ネタバレ感想 1 いざという時のアメリカの底力を感じる
今回の映画で一番最初に感じたのは、いざという時のアメリカの底力でした。
事件発生から100時間ちょっとで犯人逮捕しています。もともと同時多発テロ事件以来、
有事に備えて色々と準備し、対策を取っていたので、その効果が出たのでしょうが、
それでも、いざという時に一つになったアメリカはやはりすごい、と思わざるを得ません
でした。
実際に起こった事件ですので、ノンフィクションのように登場人物が事件の起こる前から
全て知り合い、みたいなことはありません。
そのため、初めの10分程度に登場する人々が一体誰なのか、事件にどう関わってくるのか、
全くわからず、少し混乱してしまいます。
特に、事件の詳細を知っていれば、ああ、ここで出てくるのだな、とかあそこで事件と
関わった人だな、と目星がつきますが、僕はボストン・マラソンで爆弾テロが起こって
犯人の兄弟二人が一人は死んでもう一人がボートの中に潜んでいる最中に捕まった、としか
覚えていませんでしたので、ウォータータウンの警察巡査部長や、MITの警備警官、中国人の
男性、白人夫婦の事件前の生活を映画で映し出しても今ひとつ、誰が誰で、どう話に
関わって来るかがわかりませんでした。
爆発発生時は、何がおきたかわからずパニックになっていましたが、けが人の治療、
病院への搬送が一段落すると、封鎖した事件現場から一斉に遺留品を確保し、特に防犯
カメラの映像や、個人の携帯の映像を集めて、人海戦術で不審者がいないかどうかを
徹底的に割り出す作業はすごいを通り越して恐ろしいまでです。
あっという間に不審者が見つかり、時間を遡って他のカメラの映像を確認。足取りを辿って
二人目の犯人らしき人物まで割り出します。
今の時代、都会にはカメラがいたるところにあり、また大きなイベントでは皆がスマート
フォンをつかって映像を取っているので、それらを集めれば、まず間違いなく不審者を
特定できるのでしょう。
今では、セキュリティーカメラシステムを利用して挙動不審な人物を事前に特定し、未然
に事件を防ぐということも試されています。
ある意味、行き過ぎでは、と思う一方で、昨日起きたイギリスのコンサート会場での自爆
テロなどがあると、こうでもして未然に防ぐ手立てを確立しないと仕方がない世の中に
なってしまったのかな、と悲しくなってきます。
ネタバレ感想 2 北米での評判は?地元ボストンはどう思ってる?
犯人の追跡から銃撃戦、一人だけ逃げた犯人の捜索など、かなりスリリングでアクション
の効いた映画展開になっています。特に爆弾を持っていていざとなれば自爆しかねないと
いう状況で、手に汗握るハラハラ・ドキドキが楽しめました。
北米での評価も概ね良好で、中には「テロ映画の傑作の一つ」と評する声もあるようです。
一方で地元ボストンの新聞ではあまり良い評価はありませんでした。
少し驚きましたが、よく考えれば当たり前かもしれません。
実際に起こった事件を題材としており、映画を見れば思い出したくない記憶を呼び覚ます
事になってしまうからです。
テロに屈しないと街が一つとなって犯人や事件に立ち向かいましたが、それをハリウッドの
有名俳優が、存在もしないヒーロー警官となって解決していくというのに耐えられないの
かもしれません。
名もないボストン市民、一人ひとりが力を合わせてテロに屈せずに解決に導いたわけです
から、たとえそういう演出をしていないつもりでも、典型的な一人のアメリカンヒーロー
がさも中心になってほとんど一人で解決した、という話には、到底納得がいかないという
のも、最もだと思います。
また、映画で限られた時間内に終わらせないといけないという制約があるとはいえ、犯人
側が、この事件を起こすに至った動機や心理面の動きなどはまったく表現されず、勧善懲悪
の図式そのもので、ずっと映画が進んでいったことに、物足りなさを感じました。
犯人の一人は妻がおり、物心ついていない幼い娘がいます。
そんな家族を残してまでテロを行う彼には、一方的ではあると思いますが、強烈な彼の
正義があると思います。
そんな偏った正義や動機がまったく表現されず、ただただテロを起こすんだ、というだけ
で行動してしまい、完全な悪役でしかありません。
実際に起こった事件ですので、犯人側をもきちんと表現しても良かったのでは、という
思いもしないわけではありませんでした。
ネタバレ感想 3 映画を見ながらずっと思っていたこと
今回の映画は実際に起こったテロ事件を題材にしています。
僕らからすれば、テロなんて意味のないことをしてどんなの意義があるのか、理解に苦しみ
ますが、実行犯からしたら大真面目で正当な行為なのでしょう。
でなければ、必ず捕まってしまう、もしくは自分も死んでしまうような行為を自ら進んで
実行するわけがないからです。
今回の事件で8歳の男の子を含む3名が亡くなり、その後、警官が犯人に撃たれて亡くなり
ました。
何の罪もない8歳の男の子を犠牲にして、と怒りを感じますが、犯人のようなテロリストは
同じような年齢の子供がシリアやその他の中東の国で、毎日死んでいるのだ、と正当化し
ます。
しかし、自分たち側の子供が戦争の巻き添えで死んだから、相手側の子供を殺すのだ、と
いう正当化は、それに成功して多少気が晴れたとしても、今度は子供を殺された相手側の
大人が同じように復讐をするということで、負の連鎖が断ち切れなくなります。
戦争に関してはどちら側が一方的に正しい、悪いはなく、あえて言うのであればどちらも
悪いのでしょう。
それが戦争を発端としたテロ行為の本質だと思うのですから、映画内で限りなく悪で
描かれている犯人の兄弟が、一体どうしてそんな狂気に走ったのかがとても気になる
のでした。
関連記事: 映画パトリオットデイの犯人二人が爆弾テロを起こした動機や兄弟の背景は?
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