「モアナと伝説の海」はディズニーアニメらしく歌あり、冒険ありで大人から子供まで楽しめる映画だと思います。
とはいえ、今までの女性が主人公のディズニーアニメとしては、
-
・西洋が舞台ではない
・新しい舞台での物語
・元ネタになる原作童話もない
という一風変わった作品でした。
そんな「モアナと伝説の海」がどうやって作られたのか、映画のトリビア、そして製作における裏話を調べてましたので、紹介してみたいと思います。
「モアナと伝説の海」と主人公「モアナ」誕生までの裏話
ディズニーアニメ「モアナと伝説の海」はディズニーアニメの第56作目の作品。
ジョン・マスカーとロン・クメルンツがタッグを組んで「プリンセスと魔法のキス」に続いて監督をした映画です。
この二人のコンビでの監督作品には
-
・リトルマーメイド
・アラジン
・ヘラクレス
というヒット作もある、ベテラン兼ヒットメーカー監督でした。
そんな二人でしたが、「プリンセスと魔法のキス」の後、次の映画についてアイデアを固めていたのが、イギリスのファンタジー小説のアニメ化。
ところが、この作品を映画化するための権利を取得する過程で問題が発生し、話は進まなくなってしまいます。
ちょうどそのころ、ジョンが手にして読んだポリネシア神話。
その面白さに惹かれたジョンは、
- この神話をベースにアニメ映画を作ってはどうか?
という考えを持つようになったのでした。
相棒のロンにも話をし、興味を持ってくれたこともあり、映画化の話が進み始めます。
そんな時、「モアナと伝説の海」で製作総指揮を担当したジョン・ラセターの強い勧めがあり、実際にポリネシアに出向いてその土地の人々や文化、風景や歴史などを学ぶロケハンに出かけるのでした。
このロケハンは出来上がった作品にとても大きな影響を与えており、ポリネシアの人々、風景や文化、特に音楽を忠実に描くことができたのですが、何よりも「モアナ」という新たなディズニープリンセスが産まれる結果となったのです。
というのも、当初の構想では、監督の二人は「ヘラクレス」のように全編マウイの話にするつもりでいたからです。
ロケハンはフィジー、サモア、タヒチで行われました。
その地で出会った女性たちの魅力に取りつかれた二人は、映画を、ロンのアイデアである、ポリネシアの女性、村長の娘を主人公にした物語にすることに決めたのでした。
ちなみにポリネシアという地域がどこなのか、という説明をしておくと、
太平洋で、
・ミッドウェー諸島(北西ハワイ諸島内)
・アオテアロア(ニュージーランドのマオリ語名)
・ラパ・ヌイ(イースター島)を結んだ三角形(ポリネシアン・トライアングル)の中にある諸島の総称
こちらの地図で紫で示されている三角形の地域
(引用:ウィキペディア)
となります。
「モアナと伝説の海」の制作秘話と文化考証の裏話
このロケハンもそうですが、ポリネシアの人々、文化、歴史を知ることで「モアナと伝説の海」という映画が、どんどんと形作られていくのでした。
ポリネシアの歴史
監督の二人は、ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの歴史を学んでいて知ることとなった、突然の「長距離航海の停止」にとても興味を持ちました。
これまでの研究によって、歴史的に分かっているのは、ポリネシアの人々は我々と同じモンゴロイド系のの民族であることです。
簡単にまとめてみますと、
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・紀元前2500年ごろ、台湾から南下を開始
・紀元前2000年ごろ、フィリピン、インドネシアに到達
・紀元前1100年ごろ、ニューギニア諸島を経由し、フィジー諸島まで到達
・紀元前950年ごろ、サモア諸島・トンガ諸島まで到達
・その後、移動が止まる
・西暦300年ごろ、エリス諸島やマルキーズ諸島、ソシエテ諸島・イースター島に移住
・西暦400年頃にハワイ諸島
・西暦1000年頃にクック諸島やニュージーランドに到達
となるそうです。
この突然のポリネシアの人々の移動停止の理由は、いまだにわかっていません。
研究者の間では、気候変動による海流や風のパターン変更が理由ではないか、といわれています。
監督の二人は、このポリネシアの人々が急に長距離航海を辞めてしまい、約1000後に再び長距離航海に出かける、という歴史的イベントを映画の核に据えることを決めたのでした。
と、同時にモアナの故郷であるモトゥヌイ島は位置的にフィジー、サモア、トンガの島々の一つとして、現実の島の風景をもとに描かれたのです。
ストーリーの文化考証や描写の正確性
映画の制作を進めていくにあたって、ポリネシアの文化を正しく伝えることは最重要項目でした。
監督らはそのために数多くの専門家からアドバイスを受けることにします。
歴史学者、文化人類学者はいうに及ばず、音楽家、伝統舞踊家、漁師、タトゥーアーティスト、ミュージシャンなどなど。
完成までに5年の年月をかけ、9つにも及ぶストーリーアイデアを構築しては解体し、を繰り返して完成させたのです。
例えば、文化考証によって修正されたものとして、
-
・マウイの髪型が丸坊主であったのが、長髪に代わった
・ココナッツに八つ当たりするモアナのシーンをカットした
(ココナッツは大事な食糧であり、ポリネシア人にとっては神聖な物であるため)
などがあります。
ストーリーアイデアで、結果的にボツとなったものとしては、
- ・モアナが海で遭難した父親を助けに行く
というものであったり、
- ・モアナに兄弟がいて、彼らの影響で航海に出ることになる
というものだったり、でした。
その他にも、モアナの苗字が「ワイアリキ(Waialiki)」であったらしいのですが、こちらはなぜか、映画ではカットされてしまっていました。
この考証作業は厳格を極めており、登場するキャラクターがしているタトゥーデザインの監修者として参加した先祖代々のタトゥーアーティストで6代目に当たるサモア人の「スア・ピーター・スルアペ(Su’a Peter Sulu’ape)」がすべてのタトゥーデザインとタトゥーマーキングに目を通しました。
航海のシーンでマウイやモアナが行ったロープの使い方、操船術もフィジーの漁師によってすべてチェックされています。
制作スタッフによって、すべてにおいて専門家の確認が済むまで、最終決定されることはなかったことがインタビューで証言されていました。
監督にとって初のコンピューターアニメーション作品
監督の二人、ジョン・マスカーとロン・クメルンツにとって「モアナと伝説の海」は初めてのコンピューターアニメーション作品でした。
-
・時代的な流れ、特にディズニーアニメーションスタジオ内の方針
・「プリンセスと魔法のキス」が2Dアニメーションであったことも興行的に成功しなかった理由の一つであったこと
などが理由に挙げられますが、映画の題材でもある
- 「太平洋の航海」
と
- 「ポリネシア人の堀の深い顔つき」
を表すには、手描きのアニメーションよりもコンピューターグラフィックのほうが優れていることが、主な理由でした。
実際に、「モアナと伝説の海」で背景場面としてかなりの割合を占める海のシーン。この海を表現するために、新しいシステムを開発して撮影に臨んだほどなのです。
そんな映画「モアナと伝説の海」ですが、作品中、唯一手描きのものがあります。
それはマウイのタトゥー。
これはすべてセルアニメの手法によって描かれていたのでした。
題名に関するトリビアと後日譚・ポリネシアへの恩返し
世界的に大ヒットした「アナと雪の女王」のように、「モアナと伝説の海」も世界各国で、その国の言語に翻訳されて上映されました。
しかし「モアナ」という固有名詞が題名に入っているために、実はいくつかの国では題名を変更し、主人公である「モアナ」の名前を変更しなくてはならなくなったエピソードがあるのです。
スペインではすでに「モアナ」という言葉が商標登録されて使用できないために、変更となりました。
またイタリアでは、「モアナ」というとイタリア出身の有名なセクシー女優を連想するという事情があったため、こちらも安全を期して変更されたのです。
関連記事:ディズニー&ピクサーアニメで国地域によって内容が変わる作品トリビア10選!
また、世界的な成功を収めた「モアナと伝説の海」は、2016年10月25日に世界で初めてタヒチ語に吹き替えられたタヒチ語版の制作が発表されました。
翌2017年6月、ニュージーランドを中心として話されていたマオリ語の吹き替え版が制作発表され、11月にはハワイを中心にしたハワイ語の制作も発表されます。
ハワイ語版の「モアナと伝説の海」は2018年6月10日に公表され、その後、ハワイの学校に無償で寄付されました。
これらの言語版の「モアナと伝説の海」は家庭用ビデオとしての販売はされていません。
「モアナと伝説の海」のトリビア・制作秘話・裏話を知った上での感想
まず「モアナと伝説の海」をみたときには、南太平洋の海と島の風景の美しさを、持て余すことなく、素晴らしい画像で再現していることに驚きました。
そして、そこの島で暮らす人々の生活の様子も、敬意をもってきちんと描いていることにとても共感を持ちます。
よく、北米の映画やドラマで日本人や日本の風景を描こうとしながら、実際は日本と中国の違いを全く分かっていない描かれ方がされていることをよく目にします。
特に日本人という設定でありながら、実は中国人のような恰好、振る舞いをしていたりすると、本当に興ざめしてしまいませんか。
中国人俳優が日本人を演じていることに関しては、そこまできっちりさせないといけない、と言い出すと、ハリウッド映画におけるポリティカルコレクトネスの不毛な問題にまではまっていきそうですので、止めにしておきますけど。
が、最低でも何人が演じようともその演じる人種の文化に敬意を表し、それをきちんと学んでから演じてほしいとは強く思いますね。
そういった流れにディズニーはすごく気を使っているのでしょう。
またディズニー作品の対象が子供や子供のいる家族ということもあり、間違ったステレオタイプの知識を植え付けてしまわないように、とても気をつけていることを強く感じました。
ストーリーとして、モアナという少女が、成長をしていく過程を、重要な任務を遂行するという冒険を通して描いています。
ですが、僕は個人的に、モアナが成長していくのを助けるキャラクターとして、重要な位置にいるマウイに、とても好感を持ちました。
実際、二人はそれこそ凸凹コンビのような、コミカルなやり取りをしながら目的を果たそうとします。
一度は失敗し、その責任をモアナにあると責めて、立ち去ってしまうマウイ。
その行為が、さも自然に、うまくいかなかった苛立ちとともに描写されていますが、思わず僕は、さらに深読みしてしまいました。
マウイがモアナに対して、無理だ、不可能だ、とあきらめさせる言動をし、実際にモアナのもとを去るのですが、そんな逆境に置かれても自分一人でやり遂げてみせるという自立心を見せてほしいために、わざとモアナのもとを去ったのではないか、と。
その裏には、人間の尽きることのない欲望をかなえ続けてきたマウイの反省もあったのではないでしょうか。
具体的に言えば、おなかが減ったと魚を要求する人間に魚を与えるのではなく、魚をとらえるための技術の知識を教えたほうがいい、というようなことです。
自らの力で手に入れることのできる能力を示したことで、ポリネシアの人々はまた長期航海に出られるようになったのではないか、そんなことを思ってしまいました。
関連記事:映画「モアナと伝説の海」でのマウイの役割とは?モアナとの関係も考察!
まとめ
映画「モアナと伝説の海」は、ディズニー初のポリネシアを舞台とした作品。
そのため、ポリネシアに伝わる文化、伝統、人々、歴史を現地に赴き、長い時間かけてリサーチして映画を作り上げたのでした。
制作中も、ポリネシアの専門家や現地人に常にアドバイスをもらい、きちんと正しく伝えられているかの監修をお願いしているほどの徹底ぶり。
それは見事に成功し、映画の成功後、タヒチ語、マオリ語、ハワイ語での吹き替え版が制作されるという偉業がなされました。
ハリウッドでも「ポリティカル・コレクトネス」という機運がどんどんと高まっている中、主張によってはそこまで、と感じてしまう行き過ぎではないかと思う意見もあるようにみうけられます。
しかしディズニーが「モアナと伝説の海」で行ったリサーチには、ポリネシアに対するリスペクトが感じられ、とても心温まる制作裏話で、知ってよかったと思いました。
さらに「モアナと伝説の海」が好きになってしまいました。
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関連記事:ディズニーアニメ映画「モアナと伝説の海」を視聴するには
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