アニメ「地獄楽」で監視役の一人山田浅ェ門付知が、
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「今回の任務は蟲毒のようなもの」
だ、と語っています。
アニメでは蟲毒のことを、
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「複数の毒虫を壺の中で共食いさせ、生き残った虫の毒を使う呪術の一種」
と説明していますが、具体的に蟲毒とはどのような呪術だったのでしょうか?
今回は蟲毒の歴史、そして日本で行われていた蟲毒について紹介していきます。
さらに、付知が恐れたより強力な毒を持つ虫、「アイツら」が誰であるか、そちらのネタバレも紹介していきましょう。
地獄楽・蟲毒とは何か?
蟲毒について、簡単に説明するとするならば、
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・古代中国において用いられた動物を使う呪術
です。
そして現在でも、中国華南の少数民族の間で受け継がれているようです。
大変強力ながら、方法がむつかしくないこともあり、よく使われてきたという歴史的背景があります。
そのため、時の政権から厳しく禁止されていたのは、中国も日本も同じなのですが、歴史書の中で蟲毒を使用しようとして捕縛されたという記録を見つけることができるのでした。
古代中国から受け継がれる呪術
蟲毒は古代中国において、広く用いられていたとされています。
どのくらい昔から用いられていたかについては定かではありません。
白川静など、古代における呪術の重要性を主張する漢字学者は、殷・周時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取っているようです。
蟲毒のやり方ついては、中国の元朝末期から明朝初期に活躍した、著名な医家楼英が編集した総合医学著作「医学綱目」の中に記載を見つけることができます。
その方法と効果は、
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ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。
この神霊によって思い通りに福や富貴を得ることができる。
また神霊の毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えることもできる。
人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、一定期間のうちにその人は大抵死ぬ。
となっています。
日本でも行われた
日本にも蟲毒は伝わり、大変恐れられていたことが分かっています。
中国でも同様ですが、日本でも厳しく禁止されていて、術を使用したものには死刑や島流しといった罰を与えることが決まっていました。
実際、日本の歴史書で養老律令の中の「賊盗律」に政府から厳しい禁止の例があったことが記載されています。
実際に処罰された例として続日本紀の中に、
・神護景雲2年条
769年に県犬養姉女らが不破内親王の命で蠱毒を行った罪によって流罪
・宝亀3年条
772年に井上内親王が蠱毒の罪によって廃位
などが記されています。
他にも平安時代以降、たびたび詔を出して禁止されていることが判明しているのでした。
日本版蟲毒として有名な犬神の儀式
日本の蟲毒について調べてみると、民間に流布し、非常に恐れられた、特定の動物の霊を使役する呪詛の一つとして犬神というものがあることが分かりました。
その方法というと、飢餓状態の犬の首を打ちおとし、さらにそれを辻道に埋め、人々が頭上を往来することで怨念の増した霊を呪物として使う、というものです。
より具体的な方法は、というと、
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1.犬を頭部のみを出して生き埋めにする、または支柱につなぐ。
2.その前に食物を見せて置き、餓死しようとするときにその頸を切る。
3.すると、頭部は飛んで食物に食いつきくので、これを焼いて骨とし、器に入れて祀る。
または、
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1.獰猛な数匹の犬を戦い合わせる。
2.勝ち残った1匹に魚を与える。
3.その犬の頭を切り落とし、残った魚を食べる。
というものです。
この呪術を行うことで、犬神の霊が永久にその人に憑き、願望を成就させる、と考えられていました。
「このお役目が蟲毒のようなもの」付知のセリフの真意は?
このように蟲毒という呪術の具体的な方法を見てみると、付知が「このお役目が蟲毒のようなもの」、という感想を抱いたのもうなずけます。
極楽浄土の島という外界に出られない隔離された島に閉じ込められた死罪人という毒虫達。
彼らは一人にしか与えられない死罪を免除される「御免状」を巡って、お互いに殺し合いを行います。
さらに極楽浄土の島ではそのに住む土着の毒虫も数多く存在しています。
そんな環境の中、生き残って帰ってきた一人の霊力はとてつもなく強いものになっているといっていいでしょう。
まさに不老不死という、究極の呪術を手に入れるためにはもってこいの霊力と言えます。
ただ、この付知の思惑の恐ろしいのは、蟲毒を完成させるためには、霊力を得るために最後に生き残った物を神霊として祭る必要があることです。
犬神であれば、必ず殺して祈願成就の呪物にしないといけません。
つまり、無事仙薬を入手しても、本当に無罪放免となって自由を手に入れられるのか、とても気になってしまいます。
ネタバレ・付知が恐れたより強烈な毒を持つ虫とは?
付知が蟲毒のようだ、と称した極楽浄土の島の任務。
呪術を行っている将軍以下幕府は、毒虫が全滅したのであれば、さらに毒虫を集めて送り込めばいいだけです。
そして付知は、その送り込まれる毒虫の中で、強烈な毒を持つ虫がいることを危惧しているのでした。
すでに棋聖が明かした毒虫の正体
付知が恐れていた強烈な毒を持つ虫について、実はすでに棋聖が明かしていました。
それは画眉丸の出身地である石隠れの里に住む忍者集団。
画眉丸はそのことを棋聖から聞かされた後、ゆっくり時間をかけて仙薬を探している余裕はない、と佐切を消すことを決断して襲い掛かっています。
とてつもない戦闘力を誇る画眉丸ですら恐れる石隠れ衆。
まさに最強の毒をもつ虫にふさわしいでしょう。
実際に送り込まれてきた最悪の毒虫
ここから完全にネタバレになりますが、この後、ストーリーが進んでいくと本当に最悪の毒虫が送り込まれてきます。
ただ、展開的に言えば、その毒虫のせいでどうしようもない窮地に追い込まれるか?というとそういう印象は持ちませんでした。
確かに余計な障害物が増えたことは否めませんが、何しろボスの天仙がとんでもなく強力なため、ともすると後に送り込まれた彼らが、手助けした部分もあるように感じたくらいです。
また、彼らが登場し、本格的に画眉丸と戦闘を開始するのは漫画全13巻のうち、9巻以降。
ですので、正直、付知や画眉丸が恐れていたような、最悪の状態になるまでにはしばらくかかります。
また、そのころになると、画眉丸たちは今まで気が付かず、無意識で使っていた力の存在に気が付いて、それを操れるようになっているため、とてもパワーアップしています。
ですので、本当に最悪の状態にはなるわけではないのでした。
まとめ
付知が、今回の任務がまさに蟲毒のようだ、と思ったわけですが、その蟲毒について詳しく紹介してみました。
詳細に調べていくと、まさに付知が感じたように、今回の任務は蟲毒そのものと言っていいということが分かります。
ざっくり言えば、毒虫同士を共食いさせ、最後に残った虫が神霊になる、という呪術でその神霊になった毒虫を使って、願いを成就させたり、人に危害を加えたりするというものです。
まさに将軍が不老不死という仙薬を手に入れるために、神霊になった毒虫が必要ということなのでしょう。
願わくば、自由の約束を反故にされず、神霊として呪物にされないことを祈りたいです。
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