ネタバレ感想 1 ダーク・ユニバースプロジェクトとしてのオープニング映画 ちょっと弱いかな
ユニバーサル・ピクチャーズが今後展開させていくシリーズ物として自社の有名コンテンツ
でもあり、人気の高いキャラクターがたくさん存在するモンスターを選んだことには、
なかなか目のつけどころはいいのではないかと思います。
子供の頃、「吸血鬼ドラキュラ」と「フランケンシュタイン」、さらに「狼男」といえば、
モンスターの御三家みたいな位置づけで、これらのキャラクターが対決する、なんていう
タイトルの付いた映画だったりをみると、とてもワクワクして興奮したものでした。
そういや、藤子不二雄先生の作品「怪物くん」もこの3キャラが登場していて、やっぱり
僕の中でもモンスターとしての印象は大きいです。
今後、どういう展開をしていくつもりなのかはわかりませんが、最初に「ミイラ」を選んだ
のは、吸血鬼と狼男を持ってくるとどうしても「トワイライト・サーガ」と比べられてしまう
からなのかな、と邪推してしまいました。
それが理由かどうかはわかりませんが、第2作目はフランケンシュタインの話になることが
既に決まっています。
映画を見終わって、今後の展開に少し力を入れすぎたような印象を受けました。
伏線が多く、主人公のニックはセトの能力を宿したかのような存在に変わってしまい、
プロディジウムの研究所には吸血鬼らしい頭蓋骨や半魚人の腕のようなものが保管されて
いたりと、これからなんでも話は作れますよ、というサービス満載でしたが、そちらに
ばかり目がいってしまうというのが、正直な感想でした。
ダーク・ユニバースと銘打って大々的にモンスター映画を作り出していこうとしている
わけですが、ちょっと興味が出たので、過去のユニバーサル・ピクチャーズのモンスター
映画を調べてみました。
そうすると「吸血鬼ドラキュラ」、「フランケンシュタイン」、「狼男」の有名どこの
3キャラ以外に登場するモンスターとして「半魚人」、「透明人間」、「ミイラ男」がいる
くらいで、モンスターとよんでいいのかどうかわからない、「ジギル博士とハイド氏」とか、
せむし男の「カジモド」、オペラ座の怪人の「怪人」、はては蜘蛛の「タランチュラ」や
「モグラ人間」なんてものも存在していました。
こうやって並べてみると、アメコミ・ヒーローの映画などに比べ、キャラが圧倒的に少ない
ような気がします。これでシリーズ化をすることは可能なんでしょうか?
ただ、過去にいなかったからと言って新キャラが今後登場しないわけではなく、今回も
古代エジプトの死の神セトという新しいモンスターを登場させています。
ですから、ある意味無尽蔵にキャラは作ることはできるでしょう。
そうなってくると今度は歴史的な背景や宗教的背景がごっちゃになることで、スムーズに
受け入れられないというデメリットがあるのでは、と思ってしまいます。
とまぁ、考え始めれば止まらなくなるわけですが、どちらかと言うと、期待よりも
心配のほうが先に出てしまうというのが、今回の映画を見終わっての僕の今の心境です。
ネタバレ感想 2 なぜ水銀?アマネットを封印するために選ばれた理由は?
水銀につけられていたアマネットが水銀プールから出された瞬間、毒蜘蛛を操ったり、
ニックに呪いをかけたり、とやりたい放題。
プロディジウムに捕獲されたアマネットの体内に水銀を流し込むことで魔力を弱めて
いましたが、凄く気になるのは水銀にそんな力があるのかどうか。
映画の中のお話なので、別に何ら根拠がなくても、そういう設定ということにしてしまえば
いいのですが、もしかすると何らかのバックストーリーがあるのでは、と調べてみました。
古代エジプトでも水銀は既に使用されているという記述が見つかっています。
ただし、それは魔術に対抗して使用するようなものではなく、化粧品として使われていた
ようでした。
アマネットの描写でもある目の周りの化粧ですが、これに水銀が用いられたようです。
他にもファラオのマスクの作成に利用されたようですが、邪悪な魔力を持つ存在を水銀に
よって遮断するというようなことは、見つかりませんでした。
では、なぜミイラを題材にした映画で水銀がキーアイテムとして使用されたのか、ですが、
おそらく死体をミイラ化させるために水銀を使用していたから、という事実体と思われます。
つまり「ミイラ」イコール「水銀」ということなのでしょう。
イタリアで見つかったとても保存状態のよい200年前のものと思われる5体のミイラを調べた
結果、ヒ素と水銀が体内に注入されていた事がわかっています。
おそらくこのことが、ミイラであるアマネットと水銀との関係として映画内で使用された
のではないでしょうか。
ついでにいうと、遺跡の中で水銀の雫が集まって棺の収められているプールに自動的に
集められるように設計されているとこになっていましたが、自然界にある水銀は、
液体で存在していません。
硫黄と結合した硫化水銀という鉱物として存在していて、ここから水銀を取り出すには
硫黄と水銀の沸点の違いを利用することになります。
つまり高温で熱していき、気化した硫黄と水銀を集めて水銀が液体になる温度まで下げて
やります。
356.7℃というその温度では硫黄は気化したままですので、純粋な液体の水銀が採取できる
という原理ですが、映画ではそんな高温を発生させるような装置はなさそうでしたし、
第一、紀元前1000年位上前からの3000年もの間、水銀を供給し続けるだけの硫化水銀が
あったようには思えません。
つまり何千年もの間水銀を供給し続けるあのような遺跡の建設は、ほぼ不可能だと
思われます。
ネタバレ感想 3 よくよく考えればわざわざ古代エジプトにまで遡らなくてもいい話
よくよく考えればアマネットが邪神セトに魂を売り渡してまでして王位継承権を簒奪しよう
とした話なんて、それこそ古今東西どこにでもある話なんですよね。
お金持ちのお家騒動なんて今の時代でもあるくらいで、唯一違うのは邪神の力を頼ろうとは
しないことなんですけど。
あと、調べてみるとファラオの王位継承のルールは僕が想像していたものと全然違っていて、
継承権は第一王女にあることがわかりました。
しかし王女がファラオになることはなく、実際には結婚した旦那がファラオになるそうです。
ただし、実際には第一王子に継がせることがほとんどで、そのための方法として継がせたい
第一王子に第一王女を結婚させることで、解消していたようです。
息子と娘が結婚するなんて、現代ではとんでもない考えですが、それによって近親相姦に
よる子孫が誕生するようなことは実際になく、結婚は名目上で、おたがい側室をおいていた
ようです。(もちろん近親相姦によってできた子供もいたようですが)
ですので、映画で王に息子ができたからと言っていきなりパニクって王を殺害する必要は
なかったはずなんです。
父王が引退したくなった時点で、弟と結婚したはずですし、弟が幼いうちは実質の権力を
握ることもアマネットには可能だったはずです。
いきなり映画のプロットが破綻する事実が判明したわけですが、もしそうでなかったと
しても王の愛人が身ごもった時点でリスクは考えるべきで、堕胎用のお薬をこっそり、
飲ませるとかしたらもっと穏便にすんでいたのに、と考える僕は悪い子ちゃんでしょうか?
とにかくミイラといえばエジプト、エジプトといえばファラオ、そんな感じで都合よく
作り上げられた話だろうな、と思えてしまいました。
これなら1999年の「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」のストーリーのほうが良かったと
思ってしまいます。
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