映画「モアナと伝説の海」で何種類かの動物が登場します。
海がテーマの映画ですので、海の動物が多いのですが、その中にモアナのペットというか相棒というか、ニワトリのヘイヘイと子豚のプアが登場します。
特に冒頭ではプアが、残りの物語ではヘイヘイが、常にモアナと一緒に行動していますね。
ところでこのヘイヘイとプア、モアナにとってどういう意味があるのでしょうか?
「海」と「ニワトリ」&「ブタ」の関係を調べてみると、面白いことが分かりましたので紹介しておきます。
映画「モアナと伝説の海」のヘイヘイとプアは航海の安全のシンポル
映画「モアナと伝説の海」で常にモアナにくっついて行動しているのが、島では子豚のプア、航海中はニワトリのヘイヘイでした。
しかしそのストーリーをおさらいしてみても、ヘイヘイもプアもモアナの役に立ったシーンはなかなか見つかりません。
厳密に言えば、ヘイヘイは2度、モアナを助けています。
1度目はカカモラに襲われた時。
襲撃の衝撃で、テ・フィティの心がカヌーの甲板に落ちてしまい、それをヘイヘイが飲み込んでしまうシーンです。
もしテ・フィティの心をヘイヘイが飲み込まなかったら、カカモラの一人がテ・フィティの心をつかんでいたでしょう。
その場合、テ・フィティの心を追ってカカモラの船に乗り込んだモアナが、カカモラの酋長にテ・フィティの心が渡されるときに奪い返すことができたでしょうか?
ニワトリの大きさであったから、簡単に奪い返すことができましたが、あれが手のひらに収まるくらいの小さな石では、なかなか難しいと思います。
モアナを襲ってテ・フィティの心を奪おうとしたカカモラ。
彼らがどういったキャラクターなのかについてを解説した記事がこちらにありますので、よろしければ参考にしてみてください。
映画モアナと伝説の海に登場するカカモラの正体は?モデルとなったのは何?
2度目はテ・カァにモアナだけで挑んだシーン。
テ・カァがいる島をやり過ごし、テ・フィティの島に近づくために島と島のわずかな隙間へカヌーを進めます。
そこにテ・カァの一撃で大きな波がカヌーを襲い、その衝撃でテ・フィティの心がこぼれて海に落ちそうになりました。
その寸でのところで、テ・フィティの心を受け止めたのがヘイヘイ。
これでモアナはテ・フィティの心を海の中に失わずに済んだわけです。
が、よくよく考えてみると、モアナは海に選ばれており、海にモノを落としても海が戻してくれていました。
マウイによってモアナやテ・フィティの心が海の中に捨てられましたが、海によってカヌーの上に戻されています。
海に落ちたヘイヘイも、毎回ではありませんが、海によって助けられ、カヌーに戻されたことがありました。
このシーンで、モアナがテ・フィティの心を失ったとしても、海からの助けがあったのではないか、と思しまいます。
いえ、ヘイヘイが無駄のことをした、というわけではなく、このシーンに限って言えば、ヘイヘイがいなくても何とかなったのでは、と言いたいだけですので…。
そしてプアに関しては、モアナを助けたシーンは一度もなく、モアナがプアを助けたために、モアナ自身の命が危険にさらされていました。
しかもその後、プアは海を恐れて海に近づこうとはしません。
一体全体、ヘイヘイとプアはモアナにとってどういう意味があったのでしょうか?
残念ながら、映画のストーリーの中からヘイヘイとプアというキャラクターだけに焦点を当てて、意味を見出そうとしても、これというものが思いつきません。
ヘイヘイの間抜けさ、プアの可愛さがアクセントになっていて、ふっと気を抜けるというか、微笑む瞬間が多くなる、といったスパイスになっていることは皆さんも同意してくれると思います。
かといって、いなかった場合、味気ないものにはなるでしょうが、ストーリーが崩壊するほどの重要性はありません。
本当にアクセントとしての意味しかないのでしょうか?
映画「モアナと伝説の海」について調べるとなると、どうしてもポリネシアの文化や歴史に行きつきます。
そしてポリネシアの文化の中で非常に大きな部分を占めているのがタトゥー、入れ墨です。
モアナは16歳と若いため、入れ墨を一つもいれていませんが、彼女の父親で村長のトゥイをはじめ、多くの村人たちがタトゥーをしています。
特に祖母タラは背中に大きなエイの彫り物が。
そこから考えるとヘイヘイやプアとしてではなく、ニワトリと豚という生き物に何か理由があるのではないでしょうか?
タトゥーつながりで調べてみると、ニワトリと豚が海と関係する言伝えを見つけることができました。
ただしこの言伝えはポリネシアの文化の中ではなく、古くから欧米の船乗りに伝えられる縁起担ぎのような、幸運のお守りというべきものです。
曰く、ニワトリと豚を両足の甲に一つずつタトゥーとして掘ることが、航海の安全を叶える、というのです。
これは、ニワトリや豚が船内で、木の箱や樽の中に入れられて運搬された歴史がありました。
ですので、船が難破した時でも木の箱や木の樽に入っていたニワトリや豚が、生き残る確率が高かったのです。
ということから、事故が起きても生き残る、という意味で船乗りが好んでタトゥーにするデザインとなったのでした。
モアナ達ポリネシア人にとっての入れ墨のとは
ポリネシアの文化の入れ墨を調べてみると、面白いことが分かります。
入れ墨「タトゥー」の語源
入れ墨という意味の英語「タトゥー」は、タヒチ語のタタウ(Tatau)から来ています。
このタヒチ語のタタウが他のエリアに広がり、
- イースター島のラパヌイではター(Ta)
トンガではタタタウ(Tatatau)
アオテアロアやサモアではトゥフガ(tufuga)
と変化していきました。
ちなみにこのタタウという言葉は「叩き込む」「書き込む」という意味があります。
デザインの意味
各島やエリアによって言葉が違うように、タトゥーのデザインも異なってきます。
ですのでタトゥーを見ただけでその人物のルーツが分かるほどでした。
一種の履歴書のようなものだと考えれば簡単でしょう。
そのため、映画「モアナと伝説の海」で全身に入れ墨を持つマウイの設定が、過去に起きた出来事が自然に入れ墨として体に現れる、となったのです。
デザインだけでなく、入れ墨を入れる体の部位によっても語られる物語が異なるというルールがあり、また、男性と女性で入れ墨を入れていい部位が違っていました。
しかも、入れ墨を入れてよいと許可される人物は村長であったり、その妻であったりと、村の中でかなり高い地位についていないと許されなかったそうです。
その他には、戦に負けて捕虜になった者に施す入れ墨もあったそうで、それは瞼に入れられたそうです。
デザインが意味する具体的なものとして以下のようなものがあります。
サモアのモチーフと意味
・サメの歯:男性らしい強さ
・コウモリ:母なる自然
・コウモリの集団:理想の家族
・太い黒帯:父から受け継いだ強さ
・チェック柄:家族やコミュニティーからの承認
・連続した三角形:乗り越えるべき難しい出来事
・槍先:勇気
・舟:安全
・舟に備えた明かり:先見の明
・鍵束:財産を管理する立場の人ハワイのモチーフと意味
・順応性:タコ、ウナギ、サメ、カヌー
・愛情:2枚貝、カモメ
・先祖:イプ(ひょうたん)、アウマクア(個人の守り神)
・覚醒:コル(わらび)
・均衡:釣り針
・美:ハイビスカス、エイ、ティアレの花
・超越:波
・誕生:イプ
・恵み:ティーリーブス、カヴァ
・大胆さ:槍の先
・絆:イルカ、組紐、ピコルア(∞の形のツイスト)(引用:ハワイを知るならローカル新聞【日刊サンWEB】より)
映画「モアナと伝説の海」に登場する海の動物の意味
映画「モアナと伝説の海」に登場するとても印象的な2匹の海の動物。
それはウミガメとエイ。
ウミガメは幼いモアナが子亀を助け、それがきっかけとなり「海に選ばれ」ました。
エイはもちろんモアナの祖母タラの背中に彫られているタトゥーで、亡くなったタラが生まれ変わった守護精霊でもあります。
もちろんこの二つにもタトゥーのデザインとして大きな意味がありました。
海亀はポリネシア文化において、海洋で最も優れたナビゲーターであり、長寿、幸福、耐久性の象徴でもあります。
海洋民族のポリネシアの人々にとって、海の上で自分たちの位置を知ることは何よりも大切な技術であり、ウミガメは生まれた浜辺を覚えていてどんなに離れた場所で育ったとしても必ず帰ってくるということで、その能力はポリネシアの航海士にとっての尊敬の的でした。
一方エイは、というと、砂の中にじっと隠れ、サメのような海の捕食の王をも騙してしまう賢さを持つとして、賢者としての意味合いを持っています。
村の中で唯一、昔の言伝えを信じ、ついにはモアナをテ・フィティのもとまで導いたタラ。
しかもその方法は、決して押しつけがましいものではなく、モアナ本人が自分で気が付くように仕向けています。
まさに理想の賢者ですね。
まとめ
映画「モアナと伝説の海」に登場するヘイヘイとプア。
彼らの映画ストーリーの意味を調べていくうちに、ポリネシア人にとって切っても切れない文化的関係の深い、タトゥーの歴史に行きついてしまいました。
が、残念ながらヘイヘイとプアとのモアナとの深い意味でのつながりは見つけることができませんでした。
あえて関連があるのでは、と思われる背景は、欧米の船乗りたちの間に伝わる、ニワトリと豚が航海から安全に戻ることのできる幸運のシンポル、ということだけ。
とはいえ、特にヘイヘイは、映画全体を通して鮮やかなスパイスを利かしている、素晴らしいキャラクターだとは思いますが。
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