ディズニーアニメで今も人気の高い「美女と野獣」
その主要キャラクターで、ハンサムであることから人気の高いディズニーヴィランズのガストン。
それまでのディズニーヴィランズとは一味違った新しいキャラクターで、性格が悪く、クズでどうしようもなく描かれています。
今回はガストンが性格が悪く、クズな最悪のディズニーヴィランズになった理由を裏設定の紹介を交えて解説していきたいと思います。
「美女と野獣」のガストンが性格が悪いかを解説
実はガストンは「美女と野獣」の最初の設定ではディズニーヴィランズという役割ではありませんでした。
最初の案ではディズニーヴィランズとしてベルの叔母のマルグリットが用意され、そのマルグリットがベルと結婚させようとする、弱々しくて不愉快にさせるおしゃれな貴族というキャラクターがガストンだったのです。
ところが、この案は当時ディズニーの会長であったジェフリー・カツェンバーグによって没にされ、叔母のマルグリットも原作に登場する兄弟姉妹も、ストーリーから省くように指示が出てしまいます。
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この指示によってガストンがディズニーヴィランズに昇格することとなったのですが、同時にこれまでにない、ディズニーヴィランズとしてのキャラクターにするように、との指示が出たのでした。
そこでガストンを作り直すことになるのですが、映画の冒頭は見ていて痛い、おかしみのあるキャラクターにすることに決まったのでした。
これが、ガストンの性格が悪く描かれる最大の理由です。
ガストンの特徴と性格は、というと、
-
・イケメン
・完全な脳筋
・ナルシスト
・自信家でうぬぼれ屋
・外見重視
・自分本位で思いやり無し
・他人を見下す
といったところでしょう。
確かに村という小さな社会の中では、「イケメンで力が強い自信家」というキャラクターはちやほやされるでしょう。
何となれば、村社会にとって利用価値が高いからです。
そして村人たちはガストンの利用価値が高いからこそ、彼の欠点であるナルシストであったり、自分本位で他人を見下すという部分には、目をつぶって、よいしょしているのです。
さらに言えば、そのことを良しとせず、ガストンを認めようとせず、できれば関わり合いを持ちたくないとふるまうベルが、彼女が外見に惑わされず、内面をきちんと判断し、しかも自分の意見や意思をたった一人でも貫くという強くて新しいディズニープリンセスにしているのだと思います。
性格が悪いだけでなくクズで最悪のヴィランズになったかを解説
そんなガストンはベルに求婚を断られても全くあきらめません。
その姿は狙った獲物は必ず仕留める狩人の執念といえるでしょう。
が、狩りは獲物を殺しておしまいです。
一方で結婚は、結婚をした後にも生活が待っています。しかも夫婦としての、全く新しい生活が。
ガストンはそのことには全く気が付いていないようで、しかも彼の粗暴さや腕力の強さからDV加害者候補のにおいがプンプンしていると感じました。
このあたりからガストンがただ性格が悪いだけでなく、クズ男でもある雰囲気を漂わせ始めます。
そしてベルの父親モーリスを精神病院に閉じ込めようと画策し、それをネタにベルを脅して結婚をしようというとんでもない計画を思い付き、実行します。
こうなってくると、ベルを愛しているから結婚したいという気持ちはこれっぽっちもなく、村一番の美貌の娘というトロフィーとしてしか、ベルを見ていません。
かなり終わっています。
そして極めつけはベルが野獣に恋心を抱いていることに気が付き、ガストンに対しては毛嫌いしかしていないことが分かった時、でした。
狙っていた獲物が自分のものにならないとわかるや、その獲物を横取りした野獣に対し、殺意を燃え上がらせます。
村人たちをそそのかし、ありもしない危険をでっちあげて野獣を殺しに向かうわけですが、その時のガストンはさも正しいことを主張しているかのように声高に野獣の危険性を叫び、人々を扇動します。
ところがその動機は彼の嫉妬心を晴らしたい、という身勝手な自分の欲望を果たすためだけのものでした。
自分自身が満足したいがために、村人をそそのかしたわけですが、その結果、村人の中で傷つくものの命を落とすものもあらわれる危険性があるにもかかわらず、そんなことはお構いなしです。
この時点でガストンはただの性格の悪い、痛いキャラではなく、最悪のクズで、これまでには存在しなかった新しいディズニーヴィランズのキャラクターを構築したのでした。
ガストンの裏設定の紹介
そんなガストンは、先にも簡単に説明しましたが、ディズニー版「美女と野獣」を制作するにあたって作り上げられたオリジナルキャラクターです。
ですので、一から作り上げていかないといけなかったわけですが、全くモデルがいなかったわけではありませんでした。
それは1946年にフランスで制作された実写版「美女と野獣」に登場したオリジナルキャラクターの「アベナント」です。
この「アベナント」というキャラクターがどういった役割であったのかなどの詳細は調べることができませんでしたが、全く新しいキャラクターを作り上げるうえで、土台が出来上がったのです。
そしてもともとの「イライラさせる弱々しいおしゃれな貴族」という設定から、他人のことを考えず、自信家でナルシストという性格が引き継がれることになりました。
一方で全く新しいディズニーヴィランズを作り上げるという基本方針が決まっていたため、
- 「映画の最初は痛いけどコミカルで、それほど悪役ぽくない」
というキャラクターとして描かれたのでした。
と同時に脚本家兼クリエイターのリンダ・ワールバートンはガストンに「危険な求婚者」という一面を与えたいと考えていました。
この考えは、実はリンダが過去に付き合ったことのある恋人との経験からのアイデアだったそうです。
今でいうところのストーカー的な恋人ですね。
危険なストーカー的求婚者を登場させることで、それに真正面から立ち向かい、挑んでいく全く新しいディズニープリンセス像をベルに与えることに成功しました。
また、そのベルを苦しめる、こちらもこれまでになかったディズニーヴィランズのガストンを四苦八苦しながら、作り上げることにつながったのです。
最後のガストンと野獣の決闘シーンでいくつかの没になった案がありました。
まず、一つ目は野獣を追い詰めたガストンが叫ぶセリフです。
公開された映画では「ベルは俺のものだ!」と叫んでいますが、もともとの案は、よりガストンの本質を現したセリフ「さぁ、死ぬ時が来た!」だったそうです。
こちらのセリフのほうが、ベルのことを人としてではなく、トロフィーとしか見ておらず、その獲得を邪魔するものはすべて排除する、という強い意志を感じることができます。
が、子供向けのディズニー映画ということもあり、この案は没になりました。
続いてガストンの最後についてです。
ガストンは城から落ちて命を落とすのですが、もともとの案では城からの落下では足を骨折するだけだったそうです。
しかし、足を骨折して身動きが取れなくなったため、森の狼たちに襲われて命を落とす、という最期を迎えるのでした。
こちらも生きながら食い殺されるというシーンが、やはり子供向けにはふさわしくないということで没になっています。
ちなみに、このガストンの最後のアイデアは、その後の「ライオンキング」でのスカーの最後として、使われたのでした。
またその他にも、ガストンがベルに求婚していたものの、その願いはかなわず、ベルに完全にフラれたことを苦に自殺する、という案もあったそうです。
もちろんこの案も没になりましたが、もしこのアイデアが採用されていたとしたら、ガストンというキャラクターの印象はとんでもなく違うものになっていたでしょうね。
それまで挫折を知らなかったガストンが初めて味わった挫折に耐え切れず…、という流れはわからなくもありませんが、子供にはちょっと合わないかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このようにガストンというキャラクターが出来上がるまでの裏設定を知っておくと、最終的にガストンが性格が悪くてクズなディズニーヴィランズとなったのかが、わかりやすかったと思います。
「美女と野獣」はそれまでのディズニー作品とは、大きく変わる作風に仕上げることを目標に作り上げられた作品でした。
ですので、ベルも性格が悪いのでは、といわれるほどの新しいディズニープリンセス像を作り出しています。
関連記事:美女と野獣のベルが性格が悪いといわれる理由についての考察と私見
同じように、ガストンもこれまでのディズニーヴィランズとは違ったキャラクターにすることで、ベルの新しいディズニープリンセス像の構築の手助けとなる効果を狙ったため、このようなキャラクターになったのでした。
ファンの中には、
-
ガストンは性格が悪いだけで、ディズニーヴィランズではないのでは。
と思っている人もいるようですので、制作陣の目論見は見事に決まったといっていいでしょう。
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