映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティの母親役を演じたリー・トンプソン。
生活に疲れた中年母親で登場したと思えば、恋にあこがれる高校生として1950年代の女性としてはかなり積極的にアプローチする女性を演じ、その後また、すべてがうまくいっている中年母親役として再登場。
1つの作品で三つのキャラクターを演じたといっていい活躍でした。
そんなロレイン役のリー・トンプソンについて、気になったので調べてみると、結構面白い事実が分かりましたので、紹介していきたいと思います。
マーティの母親ロレイン役を演じるまでのリー・トンプソンのプロフィール
リー・トンプソンは1961年5月31日にアメリカ合衆国ミネソタ州に生まれます。
幼いころからバレエを習っており、14歳のころにはプロのバレリーナになることを目指して打ち込んでいました。
そしてアメリカン・バレエ・シアター、サンフランシスコ・バレエ、ペンシルベニア・バレエの3つのバレエ団に進むための奨学金を勝ち取るほどになっています。
リー・トンプソンはアメリカン・バレエ・シアターに進み、20歳という節目の年齢で、このままプロのバレリーナになるかどうかを決めることになるのですが、その時のバレエ団の芸術監督より、プリマバレリーナには体形的になれないであろう、といわれてしまいます。
その一言でバレリーナの道をあきらめ、演技の世界に入る決心をしたのでした。
芸術監督からの一言はかなりショッキングな言われ方をしたようです。
曰く、
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「ダンサーとしての能力は申し分ないが、体形がずんぐりしすぎている。」
と。
おそらく言われたその時はショックだったでしょうが、その一言で彼女はバレエの道をきっぱりとあきらめました。
そしてその決断を、自分のその後の人生においてとても重要なものだったと、後に語っています。
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「あの瞬間、バレエを辞め、プロのバレリーナにはならないと決めたことがどれほど自分にとって幸運だったか、と思い返されます。でなければ、バレリーナとして大成しない自分のことをその後10年間、悩み続けていたでしょうから。」
20歳でニューヨークに移り住み、俳優として活動を開始します。
そこでリー・トンプソンは、後に「バフィー 恋する十字架」の主人公を演じたサラ・ミシェル・ゲラーや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」パート2とパート3で共演することになるエリザベス・シューとともに、バーガーキングのコマーシャルの1980年代のレギュラーキャラクターとして起用されることになるのでした。
映画デビューは「ジョーズ3」
リー・トンプソンの長編映画のデビュー作品は「ジョーズ3」です。
その映画の中で舞台となる水族館「シー・ワールド」に勤務する水上スキーショー担当の一人でした。
全くの偶然ですが、バーガーキングのコマーシャルの撮影を監督していたのは「ジョーズ3」の監督を務めたジョー・アルビスでした。
ニューヨークでコマーシャルの撮影を終えた後、世間話で次の仕事の話になり、ジョーもリーもフロリダへ行くことが分かって、二人が次の仕事も一緒にすることを知ったそうです。
「ジョーズ3」のオーディションでリー・トンプソンは二つの嘘をついて役を得たことを、後のインタビューで明かしています。
1つ目の嘘はすでに2度、映画に出演した経験があるというもの。
そして2つ目は水上スキーの経験があるというものでした。
水上スキーの経験はおろか、実は泳げないことを隠して参加した撮影ではスタントマンを使わずに、彼女がすべての撮影を自分でこなしており、とても大変な目にあった、と話しています。
実際に行われたシーンは、水上スキーをしながら人間ピラミッドを作るというもので、彼女がバランスを崩すことで、ジョーズのいる海に水上スキーパフォーマー全員が投げ出されるというものでした。
元来、人間ピラミッドを水上スキーをしながら披露するのは湖などで行われるもので、波のある海上で行うものではありません。
しかも、本来、崩れないように訓練するものですが、映画のストーリー上、崩れて海に投げ出されるわけですから、崩れ方も、事故が起きないように後ろへ向かって海に投げ出されるようにしないといけない、という難易度の高いものでした。
5日間のトレーニングの後、実際に撮影が始まったそうですが、彼女のパートの撮影が完了した後も数週間はずっと体に痛みを抱えていたそうです。
特に後ろ向きに海に投げ出されるため、そのショックで首の痛みがなかなかひかなかったとか。
一方で、バレリーナとして長い間特訓をしてきたため、強靭な下半身と体幹を持っていたので、無事にアクションシーンをこなすことができたのでした。
トム・クルーズと恋人役で共演
その次の映画はトム・クルーズ主演の「トム・クルーズ/栄光の彼方に」で、トム・クルーズ演じる主人公の恋人役を演じたのでした。
この映画でも面白いエピソードがあります。
というのも、リー・トンプソンは主人公の恋人役のオーディションを受けたわけではなかったのでした。
その理由は、ヌードシーンがあったため。
この時点で彼女はヌードシーンを行うことには抵抗があったので、別の役のオーディションを受けに参加したのでした。
が、監督はリー・トンプソンを気に入ってしまい、何とか主人公の恋人役で出演してくれないか、と口説き倒します。
彼女は悩んだものの、結局その役を引き受けることにし、トム・クルーズとのラブシーンを撮影することになるのです。
このラブシーンで、実は脚本では、トム・クルーズが上半身裸でいるわけではなかったのですが、リー・トンプソンのために、先に裸になったそうです。
一方で、トム・クルーズと共演したことは彼女にとってとても勉強になったとも語っていました。
バレリーナとしてバレエがすべてで演技の勉強をしてこなかった彼女にとって、トム・クルーズのキャラクター入り込むためのアプローチなどが、とても新鮮だったそうです。
とてもいい映画であったし、参加してとてもよかったとコメントしていますが、実はまだ視聴したことがないそうです。
バックトゥザフューチャーでの面白エピソード
その後、リー・トンプソン「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロレイン役を演じることになるのでしたが、ロレイン役を獲得するまでの流れは、1984年に出演した「The Wild Life」という映画がきっかけでした。
この「The Wild Life」の中でリー・トンプソンはエリック・ストルツ演じる主人公の元カノという役でした。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で監督を務めたロバート・ゼミキスがマイケル・J・フォックスの前にマーティ役に決まっていたエリック・ストルツの演技を見るために、この「The Wild Life」を視聴した際、リー・トンプソンの演技に目が留まったのです。
リー・トンプソンを気に入った監督は、彼女に会ってオーディションをし、彼女はロレインの若いバージョンも中年のバージョンもイメージにぴったりということで、ロレイン役を獲得したのでした。
エリック・ストルツ 首の予感
2作続いてエリック・ストルツと共演することになったリー・トンプソンでしたが、撮影開始から6週間後、エリック・ストルツは首になってしまいます。
その理由は、クリストファー・ロイド演じるドクとの掛け合いでしっくりいっていなかった、ということになっています。
が、リー・トンプソンには、ずっと前から嫌な雰囲気はあったそうです。
マーティ・マクフライがバンドを組んでいるという設定であったため、エリックはギター演奏者は長い爪をしていると爪を伸ばしたり、髪の毛を伸ばして薄汚い恰好をしたりといったリアリティを出そうとしたのです。
が、これは監督やプロデューサーはアイドル的な主人公をイメージしていたキャラクター像とは異なるものでした。
また、全スタッフと全キャストが集合し、脚本の読み込みをした際、すべてが終わって感想を求められた際のエリックのセリフも全員がひいてしまうものだったそうです。
とてもいい脚本だと和気あいあいとしていた雰囲気の中で、感想を求められたエリックは、
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「ハッピーエンドだけどマーティにとっては悲劇的な結末だとおもう。」
と答えます。
その言葉にシーンとなる中、エリックは続けて
-
マーティはさえない両親と経済的にも成功した家庭とは言えない環境で人生を歩んできてその記憶しかない。
しかしマーティのために過去が変わったために、両親も家族も大成功をおさめている世界に帰ってきた。
家族全員はその成功した家庭の中で繰り広げられてきた楽しい思い出しか持っていないのに、マーティは、一切その記憶がなく、明らかにその思い出よりもつらい思い出しか知らないのだから、悲劇的ではないだろうか。
確かにマーティの立場になって、考え込んでみるとエリックのいう通りなのですが、盛り上がっている全スタッフと全キャストの前で声高にいうことではないのでは、と心配したそうです。
これらのことが直接の原因ではないでしょうが、おそらく6週間後に首を告げられる結果に多少の影響を与えていたのではないか、と思っても不思議ではないと思います。
エリックの首を知らされた時
リー・トンプソンは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」撮影時、「ジョーズ3」で共演したデニス・クエイドを婚約していました。
そしてデニス・クエイドはドイツで他の映画の撮影をしており、長い間、離れ離れになっていたのです。
そんな時、リー・トンプソンは1週間の撮影の休暇をもらうことになります。
が、映画撮影の途中であるため、ドイツへ行くことは禁止されていました。
しかし彼女は黙って秘密裏にドイツへデニス・クエイドに会いに行ってしまいます。
その当時、まだ携帯などはなく、留守電がある程度でしたが、ドイツへ着いてから数日後、留守電の確認をしたそうです。
すると、製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグ、プロデューサーのボブ・ゲイル、監督のロバート・ゼミキスからすぐに連絡をするようにというメッセージが残っているではありませんか。
彼女は自分のドイツ行きがばれた、と震えあがったそうですが、実際に電話して確認したところ、エリック・ストルツの首を聞かされたのでした。
その電話の後、すぐにアメリカ行きの飛行機に飛び乗ってスタジオへに戻ったそうです。
ちなみにデニス・クエイドとの関係は、その後うまくいかなかったようで、彼と結婚はしていません。
代わりに1987年に出演した映画「恋しくて」で監督を務めたハワード・ドゥイッチと1989年に結婚し、二人の娘を設けています。
パート2とパート3についてのコメント
リー・トンプソンは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のパート2、パート3にも出演しています。
シリーズを通して、全作品に出演しているのは彼女を含め4人。
その中でも彼女とパート1でビフ・タネン役を演じたトーマス・ウィルソンは、5人のキャラクターを演じています。
同一のキャラクターながら、違った過去を持つことで異なる性格を有することになった人物を別人としてカウントしていますが。
関連記事:【バックトゥザフューチャー】ビフタネン役俳優のその後は?プロフィールと活躍も
そのパート2、パート3の感想についてのコメントもインタビューで聞かれています。
パート2は、おばあちゃんになった2015年のロレインと豊胸手術をした派手でアルコール依存症になってしまったロレイン役。
パート3ではマクフライ家の祖先のマギー・マクフライ役でした。
パート2では特に歴史の変わった1985年でのロレイン役の演技が楽しかったとコメントしていますが、クリスピン・グローヴァーが参加しなかったことには、今でもがっかりしていると明かしています。
関連記事:【バックトゥザフューチャー2】ジョージマクフライが殺された理由は?俳優降板が原因?
特にクリスピン・グローヴァーの役作りや演技の詳細にこだわるところには、驚かされたと同時に敬意を表していたので、彼の続投がないと知ったときにはとても失望したそうです。
また、自身の出番が少なかったことにも、がっかりしたそうです。
パート3ではさらに出番は少なくなり、ずっと待っていることが多くなってしまいました。
あまりにも待ち時間が長いため、出演料のいくばくかを返すから、降板させてほしい、と思ったくらいだそうです。
確かにパート3になるとマクフライ家やマーティの話ではなくなり、ドクのストーリーがメインとなっていましたので、仕方ないかもしれませんね。
それでも25周年の記念の年には、多くの式典に呼ばれ、その時の共演者やスタッフと再会を喜び合っています。
確実に彼女の名前を押し上げた作品ではありますし、世界的に大ヒットしたシリーズの一員になれたことは、とても誇らしいし、幸運で、うれしいことだと語っていました。
その後の活躍
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」後もいくつかもの映画に出演しております。
中でも最低映画の一つという「ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀」に出演するなど、いい作品ばかりに巡り合ったわけではありません。
1995年からテレビのコメディードラマに出演し、さらに2000年以降は活躍の場に劇場を加えるなどして活動の範囲を広げてます。
1995年から4シーズン放送された「キャロライン in N.Y.」では主演を演じ、ピープルズ・チョイス・アワードでの「新シリーズドラマにおける最も有名になった女優賞」を受賞しています。
また、2014年には「The Trouble with the Truth」というヒューマンロマンス映画で主演を務め、その年のアメリカン・ムービーズ・アワードで最優秀女優賞を受賞するなど、映画での活躍も続けているのでした。
まとめ
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティの母親ロレイン役を演じた女優はリー・トンプソン。
もともとはプロのバレリーナを目指していたものの、20歳の時に俳優に転身し、専門的に演技の勉強をしたわけではないものの、映画デビューからかなり順調に出演作に巡り合ってきた印象を受けます。
そして「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで一躍有名となるものの、その後、出演した多くの作品の中には、最低映画として記録されるものもあるなど、いつも成功しているわけではない俳優人生を歩んできました。
映画だけではなくテレビのコメディードラマやブロードウェイの劇場にも出演するなど、活躍の場を広げ、演技だけでなくプロデューサー業にも参加していたもしています。
今後、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの続編やリブートはまずないことが分かっていますので、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」関連での再登板はないでしょうが、今後も益々の活躍が期待されるベテラン俳優です。
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