SFを舞台にしたラブストーリー「パッセンジャー」のネタバレと感想、おまけ紹介です。
アカデミー賞の作曲賞と美術賞にノミネートされましたが、宇宙を表現するその映像は、
アカデミー賞のノミネートも納得の美しさでした。
そんな映像をスクリーンに再現させることができた技術と努力はとても素晴らしいもので、
それだけでもぜひ鑑賞することをおすすめする作品です。
予告動画はこちら&キャストの紹介
キャストの紹介
ジム・プレストン: クリス・プラット
星間移民船に乗り込んだメカニック。故障により一人だけ長期冬眠から目覚める。
オーロラ・レーン: ジェニファー・ローレンス
星間移民船に乗り込んだジャーナリスト。ジムより遅れること約1年後に長期冬眠から目覚める。
アーサー: マイケル・シーン
星間移民船のバーで働くバーテンダー アンドロイド。ジムやオーロラの良き話し相手となる。
ガス・マンキューゾ: ローレンス・フィッシュバーン
星間移民船の乗組員。デッキチーフ。長期冬眠から目覚めた3人目。
乗組員幹部: アンディ・ガルシア
星間移民船乗組員幹部。目的地到着寸前で目覚めた乗組員達の一人。ラストに登場で台詞も無し。
前半のあらすじ 90年一人で宇宙船内で過ごす悲劇に見舞われた男(注)ネタバレ有り
ジム覚醒 状況を把握し、打破しようとする
20XX年、増えすぎた人口と科学に発達によって移住可能な惑星に移民を送るビジネスを行う
ホームステッド社による豪華宇宙船、アバロン号がホームステッドⅡコロニーと名付けた
惑星に向け、航行中でした。
宇宙船はオートパイロットシステムで自動航行をしており、乗客は5000名、乗組員は237名は
冬眠ポッドで眠りについています。
小惑星帯を通過中、大きい隕石に衝突。幾つかの故障がありましたが、これもコンピューター
による自動修復装置によって即座に修理されていきます。
しかし冬眠ポッドの一つが作動し、中で眠りについていたジムが覚醒します。
長期冬眠のあとのため、体の機能が正常に働かず、ボーッとしたままガイダンスに沿って
自身の客室に誘導されるジム。シャワーを浴びたりしてようやくスッキリし、身だしなみを
整えおわった彼は他の乗客とのどんな出会いがあるか、期待と不安に胸に船内に繰り出します。
ところがジムは異変に気が付きます。
ホームステッドⅡコロニーで新しく始まる生活についてのガイダンスに参加しているのは
彼一人。メインロビーは愚か通路さえも、船内のどこに行っても誰ひとりとして見つける
ことができません。
総合インフォメーションの情報キヨスクで得られる回答は全く的を外れたものばかり。
ようやくデッキにて得られた航行情報では衝撃の事実でした。
120年かけてホームステッドⅡコロニーに向かっていますが、到着までまだ90年かかると
言うのです。
とんでもない事態に陥っていることをようやく理解したジムは、地球のホームステッド社に
連絡を取ることを試みますが、そんな緊迫した状況を理解しないコンピューターは高額に
なるとの警告を親切にしてくれるのでした。
わらにもすがる気持ちで通信を送ったジムに「メッセージの到着は15年後、返事は最短で
55年後になると思われます」という非常な通知。料金も$6012、と1分にも満たない動画で
助けになるかどうかもわからない状況にも、容赦ない請求をされるのでした。
メカニックという立場であることから冬眠ポッドで再度長期冬眠に入ることを試みますが、
同じ装置で冬眠につくことは不可能でした。
乗組員を起こそうと試みますが、彼らが長期冬眠している区域には一般乗客がアクセスできない
設計になっており、ありとあらゆる工具によってこじ開けようとしますが、全てが徒労に
終わります。
すべての希望を立たれたジムは、メインロビーにあるバーで働くバーテンダーのアーサーを
見つけます。他の人間に出会えたと喜んだのもつかの間、彼はアンドロイドでした。
生活を楽しもうとするも結局孤独感に堪えきれない
それでも万全ではないながら、会話を楽しめる唯一の存在にジムはバーで過ごす時間を
増やしていくのでした。
他人との関わりがなく、生きている目的もない日々が続く中、ジムの生活はすさんでいき
ます。
一般乗客として乗り込んだため、高級乗客しかアクセスできないスイートルームに入り込んで
生活したり、ゲームや運動をしてみますが、やはり一人ではすぐに飽きてしまいます。
他の人と出会うこともないため身だしなみを気にする必要もなく、散らかしたとしても
お掃除ロボットが片付けてくれる。
そんな無為な生活を繰り返していたジムは他の乗客が眠る冬眠ポッドが並ぶエリアへ出向き、
他人の顔を眺める様になります。
そしてある時、そのエリアの先に船外に出て宇宙遊泳が楽しめる場所があることに気が
付きます。
未体験の宇宙遊泳に出て、想像を絶する用な美しい景色を眺めながら、ジムはそれを楽しむ
ことが全くできないほど、孤独に押しつぶされそうになっているのでした。
宇宙遊泳を終え、宇宙服を脱いだジムですが、このまま装備をつけず、生身の体で宇宙に
出たらどれだけ楽になるのだろうかという考えがよぎります。
フラフラと足を進めますが、最後、このボタンを押せば何もかも終わりにできるという瞬間で
結局死にきれずに船内に戻って咽び泣くのでした。
コメント
読み応えのある総評、楽しんで読ませて戴きました。
ありがとう。
期待以上に面白い映画でした。
賛否となった「ジムがオーロラを起こした行為」ですが、僕はうまく回収できていると思います。
勿論この行為自体は許される事ではなく、その行為そのものは劇中内でも決して肯定されることはない。
だから、映画を見終わった段階で僕はこの作品に対して「否」にはならなかった。
んで、その回収方法ですが、
原案の脚本では、他の5000人以上が死ぬことで、「起こされていなければ、オーロラもこの時点で死んでいた」と言う形にすることで、「起こして良かった」と成立化させた。
一方映画では、冬眠し直す方法を見つけ、過ちを取り返せる(オーロラからすれば、被害を取り戻せる)状態になった、そのうえでオーロラが自分の意志で共に起きている事を選ぶ事で成立された。
原作案はあくまでも結果論でしかなく、オーロラも「起きて良かった」と思ってはいるだろうが、自分の選択が及ぶ範囲の話では無いので、いわば消極的結論。ジムも自分自身で何か責任を果たした訳ではない。むしろ5000人を死なせてしまったのはマイナスの出来事。
映画版はオーロラ自身で、自分にとって幸せはどちらかを自分の意志でキチンと選択してるので、積極的選択。
ジムも、オーロラに本来の人生を取り戻させる方法をオーロラ本人に提示できた。
他の5000人を殺す事で成立させる原案よりも、自分で幸せを選び、他の大勢も不幸になってない映画版が好きだ。
あと、原案の「生き残った男女が人類の再建のために子供を大勢作ってアダムとイブになる」ってのは、正直やりつくされてる感があって好きではない。
藤子不二雄さんの漫画にもあったし、昔から良くあるアイディア。
これが映画の結末だったら、「ありふれた結末の作品だな」って印象で終わってた。
だから僕は映画版で良かったと思う。
ほしほしさん、コメント、ありがとうございます!
このパッセンジャー、本当にうまくできているな、と今思い出しても感心してしまいます。
唯一、僕の中で違和感があったのはあそこまで毛嫌いしていたオーロラがジムへの態度を変えていくあたり。
ガスが起きたせいでオーロラが自分の中にたまったうっぷんを吐き出せたからなのかも、と今になっては思ったりしますが。
あと、二人の間に子供ができたのかどうか、はっきりとは語られていないところもよかったかなと。
今となっては、ふたりは幸せだったとは思いますが、どちらかが寿命で先に逝ってしまったあとは、生き残ったほうにどんなインパクトがあったのか、なんてことも考えてしまいます。