映画「テッド・バンディ」は1970年代に米国で連続殺人事件を起こしたシリアルキラー、テッド・バンディが、警察に捕まってから裁判で死刑判決が出るまでを描いた作品です。
この手の題材を扱った作品ですと、犯人にフォーカスがあたったり、犯行に重点が置かれたりしそうなものですが、この映画「テッド・バンディ」という作品は、テッド・バンディに関わったために翻弄されることになった二人の女性がストーリーのメインテーマになっていたように感じました。
そして、この作品を見たことで初めて知ったのですが、彼の唯一の娘が今現在在命していることにはとても衝撃を受けました。
いま、彼女は何をしているのか、調べてみましたので、そちらも紹介していきます。
映画「テッド・バンディ」予告動画
簡単なあらすじとキャストの紹介
「グレイテスト・ショーマン」のザック・エフロンが、30人以上の女性を惨殺した実在の殺人鬼を演じた犯罪ドラマ。
1969年、ワシントン州シアトル。とあるバーで出会い恋に落ちたテッド・バンディとシングルマザーのリズは、リズの幼い娘モリーとともに3人で幸福な家庭生活を築いていた。
しかし、ある時、信号無視で警官に止められたテッドは、車の後部座席に積んであった疑わしい道具袋の存在から、誘拐未遂事件の容疑で逮捕されてしまう。
また、その前年にも女性の誘拐事件が起きており、目撃された犯人らしき男はテッドと同じフォルクスワーゲンに乗り、その似顔絵はテッドの顔に酷似していた。
テッド役のエフロンのほか、リリー・コリンズ、ジョン・マルコビッチらが脇を固める。監督は、同じくテッド・バンディを題材としたNetflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ「殺人鬼との対談 テッド・バンディの場合」を手がけたジョー・バリンジャー。
テッド・バンディ: ザック・エフロンエリザベス・クレプファー: リリー・コリンズ
キャロル・アン・ブーン: カヤ・スコデラーリオ
ジェリー・トンプソン: ハーレイ・ジョエル・オスメント
エドワード・コハート判事: ジョン・マルコビッチ
引用「映画ドットコム」
映画「テッド・バンディ」のネタバレ込感想
映画「テッド・バンディ」を視聴して少し不思議に思ったのですが、元ネタがこの映画の主人公リズことエリザベス・クレプファーが1988年に回顧録として発表した本を題材にしていることで納得がいきました。
「テッド・バンディ」という名前を聞けば、シリアルキラーという言葉が思い浮かぶような、そんな凶悪犯として有名です。
ですので、どうしても
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彼が何人の被害者を殺害したか
とか、
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それぞれの犯行をどうおこなっていたのか
とか、
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犯行後の以上としか言えない行動
など、テッド・バンディ自身にフォーカスがあたってしまわざるを得ません。
それはそれで、怖いもの見たさの好奇心をくすぐりますが、知ってしまったあとは、知識欲を満たした満足感には程遠い、なんとも言えない嫌悪感しか残らないでしょう。
が、この映画はテッド・バンディとかかわってしまったシングルマザーの視点から、
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・テッド・バンディという人物がどう見えていたのか?
・リズが知らないテッドの本性が明かされていく過程で味わうリズの心の動き
・関係を絶とうにも断ち切れない心理状態
そういった悩みをみせてくれています。
また、リズに変わってテッドの妻にまでなったキャロル・アンの存在も、興味深いものでした。
二人が出会ったのはワシントン州。
そこから見たらアメリカのなかで一番遠い正反対の州、フロリダまで引っ越してまで、テッドに尽くしたわけですし、子供ももうけ、結婚までしているのは一体どういう感情からなんでしょう。
それはかつて、リズが味わった「世界中のすべての人が敵に回ったとしても自分ひとりだけは愛を貫く」という思いに他なりませんが、逆にそんなシチュエーションにより興奮してしまって盲目的にのめり込んだのかもしれませんね。
リズがテッドを忘れられなかったのは真実を知りたいがため
テッドの前から姿を消したリズでしたが、テッドのことが忘れられずにいた理由も最後の最後に明らかになります。
それは、実はリズが犯人の似顔絵と車の情報がメディアに出たとき、テッドのことを匿名で警察に連絡していたからでした。
その電話がきっかけで彼が捕まり、今の境遇にいるのではないか?しかも実は無実であるにも関わらず。
そんな罪悪感から、すでに再婚して新しい夫・ジェリーと幸せな家族生活を過ごしているにも関わらず、テッドのことを心の中から消し去ることができなかったのでした。
これについては説得力があるようにも思いましたが、よくよく考えてみると、テッドのような犯行を犯している人物について、果たしてそのように思うのか、とも思えてきました。
というのも、たしかに情報提供を求めて似顔絵などの情報がでまわった時期は、1件の殺人事件に関する調査でしたが、その後、数十人に及ぶ殺人の嫌疑がテッドにかけられたわけです。
それだけの事件の容疑者に挙がるということは、やはりテッド自身になにか問題があり、無実の人物を警察に売り渡した、と自分を責める心境ではなくなっていくのではないでしょうか?
しかもフロリダで有罪になっている3つの殺人事件に関しては、リズが完全にテッドと縁を切ってからのものです。
テレビや新聞などのメディアでテッドに関する取り調べと裁判の経過はちゃんとチェックしていましたが。
この頃まで、リズがテッドの無実を信じていた、というのは少し理解に苦しんでしまいました。
フィクションとノンフィクション
映画の中ではいくつかのフィクションとノンフィクションが存在します。
リズがテッドに出会った1969年からフロリダで死刑判決が出された1978年の9年間に、実際に起った人生の出来事を1時間50分弱の映画に収めないといけない以上、多少の作り事は出てきてしまいます。
例えば、ノンフィクションに関しては、
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・1969年にリズとテッドが初めて出会ったのは映画の通りシアトルのバーで、その場で恋に落ちた
・そのバーに友達のジョアンナと一緒に行っていた
・リズだけでなく、娘のモリーもテッドにすぐに懐いた
・リズはテッドと真剣に結婚を考え、テッドにもそのことを話していた
です。
逆にフィクションとしては、
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・リズの夫となるジェリーは実在しない人物で、実際は複数の男性と女性の友人の助けでテッドの呪縛から逃れることができた
・リズの親友のジョアンナが常にリズの側にいてサポートしていたように描かれていたが、実際はリズという友人は存在せず、複数の友人が相談に乗っていた
・映画の最後、リズがテッドに会いに刑務所で面会をして自白を受けた
が挙げられますが、一番驚いたのは、
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・実はテッドはリズを何度も殺そうとした事があった
というものでしょう。
映画では、テッドの2面性をより際立たせるためでしょう、リズに対しては全く危害を加えることを考えなかった、シリアルキラーとは思えない人物として描かれていますが、わかっているだけで実際には1度、はっきりと殺意を持ってリズを殺そうとしているそうです。
映画のストーリーに関するノンフィクションとフィクションについて、こちらで詳しく解説していますので、興味があれば、確認してみてください。
関連記事: 映画テッドバンディはノンフィクション?ストーリーのためにフィクションになった部分を紹介!
テッド・バンディとキャロル・アンの娘の今は?
映画のクライマックス、フロリダでの裁判の最中、テッドはキャロル・アントの間に子供ができたことを知らされます。
これは真実で、キャロル・アンはワシントン州からフロリダ州へ、テッドのために引っ越し、色々と彼のために工面をして、裁判では証人として証言もしています。
テッドとキャロル・アンの結婚は、映画のとおり、裁判所の中で行われました。
ところで死刑判決を受け、テッドは1989年に死刑を執行されたわけですが、キャロル・アンとその娘は一体どうなったのでしょうか?
完全にメディアから姿をくらました家族達
テッドとキャロル・アンのあいだに生まれた娘はローズと名付けられました。
ローズ・バンディは1982年10月24日が誕生日です。
死刑判決を受けた1979年7月24日より3年以上後のことですので、映画でキャロル・アンが判決を言い渡される前にテッドに妊娠のことを話したのはフィクションということになります。
驚くべきは、死刑判決を3回も受けたテッドに対し、その後も尽くしていたキャロル・アンの行動と、刑務所内にいたはずなのに、キャロル・アンが妊娠してしまった行為を行えたことで、この部分は映画内で描かれていた刑務所内の彼らの交渉風景は、ノンフィクションだったのでしょう。
果たして今、キャロル・アンとローズは一体どこで何をしているのでしょうか?
調べてみましたが、完全に姿をくらまし、今どこで何をしているのか、全くわかっていません。
ネット上にも情報は限られており、ウィキペディアのページでさえ、キャロルアンやローズのページが存在していないほどの徹底ぶりです。
ローズの生年月日がわかっているため、現在39歳ということは計算できますが、おそらく彼女の人生は、高い可能性で大変なものだったのではないか、ということくらいしか想像ができません。
テッド・バンディというシリアルキラーを父親に持っているというだけで、必ず偏見を持たれたり好奇心の対象になったりするでしょうし、危険人物と見られる可能性も低くはないでしょう。
ただ、テッド・バンディが普通の家族から生まれた殺人鬼であったように、普通の家族からとんでもない凶悪犯が生まれることがありますが、とんでもない凶悪犯の家族だからといって、その人も危険なのか、というとそういうことは絶対ではありません。
ローズが自分の身元を隠しながらも普通の人と同じ人生を送っている可能性は十分にあると思います。
噂ではキャロル・アンは名前を変え、オクラホマ州に移り住んだ、というものがありますが、それすら真実かどうかもわかっていません。
実はキャロル・アンは離婚していた
キャロル・アンとローズを調べている過程で、面白い事実を知りました。
テッド・バンディの死刑が執行される1989年の3年前、1986年にキャロル・アンはテッドと離婚し、子供を連れてテッドの元を去っていたのです。
そしてこの後、テッドが死ぬまで2度とテッドと再会することはなかったし、死刑執行前にテッドが彼女に当ててかけた電話でテッドと話すことを拒否したそうです。
リズが同じような状況でテッドと電話で会話しているのとは対照的でした。
おそらくリズはテッドのことを過去のものとして心の整理がある程度ついていた一方、キャロル・アンはまだまだ心の傷が癒えていなかったのでしょう。
キャロル・アンがテッドと離婚し、テッドの元から去っていった理由は明らかにされていません。
が、おそらくテッドへの信仰が、何らかの形で崩れてしまったのでしょうね。
もしかするとテッドの内面にある凶悪な素顔を垣間見る機会があったのかもしれません。
一人信じていたテッドの無実を覆す、有力な証拠や証言を得たのかもしれません。
なにはともあれ、キャロル・アンはテッドと決別し、二度と彼に会うことはなく、その後も一切姿をくらましてしまったのでした。
まとめ
愛は盲目にする、とはよく言ったもので、まさにテッドに関わった二人の女性がその言葉通りになってしまいました。
リズの方は、心に傷を追ったものの、テッドの魔の手から最終的に逃れる事ができたように思いましたが、キャロル・アンの方は、テッドに関わったのが彼の最終局面になってからであったため、その代償に残りの人生全て棒に振った様に思います。
いわゆる頭で理解していたも心が伴わない、というやつなのでしょう。
危険な香りを少しでも嗅ぎつけたのであれば、そこで冷静になれる余裕を持っておきたいと思わずに入られませんでした。
一方で、テッドのような人物と関わることになってしまった不運は、彼女や被害者の女性たちにとって、自分の力ではどうにもならなかった部分ではあるので、やるせない思いを抱いてしまいます。
テッドの犠牲になったのは、被害者にとって雷に打たれたくらいの確率で起こった不運な事故というほかはないのではないでしょうか。
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