アニメ「ダンジョン飯」に登場したキメラとハーピー。
キメラは狂乱の魔術師によって魔物と化したファリンの変わり果てた姿でした。
ハーピーは頭部が女性で、首から下が鳥という姿の魔物です。
今回はこのキメラとハーピーの元ネタに付いて解説していきたいと思います。
アニメ「ダンジョン飯」に登場したキメラの元ネタ紹介
アニメ「ダンジョン飯」二登場したキメラは、ファリンが狂乱の魔術師によって姿を変えられて、作り出されました。
ファリンの腰から下の下半身が、雄鶏となり、雄鶏の尻尾にあたりに爬虫類系と思われる鱗を持った胴体が続きます。
この姿は狂乱の魔術師によって作り出された姿ですが、元ネタを探ってみると、ファリンキメラとは似ても似つかない姿になっているのでした。
キメラの元ネタはギリシャ神話
キメラの元ネタはギリシャ神話になります。
そのギリシャ神話のキメラの姿は、ライオンの頭にヤギの胴体、尻尾がヘビというものでした。
その後、紆余曲折を経て、4足歩行の肉食哺乳類系動物にライオンとヤギ、そして竜の頭がついている姿も一般的にキメラとして認知されています。
その龍の頭がファイヤーブレスを吐いたり、竜の代わりに蛇の頭だったり、または翼竜の羽を持っていて空への飛行も可能、というキメラも見受けられるのでした。
ライオンの頭にヤギの胴体のキメラは、ヤギの頭が肩甲骨辺りから上に生えており、ライオンの頭の上にヤギの頭がある、といった形になっているのに対し、ライオン、ヤギ、竜もしくはヘビの頭を保つ場合は、ライオンを中央にして、その左右にヤギと竜の頭が並ぶ、という形が一般的です。
このキメラが現れるギリシャ神話は、英雄ベレロポーンに関するお話でした。
殺人を犯してしまったベレロポーンがその罪を清めてもらうため、ティーリュンス王プロイトスのもとに出かけます。
プロトイスによって清められたベレロポーンでしたが、彼の妻であるステネボイアがベレロポーンのことを気に入り、逢引きを誘います。
しかしベレロポーンはこの誘いには乗らず、彼女を拒絶するのでした。
ベレロポーンの拒絶に腹を立てたステネボイアは夫であるプロトイスに、ベレロポーンから誘惑された、と訴えます。
これにより、プロトイスはベレロポーンに対して怒るものの、彼自身ではベレロポーンを殺せないと判断し、妻の父が収める地、リキュアにベレロポーンを遣わすことにします。
その際に、リキュア王イオバテースに手紙を届けるように依頼するのですが、この手紙の内容こそ、ベレロポーンを殺害するように、という依頼が記されていたのでした。
リキュア王イオバテースは、手紙を読むと、ベレロポーンにキメラ討伐を依頼します。
内心はキメラ討伐を口実に、キメラによって殺されることを見越した策略でした。
しかしベレロポーンはペガサスを捕まえて飼いならしていたため、空からキメラに接近し、見事射殺すことに成功します。
その後、イオバテースは、二度、異民族の討伐を依頼し、殺害を試みるもベレロポーンはこれ粗見事撃退。
4度目に、リキュアの兵士たちで待ち伏せして殺そうとしたものの、これもベレロポーンによって全員討ち取られてしまいます。
ここに来て、イオバーテースはベレロポーンが英雄であることを認識し、彼の娘婿として迎えて、王権の半分を譲渡した、ところで、話は終わります。
このギリシャ神話に登場する、オリジナルのキメラは、話の流れから翼は持っておらず、空は飛べなかったものと思われます。
ただ、お話の都合上、翼を持ったタイプのキメラで、ベレロポーンがペガサスによって同様に空が飛べたからキメラと互角に戦うことができて、討伐することができた、という展開にすることも可能でしょうし、映像化するなら、そちらのほうがダイナミックな戦闘シーンを展開できそうです。
竜の首を持つキメラの誕生
ギリシャ神話に登場するオリジナルのキメラには竜の頭は含まれていません。
が、後に、竜の首を持つキメラが現れます。
これに至った経緯は、キリスト教が関係しているとされています。
キリスト教によって、竜は悪の存在であり、悪魔を象徴する代表格でもありました。
そのため、キメラにも竜が加えられ、悪魔として、認識されたのです。
更に、3つの異なる部位を持つ魔物であることから、「女性を表す」と考えられるようにもなりました。
ライオンの部分を「恋愛における相手への強い衝動」、ヤギの部分を「速やかな恋の成就」、竜、もしくは蛇の部分を「失望や悔恨」をそれぞれ表すという説。
または、その奇妙な姿から「理解できない夢」の象徴とされた説。
妄想や空想を表すともされていたそうです。
アダムとイブのお話から、人間がエデンの園を追い出された原因の一つに、イブがヘビにそそのかされて禁断の木の実、りんごを食べたから、という説があります。
これは、女性は生まれなが罪深いもの、という一種の差別的な考えにつながっており、その考えから、キメラのような、いろんな要素を併せ持つというステレオタイプ的な女性像と関連付けられた、と考えられているようです。
ファリンキメラとして登場
アニメ「ダンジョン飯」では、狂乱の魔術師によってファリンは、数体の別の生物の体と結合されたキメラにされてしまいました。
パッと見でも、雄鶏を連想する羽と前足、竜を思わせる胴体と後ろ足に尻尾が確認できます。
ファリンキメラ戦のあと、ライオスがカブルーに戦闘の結果、わかったファリンキメラについての考察を、嬉々として話していましたが、その際に、
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バジリスクにケルベロスやスキュラ
脳が複数ある魔物は結構いるんだ
いわゆるキメラ型に多い
と、話しています。
ここで「キメラ型」と発言しているのが、興味深くて、いくつかの生物が結合した形を持つ魔物を「キメラ型」と種類別できることを意味していると考えられるでしょう。
つまり、ライオスだけでなく、「ダンジョン飯」の世界では複数の生物の結合型魔物のオリジナルがキメラであることがわかるのです。
というわけで、ファリンも雄鶏、竜もどきが結合していることから、ファリンキメラと称されても違和感がないのだと思います。
アニメ「ダンジョン飯」に登場したハーピーの元ネタ紹介
ファリンキメラが登場する前に食事の準備をしていたところに現れた魔物はハーピーでした。
有翼の乙女、または人間の女性の頭を持った鳥の姿で表され、そのハーピーという名は「掠める女」を意味するのだとか。
死骸や、衰弱した動物の周りに群がる、屍肉を貪る鳥のように、数多くのハーピーが集まってきています。
といっても、ライオスやカブルー、シュローの一行で、瀕死の重傷を負って死にかけているようなメンバーはいませんでした。
冒険者を襲って食事にありつきたい、というのであれば、理由として理解できますが、それでも総勢16名の冒険者にわざわざ挑もうとするのは、よほどの大群で襲うのでなければ、いささかおかしい気もします。
じつは、ハーピーが集まってきた理由も元ネタに準ずる習性を持ち合わせていたからでした。
ハーピーの元ネタもギリシャ神話
ハーピーの元ネタもギリシャ神話です。
黄金の羊の探索で有名な、英雄イアソンの冒険「アルゴー号の探索」に登場するのでした。
そこで登場するハーピーは、イアソンたちを襲う魔物としてではなく、神々によって罰を与えられたピーネウスを苦しめるための使い魔として描かれています。
盲目の預言者であったピーネウスは、数々の予言を多くの人々にしたことで神の怒りを買ったのでした。
彼が食事をしようとすると、ハーピーが現れ、彼の食事をむさぼり食い、残った食べ物の上には汚物を撒き散らして帰っていく、という罰を与えます。
これによって、ピーネウスは飢餓に苦しめられていたのでした。
ピーネウスの助言を必要としたイアソン一行は、彼を苦しめているハーピーを退治することで、ピーネウスからの助言を得ることができます。
そして次にハーピーが現れたとき、無事、魔物を追い払い、しかもそれ以降、二度とハーピーがピーネウスのもとに現れなくなったことで、イアソンたちは助言を得ることができて、更に冒険を続けるのでした。
このハーピーの退治の際、物語によっては、英雄たちはハーピーを追いかけて討伐しようとした、というものもあります。
しかしハーピーの悲鳴を聞きつけ、ハーピーの姉妹である虹の女神イーリスが現れるのでした。
そしてイーリスは、ハーピーがゼウスの命令でピーネウスを罰していたこと、ハーピーを殺せばゼウスの怒りをかうこと、ハーピーを助けてくれれば、二度とピーネウスの前にハーピーが現れないよう約束すること、を告げます。
これによってハーピーは殺されずにすんだことになっていますが、この節で興味深いのは、ハーピーが虹の女神と姉妹であること、魔物だありながら、ゼウスに仕える存在であること、です。
ダンジョン飯では鳥の魔物
アニメ「ダンジョン飯」のハーピーもギリシャ神話のオリジナルの性格を引き継いでいる部分があるのでした。
それは、食べ物に対して貪欲なこと。
マイヅルの行き過ぎた熱意で準備されていた食事に勘付き、それを横取りしようとハーピーたちは集まってきていたのです。
さらに言えば、食事を横取りして貪り食った後、汚物を巻き散らかして帰っていくところは、オリジナル同様、「ダンジョン飯」世界でも行うそうで、非常に迷惑な魔物として認識されています。
一方で「ダンジョン飯」の世界ではゼウスは存在しませんので、ハーピーは、鳥と同じような習性を持つという設定になっています。
巣を作ってそこで雛を育て、食事を戻して雛に食べ与えるのでした。
さらに食事を奪う場所では汚物を巻き散らかす、汚い魔物ですが、驚くことに巣はとてもきれいだそうです。
自分の汚物はもちろん、雛の排泄した汚物も食すことですを清潔に保っているとのことですが、ハーピー自体はどれだけ汚いのか、と思ってしまうのでした。
まとめ
今回はキメラ、ハーピーの元ネタを紹介してみました。
どちらもギリシャ神話由来の魔物です。
英雄の冒険の最中に、クエストをクリアするための障害として登場するのでした。
面白いのが、キメラは後に女性の掴みどころのない心理や行動に結び付けられて考えられるようになります。
ハーピーも女性の頭を持つ魔物ですし、ギリシャ神話に登場する魔物を思い起こすと、メデューサやスキュラ、サイレーンなど、女性の姿をしたものが多いこと。
さらにはニンフと言った下級女神という存在もあり、ギリシャ神話における女性のとらえ方に、何らかの悪意というか、特別な存在であるという考えが根底にあるような気がします。
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