映画「ビバリウム」
「トワイライトゾーン」や「世にも奇妙な物語」テイストのホラー・スリラー映画です。
その不可思議な内容から、
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何が正解で何が正しいのか?
いったいどういった意味があったのか?
などの疑問が多く残ったことでしょう。
今回はそんな「ビバリウム」で湧いてくる多くの疑問について、いろいろと考察していきたいと思います。
映画「ビバリウム」のネタバレ設定考察と解説
映画「ビバリウム」を見ているといくつもの疑問が湧いてくると思います。
そんな中で以下の疑問について、調べ、考えてみました。
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・ヨンダーが作り物感丸出しの理由
・ジェマたちが育てていた少年はモンスター?エイリアン?
・ヨンダーに他の人がいない理由
・少年がテレビで見ていたものとは?
・ジェマが少年を追いかけて潜り込んだ世界は?
・なぜ「9番の家」に滞在することになったのか?
・トムやジェマが病気になった理由
それでは一つずつ見ていくことにしましょう。
ヨンダーが作り物感丸出しの理由
ジェマとトムが囚われの身となってそこから抜け出せなくなったヨンダー。
全く同じ家が延々と続く、奇妙な場所でした。
家の中は立派なのですが、庭であったり、また空に浮かぶ雲であったり、太陽であったりが本物ではなく作り物感丸出しで、安っぽいコンピューターグラフィックで作られたのがまる分かりです。
が、これにはきちんとした理由があったのでした。
視聴者だけでなく、その場にいるジェマやトムの目にも同じように安っぽい作り物の世界として映っていたのです。
というのも、このヨンダーはマーティンや少年といった異世界の生物による作り物だからでした。
彼らは人間をさらってきて、幼生を育てさせています。
人間をさらってくる以上、ほとんどの人間が所有することを夢見るマイホームを提供しているのでした。
が、人間の心をきちんと理解できる生き物でないため、表面的に人間が望む物を作り出して与えているのです。
実際に人間が生きていくために、立派なマイホームだけで事足りるわけではありません。
友人や家族との交流といったものや、仕事、趣味というものも人間には必要です。
が、異世界の生物にはそこのところを理解することができず、結果として安っぽい作り物の世界を用意していた、という設定なのでした。
ジェマたちが育てていた少年はモンスター?エイリアン?
映画「ビバリウム」の監督はロルカン・フィネガンというアイルランド人。
彼は2011年に短編映画「Foxes」というホラー・スリラー映画を作りました。
あらすじは、
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郊外の分譲住宅地に閉じ込められた若いカップルが、そこで体験する超自然現象に精神的に追い詰められていく
というものです。
こちらがその短編映画「Foxes」
日本語字幕はありませんが、興味のある方は視聴してみてください。
短編映画「Foxes」のあらすじですが、これだけ聞くと「ビバリウム」に似た作品だと感じたと思います。
監督はインタビューで、この「Foxes」をより発展させた形の映画が今回の「ビバリウム」である、とはっきりと答えていました。
そして「Foxes」がアイルランドにたくさん伝わる、「フェアリーによって森の中で迷ってしまう人間」的な童話をバックボーンにしているため、幽霊めいた超自然現象というイメージで作品を作ったのに対し、「ビバリウム」はより精神的な部分を表現したいため、幽霊という超自然現象よりもSFチックに作り上げたそうです。
どちらの作品も開発だけされて人がいないという分譲住宅地が舞台となっていますが、実際にアイルランドで2008年ごろに起こったバブル崩壊で国中にたくさん残されたゴーストタウンの状況を見て、スリラー映画のヒントにしたのです。
一方で「ビバリウム」は、そういったゴーストタウンと化した家の不気味さよりも、ディベロッパーの開発計画や夢のマイホームを手に入れようと売買契約を結んだ人たちなど、計画や契約といった目には見えないもののが人々を縛り付けるものとしての存在の怖さをメタファーとして表現したかった、と答えています。
またトムを演じたジェシー・アイゼンバーグも、
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「この映画では、いきなりわけのわからないところに閉じ込められた若いカップルの恐怖だけを表現しているわけではないと思うんだ。
確かに僕の演じたトムはいきなりわけのわからない状況に閉じ込められて困惑しているけど、それ以上に家を持ち、子供を育てる責任を押し付けられ、家族の長としての立場に、急に立たされてしまった困惑や恐怖のほうにも強いストレスを感じていたと思う。
現実社会でも若いカップルがマイホームを持つということが、実際にはどれほどの責任を負わなければならないのか、本当に理解して売買契約にサインしているのか?という疑問が生まれてしまう状況があると思う。
契約した後に、支払いや家の管理・修繕など、購入前にはわからなかった現実に襲われることになるんだ。
そんな時、『こんなはずではなかった』、『こんなことになるとは知らなかった』といってもすでに契約でその立場から抜け出せないようになってしまっている。
これってまさにトムがヨンダーに閉じ込められた状況そのものだと思うんだ。
家だけじゃない。父親になって子供を育てるという立場も、なってしまったらそこから逃げ出すことはできない。
ヨンダーに閉じ込められたジェマとトムは、現代人が抱えるそういった恐怖と対峙していると考えることができると思う。」
と答えています。
それらが理由で、「ビバリウム」の中で犠牲者をほんろうする存在は、実態のある何かである必要があり、幽霊といった存在ではないものをイメージして作り出されました。
ただ、監督としてはマーティンや少年の正体がモンスターなのか、エイリアンなのかまで細かく決めてはいないそうです。
映画を視聴した人が感じた完成のまま、映画を受け入れてもらえてればうれしい、と締めくくっていました。
ヨンダーに他の人がいない理由
ロルカン・フィネガン監督の中では、ヨンダーという場所はマーティンや少年のような存在が作り出した場所、という設定になっているそうです。
一つの存在が全てを作り出しているわけでなく、多くの存在が皆で作り上げた世界でもあります。
その一方でマーティンや少年に代表される彼らは時間や空間を操る術を知っているという設定になっていました。
そのため、永遠に広がるヨンダーを犠牲者に見せつけることもできたし、ヨンダーから抜け出そうとしても同じ場所に帰ってきてしまうわけです。
そして多くある家の一つ一つに個々の存在が犠牲者を連れ込んで、次の跡継ぎを育てさせる場所として利用していますが、犠牲者がお互いに出会うことがないよう、ここでも時空をゆがめている、という設定を利用していることになっていました。
少年がテレビで見ていたものとは?
少年がテレビをつけ、画面から流れる訳の分からない模様を見入っていました。
この模様は、彼らにとって、自分自身を知るために修得しなければならない知識なようなもので、この中に「時空の操り方」なども入っているのです。
そしてある程度成長をしたら、本によってより詳しい知識を修得するという段階になるのでしょう。
そういう意味でいえば、生まれてすぐの赤ん坊の姿の時は、犠牲者をヨンダーの中に閉じ込めておくことができる、とは思えません。
映画を視聴すれば間違いないと納得してもらえますが、少年はマーティンの跡継ぎでした。
そしてマーティンは跡継ぎの少年が独り立ちできるまで育ち切るまで、ジェマとトムを彼の能力によってヨンダーに閉じ込めていた、と考えられるでしょう。
ジェマが少年を追いかけて潜り込んだ世界は?
トムが死んだ後、ジェマは成長した少年を殺そうと襲い掛かります。
が、傷を負わせるだけに終わり、少年は歩道と地面の間に隙間を作って、別の時空に逃げ去るのでした。
この逃げ去った時空こそ、同じヨンダーで別の存在によって閉じ込められた犠牲者がいる、異なる時空なのでした。
簡単に言えば、別の番号の家の中、なのですが、時空が違うため、通常の方法では訪れることのできない場所なのです。
そしてジェマは、その時空にとどまることができず、床や壁に取り込まれるように別の時空へ放り出されてしまっていました。
これは、それぞれの時空に存在するためには、その時空を操る存在によって招き入れられないといけない、という設定だと思われます。
その設定のため、存在してはいけないジェマは、存在していい時空に戻るまで、いくつもの時空を素通りさせられていたわけです。
なぜ「9番の家」に滞在することになったのか?
なぜジェマとトムは「9番の家」でヨンダーに閉じ込められるようになったのでしょうか?
ロルカン・フィネガン監督の答えでは、「はっきりしたことを覚えていない(笑)」とのことでした。
が、脚本を担当したギャレット・シャンリーと一緒に映画について話し合った中で、数字の「9」が持つ神秘的な意味合いから、それに決めたことを覚えていました。
また、監督個人の感覚では、「9」という数字は、
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「永遠の繰り返し」
「終わりのないループ」
というイメージがあるそうです。
実際、「9」という数字を調べてみると、中国では「永遠」を意味する幸運な数字として好まれていることが分かります。
日本でも宮中のことを「九重」と書いていたりと、特別な番号として認識されていた記録が残っています。
他にも厄除け、魔よけの数字として考えられており、その最たるものは「九字を切る」と言われる「臨兵闘者皆陣列在前」の九字護身法でしょう。
他にもイランに存在するとある宗教では、「9」という数字は完全性を表すと考えられており、また、慈悲や無償の愛を表すと信じられているそうです。
トムやジェマが病気になった理由
トムやジェマの健康がどんどんと損なわれ、終には病気になって死んでしまったわけですが、これはヨンダーという世界が作り物の世界であったが故である、と考えられます。
太陽もありますが、それすら偽物。
食料も届きますが、本物の食料かどうかも分かりません。
特にトムは、庭に穴を掘り始め、食事のとき以外四六時中、穴の中で穴掘りで過ごし、ついにはその穴の底で眠るようになりました。
土ですら、本物でない可能性が高く、そんなまがい物の土をほぼ24時間吸う生活をしていたので、ジェマよりも早く亡くなってしまったわけです。
考察のまとめ
映画「ビバリウム」を視聴していて湧き上がってくる疑問をいろいろと並べてみました。
映画を撮影した監督ロルカン・フィネガンのインタビューも参考にし、これらの謎について考察してきましたが、皆さんの意見はいかがですか?
監督もインタビューの中で、「何が正しくて何が正しくないか」といった論争は意味がない、と言っています。
監督の考えによって作られた映画ではありますが、視聴した人々が独自の考えや受け取り方があっていいと思っているそうですし、それに「正しい、間違い」はない、と思っているそうです。
それよりも自分自身が考えもつかなかった見方があったことを知るほうが楽しい、と答えていました。
皆さんにも自分なりの解釈があると思いますので、よろしかったらコメントでシェアしてくださいね。
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