映画「ハスラーズ」は実話をもとにした作品でウォールストリートで働く金融エリートたちを獲物に大金を巻き上げたストリッパー達のお話です。
映画を宣伝する記事などでは「現代の女性版ロビンフッド」と美化しているような文字を見ましたが、視聴した感想からすると、とてもそんな美談ではない、としか言いようはありませんでした。
夜の華やかな世界とそこにうごめく魑魅魍魎のお話としか感じず、騙すほうも騙されるほうも自業自得という気がします。
エンターテイメント性と社会問題と追及するという二つの面を攻めようとし、結局両方とも中途半端になってしまったような印象をぬぐえません。
見終わったあとは、今一つの手ごたえでしたが、後々いろいろと考えるにしたがって、少しずつ味が出てきたように感じた、そんな作品でした。
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簡単なあらすじとキャストの紹介
それでは映画「」の簡単なあらすじとキャストの紹介です。
映画の簡単なあらすじ
リーマンショック後のニューヨークを舞台に、ストリップクラブで働く女性たちがウォール街の裕福なサラリーマンたちから大金を奪う計画を立てたという実話を、ジェニファー・ロペスと「クレイジー・リッチ!」のコンスタンス・ウーのダブル主演で映画化。
年老いた祖母を養うためストリップクラブで働き始めたデスティニーは、そこでひときわ輝くストリッパーのラモーナと出会う。
ストリッパーとしての稼ぎ方を学び、ようやく安定した生活が送れるようになってきたデスティニーだったが、2008年に起こったリーマンショックによって経済は冷え込み、不況の波はストリップクラブで働く彼女たちにも押し寄せる。
いくら働いても自分たちの生活は向上しない一方、経済危機を起こした張本人であるウォール街のエリートたちの裕福な暮らしは変わらず、その現実に不満を募らせたラモーナが、デスティニーやクラブの仲間を誘い、ウォール街の裕福なクライアントから大金をだましとる計画を企てる。
引用「映画ドットコム」
映画のキャスト紹介
ディスティニー: コンスタンス・ウー
ラモーナ: ジェニファー・ロペス
メルセデス: キキ・パーマー
アナベル: リリ・ラインハート
エリザベス: ジュリア・スタイルズ
引用「映画ドットコム」
映画「ハスラーズ」のネタバレ
映画「ハスラーズ」は、リーマンショック後のニューヨークで、ウォール街に努める金融エリートたちをターゲットに、薬を使って正常な判断能力を奪い、クレジットカードに大量の支払金額を請求するという詐欺行為を行ったストリッパーたちのお話です。
実際に起こった事件で、映画でコンスタンス・ウーが演じる主役ディスティニーは、ロザリン・キーオーというアジア系の女性をモデルにし、同じくジェニファー・ロペスが演じたラモーナはサマンサ・バーバッシュという南米系の女性がモデルとなっています。
二人は、映画のストーリー同様、ストリップクラブで出会い、リーマンショック後の不景気のため、稼ぎが減ったことで、詐欺行為に手を染めていくのでした。
どこまで実話と映画のストーリーが一緒であったか、についてですが、かなりの部分は実話をそのまま映画のストーリーにしています。
例えばディスティニーのモデルであるロザリンは、ストリッパーになる前は学校に通っており、年老いた祖母と一緒に暮らしていました。
映画の中で明かされたように、ロザリンも両親に捨てられて祖母に育てられた過去をもっています。
その一方で、ラモーナのモデルとなったサマンサはシングルマザーであったことは、その通りですが、映画ではクラブのナンバーワンストリッパーとして登場していたのとは対照的に、サマンサはダンサーではあったもののストリッパーであったことは一切なかった、と映画にクレームを入れています。
そして二人やその後、詐欺グループに加わる女性たちとの関係ですが、映画の中では親友、家族のように付き合っていたと描かれています。
が、実際のロザリンとサマンサの関係は職場の仲間、もしくはビジネスパートナーといった表現が適切で、警察に捕まって詐欺ビジネスが続けられなくなると、二人はコミュニケーションをとることもなくなったそうです。
その他にもいろいろな映画内のシーンが実話のエピソードからとられたものかどうかについて、こちらの記事で紹介していますので、興味がありましたら、ご覧ください。
映画「ハスラーズ」の感想
映画「ハスラーズ」ですが、男性の僕が見てもそれほどスカッとする話ではありませんでした。
他の批評記事などを拝見すると、北米では特に女性に人気が出た映画だったということがいわれているようです。
たしかにストリッパーという女性の職業の中でも最下層といっていいような主人公たちが、男性の、しかもウォール街で働いて大金を稼ぐ金融エリートからお金を巻き上げるという行為に、そう快感を感じることは理解できなくもありません。
が、「現代のロビンフッド」という話になるとちょっと飛躍しすぎている、と引いてしまいます。
だって、大金をくすねたストリッパーたちは、確かに家族を養うためにそのお金を利用していましたが、それよりは、刹那的なショッピングなど、自己投資という、さももっともな理由をつけて、散財していたからです。
確かに見た目をよく見せることで、カモが引っ掛かりやすくなるというのはわかりますので、ブランド品に身を包むことは自己投資とみることができることは、否定しません。
しかし映画の中で見る彼女らの行動は、無計画的にどんどん物欲を満たす方向に進み、獲得した大金を将来のために使おうとはしていませんでした。
映画の中でジェニファー・ロペス演じるラモーナが放った一言「いつまでも踊って稼げるわけではない」という言葉はその通りだと思います。
では、あの詐欺行為は、いつまでもその方法で稼ぎ続けることのできる代物だったのでしょうか?
それは明らかに違うでしょう。
であれば、いつまでも犯罪行為で収入を得るということを続けるのではなく、それこそ金融投資などで生活していけるだけの不労所得を得るためのシステムを作り上げることにも注力したほうがよかったのでは、と思ってしまうのです。
うまくいっているときは良いですが、悪いほうに向かってしまった場合、詐欺行為だけでしか収入が得られないというのであれば、切羽詰まってしまいます。
収入の分散を確立し、一つがだめでもほかのいくつかの収入元から、最低限生活していけるだけの収入が得られる、というものを作っておく必要があったと思うわけです。
子供の出産を機にストリッパーをやめたディスティニーが仕事に復帰しようとしたとき、経験がないから、という理由で就職を断られ続ける場面がありました。
一度ある職業というレールの上を走り始めてしまうと、なかなか途中で路線変更をすることがむつかしくなります。
特に「ストリッパー」という職業から経験を生かしたジョブチェンジを考えると、その選択肢の狭さに苦しむことになるでしょう。
だからといってまた別の職業を始めようとすれば、一から積み上げていかなければなりませんし、収入面では「ストリッパー」という職業から比べてもより少なくなっている可能性が高いといえるでしょう。
結局のところ、新しく別の収入モナ元を得ようとした場合、その間に費やす時間と必要な生活経費をどう賄うか、という2点がネックとなってしまうわけです。
その点、ディスティニーは詐欺行為でお金はあったわけですから、それを元手に別の収入源を構築させることはできたのではないでしょうか?
少なくともチャンスはほかの人よりもたくさんあったと思うのです。
そして、別の収入源を確立させ、それによって生活ができていけるようになれば、犯罪から手を引くこともできたでしょう。
そしてそれができれば、同じく犯罪に手を染めていたほかの女性たちにも、まっとうな生活を送られるモデルケースを提示できるわけですから、いいことづくめだと思うのです。
なにより、犯罪で収入を得ることをやめられないでいた場合、物心ついた自分の娘も、その組織に加わってしまう可能性が高くなってしまうことを、ディスティニーは考えたことがあったのか、とても疑問に思ってしまいます。
主演コンスタンス・ウーのプロフィール紹介
映画「ハスラーズ」で主人公のディスティニーを演じたのは女優コンスタンス・ウー。
台湾系のアメリカ人女優です。
台湾人の両親がアメリカに移住し、その後彼女が生まれます。
4人姉妹の3女でした。
生まれも育ちもバージニア州のリッチモンドです。
小学校のころから地元の劇団に参加して舞台に立っており、役者だけでなく裏方もこなしていたそうで、そのころから漠然と芸能界のことを意識していたそうです。
大学生となり、ニューヨークに移り住みます。
学生を続けながら劇場の仕事にもかかわり、経験を積んでいきました。
学校を卒業、2006年にインディーズムービーに出演したことでプロとしてデビュー。
その後、映画や舞台を中心に活動していきます。
2010年にロサンゼルスに拠点を移し、2015年に出演した中国系ファミリーがアメリカで繰り広げる様子を描いたコメディードラマ「ファン家のアメリカ開拓記」で一家の母親役を演じて大当たり。
一躍、名前を全国区に知らしめます。
2018年の公開された、ハリウッド映画では1993年の「ジョイ・ラック・クラブ」以来の登場人物がすべてアジア人という映画「クレイジー・リッチ!」の主役として出演。
興行的にも作品的にも大成功をおさめ、彼女自身も数々の賞にノミネートされるなど、女優としての地位を確固たるものとしたのでした。
そして今回の「ハスラーズ」で2度目の主演を務めるという流れになります。
まとめ
映画「ハスラーズ」は、男性の僕目線でみると、巷で評されているような爽快感のある映画ではありませんでした。
見ていてエンタメ映画としても社会派映画としても、どちらにも物足りなく感じてしまっていたのです。
が、見終わってからよくよく考えると、なぜ彼女らがストリップクラブで働くことになり、その後、犯罪に手を染め、最終的には犯罪者として捕まってしまったのかに思いを巡らせていることに気が付きました。
映画の出演者としてストリッパー役の中にカーディ・Bがいます。
彼女はミュージシャンでタレントとして成功を収めていますが、もとはストリートギャングからストリッパーを経て今の地位に上り詰めた女性でした。
彼女のことを詳しくはしらないので、この指摘は的外れかもしれませんが、ストリッパーとして働いている時期の収入は、おそらくファーストフード店やコンビニで働くよりは稼ぎがよいと思います。
その稼ぎから、いかに早くストリッパーの世界から抜け出せるように、次のステージのことを考えて準備し、行動に移していれば、もっと別の人生があったのではないか、と思わずにはいられません。
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