地獄楽・道教とはどんな宗教?極楽浄土と非時香菓の元ネタは?

アニメーション

アニメ「地獄楽」で極楽浄土の島に降り立った画眉丸と佐切。

佐切はその美しさに本当の極楽浄土なのか、と思ってしまいました。

一方、画眉丸はその不自然さに気が付き、警戒を強めます。


その後、二人は杠、仙汰、源嗣と合流し、宗教に詳しい仙汰から、この島が道教や仏教に関連した寄せ集めのようである、と聞かされるのでした。

仏教はなじみがあるものの、名前はよく聞く道教とは、一体どのような宗教なのでしょうか?

そして全く違う文化圏の「極楽浄土」と「非時香菓」の元ネタは何なのでしょうか?

今回はこれらのことを簡単に解説していきたいと思います。







地獄楽・道教とはいったいどいった宗教

仏教は日本でもなじみがあり、詳しくはなくとも何らかで一般の生活にもかかわっている宗教です。

では、道教とは?

名前は有名で聞いたことがある人も多いと思いますが、いったいどのような宗教なのでしょうか?

道教は中国の宗教

道教とは儒教・仏教・道教という中国の三大宗教の一つです。

儒教が講師らによって作り出されたもの、仏教はインドから伝わってきて中国内で発展したものに比べると、道教は中国の漢民族の固有の宗教と言えます。

時には外来宗教を除いてその後に残る中国の宗教形式をすべて「道教」の名で呼称する場合もあるほど。

その内容は多神教で、その概念規定は確立していません。

さまざまな要素を含み、時代とともに変化してきた宗教でもあります。

時代とともに変化してきた宗教

一般には、道教は老子の思想を根本としています。

その上で不老長生を求める神仙術や、おふだを用いた呪術、亡魂の救済と災厄の除去、道教の修行を経て仙術を習得して普通の人を助ける仙人といったものを含んでいきました。

さらには仏教や儒教の影響を受けて作られた経典・儀礼なども取り入れられています。

さらに三国志で有名な武将「関羽」もその後、神になっていますが、扱いとしては道教神の一人として扱われているのほどでした。

このように道教は、時代の経過とともに様々な要素が積み重なった宗教となっています。


ほかにも、

    ・『墨子』の鬼神信仰
    ・儒教の倫理思想
    ・占術などに用いられることもあった陰陽五行思想
    ・古代中国で行われた予言を指す讖緯思想
    ・黄帝・老子を神仙とみなし崇拝する思想である黄老道

なども道教を構成する要素として挙げられるほど。


さらに道教は中国のさまざまな伝統文化の中から生まれているため、中国で古くから発達した金属の精錬技術や医学理論との関係も深いのが特徴と言えます。

このため、道教のイメージは、というと、かなりステレオタイプ的になってしまいますが、頭部の禿げた、足元まで届くひげを蓄えた仙人であるとか、赤をメインに黄色で描かれる中国的な装飾など、になると思われます。

老子・荘子との関係

道教というと老子や荘子の道家のことを思い浮かべるかもしれません。

しかし、老子や荘子は、自然に生きることの大切さを説いた哲学としての道教を広めており、中国の民族的な宗教である道教とはかなり違いがあります。

確かに自然のもとに生きる姿は仙人と重なる部分もあります。

が、道家は魔法使いのような妖術を使うわけではありませんし、そういった妖術を習得するために修行をしているわけではありません。


老子や荘子の説いた道教が基本にはあるものの、その後、他の考えに影響されていろんな方面に発展していきました。

その過程で、老子や荘子が説いたものとは全くかけ離れた分野にまで広がっていったのが、宗教としての道教だといえると思います。







地獄楽・極楽浄土と非時香菓(ときじくのかくのみ)の元ネタは?

アニメ「地獄楽」で説明される「極楽浄土の島」とそこにあるという不老不死の仙薬「非時香菓」

一体この「極楽浄土」と「非時香菓」の元ネタは何なのでしょうか?

極楽浄土は仏教が元ネタ

極楽浄土の元ネタは仏教ですが、より詳しく分類すると大乗仏教における、

    一切の煩悩やけがれを離れ、五濁や地獄・餓鬼・畜生の三悪趣が無く、仏や菩薩が住む清浄な国土のこと

で、そのうち阿弥陀如来が統べる西方浄土のことを言います。


極楽浄土のほかに、薬師如来が統べる東方浄瑠璃浄土という浄土もあり、宗教的理想郷を指す「浄土」の一つとされていました。

が、日本では「浄土」=「西方極楽浄土」とする考えが、平安期以降に広まった浄土宗によって一般認識されるようになったのでした。


この浄土には「一切の苦はなく、ただ楽のみがある」とされています。。

しかもその楽とは、酒や性欲などの欲望的・肉体的な「楽」ではありません。

常に説法を聞いて諸仏を供養でき、自らも解脱して人々を救済できるという精神的な「楽」に満ちているという教えになっています。

非時香菓は日本の神話が元ネタ

幕府によって極楽浄土の島から持ち帰るように命じられた不老不死の仙薬。

遣わされた罪人にはその資料として「非時香菓(ときじくのかくのみ)」としてミカンのような絵が載っています。

この元ネタは何なのでしょうか?


実はこの元ネタは日本の神話なのでした。

『古事記』や『日本書紀』に第11代垂仁天皇が田道間守(たぢまもり)を常世国に遣わして、「非時香菓」を求めさせる、という逸話があります。

田道間守は、10年もの歳月をかけて木の実を見つけ出し持ち帰りますが、その間に天皇は崩御したというオチになってました。


そして現在では、この「非時香菓」は「橘(たちばな)」つまり柑橘類であったとされています。

というのも、天皇がすでに崩御していたことを知った田道間守は、悲しみのあまり、橘をささげて命を落とした、とされているのです。

そして、彼の天皇に対する忠誠に心打たれた人たちによって、彼が持ち帰った「非時香菓」の種を植えました。

やがて芽生えた木々が花を咲かせたころ、田道間守の花から「たぢ」「ばな」と呼ぶようになり、橘と名付けられたそうなのです。


また、橘を祖先とする柑橘(かんきつ)類は、長い間良い香りを漂わせてくれることから、

「非時香果」

つまり、

    「時を選ばず(非)に香る果実」

ということで、不老不死の実として考えられていたのでした。


実際、その昔、甘くみずみずしいミカンはお菓子として認識されていました。

また、今よりも非常に入手が困難な砂糖は、ぜいたく品、薬品として考えられていた時代もあります。

まさに、不老不死の仙薬をミカンである「非時香菓」と呼んでいたことが分かりますね。

まとめ

アニメ「地獄楽」に登場する道教や極楽浄土、非時香菓について簡単に解説していきました。

道教は中国固有のものではありながら、時代とともに他の宗教などによって変化していった宗教です。

多神教で仙人や陰陽五行説といった考えも、この道教に由来しています。


一方で極楽浄土は仏教、それも日本の浄土宗による影響の強い、言わるる「天国」を表す言葉でした。

そして「非時香菓」は日本書紀などの日本の神話に登場する、不老不死の仙薬のことであり、採取した後も香りが長く保たれる柑橘類の橘であるとされています。


このように仙汰の指摘したとおり、極楽浄土の島は中国と日本を中心に時代も異なる宗教観がごちゃまぜとなった様相を呈しています。

いったいどのようにしてこのようなハチャメチャな島が出来上がったのか、その謎は今後、明らかになっていくでしょう。









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