映画ビバリウムの分譲地ヨンダーに意味は?語源や歴史についても

スリラー

映画「ビバリウム」で登場した分譲地「ヨンダー

ジェマとトムが閉じ込められた、同じ家が立ち並ぶ、とても奇妙で不気味な異世界といっていい場所でした。


ところでこの「ヨンダー」、英語のつづりは「Yonder」となるのですが、一体どういった意味があるのか、気になりませんか?

果たして地名としての固有名詞なのでしょうか?
それとも別に意味がある単語なのでしょうか?



今回はこの「ヨンダー」という言葉について調べてみましたので紹介していきたいと思います。









映画「ビバリウム」に登場した分譲地「ヨンダー」



映画「ビバリウム」に登場した分譲地「ヨンダー

ジェマとトムはこの「ヨンダー」へマーティンに連れられてやってきますが、そこから抜け出せなくなってしまいます。

そして二人して男の子を育てることになるのですが、その過程で、この「ヨンダー」という地が、この世のものでないことを思い知ることになるのでした。

そしてその事実が、二人の肉体や精神をむしばんでいくことになります。


この「ヨンダー」という名前の分譲地ですが、英語表記では「Yonder」

全くこれまでお目にかかったことのない単語でした。

だからこそなのでしょう。

    ・本当に存在する単語なのか?
    ・存在する単語ならば意味は何なのか?
    ・語源や由来はあるのか?

そういった疑問が湧き上がってきたのでした。

「ヨンダー」の意味は「彼方」



辞書で「ヨンダー」を調べてみると単語として存在することが分かりました。

つまり「Yonder」とは地名という固有名詞だけでなく、意味を持つ単語であったのです。


そして、その意味はというと、

    「彼方」

類義語として「There」や「Over there」が表記されており、「あそこ」というような意味である

    「ある程度離れたとある場所」

だったのです。


さらに加えて少し詳しく解説すると、昔は今よりも頻繁に使われていたものの、今では文学の中で見られる程度という単語だそうです。

「昔」とはどれくらいなのか、というと、1800年代は今の2倍以上の頻度で使われていました。

1900年に入って使用頻度は右肩下がりとなり、近年、また使われるようになりつつあることが分かっています。

「Yonder(ヨンダー)」という言葉の歴史と語源



それではこの「Yonder(ヨンダー)」という言葉の歴史とその語源について、紹介していきたいと思います。

この「Yonder(ヨンダー)」という単語は、1066年のノルマン・コンクエスト以後15世紀後半頃までの英語の名称である中英語期に登場する単語でした。


ちなみにノマン・コンクエストとは1066年に起きたイングランドの王位継承の争いから端に発したイングランド王国の統一戦争のことです。

フランス・ノルマンディーと基盤としていたノルマンディー公がイングランドに渡って戦争に勝利してイングランド王となり、その勢いでイングランドを統一した出来事になります。


それまでのイングランドはデンマーク経由でのゲルマン系からの政治的 & 文化的影響を受けてきていたのですが、ノルマンディー公でもあったウィリアム1世によって統一されたことで、フランス経由のラテン系の政治 & 文化に影響を受けるようになります。


話を「Yonder(ヨンダー)」に戻しますと、ノマン・コンクエストが起きてフランスの文化が入ってくるようになったとはいえ、ゲルマン系の文化も色濃く残っており、この「Yonder(ヨンダー)」もゲルマン系の言葉から生まれたという背景がありました。

Yonder(ヨンダー)」という言葉は、

    オランダ語にある、「Over There」という意味の「Ginder

    英語の「Yon

という言葉が合わさって出来上がった言葉とされているのです。

語源の「Yon(ヨン)」とは?



Yonder(ヨンダー)」という言葉はオランダ語の「Ginder」と既に存在していた英語の「Yon(ヨン)」が合わさってできた言葉であることが分かりました。

では、このとはいったいどういった単語なのでしょうか?


この「Yon(ヨン)」とは、「Yonder(ヨンダー)が中英語に属する単語だったことに対して、それ以前に使われていた古英語に属する単語です。

この古英語とは、イングランドと深い交流のあったデンマーク人やノルウェー人、そしてそれらの人々が話していた古いドイツ語から影響を受けて話されていた初期の英語のことになります。


そしてこの「Yon(ヨン)」という単語も、その意味は、

    「Over there(ちょっと離れたあそこ)」

というものが含まれていたのでした。

「ヨンダー」と名付けられた理由を深読み考察



映画「ビバリウム」の中で登場した分譲地の「ヨンダー

この映画の中でとても重要で、ある意味この「ヨンダー」が成立しなければ、この映画自体が成立しないほどの設定です。

そこまで重要な設定場所であり、またこれまで聞いたことないような名前の「ヨンダー」ということに、何か深い意味があるのか、気になって調べてみました。

その結果、「Yonder(ヨンダー)」という言葉は、11世紀から18世紀ごろまでの英語である中英語と呼ばれる古語に当たる時期に誕生したことが分かりました。

意味は「彼方

今風に言えば「あそこ」といったくらいの、場所を指し示すための言葉ですが、古めかしい雰囲気を加えたほうがいいでしょうから、

    彼の地(カノチ)

といった具合でしょう。


そんな単語をわざわざ選んだのは、やはりジェマやトムが囚われの身となってしまった不思議な異世界の雰囲気を上手く醸し出すことを狙ってのネーミングだと思います。

日本語で考えると、意味は似ていませんが、夕刻を「たそがれ時」という感じでしょうか?

しかもその表記をもともとの意味である「誰そ彼刻」(向こうにいる人が誰だかはっきりとわからないほど薄暗くなった時刻)としているような感覚だと思いました。

なんとなくおどろおどろしいというか、意味深な場所に感じませんか?

さらに映画のような、全くおんなじ家が延々と続くような風景まで見せられたら、怪しく感じないではいられないと思います。


おそらく制作陣はわざわざそんな雰囲気を感じてもらえるように、古典英語の中英語時期に良く使用されていた「Yonder(ヨンダー)」という言葉を使用したのでしょう。

考察のまとめ



映画内ストーリのほとんどが繰り広げられ、主人公たちに襲い掛かった不可思議な出来事を作り上げていた場所「Yonder(ヨンダー)

聞き慣れない、また見られ慣れない単語でしたが、その元ネタは古典英語の単語でした。

単語の意味を翻訳すれば、

    彼の地

といったところでしょう。


わざわざ今ではほとんど使われない古語を持ち出して命名したのには、それによって醸し出るおどろおどろしい雰囲気を映画に加えたいから、と考えました。

しかし映画の中のヨンダーを見ていると、精神内に作り出された場所のように感じてしまいました。

少年やマーティンなどの異形の生き物が作り出した世界で、それぞれの世界が隣り合わせであったり、重なっていたりするようですが、閉じ込められた人々は、たとえ重なり合った世界でも行き来ができない。

視聴した方の大半が「世にも奇妙な物語」的な場所である、と感想を述べていますが、自力で脱出できないところなど、まさにその通りだと思ってしまいました。


この「Yonder(ヨンダー)」の地について監督が考えている、どのような世界なのかを説明したインタビューがありましたので、それについては別記事で紹介していくことにします。

関連記事:映画ビバリウムのネタバレ設定考察まとめ!作り物感丸出しのヨンダーに理由とは!


また「ヨンダー」という地名について、語源や由来、歴史に関する紹介記事もありますので、興味のある方はご覧ください。

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