「ハウルの動く城」は美形で子供っぽい魔法使いと自分自身に自信が持てない少女のロマンスを描いた恋物語。
ハウルのことを世話していくうちに自分自身に自信を深め、積極的に自ら行動をすることができるようになったソフィーの成長の物語でもあります。
そんな「ハウルの動く城」ではハウルとソフィーが結ばれた後、戦争も終わり、めでたしめでたしとなってからの最後の30秒に不思議なシーンが流れます。
一見すると不思議でも何でもないように見えますが、よくよく見てみるといくつかのおかしな点に気が付くのでした。
今回は、そのラストシーンに隠された謎について考察していきたいと思います。
ハウルの動く城・リンゴの旗のラストシーンについて
「ハウルの動く城」のラストシーン。
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空飛ぶ動く城の裏庭にマルクルと犬のヒン、荒地の魔女がくつろいでいました。
バルコニーにハウルとソフィーが立っており、口づけをします。
そのまま城は空のかなたに飛んで行ってしまいます。
このようになっており、一見すると結ばれたソフィーとハウルがマルクル、ヒン、荒地の魔女と一緒に平和に仲良く暮らしている、というように見えるのでした。
しかしこのラストシーンをよくよく見てみると、いくつかのおかしなことに気が付きます。
それを一つずつ、見ていくことにしましょう。
リンゴの旗の意味は何?
城に裏庭を映すシーン。
裏庭に面した暖炉にカルシファーがいて、その前に荒地の魔女がくつろぎ、庭ではマルクルとヒンがじゃれあって遊んでいます。
その場面、画面の左側に目をやると、なぜだか木にリンゴが五つ描かれた旗がたなびいているのを見つけることができるでしょう。
いったい、この旗の意味は何なのでしょうか?
5つリンゴは5人の魔法使いという意味
5つのリンゴですが、この城には5人の魔法使いがいる、ということを表しているのではないでしょうか?
その5人とは、
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・ハウル
・ソフィー
・荒地の魔女
・マルクル
・カルシファー
です。
しかしこの5人ではいささかおかしい気がします。
・荒地の魔女はもう魔法が使えないはず…。
・マルクルは魔法使いとしてはまだ半人前では…。
など。
なぜリンゴなのか?
さらに言えば、なぜリンゴなのか?という疑問も浮かんできます。
それに答えるためのより深読みするとこのような説も導き出されるのではないでしょうか?
それは案山子のカブからソフィーのキスで元に戻った隣国の王子がこの城に滞在している、というものです。
人間の戻った隣国の王子は棒切れにまたがって空を飛びながら自分の国に帰っていきました。
この描写から彼が魔法使いでないはずがありません。
王子は戦争を終わらせたのち、宣言通りソフィーのもとに帰ってきたというわけです。
そんな荒唐無稽な、と言われるかもしれませんが、隣国の王子が戻ってきたという説を裏付けるものがもう一つあります。
それはリンゴ。
ダジャレではありますが、「隣国」と「リンゴ」をかけたことによる、メッセージだと読み取れる。
考えすぎかもしれませんが、宮崎駿監督のちょっとしたおふざけメッセージである可能性は高いと思います。
ハウルの動く城・ラストシーンの隠された謎
さらにラストシーンに隠された謎はいくつもあります。
2つめの謎は、空飛ぶハウルの城の前に映る飛行戦艦団についてです。
編隊を組んで飛ぶ飛行戦艦
空飛ぶハウルの城が映し出される前、編隊を組んで画面を左から右に向かって飛ぶ飛行戦艦が映し出されます。
その前のシーンで、サリマンが「このバカげた戦争を終わらせましょう」と発言していますので、一見、戦争が終結したことで自国に帰る戦艦なのでは、と思えます。
が、よくよく見るとそれでは説得力の足りない、なんとも気になってしまうシーンではないでしょうか?
下手から上手に移動=目的地に向かっている
編隊を組んで飛ぶ飛行戦艦。
戦争を終えると宣言したサリマンの言葉の後のシーンであることから、戦争が終わったことで帰還しているのでは、と思えます。
が、映像や演劇の世界では客席から見て右側が上手、左側が下手となり、下手から上手への移動は、本来いるべき場所より目的地に向かって移動している、という行動の表現になります。
ゲームをしない人にはわかりづらい例にはなりますが、横スクロールのゲームはほぼ常に右から左に移動します。
古いゲームですが、「ファイナルファイト」、「グラディウス」などアクションでもシューティングでも、ジャンルを問わず主人公は右から左への移動し、目的地に向かって進んでいるのです。
ですので、このシーンで編隊を組んで右から左に向かって飛ぶ飛行戦艦は、目的地、つまり攻撃目標に向かって飛んでいる、ということになるのでした。
そしてそれはいったいどういったことを表すか、というと、このラストシーンは数年もしくは十数年後のことである、ということです。
ハウルとソフィーが結ばれた後、戦争が終わっていたのに、また軍備を整え、隣国に戦争を仕掛けにむかっている。
そしてそんな国に愛想をつかした二人は城を空に飛ばして自分たちにふさわしい場所を目指して旅立ってしまった、というわけなのでした。
さらなるラストシーン謎の意味を考察
そのほかにもさらに2つ、ラストシーンで謎を含んだ描写が発見できるのでした。
それを順番に紹介していきましょう。
動く城の形
一度完全に壊れたハウルの城でしたが、ハウルの復活で城も復活したようです。
以前に比べてすっきりした感じになっており、空まで飛ぶようになっています。
いったい何がどうして、このような変化を生み出す結果になったのでしょうか?
城を作り直した分けですが、ハウルひとりの時は、ろくに掃除をせずに、部屋が汚くなってゴミばかりになると、新しい部屋を魔法で城に加えるという対処法でやってきていました。
それがソフィーがやってきたことでガラクタのように新しい部屋を、見た目の印象も気にせずに、無計画に城にくっつけていたのでしょう。
それがソフィーが来たことで部屋の片づけができるようになり、より整理整頓した状態で必要な部屋を加えていくようになったのです。
それによって、すっきりとスマートな形の城になったのでした。
ソフィーの帽子・黒は魔女の色
映画の全編を通じてよく帽子をかぶっていたソフィー。
ラストではハウルという恋人ができて幸せいっぱい。
身にまとっている洋服も若い女性が着ることで映える、明るい色を選んでいます。
しかし帽子に注意を向けるとなんとなく違和感を感じてしまいませんか?
なぜ黒いリボンなんでしょう?
もっと明るい色であったり飾りを使ってもいいはずなのに…。
宮崎駿監督の作品で魔女と黒い色の服について言及しているものがあります。
それは「魔女の宅急便」
魔法使いとして修行の旅に出たキキは真っ黒な服で旅立たなくてはならないことに不満を述べますが、母親から
「黒は魔女の色」
と言われてしまうのでした。
つまり黒は魔女の色なのです。
その魔女の色のりぼんが付いた帽子をソフィーがかぶっているということは、ソフィーが魔法に目覚め、魔女になったということに他なりません。
そして、ソフィーが魔女に目覚めたということは、「ハウルの動く城」の後半でソフィーが多くの登場人物にキスをしまくっていることにも、別の意味を持たせる可能性が出てきました。
つまり、ソフィーはキスすることでキスした相手を虜にしてしまうという魔法を使っていた、ということです。
ハウルはもちろんのこと、カルシファーも荒地の魔女も、ソフィーにキスをされています。
「リンゴの旗」が示すように、キスによってカブから王子に戻った彼も、今ではハウルの城の中で暮らしている可能性があるのでした。
さらに深読みすると、もしかしてハウルの城が空を飛べるパワーを持てるようになったのも、ソフィーが城に住むようになったから、かもしれません。
ソフィーは原作でも魔法を使用できるという設定になっていましたし、あながち、あり得ない話ではないと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ラストシーンは、よく物語にある、「めでたし、めでたし」という単純なもののように見えていました。
が、よくよく気を付けてみてみると、いろんな謎があり、その謎の答えは、実際はとても驚くべきものになっているということが分かってきます。
隣国の王子がすでに城で一緒に暮らしていることを示すリンゴの旗。
ラストシーンはすぐ戦争を終えてすぐあとのことを描いているのかと思わせておいて、実は戦争で疲弊した国力を回復させて、再度戦争を始めることができるほどの年月が経っていた。
城の形が変わって空を飛んでいるのはソフィーという存在の影響であり、ソフィーは実は魔女として能力を開花させ、ハウルとともに城を作り上げている。
ソフィーが魔女であることを指し示す黒いリボンのついた帽子。
これほどの驚くべき真実が実はラストシーンには隠されていたのです。
さすがは宮崎駿監督作品。
奥が深いですね。
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