映画「クーリエ 最高機密の運び屋」は1960年代に起こった事件、核戦争の一歩手前まで迫った「キューバ危機」が実際に戦争にならずに済んだ陰の功労者にスポットを当てたスパイサスペンス作品です。
主演を演じたベネディクト・カンバーバッチの鬼気迫る演技が素晴らしいのと、スパイとして活動は、失敗すれば命がないというハラハラドキドキをものすごく上手く演出しているのは、特筆したいポイントです。
今回はこの映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の基本情報や予告動画や登場人物情報、そして映画のあらすじを分かりやすく紹介していきます。
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の基本情報
それでは映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の詳細あらすじを紹介する前に、映画の基本情報と予告動画、そして登場人物の紹介をしておきます。
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の基本情報と予告動画
ベネディクト・カンバーバッチが主演を務め、キューバ危機の舞台裏で繰り広げられた実話を基に、核戦争を回避するべく奔走する男たちの葛藤と決断をスリリングに描いたスパイサスペンス。
1962年10月、アメリカとソ連の対立は頂点に達し、キューバ危機が勃発。英国人セールスマンのグレヴィル・ウィンは、スパイの経験など一切ないにも関わらず、CIAとMI6の依頼を受けてモスクワへと飛ぶ。そこで彼は、国に背いたGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官ペンコフスキーとの接触を重ね、機密情報を西側へと運び続けるが……。
グレヴィル・ウィンをカンバーバッチ、ペンコフスキーを「名もなきアフリカの地で」のメラーブ・ニニッゼが演じる。「追想」など映画監督としても活躍する舞台演出家ドミニク・クックがメガホンをとった。
引用:映画ドットコム
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の登場人物紹介
続いてキャスト紹介です。
グレヴィル・ウィン
ごく一般のイギリス人セールスマン。
仕事でよく東欧に出張していたことからイギリスの諜報機関MI6よりモスクワに行き、ソ連の機密情報を持って帰ってくることを依頼される。
演じるのはベネディクト・カンバーバッチ。
オレグ・ペンコフスキー
ソビエトの参謀本部情報局に所属する軍人。
ソビエトの軍事機密を西側に送るため、グレヴィルと組んでスパイ活動を行うことに。
演じるのはネラーブ・ニニッゼ。
エミリー・ドノヴァン
イギリス諜報機関MI6の幹部。
オレグからの情報を重要視し、機密入手のためグレヴィルを運び屋(クーリエ)としてリクルートする。
演じるのはレイチェル・ブロズナハン。
シーラ・ウィン
グレヴィルの妻。
夫がMI6のスパイとして活動していることに一切気づかないものの、人が変わり始めたグレヴィルに浮気を疑う。
演じるのはジェシー・バックリー。
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」の見どころ紹介
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」はとてもハラハラドキドキするスパイ映画でした。
派手なアクションは一切なく、それが逆によかったと思います。
スパイ活動は始めはうまくいっているものの、敵も間抜けではありません。
情報の漏洩に気が付き、そのソースを探し、怪しい人物に目星を付ける。
そんな敵の調査具合が不気味で恐ろしいと感じるほど、じわじわと二人の元に伸びてくる感じがなんとも言えません。
スパイ映画といえば「007」や「ミッションインポッシブル」を思い描いてしまいますが、実際の活動は、この映画の中の二人のようにかなり地味で、しかも人知れずにこっそりと行われているのでしょうね。
映画「クーリエ 最高機密の運び屋」ネタバレあらすじを分かりやすく解説
それでは映画「クーリエ 最高機密の運び屋」のネタバレ有のあらすじを分かりやすくお届けします。
起・オレグからの情報提供
1960年。
ソビエト連邦の最高責任者フルシチョフにより、アメリカに対する敵対方針が色濃くなっていきます。
それに核戦争の危険を感じ取ったソ連軍参謀本部情報総局の高官であるオレグ・ペンコフスキーは機密情報の漏洩を決意。
アメリカ人旅行者に手紙を託してモスクワにある大使館を通し、機密情報の提供することを申し入れるのでした。
が、アメリカの諜報機関CIAはオレグの申し出を信用せず、何もアクションを起こそうとしません。
そうして4か月が過ぎ、今度はオレグの存在をイギリスの諜報機関MI6が気づきます。
MI6の中でもエミリー・ドノヴァンは特にオレグのことを重要視し、彼女がチームのリーダーとなってオレグから機密情報を入手することになります。
が、問題なのはオレグとの接触方法でした。
イギリス政府の関係者がオレグと接触したとなると、あっという間にソビエトの諜報機関KGBに感づかれてしまいます。
そこでエミリーはとあるアイデアを考え付いたのでした。
グレヴィル・ウィンは妻シーラと長男アンドリューの家族3人で暮らす平凡なセールスマンでした。
1つだけ有った特徴は、彼が仕事の関係上、頻繁に東欧諸国に出張していたことです。
これに目を付けたエミリーはグレヴィルに接近し、彼にMI6のスパイになってオレグと接触してほしいと依頼をします。
突然の突拍子もない申し出に始めは冗談かとおもうグレヴィルでしたが、真実であることに驚き、任務を引き受けます。
こうしてモスクワに出向き、オレグをはじめとした科学調査委員会の面々と商談を重ね、終にオレグをロンドンに出張させるまでにまとめあげるのでした。
ロンドンでの秘密裏のオレグとエミリーの会談までこぎつけ、グレヴィルのお役目は御免となるはずでした。
が、オレグの申し出で、オレグからの情報をMI6まで運ぶ役目をグレヴィルに任せたい、ということになったのです。
一般人であるグレヴィルがこの任務を行うことで、KGBの目をごまかせる、と考えた結果でした。
エミリーからのその申し出に激しく断るグレヴィルでしたが、エミリーは秘密の一片を漏らして協力を要請します。
核戦争になってソ連からロンドンに核ミサイルが飛んできた場合、警報が発せられてから4分しか時間がない。
グレヴィルの仕事場から家まで15分、どんなに急いでも10分。
絶対に間に合わないし、電話もつながらないだろう。
アンドリューの学校へも時間がかかりすぎる。
シェルターとして仕事場、自宅、学校の地下室に逃げ込んだとしても核攻撃の前には強度は十分でない。
起きるかもしれない何もできない4分間を過ごすことにしるのか、今できることをやるか。
半ば脅迫といっていい説得の前に、グレヴィルは覚悟を決めるのでした。
承・グレヴィルとオレグのスパイ活動
グレヴィルの担当はオレグから秘密裏に渡された情報をイギリスに持ち帰り、それをMI6に渡すというものでした。
情報を収集したり、内容がどういったものなのか、といった部分は一切関与していません。
本来ならグレヴィルは空港で徹底的な手荷物検査を受けるはずででした。
が、政府高官であるオレグが同行していることにより、順番を待つこともなく、検査を受けることもなく、オレグの顔パスでさっさと飛行機に搭乗することができます。
オレグから渡された情報は、MI6にわたり、それを基にソビエトがキューバに対して目論んでいる計画が明るみになってきます。
革命が起こってソビエトの保護下に入ったキューバに、アメリカ本土に届くミサイルを配備する、というものでした。
この情報はCIAに渡され、アメリカも知るところとなります。
アメリカ軍は偵察機を飛ばし、情報を基に偵察を行ったところ、情報通りミサイル基地が設置されている航空写真を撮影することに成功しました。
これによって諜報機関内だけでなく、政府、そしてマスコミも事態の深刻さに気が付き始めます。
このころにはもう、スパイによる秘密情報の盗み合いよりも、両国の首脳による交渉の段階に来ていたのでした。
とはいえ、スパイ活動が休息することはありません。
MI6がグレヴィルを使ってソビエトの情報を入手していたように、ソビエト側もMI6内にスパイを送り込んでおり、ソビエトの機密情報が漏洩していること、そしてそれはソビエト軍内部の何者かによってである可能性が高いこと、が伝えられていたのでした。
転・忍び寄るKGBの包囲網
グレヴィル個人はというと、モスクワに出張するようになってから人が変わってしまいました。
密かに筋トレをはじめました。
また、不安で何かにおびえ、息子の些細な間違いに激怒して怒鳴り散らすなど、かつては考えられない行動をしてしまいます。
シーラに対しても不安をかき消そうと、夜になると彼女を求めるようになっていました。
が、秘密が露見した時の危険を考え、家族にスパイ行為について打ち明けることはなく、ビジネスがうまくいっていないため、という嘘を伝えていたのです。
しかしシーラはそんなグレヴィルの話を信用せず、モスクワ行きを始めてからグレヴィルが変わったことを察知し、浮気をしているのではないか、と疑います。
そしてモスクワに行くことを辞めてくれて、と頼むのでしたが、それができないグレヴィルとの間に亀裂が生じて来ていたのでした。
モスクワ出張中のある日、グレヴィルが部屋に戻ると、机の上に置かれていた本の上下がさかさまになっていることに気が付きます。
それは、誰かが部屋の中に入り、部屋の中を調べた、ということを意味するのでした。
イギリスに帰ってエミリーにこのことを話すと、たぶんKGBによる定期的な調査で特定されたわけではないだろう、と慰められます。
が、と同時にこれ以上のモスクワ行きは必要ないと言い渡されるのでした。
ようやくシーラの望んでいたモスクワ行き中止が無くなり、そのことを彼女に報告するも、二人の間には埋めがたい溝が出来上がっていて、彼女の反応はとてもそっけないものでした。
いつか本当の話ができる日も来るだろうと思っていたグレヴィルですが、世間はキューバ危機で持ちきりとなり、全ての人々はラジオやテレビのニュースにくぎ付けになっています。
グレヴィルも例に漏れず、米ソの動向に注意を向けていましたが、日が経つにつれ、モスクワにいるオレグのことが心配になってくるのでした。
終にグレヴィルは覚悟を決め、エミリーに連絡します。
KGBがグレヴィルに目を付けたということはオレグにも疑いの目を向けているに違いないとおもい、彼の家族の西側への亡命に手を貸そうとするのでした。
MI6の間では危険度の高さから反対意見も出ますが、エミリーはグレヴィルの手助けをすることを決意します。
MI6内で亡命作戦が練られることになり、モスクワ大使館職員を巻き込んでモスクワを脱出させ、フィンランド経由で抜け出すことになるのでした。
グレヴィルはモスクワに到着するとオレグに計画を伝えます。
そして実際の脱出はエミリーとイギリス大使館員らで実行されたのです。
が、KGBはすでにオレグのスパイ行為を特定しており、亡命計画についても完璧なマークがされていて、失敗に終わってしまいました。
結果、捕まったエミリーは海外退去処分となり、オレグとグレヴィルは刑務所送りとなってしまうのでした。
結・キューバ危機の回避とその後
キューバ危機は歴史に書かれている通り、危機で終わり、核戦争は回避され、キューバからミサイルは撤去されます。
しかし、そのことは刑務所に入れられていたグレヴィルもオレグも知らされることはありませんでした。
グレヴィルはKGBからスパイ行為をスパイ行為と知っていて行っていたかどうかを尋問されます。
グレヴィルは一貫して彼がしていたのはビジネス行為の一環でスパイとして機密情報を持ち出していたことは知らなかった、という主張を貫き通してきました。
セールスマンとしてお客の役に立つために、頼まれた荷物を内容も知らずにイギリスに運んだだけ、と言い通すのでした。
一方でイギリスではエミリーがシーラのもとを訪れます。
詳しい内容までは話せませんでしたが、グレヴィルがソビエトでスパイ容疑で捕まったこと、イギリス政府は全力でグレヴィル救出に手を尽くしていることを話します。
そして世間で言われている、グレヴィルがスパイとしてソビエトの情報を運んでいたという噂を打ち消すだけの発信を、妻としてメディアで行うことが、彼を救う唯一の方法だと、エミリーは話します。
シーラは、夫の浮気のことを疑っていたことにとても後悔し、彼を救い出すために動き出すのでした。
グレヴィルが捕まってから半年後、ついにシーラがソビエトを訪れ、刑務所でやせ細って変わり果てたグレヴェルと面会することになります。
二人は再会を喜び、必ず生きてグレヴェルが家に帰るまであきらめないことを誓うのでした。
そしてその会話の中で、ソビエトがキューバからミサイルを撤去し、核戦争が回避されたことをシーラより知らされます。
グレヴェルをスパイとして処刑したいKGBはオレグと面会させ、オレグがすべてを打ち明けたことを知らせて、あきらめさせようとします。
オレグも家族のことを持ち出され、ぎりぎりのところまで口を割っていたのです。
つまりオレグはグレヴェルが機密情報をイギリスに持ち出していたと証言していました。
が、同時に、オレグはグレヴェルに持ち出していたものが機密情報であったことは知らせていなかったし、グレヴェルも中身を確認していない、とも明確に発言したのです。
そして巻き込んでしまったことについて謝罪しました。
グレヴェルはオレグの謝罪を受け入れ、結局は捕まってしまい、自分のしたことに意味はなかったと落ち込むオレグにシーラから聞いた情報を打ち明けます。
それはキューバからのミサイル撤去がなされ、戦争が回避されたことでした。
驚くオレグにグレヴェルは、すべてが彼の尽力によるものだ、と称賛します。
二人に対して秘密にしていた情報が明かされたことでグレヴェルはつまみ出されますが、最後までオレグの称賛を続けるのでした。
一年後、ソビエトとの間で互いに捕まえたスパイの交換が行われ、それによりグレヴェルはイギリスに無事、帰国します。
自宅の前にはインタビューをしようと多くのメディアが待ち構えていました。
そこに家族で帰り着いたグレヴェルは集まったメディアに手を振り、自宅の中に入ります。
そうして、本当に返ってきたという思いをかみしめるのでした。
映画は字幕でその後のことが語られて終わります。
グレヴェルはセールスマンとして仕事に復帰し、1990年に亡くなりました。
オレグは反逆者として処刑され、墓石に名前を刻むことを許されず、埋葬されたそうです。
しかし彼の家族は罪に問われず、モスクワで生活を続けたのでした。
二人が持ち出した機密情報は5000件以上にも及び、オレグは西側に利益をもたらした最も重要なスパイの一人として今も記録されています。
最後に簡単な感想
スパイ映画としてカーチェイス、格闘、銃撃戦といったアクションが全くないにもかかわらず、とにかくスリリングな雰囲気を見ている視聴者にまで感じさせる映画でした。
飛行機の中で緊張のあまり戻してしまったり、人が変わって子供の些細なミスでもドン引きするほど激怒してしまうグレヴィル。
スパイ活動とは死と隣り合わせという生活であることをどこまでも感じさせてくれました。
ただ、難を言ってしまえば、確かに前半は彼らがもたらした機密情報が果たした役割は大きいものの、キューバ危機になってしまってからは、事態は彼らはおろかCIA、MI6の手を離れて大統領と書記長というトップの手にゆだねられてしまいます。
そうなるとグレヴィルもオレグも観客同様、見ているだけしかできなくなってしまい、折角のスパイ映画で主役が脇に追いやられることになってしまっていました。
史実を基にした作品ですので、仕方がない部分はあると思いますが、前半と後半の落差というか、映画テイストの激変にちょっと戸惑った感は否めなかったです。
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