ネタバレ感想 1 何が一体このような混乱を招いてしまったのか?
「170億円分の金塊が一夜で消えた!?」というキャッチコピーですが、ちょっと誤解を生む
一文だと思います。
実際に消えてなくなったのは金鉱であって、金塊ではありません。負け惜しみであり
ませんが、キャッチコピーだけを見て犯罪映画かと思ってしまっても仕方ないと思います。
しかし、ケニーもFBI捜査官、ポールとの会話で言っていましたが、どうしてこんな簡単な
トリックで騙そうとした詐欺事件に多くの人が乗っかってしまい、60億ドルと言われる
被害が出てしまったのかは、まさに人々が見たいことだけ見て、見たくないことは
見なかったからでしょう。
こうしてみると、人というものは自分を納得させるために自分に都合の良いことだけを
見て、都合の悪いことには気付いていてもあえて気付かないふりをしたり、過小評価を
下してしまうのでしょう。
この前のアメリカの大統領選挙で、トランプ氏が勝利しましたが、トランプ氏に投票した
人々のうち、一体何人が、このような心境で投票したのだろうかと、思ってしまいました。
話題が少しそれましたが、大儲けができるという甘い誘惑に、本当に金が生産されている
前から、ケニーの会社の株がどんどん上がっていく過程はバブルそのもので、無関係の
立場から眺めていると、とても愚かしいと思えます。
さらに非常に風刺がきいているなと感じたのは、鉱脈発見前と後で態度を180度変えて
接する銀行や投資会社の人々の態度でした。
全く相手にされず、キーマンとの会議の約束も、行ってみればその部下としか会うことが
できない。その部下にすら門前払いのような扱いを受けますが、とてつもなく大きな金鉱が
みつかったというニュースが駆け巡るやいなや、キーマンの方からアポを取ってきて
ミーティングが設定されたり、それまで電話してもろくに話をきいてくれないような会社の
重役が本社に招待してきたり。
その節操の無さに呆れる思いでしたが、映画を見ていて、全てが嘘の情報であったことが
わかったとき、180度態度を変えてケニーとその会社から出るであろう甘い蜜のオコボレに
ありつこうとしていた人々は、一体何を目的に、尊厳も誇りもなくケニーに近寄ろうと
していたのだろうと、失笑してしまいました。
ビジネスでいちばん大切なのは信用ですが、だからこそ作り出された虚像の信用に多くの
人々が翻弄されるのでしょう。経済活動が発達することは良いことですが、存在しないもの
を対象にしてしまうほどの経済活動は、果たして発展と言って良いのでしょうか?
ネタバレ感想 2 果たしてケニーはマイケルの企みを知っていた?
映画ではケニーは一切詐欺のことを知らずにいた、ということにしています。使用される
映像からも、ケニーが秘密裏に知っていたであろうと感じさせるものは皆無でした。
唯一、最後の最後で儲けの山分けとしてプロジェクトの最初の段階で、利益を折半する
という取り決めを守ったマイケルが、ケニーに対して8千万を送ってきたことに気づいた時
以外はですが。
ただし、8千万を見て微笑んだケニーでしたが、その微笑みは、皆を騙したマイケルも最初に
した約束は覚えていたんだ、という意味だったのかもしれません。
金鉱が無いとわかった時のケニーの驚きと困惑の表情から、彼も知っていて演技をしている
という印象は全く受けませんでした。それを信じるのであれば、、ケニーは何も知らなかったと
いえると思えます。
しかし、本当のところはどうなんでしょうね?
もう一つ謎なのはマイケルの死です。遺体は見つかったとはいえ、顔も指紋も毀損され、
判断がつきません。持っていた身分証明書だけが理由ですが、それは偽装をしようとすれば
いくらでもできます。
マイケルだけでなく、インドネシアの会社も株を高値で売り抜けており、大きな利益を
得ていますし、大統領の息子もその会社に関与していますので、取引材料として自身の死を
偽装し、密かに何処かで生きていても不思議ではありません。
しかし生きていたとしても2度とマイケル・アコスタとして人前に出ることはないでしょう
から、マイケルとしては死んだも同然かもしれません。
ネタバレ感想 3 映画元ネタになったBre-X(ブリ-エックス)事件について
実話にあった事件を元ネタにした映画ですが、実際に起こったBre-X事件は1995年の出来事
です。
Bre-X事件はカナダで起きた事件です。4人の地質学者とカナダ人のビジネスマンが組んで、
映画同様インドネシアで資源豊富な金鉱を探り当てたというところから始まりました。
金鉱が見つかったのは首都ジャカルタから1,400 kmも離れたボルネオ島でもより空港から
360kmも離れた僻地でした。
しかも道路もなく、川を高速ボートで8時間遡らなければ到達しないというロケーション
です。ですので、公正な調査や確認が困難であったことも詐欺には適していたのでしょう。
なにはともあれ、4人の地質学者の一人が発表する金の埋蔵量がエスカレートするに従って
カナダ人のビジネスマンが設立した会社の株式も上昇していきました。
全世界の金生産量が年間2千トンほどであった当時、埋蔵量は約6千トンになるとまで
言われたのです。
しかし、できたての小さな会社であるBre-X社が資金と人材不足に陥ることになり、他社と
パートナー契約を結ぶことになります。それが疑惑の始まりでした。
パートナー契約をした会社が独自に現地調査をしたところ、金の含有量が極端に低く、
事業化が不可能なレベルであることがわかったのです。
サンプルの偽装は映画と同じです。またマイケルが亡くなったように描かれていましたが、
実際にも4人の地質学者のうちの一人がヘリから落ちてなくなっていました。
遺体も発見されたときには野生動物によってかなり毀損されていたようで、顔の判別は
不可能、残された指の指紋から本人確認がなされたそうです。
遺書も発見されたので一応は自殺として処理されましたが、それを信じない人もいたよう
です。
もちろんそれ以外のBre-X社の幹部は高値で株を売りぬき、高額な売却益を手に高飛びを
しています。
しかしこの事件がカナダで起こった事件であったため、日本ではほとんどニュースに
ならなかったようでした。
関連記事: 映画ゴールドで詐欺の舞台になったインドネシアの金産出量や埋蔵量は?世界第何位?
コメント