映画パトリオットデイの犯人二人が爆弾テロを起こした動機や兄弟の背景は?

   

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映画パトリオットデイが2017年6月に日本で公開されます。

2013年4月15日に起こったボストン・マラソン爆弾テロ事件を描いた映画ですが、ストーリーの
中で犯人であるタメルラン・ツァルナエフとジョハル・ツァルナエフの兄弟がどうしてテロを
計画し、実行したのかのはっきりした説明はありません。

映画自体は悪のテロリストを見つけ出し、次に計画しているテロを未然に防ぐという観点
から勧善懲悪的な見せ方をしていますが、やはり、二人がテロを起こすに至った動機
とても気になるところです。





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故郷に住んだことのないチェチェン人

タメルランとジョハルの二人のことを知る前に、二人の家族について調べてみました。

彼らの家族はチェチェン人ですが、父親からチェチェンに住んだことがありません。
というもの、スターリン時代に行われた多くの民族に対する強制移住政策のため、祖父母が
故郷のチェチェンを追われ、キルギスに移住させられたのでした。

その後のソビエト連邦の崩壊をきっかけに強制移住させられていた諸民族が故郷に戻ります
が、彼らの父親アルゾル氏もコーカサス地方に戻って家族を設けました。その時期に兄の
タメルランが生まれています。

しかし1994年から96年の第一次チェチェン紛争の混乱を避け、キルギスに戻りますが、
そこで弟のジョハルが生まれています。
2001年に母親の出身地であるダゲスタン共和国に移住しましたが、第二次チェチェン紛争が
深刻化してきたため、2002年にアメリカへ難民として渡米したのでした。

難民として移住するチェチェン人のほとんどがヨーロッパへ移住しており、アメリカまで
移住する例はまれで、それが移住先のアメリカでの孤立を招いたのではないか、という指摘が
あるそうです。

一方で、チェチェン人とはいえ、父親もチェチェンで生まれていませんし、家族としても
チェチェンで住んでいた期間は僅かですので、チェチェン人として受け入れられなかった
というより、チェチェン人であるというアイデンティティを持っていたのか、という疑い
もあるとの見方もあるそうです。

なにはともあれ、大国の思惑と戦争によってかなりの間、翻弄され続けてきたと言えると
思います。

ちなみにチェチェン人というと対ロシアでかなり過激なテロ活動を繰り広げているため、
テロを行う民族という間違った印象がついているようです。

またイスラム教との関わりですが、父親のアルゾル氏がイスラム教徒であったため、家族で
イスラム教を信仰していました。

兄タメルランの生い立ちと変化

家族がアメリカに難民としてやってきたのは2002年ですが、兄のタメルランは2年遅れて
アメリカに来ています。

特筆すべきは2007年に妹の恋人であったブラジル人をイスラム教徒でないという理由で
殴りつけたこと、2009年に最初の恋人に対する家庭内暴力で逮捕されたことでしょう。

この家庭内暴力での逮捕で起訴はされなかったものの、当時申請中であったアメリカ市民権
の獲得審査に影響が出たと考えられています。

一方でアメリカに来てからボクシングに打ち込み、アマチュア大会で優勝したほどの実力で
した。ゆくゆくはオリンピックにアメリカ代表として出場したいという目標もありましたが
市民権を持っていない者はボクシングナショナルチームに参加できないという2010年のルール
変更によって、その夢はかなわなくなってしまいました。

2010年によりイスラム教にのめり込むようになったという証言がありますが、同時に過激思想
があったわけではなかったようです。

同年の春に二人目の恋人が妊娠をし、結婚します。翌年、娘が誕生しました。

2012年に約6ヶ月、ロシアを訪問しています。理由は両親や親類との再会とロシアパスポートの
書き換えでしたが、それは表向きの理由で、テロを行うイスラム戦士としての訓練を受けた
のではないかと疑われています。

実際、アメリカの戻った後、より過激な考えを持つようになり、容姿も典型的な中東の
イスラム教徒の容貌になっていました。
また、近所のモスクで他のイスラム教徒の人たちと信仰のあり方で言い争いをするようにも
なっていたそうです。

弟ジョハルの生い立ちと変化

一方で弟のジョハルはというと、昔からの友人はテロ事件後、ジョハルが事件に関与して
いるらしいというニュースを聞いてもにわかには信じられないほど、宗教やテロとは無縁の
生活をしていたようです。

高校時代はレスリング部に所属し、また通っていた高校も名門校で成績も良く、卒業後の
進学について奨学金を支給されるほどでした。

また難民として米国に来たにも関わらず、流暢な英語を話し、多くの女生徒から好意を
持たれていたと言われています。

しかしテロ事件発生の前から急激な変化が見られるようになりました。

成績が落ち始め、幾つかの単位を取ることができず、授業料も滞納していたのです。
そしてその頃、生活の中心は大学の寮で、大麻を販売することでお金を得ているのでした。

兄タメルランのボクシングコーチはジョハルのことについて好印象に残っていたそうです。
つまり、子犬のように兄の行く先には必ずジョハルがくっついていた、と。

アメリカ国内でテロ犯罪者が生まれること。兄弟とテロ組織との関わり。

兄タメルランはロシア、アメリカの安全保障組織により要注意人物に指定されていました。
そのことはさすがはCIA、というところですが、お粗末なのは情報提供を受けていたFBIが
真剣に受け取っていない可能性があったのです。

この件は映画の中でもきちんと紹介されています。
爆弾テロ後、マスコミから未然に防げなかったのはFBIに落ち度があったからと叩かれた
原因になりました。

アメリカを襲った同時多発テロ以来、アメリカは入国審査を厳しくし、怪しい人物を入国
させないようにしてきています。それに係る予算は膨大で、余分な経費を支払わせるという
ことでアメリカ経済に打撃を与えたという点では、テロ集団の目論見は多少の効果があった
のかもしれません。

ただ、その反動で新たにテロを起こすための実行犯を入国させることは難しくなっています。

しかしアメリカ国内でのテロ事件がなくならないのは、例えば今回の事件のように、すでに
アメリカ国内に入り込んでいる、あるいは更にアメリカ国籍を持っている人物によって
引き起こされている
ということがあります。

兄弟の家族のように、戦争で故郷から避難しなくてはならなくなった人達が、希望と不安を
胸に新天地に降り立つ。不安はあるものの戦火を怯えて逃げ惑う必要のない生活に新たな
希望を持って来たものの、いざ生活をしてみると地域や文化、言語に溶け込めずに孤立して
いってしまう。

そんな状況に自暴自棄になっているところに、過激な思想の誘惑がよってくる。さらに
たちの悪いことに、近年はインターネットによって家から出ることなく、そういった
誘惑にさらされるので、周りが気が付かないことが多くなってしまいます。

逆を言えば誘惑する側もそのことを計算に入れて誘惑しているのでしょう。
一度、テロ実行犯に仕立て上げてしまえば、アメリカ国内で武器を手に入れることは
それほど難しくありません。爆弾ですらその作り方をネットで探すことができます。

僕が思うに、アメリカの閉塞感、特に貧困層の閉塞感に問題があると思うのです。

動機は一体何だったのか?

これらの背景を見てみると、動機はタルメランの自暴自棄から来ているように思います。

アメリカに来て一時期は学業やスポーツに打ち込んでいたようですが、それが上手く
いかなくなって次のものを探しているときに、テロ集団の甘い勧誘に乗ってしまい、
すごく狭い視野しかなく考え方で、自分が信じる正義を実行して、英雄になりたくなった。
そう感じます。

弟のジョハルは普段から兄について行動していたようですので、次第に影響を受け、
引きずり込まれたのではないかと思います。どちらかと言うと、それほど強い思想を
持っていたわけでなく、兄を盲目的に信じていたために、共犯となったという感じでしょう。

こう結論付けるとなんとなくやるせない気持ちになります。

テロ集団の狙いは攻め込まれて小さくなっていくISの影響下の範囲を再度広げるため、と
いった誰でも納得できる戦略などではなく、どうせ自分たちも滅ぶのだからできるだけ
敵側にも出血を強いてやろう、そのためには強固な軍隊を相手にせずに、無防備な市民を
標的にしてやろう、という死なばもろとも、という考え以外、感じ得ないからです。

例えば、数日前に起こったイギリス、マンチェスターのコンサート会場での自爆テロ。
犠牲者の殆どが十代の子供でしたが、彼らを傷つけて一体何か戦線で有利に働くことが
あるのでしょうか?

日本もこのような大きなコンサートやイベントは行われますし、数年後には東京
オリンピックも控えています。
こういった暴挙の標的にされない保証はどこにもありません。が、防ぐための有効な方法が
あまり無い以上、個人で気をつけられることは気をつけるしか無いのでしょう。

こういった犯罪がなくなる日が早くやってくることを願ってやみません。





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