映画「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド」での最後の決戦シーン。
フライング・ダッチマン号との死闘を終えたブラックパール号はベケット卿の乗船するエンデバー号との決戦を行いました。
満身創痍のブラックパール号に対し、無傷のエンデバー号。
さらに復活したフライング・ダッチマン号を現れたことで、戦局は圧倒的にブラックパール号に不利な状況でした。
しかし復活したフライング・ダッチマン号はウィルが船長となっており、エンデバー号は1隻で2隻と対戦しなくてはいけなくなります。
そして2隻によって文字通り、木っ端みじんにされましたが、この際、エンデバー号は可能でありながら、2隻に対して全く反撃を行いませんでした。
しかも部下に催促されているにもかかわらず、ベケット卿は反撃命令を下さず、退去命令も発していません。
非常に疑問の残るシーンと言えるでしょう。
今回はこの最後の決戦でなぜベケット卿が反撃せず、逃げもせずに死亡したのか、の理由を考察してみたいと思います。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン3」最後の決戦
最初にお断りしておきます。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン3」にあたる「ワールドエンド」ですが、評価として非常にストーリーの穴、矛盾が指摘されている作品です。
どれだけ考えても答えがわからない、納得できないことが多々あり、この最後の決戦シーンでのベケット卿の行動も、そのうちの一つとなっています。
ですので、それでも何とか理由付けしていきたいとは思いますが、苦し紛れの理由付けですら、突っ込みどころがありますので、その点をご了承ください。
ベケット卿はなぜ打たなかったのか?
ベケット卿が最後の決戦シーンでなぜ打たなかったのか?
一番もっともらしい理由として考えられるのが、
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反撃する事は可能であったものの、それを行えば東インド貿易会社と海賊との戦いは泥沼化し終わらぬ戦いとなってしまう為、会社の利益を最優先と考える彼は部下から指示を求められても「It’s just…good business(損のない商取引を/全ては利益のため)」としか呟かなかった。
(参考資料:ウィキペディアより)
です。
また、命令を下せずにいたベケット卿の演技を見ていると、突然不利になった現状を飲み込めず、パニックになって動けなくなっていた、と読み取ることができます。
実際、人間、突然に想像もしない状況に置かれるとパニックになって考えることもできなくなり、全く行動がとれなくなることは、よくあることですね。
しかしこれらのもっともらしい理由を上げたとしても心の底から納得がいかないのは明白だと思います。
海賊との泥沼の戦いを避ける
「海賊との泥沼の戦いを避ける」と理由ですが、余りに説得力がありません。
ベケット卿は海賊を一網打尽にするために回族長たちによる評議会を開催させ、全員を一か所に集めることに成功させました。
そして、海賊を根絶やしにするため、フライング・ダッチマン号を自身の命令下に置き、東インド貿易会社の全船を終結させています。
それなのに、フライング・ダッチマン号が自分の命令下から失っただけで、この決戦で海賊たちをせん滅させることができず、今後泥沼の戦いになる、と判断する理由はどこにあるのでしょうか?
フライング・ダッチマン号を手に入れる前でも東インド貿易会社だけでなく、イギリス海軍総出で海賊退治は行っていました。
海賊との泥沼の戦いをしていなかったとしても、海賊は商船を襲います。
それは東インド貿易会社所属の船であろうとなかろうと関係ありません。
この決戦でエンデバー号が無抵抗で沈没したことで、海賊全員がそのことを評価し、代償として今後、東インド貿易会社所属の商船に手出ししない、ということにはならないのです。
ベケット卿がやろうとしていたことに対して、そのことを終わらせる執念というか、決意がなさすぎると感じてしまうのでした。
パニックになってしまった
人間がパニックになる理由の大きな一つに、予期していない出来事が起きる、というものがあります。
まったく想像したことないことが突然起こると、何をしていいか、わからなくなる、というものです。
逆に言うと、こういう不測の事態が起こるかもしれない、ということを事前に認識し、それの対応策を考えておけば、パニックにはなりません。
いわゆる危機管理というもので、組織のトップが常に備えていなくてはならない必須の能力です。
それを備えていることで、どんな突発的なことが起きても慌てることなく、落ち着いて対処を下すことができ、その沈着な態度を見て、部下が安心するとともに、信頼してくれる、という流れになるからですね。
であれば、あの状況でパニックになったベケット卿はブラックパール号が生き残った場合のことを考えていなかった、ということになります。
ブラックパール号が生き残った場合のことは考えていたが、フライング・ダッチマン号が復活して向かってくることまで想定していなかった、とも言えなくはありませんが、その時点で「回頭!全速力で戦場離脱!」の一言が言えないほどの驚きなのでしょうか?
エンデバー号には約100門もの大砲が供えられていました。
ブラックパール号の装備は大砲32門、エンデバー号に対してすれ違いざまに使えるのは片側半分の16門ということになります。
エンデバー号とブラックパール号のすれ違いざまの砲撃戦は50門対16門と3倍以上の戦力差があるわけですね。
フライング・ダッチマン号の装備も38門ですので、ブラックパール号よりちょっと多い程度。
やはり片側だけの使用となるため、使える大砲は半分の19門で、エンデバー号との戦力差は2倍以上となります。
この時代の海戦は如何に敵より多くの大砲を持っているか、で勝負が決まる単純なものです。
大砲の性能が一緒なら、砲数が多いほうが、ほぼ必ず勝つといって過言ではありません。
ブラックパール号とフライング・ダッチマン号は大砲数の不利を船の航海スピードの速さで補っていますが、最後の決戦の状況では各船の船速性能は、まったく関係無くなってしまっています。
関連記事:映画パイレーツオブカリビアンのブラックパール号の名前の由来は?武装性能の紹介も
以上のことを考えても、エンデバー号が2隻を相手にした場合でも勝敗の行方はまだわからないという状況でした。
しかもブラックパール号もフライング・ダッチマン号も自身の最大戦力である速さが生かされない戦闘方法でエンデバー号に向かってきています。
さらにエンデバー号の後ろには東インド貿易会社の大艦隊が控えている。
パニックになるどころか、二隻とも沈められると、ほくそ笑むシーンのはずなのです。
ベケット卿はなぜ逃げなかったのか?
ブラックパール号とフライング・ダッチマン号に挟まれ、至近距離から集中砲火を浴びるエンデバー号。
全く反応できないベケット卿に対し、副官は独自で船員に退避命令を下します。
ちなみに普通は各船に船長が登場しており、その船長のみが船に関する命令権を持っているはずで、エンデバー号の船長でない可能性が高いベケット卿がエンデバー号の攻撃や退避などの指揮を行うことはないと思うのですが…。
ベケット卿が船長である可能性もなくはないですが、それですと全艦隊の指揮とエンデバー号の指揮を同時に取らなくてはならない局面が出てくることがあるため、とても非常識だと考えられるのです。
船員が船を捨てて退避をしている最中、ベケット卿がなぜ逃げなかったのか?という質問に対し、よく言われるのが、
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「船長として責任を取って、船と運命を共にする」
というもの。
しかし、ベケット卿が船長でない可能性もあり、この説はいまいち説得力がありません。
しかもベケット卿は終始、現状を受け入れられないという困惑した表情を浮かべたままで、とても船とともに玉砕を覚悟した雰囲気は感じられませんでした。
ですので、どちらかといえば、これは夢だ、と信じ込み、いつかは目覚めてベッドの中にいる自分に気が付く、という瞬間を待ち続けていたように思います。
逃げてしまえば、今起こっていることを事実だと認めてしまう。
それが怖かったから。
というのが、正しいのではないでしょうか。
ベケット卿は死亡したのか?
ベケット卿の背後で大爆発が起き、そのあと、海面に浮かぶ東インド貿易会社の旗の上にイギリス海兵の体が落ちてきて沈み始める。
そんなシーンが映し出されました。
一連の流れからベケット卿の体が吹き飛ばされて海面に叩きつけられてのでは、と考える人もいるようです。
あの海兵がベケット卿であったかどうかは定かではありません。
しかし大爆発が身近で起こっている描写がありましたので、あの衝撃でバラバラになったか、炎に包まれてしまったと考えるのが自然ではないでしょうか?
はっきりとしたベケット卿の死体が映し出されていない以上、実は死んでいなかった、ということで続編に再登場させることは可能でしょう。
ただ、そのような展開にさせるメリットがあるのか、と言われると、個人的にはないのでは、と考えます。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの世界は魔法の力で死者がよみがえりますから、ベケット卿の復活も不思議なことではないでしょう。
しかし話の流れから、復活したところで喜ぶファンがいるのか、と言えば、そのようなファンは少ないように感じられます。
まとめ
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド」の最後の決戦でベケット卿が反撃しなかった理由と沈みゆくエンデバー号から脱出しなかった理由について考察してみました。
逃げ出さなかった理由は、総合的に考えると「現実逃避をし続けた結果」という理由が一番だと思います。
「責任を取って船とともに…」というには、彼の表情は、そのような決意とはあまりにかけ離れたと感じたからです。
反撃しなかった理由ですが、好意的に解釈すると「パニックになって思考停止になっていたから。」
しかし、あの場面でパニックになることの整合性は感じられません。
正直に告白すれば、反撃しなかった理由に納得のいく理由を見つけられず、ただただご都合主義で大砲を打つ命令をしなかった、としか、思えませんでした。
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