映画デトロイトのネタバレ感想とあらすじ!ラリー役のアルジースミスはどんな役者?

あらすじ

映画「デトロイト」は1967年に起こった実話を元に制作されたドラマ映画です。

以前、年末の「ガキ使・笑ってはいけない」シリーズではまちゃんが顔を黒塗りしたことが、「差別だ」ということで、一時期、いろいろ言われましたが、この映画「デトロイト」で起こった事件も元をただすと黒人差別に端を発するわけですから、改めて考えさせられました。

映画のような虐待が実際に行われた歴史を持つ国の人々が感じる「差別」行為とそういった歴史を持たない国の人々が感じる「差別」行為とは、線引が根本から違うのでしょうね。

アメリカの、ひいては人類の負の歴史の一コマとして、知っておいたほうが良い話ではありますが、映画を見終わっても自分の中で整理をつけるまで時間がかかったというのが正直な感想でした。




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キャストの紹介

フィリップ・クラウス: ウィル・ポールター
デトロイト市警察の警官。黒人差別主義者。
ラリー・リード: アルジー・スミス
R&Bバンド、ザ ドラマティックスのメインボーカル。事件当日モーテルに宿泊して事件に巻き込まれる。
メルヴィン・ディスミュークス: ジョン・ボヤーガ
モーテルの向かいの店でガードマンをしていた黒人。
ジュリー・アン
事件当日、友人のカレンとモーテルに宿泊していた白人女性。
カール・クーパー: ジェイソン・ミッチェル
ジュリーの友人。警備をする警官や軍をからかうためにスターターピストルを撃つ。

ネタバレあらすじ

1967年、アフリカ系の退役軍人の功績を称える式典がデトロイトで催されていました。

しかしデトロイト市警察はその式典が行われている最中に黒人オーナーが経営する違法酒場を摘発します。
その摘発現場で人々が警察に対して投石をし始め、やがてそれが商店の略奪や銃撃戦へと発展し、後に世にいわれる「12番街暴動」が始まってしまうのでした。

市警察だけでは対処できない規模にまで発展した暴動に、州知事は州軍の派遣を決定します。

そんな物々しく、ピリピリした雰囲気の中で、例えば幼い女の子がブラインド越しに窓の外で道路を移動する軍隊の戦車を見ていただけなのを、狙撃手が狙っていると勘違いした軍隊によって攻撃されるといった悲劇も起きていました。

デトロイト市警察は略奪犯の捜査に着手していましたが、暴動の混乱によって思うような捜査は出来ないでいました。

そんな略奪犯捜査の任務についていたデトロイト市警察のフィリップ・クラウスは容疑者の一人を発見します。相手は逃走し、それを追いかけるフィリップ。
そして持っていたショットガンを2回、相手に向けて発射します。

2発も命中しますが、容疑者は街の裏路地へ逃げてしまい、フィリップは追跡を諦めます。
しかし容疑者は傷からの出血で命を落とすのでした。

フィリップが行った発砲という行為は規則に違反していました。
上司によって咎められ、本来であれば、直ちに現場から外されるはずでしたが、緊急事態ということもあり、捜査を引き続けることになります。

その晩、フォード劇場で地元の黒人R&Bバンド、ザ ドラマティックスが出番を待っていました。
彼らにとってフォード劇場でのパフォーマンスは長年の夢で、それが遂に叶う時が来ており、興奮は最高潮に達していました。

が、出番の直前に、暴動のために劇場前の道路が警察によって閉鎖されることとなり、全員が劇場からの退去を命じられます。
気落ちするメンバーですが、観客もどんどんといなくなり、どうすることもできません。

彼らはバスに乗ってデトロイト市内を離れようとしますが、バスは暴徒と化した市民に襲われ、散り散りにバスから逃げ出します。

他の仲間とはぐれたボーカルのラリー・リードと友人のフレド・テンプルは近くのアルジェ・モーテルに泊まり、様子を見ることにします。

モーテルにはたくさんの泊り客がいました。
モーテルのプールサイドをぶらついていた二人は二人の白人女性に気がつきます。
ジュリーとカレンと名乗った二人はラリーがバンドのメンバーであることに興味をもち、彼とフレドを彼女の友人がとまっている部屋に誘います。

そこには数名の黒人男性がいました。若者たちはすぐに打ち解け会い、陽気な時間を過ごしますが、そのうちの一人カール・クーパーがスターターピストルを持ち出します。
そして友人と一芝居打って、暴発した銃で友人を傷つけたというドッキリを仕掛け、そうとは知らないジュリーとカレンの慌てた様子を見て大笑いするのでした。

騙されたジュリーとカレンは起こってしまい、部屋を出てベトナム帰還兵のグリーンの部屋に行ってしまいます。
それを機会にラリーとフレドも自身の部屋に戻るのでした。

残ったカールと友人たちは、浮かれて騒いでいましたが、ふと窓の外に道路を警備する州兵の姿を見つけます。
カールは悪ふざけの続きとして、スターターピストルを州兵たちに向けて発砲。音と火花に狙撃手の攻撃と驚く州兵の混乱ぶりをみて大笑いします。

しかし攻撃された州兵達は、それが空砲であることなどわかりません。
自分たちを攻撃する狙撃手がモーテル内にいるとして無線で援軍を要請。反撃し、狙撃手を拘束するために、モーテルに近づいて攻撃を始めます。

軍からの無線を受けたデトロイト市警察のフィリップもモーテルに到着し、ショットガンを片手にモーテル内に突撃します。

ちょうど軍の発砲に驚いて部屋から逃げ出して裏口へ向かうカールを見つけ、その背後からショットガンを発砲するのでした。

重傷をおって床に倒れるカールに近づき、フィリップはナイフを取り出してカールの横に起きます。
そしてやってきた州兵に、武器を持って襲ってきたので、やむなく撃ったというのでした。
カールは手当されることなく、そのまま出血死してしまいます。

モーテルの向かいの店で警備をしていたメルヴィン・ディスミュークスも銃撃戦の音を聞きつけて様子を見に来ます。

メルヴィンや州兵の前で、フィリップと同僚二人はモーテル内に残っていた全員を一階の廊下に集め、全員壁を向いて一列に立たせ、誰が狙撃手で銃はどこにあるか、を問いただします。

モーテル内を調べても銃は出てこず、だれも銃のことは知らないと答えるだけの状況に業を煮やしたフィリップは、容疑者の一人をランダムに選び、部屋の中へ連れていってドアを締め、外から見えない状況にして、処刑をしたように見せかけます。

こうして残りの容疑者を怖がらせ、自白させようという「ゲーム」を始めたのでした。

意に反してこのような状況に参加せざるを得なくなった州兵のメンバーは、やがて一人、そしてもう一人とフィリップに気が付かれないようにその場から消えていくのでしたが、誰ひとりとしてフィリップの違法行為を報告する者はいませんでした。

あまりのストレスにジュリーとケレンはヒステリーを起こしてしまいます。
ケレンが叫ぶのを止めないことに辟易したフィリップともう一人の警官は二人を2階へと連れていき、抵抗するジュリーの服を剥ぎ取るのでした。

駆けつけたメルヴィンと州兵の一人が彼女たちを保護し、ホテルから連れ出します。
こうして二人は最悪の現場から離れることができたのですが、残されている友人のことを心配するのでした。

フィリップはパートナーに一人を選んで「ゲーム」をするように指示します。
ところが、パートナーはフィリップの「ゲーム」のことをきちんと理解しておらず、本当に何もしゃべらない容疑者を射殺してしまうのでした。

そのことに気がついたフィリップは慌てふためきます。このままでは違法捜査と暴行・殺人で逮捕されてしまいます。

この場を収拾して抜け出さないといけないとし、残った容疑者を一人ずつ連れ出して今夜のことを誰にも口外しないことを誓わせ、モーテルから出すのでした。

しかし最後に残ったフレッドは、黙っていることに合意しません。フィリップはフレッドを始末するのでした。

暴動が終わり、メルヴィンが昼の仕事をしている工場に警察が現れます。
事情を聞きたいとのことでしたが、連れられていった警察署では、アルジェ・モーテルで黒人の若者3人が殺された容疑者としてでっち上げられ、捕まってしまうのでした。

一方、フィリップと二人の同僚も調査を受けます。フィリップはとぼけ続けますが、同僚二人は白状し、三人共逮捕されるのでした。

ザ ドラマティックスは音楽活動を続けていましたが、ラリーは事件のトラウマから以前のように歌が歌える心境でなくなり、バンドを去ることにします。

フィリプと同僚二人そしてメルヴィンの裁判が始まりますが、白人の判事と全員白人の陪審員で構成された裁判では、メルヴィンの証言も、同僚二人の自白も証拠として認められず、4人全員が殺人と暴行それぞれについて無罪の判決を受けるのでした。

ラリーはその後、ザ ドラマティックスの成功を喜びつつ、彼自身は教会で聖歌を歌い始めます。それは、理不尽に殺された友人のフレッドの冥福をいつも祈っているかのように。

映画は、主な登場人物のその後の人生を紹介して終わります。

メルヴィン・ディスミュークスは事件の真相を知っていることから命を狙われるという恐怖に悩まされ、デトロイトを離れました。移り住んだ街でも警備員として働いたそうです。

フィリップ・クラウスと同僚は警察を解雇にはなりませんでしたが、現場で捜査に携わることは2度とありませんでした。
数年後、法律が変わり、3人のうちの1人が再び裁判にかけられることになりました。
そして被害者の家族に5,000ドルを支払うことで和解したとのことです。

ジュリー・アンは事件から立ち直り、4人の子宝に恵まれ、幸福な家庭生活を送っています。

ラリー・リードはその後も教会で聖歌を歌い続け、居間もデトロイトに暮らしています。




ネタバレ感想 1 アルジェ・モーテル事件と12番街暴動が起こった当時の背景は?

アメリカ国内では1960年代後半に黒人による暴動が多数おこっていましたが、その理由は平等を求める公民権運動、ひいては黒人差別をなくす運動が盛んになってきたことでした。

当初は比較的平和的な運動をしていましたが、そのスピードであったり、結果として手に入れたものに対する不満足感であったり、と黒人の中でより過激な運動を行うように主張する指導者が現れ始めます。

しかし元々黒人が白人社会に進出してくることを快く思っていない白人のグループもおり、また、過激化する黒人の公民権運動に対抗するために過激な対策をしなくてはならなくなったこともあり、暗殺や暴動が起こるようになってくるのでした。

この頃デトロイトでも黒人による暴動が度々発生しており、特に1967年という年は159回もの暴動が起こっていました。
この7月23日から27日までの5日間に起こった別名「12番街暴動」は死者43人、負傷者1,189人をだしたアメリカ史上でも最悪の暴動の一つです。

そんな中、暴動の3日めに当たる7月25日、黒人たちがよく利用することで知られていたアルジェ・モーテルで事件は発生しました。

その当時、アルジェ・モーテルは警察の間で売春や薬物の売買などの違法行為が行われる場所として有名という認識でした。
ですので、映画のようにたとえ偽の発砲騒ぎが持ち上がったとしても、警察としては過剰に反応するのは仕方がなかったでしょう。

特に大規模な暴動が起こっており、いつもよりも神経質になっていたことは想像に難しくありません。

映画ではそのような当時の背後事情がわかりづらいこともあり、例えば黒人オーナーのモグリのバーが摘発されただけで、あそこまで大きな暴動が発生したのか、また銃が発せられたとはいえ、あそこまで大掛かりに応戦し、その後、違法な尋問がなされたのかという疑問がでたかもしれません。

しかし、それ以前の背景を知るとあのような事件が起きてしまったのも、納得がいくのではないでしょうか。

とはいうものの、「納得」はできても「理解」は出来ないというか、したくないし、フィリップ・クラウスがしたことの正当化には絶対にならないですけどね。




ネタバレ感想 2 はまちゃんの黒塗りが差別といわれることについて

年末のガキ使・笑ってはいけないアメリカンコップでハマちゃんがエディ・マーフィーのモノマネをしたことが、黒人への差別だ、と騒ぎになったことについて、この映画を見終わった後に感じたことも交えて、少し書いていきたいと思います。

ほとんどの日本人があのシーンを見て、はまちゃんが黒人差別をしていると感じた人はいないと思います。

僕もそんなことは感じませんでしたし、単純に面白いと思って笑っていました。
(最近女装が多かったから、今年も女装かな、と思っていたところがエディ・マーフィーだったので、意外性もあったオオウケでした。)

ただその後に、日本在住の黒人バイエ・マクニール氏からの意見を読んで、ああこれは、と思ったのです。

もう一度いいますが、日本人は誰一人として黒人差別だと認識していなかったと思います。
つまり差別表現としてテレビ演出されたのではない、と。

ただ、それは日本という限られた社会の中だけで許される表現で、世界基準で言えば、黒人でない人が顔を黒塗りにしているという行為が黒人差別をしている行為になってしまうということが、日本国内ではあまりに知られなさすぎていたことを思い知らされました。

そしてバイエ・マクニール氏の危惧するように、もし日本のテレビがアメリカで既に差別表現として一切放送していない、笑いを取るための顔の黒塗りをしていることを、例えばオバマ前大統領やその夫人のミッシェルさんといった世界規模で影響力のある人達が偶然目にした時の不利益は、とんでもないレベルになるということは、簡単に想像がつくと思います。

例えば今、大相撲で多くの問題が次から次へと出てきています。
その多くの原因は角界に所属する人々がこれが正しい、これで間違いはないとしている判断基準が世間一般と比べておかしいことです。

ですので、問題を起こしたり、問題がさらに大きくなったりしていると言っていいでしょう。

「黒塗り」に関していうならば、日本全体が大相撲の問題における角界側の人々という位置になります。

その中での常識で、「黒塗り」の問題は差別を意識しない、単純に笑いを取ろうとした問題のない行動だったわけです。

ところが世界規模でいう常識は、やっている本人にその意識はなくても「黒塗り」は差別行為である、というイコールの認識が出来上がってしまっています。

僕にはバイエ氏の意見を通じてこのことを知ったとき、彼は「そのつもりがなくても黒人が見たら、差別されていると感じるからやめてくださね。日本を代表するテレビ局の一つが年末の最も人気のある番組シリーズで世界基準を知らずに放送していると、日本全体がレベルを疑われることになりますよ。」と忠告してくれたと受け取れました。

そして今回の映画「デトロイト」です。
黒人と白人との対立や黒人差別の結果からの悲劇から、このような人を人とも思わない扱い方をする蛮行が行われていたことを、映画という映像を通してマナマナしく体験してしまうと、僕のような日本人が受け止めている黒人差別の歴史以上に暗く重い物を抱えているのだと感じました。

それがあるからこそ、それを見た黒人が嫌悪感を感じる「黒塗り」という行為を、たとえしている本人が、黒人を貶めるという意識がなかったとしても、するべきでないという世界基準に、納得がいってしまいました。

ネタバレ感想 3 ラリー役のアルジー・スミスについて

映画「デトロイト」に出演した俳優の中では、やはり「スターウォーズ」シリーズに出演しているジョン・ボヤーガが一番の有名ドコロでしょう。

映画を見た後の感想としてはフィリップ役を演じたウィル・ポルターとラリー役を演じたアルジー・スミスの演技が光っていたと思います。

今回の事件を引き起こした差別主義者の警察官フィリップの非道さをこれ以上にない形で演じて表現し、おそらく見た人全てから嫌われたことだと思いますが、ウィル・ポルター自身もこのフィリップという役は大っ嫌いだったと後のインタビューで答えています。

そしてラリー役のアルジー・スミスですが、1994年11月生まれの23歳。俳優としての活動は2012年の18歳の時からです。

テレビドラマへの出演がメインですが、2014年に公開され、日本には翌年の2015年に公開された映画「アース・トゥ・エコー」で主人公の一人の兄弟として出演しています。

また2018年公開予定の映画「The Hate U Give」でメインキャラクターの親友で、白人警官に射殺されてしまう男性の役を射止めています。

ちなみにこの映画「The Hate U Give」(直訳すると「アナタがくれた嫌悪」でしょうか)はアンジー・トーマスという黒人女性の書いたデビュー小説が元ネタで、この小説は2017年のニューヨークタイムスで青年部のナンバーワンベストセラー小説に輝いています。

10代の青年向け小説でベストセラーに輝いた小説の題材すらも白人警察による黒人射殺事件に関連したもの、という現実に今もまだアメリカの中での黒人差別問題は終わったものではないと思い知らされました。

話をもとに戻し、アルジー・スミスに関してですが、彼は歌手でもあります。
この「デトロイト」の公開と時を同じくして「Listen EP」というアルバムもリリースしました。

また、映画に合わせてラリー・リード本人とともに曲「Grow」を発表。その様子の動画が公開されています。

映画の撮影中、監督のキャスリン・ビグローは参加した役者たちに先入観を持たせないよう事件に関しての情報を全く渡さずに撮影を行ったそうです。

ラリー・リードやジュリー・アンらが在命しているのですが、彼らも撮影に参加したそうで、アルジー・スミスはすべての撮影が終わったその現場でラリー・リード本人と対面したそうです。

その後、二人の交友は続き、ラリーの自宅で3時間も話し込んだこともあったとか。
しかしラリー本人から事件のことを詳しく聞くことはなかったそうで、未だラリーには重く暗い過去であって、その時亡くした友人の写真が今でも飾られていたとアルジー・スミスはインタビューで答えていました。











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