僕にとってはとても懐かしい「デブゴン」ことサモ・ハン・キンポーの久々の映画という
事もあって、楽しく拝見しました。映画の作戦変は2015年、1952年生まれですから、63歳
での監督兼主演の作品で、その名も「おじいちゃんはデブゴン」。
年老いてなお、素晴らしい拳法の腕前を披露してくれますが、嬉しいのは20年ぶりに
メガホンを取ったサモ・ハン・キンポーのために、香港映画会のレジェンドがカメオ出演
していることでしょう。
予告動画はこちら
キャストの紹介
ディン: サモ・ハン・キンポー
退役軍人で初期の認知症を患う一人暮らしの老人。過去に深い心の傷を負っている。
チュンファ: ジャクリーン・チェン
ディンの近所に住む小学生の少女。ディンに懐いている。
リー: アンディ・ラウ
チュンファの父親。賭け事にハマって娘をほったらかしにしているチンピラ。
ツイ: フォン・ジアイー
町の犯罪組織のボス。非常に残酷で自身の利益のみしか興味がない。
おじいちゃんになったデブゴン、その演技はどんな感じなの?
おじいちゃんになったサモ・ハン・キンポーの演技がどんなものか、実は一番興味が
ありました。
それを話すためにも簡単なあらすじを紹介しておきます。
サモ・ハン・キンポー扮するディンは退役軍人。軍隊での格闘大会で優勝をしたことも
あり、主要人物の警護などを任されていたほどの腕前ですが、孫娘の面倒をみていた
ときに、孫娘が行方不明となってしまい、以来その消息はわからずじまい。
一人娘からその責任をなじられ没交渉。ついでに妻とは妻の家族の保身のために結婚を
したこともあり、本当の愛は無しという悲しい結婚。
退役して生まれ故郷に一人寂しく帰って来ていましたが、寄る年波には勝てず、初期の
認知症が出てきて、昔はともかく最近の記憶が抜け落ちる始末。
一方街はロシアとの国境の近くで、地元の犯罪組織がロシアマフィアと抗争をしている
あまり治安の良くない場所でした。
近所に住む父子家庭の娘、チュンファにはなつかれているものの、ギャンブルにうつつを
抜かしている父親のリーは犯罪組織から借金をしてギャンブルに負けたため、ロシア
マフィアのボスから宝石の入ったバッグを盗んでくるように強要されます。
なんとか無事に盗み出すも、リーはそのバッグを持って逃走。犯罪組織から狙われること
となり、その火の粉は娘にも。
犯罪組織の手下がチュンファを誘拐しようとしたところをディンは助け、その後、再度
チュンファを狙う犯罪組織にディンが逆襲する、というストーリーです。
これが、主人公が若者であれば、勧善懲悪のカンフー映画で終わり、サモ・ハン・
キンポーが出ているということだけが売りみたいなものですが、そのサモ・ハン・
キンポーが60歳を超えた老人役、しかも過去に孫娘を守りきれなかった故に家族
ばらばらで孤独の境遇にいる、というところがかなりおいしい設定だと思えたからです。
実際の映画内のディンはあまり喜怒哀楽を出さないキャラクターで、感情移入が難しいと
感じました。
家主のおばあちゃんに言い寄られて戸惑ったり、チュンファと一緒にいて多少微笑んだり、
はたまた突拍子のないことを言われて困惑したりといった表情を見せるのですが、セリフが
少なくて、何を考えているのか、わかりづらいというのが印象でした。
認知症ということでわざとそうしているのかもしれませんが、「あー」とか「う~」とか
いったセリフばかり。ちょっと残念でした。
おじいちゃんはおじいちゃん、カンフー以外のアクションは他がカバー
60歳を超えるおじいちゃんのディン。サモ・ハン・キンポー自身も60歳を超えてからの
撮影ですのでやはりアクションははれません。
それでも格闘シーンは自身がアクション監督も努めているだけあって60歳を超えても
素晴らしい腕前を披露してくれます。
その代わりにといってなんですが、リー役のアンディ・ラウが宝石の入ったバッグを盗む
シーンでロシアマフィアに追いかけられるのですが、数々のアクションを披露してくれて
います。
映画最後には激しいカーチェイスもあり、そこら辺は見事にアクション映画しているな、と
思いました。
格闘シーンでディン役のサモ・ハン・キンポーが素晴らしい格闘術を披露しています。
思ったのが、軍隊仕込の格闘術ですので、確実に相手を倒す、戦闘不能にする技ばかりで
結構エグいです。
指や肘を折ったり肩や膝など関節を痛めつけたり。
そういえば2000年に公開されたリー・リンチェイのハリウッド映画「ロミオ・マスト・
ダイ」で使われていた、攻撃が当たった際にレントゲン写真のように体内が映し出され、
骨折するさまが描かれる手法が取られていたのが印象的で、ハリウッド映画では
流行らなかったこの手法、香港映画では採用されていたんだ、と感慨深い思いに
なりました。
サモ・ハン・キンポーの格闘シーンはすごく良い出来ですが、やはり年齢には勝てない
ようですぐに息が上がってしまうようです。
実際、年齢もありますが、体型もかなりふくよかになっていますので、そちらの方
からも近頃はトレーニングはなされていないのかな、と。
ですので、戦闘シーンの後半になってくると相手を吹き飛ばしてもその後追い打ちを
かけられず、その場で膝に手をついて息を整えなくてはならない悲哀な姿も。
ある意味、リアリティーがあっていいのかな、とも思いました。
一方で、リアリティーがあるにはあるけど、かなり暴力的だというシーンも。
例えば、リーが娘のことを心配して家に戻ったら、待ち伏せしていた犯罪組織に
捕まって殺されてしまうシーン。
必死に抵抗するものの、多勢に無勢で捕まってしまったリーに犯罪組織の一行は
まず、これ以上逃げられないように両足のアキレス腱をナイフで切断します。
明らかに効果的な方法で、現実の闇社会では行われている行為かもしれませんが、
映画内でやる必要があるのかな、と。
あと、宝石を取られたロシアマフィアは宝石を奪ったのがツイが率いる犯罪組織だと
知って追手を差し向けます。
追手はかなりヤバイ風体の3名で、マチェットを手にアジトに乱入。すでにディンに
よって叩きのめされて床に伸びている犯罪組織の手下たちを次々と殺戮していきます。
その過程でこの3人とディンも格闘シーンを繰り広げるのですが、その前の殺戮
シーンはどうかな、と。
リアリティーがあるといえば、あるのですが、映画で追求すべきリアリティーがではない
のでは、と思ってしまいました。
コメント
私は、もう二度と見たくない。
お爺さんが、近所の子供と仲良くなって、その子が危険な目に遭って初めて見せるアクションだけは、“ベストキッド”と同じで必然性あるけど・・・・・・その後は、あそこまでエグくグロくする必要があるのか?
アンディは、90年代に演じまくってた様なチンピラ役だった。かっこよかったけど、目を背けてばかりで全然楽しめなかったあの頃を思い出した。
宝石強奪を助けた彼のいとこを惨殺する場面なんか、アクションでもなんでもない、全く無駄。
チュンファが同級生の家にいたとかどうせ突っ込みどころ満載なんだから、悪者達も、昔のジャッキーの映画みたいに、ちょっと痛めつけたら呆気なく降参・・・でよかったのでは??
のりピーさん
コメントありがとうございます!
お気持ち、わかります。子供と過去に大きな心の傷のある老人が心を通わせる話ですので、あそこまで戦闘シーンを暴力的にする必要があったのかと。
子供と老人のほのぼのとしたシーンが色あせてしまって勿体無いと思いました。
かなり昔にどっかで読んだ記憶があるのですが、ジャッキー・チェンとサモ・ハン・キンポーは映画についてかなり大きな考えの隔たりがあって、共演はほぼ不可能だったそうです。
そこに、ユン・ピョウが二人の間を取り持つことで「プロジェクト A 」でようやく共演できるようになったとか。
ジャッキー・チェンの映画はアクションはもちろんすごいですけど、映画全体に漂うコミカルさがいい意味でアクションを際立たせているように感じます。
そこへ行くとサモ・ハン・キンポーの映画は決闘シーンが本当に殺し合いだという、エンターテイメントでそっちの方へのリアリティを追求なくてもいいのでは、という追求をしているような気がします。
ジャッキー・チェンが世界的に有名になってサモ・ハン・キンポーはそれほどでもないのは、世界的に見てもジャッキー・チェンの映画のほうが万人受けするのでしょうね。