ネタバレ感想 1 アヨブ・エルカザニがテロリストになった背景の方は?
オランダ、アムステルダムからフランス、パリへの高速列車の中に突如現れたテロリスト。
映画内でもアレックがアヨブの所持品を確認した際に、とんでもない数の弾倉が映し出さ
れていましたが、合計で9つの弾倉、弾丸にして270発を所持していました。
その他にハンドガンとして9ミリのルガーとカッターナイフ、ボトルに入ったガソリンで
武装していました。
映画での描写は実際に起ったことを忠実に再現しており、ストーンがアヨブに気がついて
突進した際、アヨブが構えたAK自動小銃が根詰まりを起こして命拾いをしています。
そうでなかったら最小限の被害でテロリストを取り押さえることができたかどうか。
それはさておき、先にも紹介しましたが、映画では襲撃事件と犯人取り押さえ、その後の
表彰などの時間は最後の30分程度です。
実際にあの出来事を1時間半も時間で引っ張るのはナンセンスですので、時間配分は見て
いて自然に楽しめる、ちょうどよいものだったと感じました。
そして映画の最初に子供時代を映し出したのは、それほど驚きでない、よく使われる手法
ではありますが、主演の3人がどのような子供時代を送っていたか、そしてそれを見せる
ことで、彼らがどこにでもいる普通のアメリカの青年であることを、観客に自然に理解
させることができたと思います。
映画で監督のクリント・イーストウッドが言いたいことは、誰でもテロリストと遭遇する
災難に見舞われることもあるし、それに立ち向かうヒーローにもなれる、ということで
しょうが、それであれば、僕個人としてはアヨブという22歳の青年がテロリストになって
しまった彼の過去も紹介してほしい気がしました。
というのも、特に軍隊に所属したストーンとアレックは愛国心が強く、強くて正しい
アメリカを心の底から信じていると思います。
ではテロリストになったアヨブはどうであったかというと、最終的に実行に移した方法は
秩序に対する犯罪でしかありませんが、その動機の一番根底には自分の国や民族に対する
思いであったと思うのです。
方法は間違っています。しかし、虐げられているイスラムを、その相手である西側諸国に
対して自分ができる何らかの方法で、一矢報いたいという気持ちは、詳しく知れば知る
ほど理解できる面が出てくると思うのです。
また、今回ヒーローになった3人ですが、子供の頃からの銃や戦争に対する興味、純粋な
愛国心、正義感などを考えてみると、もし生まれた場所や環境が逆であったとしたら
彼らがテロリストになっていた可能性もあったのではないか。そう思えてなりません。
さらに突っ込んでいけば、凶悪なテロリストをもくろんでいた犯行を未然に防いで捕まえ、
死刑や長期間に及ぶ収容でハッピーエンドとしていいのかと。
それよりはそんな、もう後戻りできないところまで行くまでに救い出せるようにしたほうが
長い目で見て、全世界的にもよっぽどいいのではないかと思えたのでした。
そういう意味では三人がヒーローになった軌跡よりも、アヨブがテロリストになった
経緯を知ることのほうがよっぽど重要なのではないでしょうか。
ネタバレ感想 2 主演3人だけでなく、他の乗客も事件当時の本人を起用
この映画「15時17分、パリ行」の面白いところは主演3人に本人を起用しているところだと
思います。
初めてそれを知ったとき、果たして素人が映画に出演して不自然な演技になっていないか
と心配をしました。
しかし実際に見てみると、違和感なく最初から最後までみることができたのに小さな驚きが
ありました。
そして、興味を持ったので調べてみましたが、ストーンとアレック、アンソニーの3人
以外にも、実際に事件に遭遇した人物が、本人役として映画に出演していることを知って
さらに驚いてしまいました。
3人と一緒にテロリストを取り押さえたフランスに住むイギリス人ビジネスマン、クリス・
ノーマンも本人出演ですし、テロリストと揉み合いになり、自動小銃を奪ったものの、
背後から銃撃されて重症を負ったマーク・ムーゲリアンとその奥さんのイザベル・ムー
ゲリアンも本人が出演しています。
事件の後、フランソワ・オランド フランス大統領からの勲章授与式の場面では、当時
公開された映像をそのまま使っていて、ストーンとアレックの母親役であるジュディ・
グリアとジェナ・フィッシャーが映るアングルの部分だけ後から撮影して編集している
のですが、そこでクリス・ノーマンがはっきりと写りこむので、代役を立てるわけには
いかなかったのでしょう。
実際、母親二人が映る場面では大統領は後ろ姿しか映っておらず、微妙に体型や髪型が
異なっています。
しかし、3人と同じように並んでいるノーマンは、そのような小細工で顔を映さないと
いう手法は仕えませんので、それも本人出演の理由になったのではないでしょうか。
ネタバレ感想 3 負傷者のマーク・ムーゲリアンのその後とテロリストのその後
映画内ではその後の3人の説明が多少、紹介されていました。
が、負傷したマークのその後は、何の説明もありませんでしたし、テロリストである
アヨブに至っては、映画内では名前すら紹介されませんでした。
映画を見ている最中には、マークが本人役で出演していたことは知りませんでしたので、
その後、助かったのかどうか、気になっていました。
映画では背中に銃弾を受けたような気がしましたが、実際の傷は首で映画の描写のとおり、
出血がひどかったそうです。
空軍での負傷者の救助訓練を受けていたストーンが、マークの応急処置を行いましたが、
首の辺りを指で押さえていたのが印象的でした。
僕はてっきり頸動脈で脈を見ていたのか、と思ったのですが、実際は傷口に指を二本
差し込み、動脈を圧迫させて止血を行っていたのでした。
この的確な処置のお陰で出血は止まったそうです。
その後、列車外に運び出され、ヘリコプターによってリール市の大学病院に輸送、
手術を受けたのでした。
そして現在では映画に出演できるまで回復し、無事に普通の生活を送っているようです。
一方で捕まったアブヨ・エルカザニですが、弁護士にベルギーでIDをなくし、ホームレス
となって無一文でお腹をすかせていたとき、自動小銃とハンドガンの入ったスーツ
ケースを見つけ、それを使って列車で強盗をして食事にありつきたかっただけで、大量
無差別殺人をしようとしていたわけではない、と答えていたそうです。
しかし、尋問を重ねると説明に反故が生じ始め、やがて一切喋らなくなったと伝えられて
います。
その後、裁判が始まりましたが、アヨブについての最後の情報は2016年の8月に未だ
裁判中で、収監されている、というニュースが最後となっています。
今回映画が公開されるに当たって、アヨブの弁護士が、公判が終わっていないのに
ストーン、アレック、アンソニー側の視点という一方的な見方で作られた映画が公開され
たことに、公式にクレームを発表しています。
しかし、同時に公開差し止めなどの申し出などは行っていませんが、たしかに弁護士と
いう立場であれば、裁判が終わっていないのに、映画が公開されるのはたまったものでは
ありませんよね。
その際、弁護士の発表でアヨブが公園で武器を拾い、強盗のために列車を襲ったと
いう証言を今も変えていないことがわかっています。
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