンで、決勝に参加する前に歌手契約を結ぶかどうかの選択に迫られ、それで老人と仲たがいをする。
しかし契約は思いとどまり、決勝でも見事なパフォーマンスをして優勝する。
更に付け加えれば、決勝進出を掛けた地方大会では準優勝になったものの、優勝者の不正が発覚して繰り上げ優勝する、というおまけ付き。
ネタバレすることがまったくないくらいに王道のストーリーで、逆に清々しいくらいです。
これであれば、いっそのこと本当にエル・ファニングのための映画にするために、全体をもっと明るくキラキラした映像にして、より少女向け映画テイストにしたほうが良かったのではないかと残念でありません。
あと、この映画のストーリーは、現実問題、大きな矛盾を抱えていることに気が付きました。
というのも、決勝前にヴァイオレットと歌手契約を結ぼうとする場面。
彼女は17歳という設定で、未成年です。
だからこそ、「ティーンスピリット」の大会出場にも保護者のサインが必要で、そのためにヴィラドが彼女に付き添ったのです。
そんな未成年との契約、それもその場だけでなく向こう数年という制限がつくような契約内容を彼女のサインだけでできるはずがありません。
たとえ彼女が世間知らずで、契約書にサインしたとしても、出るところへ出れば、たちどころに無効となってしまうでしょう。
ロンドンにはヴィラドが保護者として随行しており、母親は来ていません。
ですので、ヴィラドが賛成しない限り、契約は結ばれることはありません。
いえ、たとえヴィラドがサインしたとしても彼とヴァイオレットとの間に血縁関係はないので、彼のサインでさえ、有効かどうかは疑わしいと思います。
となると、決勝までに返事をしなくてならないというタイムラインをもうけて、どうするのだろうか、という観客の好奇心を煽ろうとしても、それが全く非現実的なストーリー展開であることに、白けてしまうだけだったと思うのです。
残念ながら、何から何までうまくは行かないままの映画であったと感じてしまいました。
まとめ
せっかくエル・ファニングが「本格的な歌唱シーン」に挑戦した映画ではありましたが、あまりに空回りしてしまった、という感想を、僕は持ちました。
エル・ファニングのための映画、というのが世間一般のコメントですが、エル・ファニングファンにとっては、それすら満たしていないのではないか、と思えるでしょう。
いっそのことエル・ファニングのための映画という点にだけ、注力して制作してくれたほうが、どれだけ良かったか、と思ってしまいました。
コメント
全く同じくな感想です。
何もかもが中途半端で誰ひとり感情移入が出来ないストーリーの浅さ。
エルの声はキレイでしたがそれが何か?と言うくらいで決勝のパフォーマンスも歌とあっておらず無理やり感が強くてしらけるばかり。
観ていて苦痛でしかなかったです。
くぼみさん、コメント、ありがとうございます!
そうなんですよね、本当に残念でしかない映画になっています。
実はこのあと、「ジョジョラビット」を見たのですが、あちらが、ともするととても重くて暗く、陰気になるような題材を扱っていながらあれ炊け明るくコミカルに全体を仕上げているのが非常に対照的でした。
僕個人にはせっかくエル・ファニングを主役にしているのに、と思わずにはいられない映画でした。