映画ブラッドファーザーで不法移民がアメリカ人の職を奪っているのか考察

映画

映画ブラッドファーザーだけでなく、昨今のハリウッド映画ではメキシコ系の麻薬密輸
カルテルが敵役で出ることが多くなりました。

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ちょっと時間を巻き戻すとソビエト崩壊後はロシアマフィアだったり、中国マフィアの
進出があったころは、元々いた黒人ギャング団との抗争だったり。

だいぶ昔には高倉健、マイケル・ダグラス、アンディー・ガルシア、若山富三郎、松田優作と
いう豪華な顔ぶれの「ブラック・レイン」でヤクザが出ていたこともありましたっけ。

そんな近年の敵役、メキシコ人ですが、映画の中でリディアが「メキシコ人がアメリカ人
の仕事を奪ってはいない」
というセリフが気になりました。

それは本当なのでしょうか?映画だけでなく、トランプ大統領の「国境の壁」でも世界的
話題になりましたが、アメリカが抱える現実問題として考察してみたいと思います。






メキシコからの違法アメリカ入国の今昔

アメリカと陸続きのメキシコ。トランプが大統領になるために、メキシコとの国境に
壁を作って、費用をメキシコに払わせると豪語していましたが、一体どうなったので
しょうね。

自身のスキャンダル疑惑でそれどころではないのでしょうが、おそらくトランプに投票した
人達も、本当にそんなことが可能だとは思っていなかったでしょうから、実現されなくても
それほど落胆はないのかもしれません。

「国境の壁」はメキシコからの不法入国者問題の象徴として使われていたに過ぎなかった
のでしょうし、実際にこの問題をはっきりと公言したことでトランプに人気が出たのでしょう。

アメリカとメキシコの国境は3,000キロ以上にもなります。
これは日本の長さに匹敵しますし、東京からの直線距離にしてフィリピンの首都マニラに
到達する
だけの距離になります。

世界で最も横断される国境で、毎年、合法での横断は3億5000万人にのぼるとされています。
更に不法な横断を加えれば、100億を超えると言われています。

アメリカ側のよる警備が行われていますが、どうしても大都市を中心とされるため、
警備の手薄な山岳地帯や砂漠地帯での越境を試みる不法移民が増えています。
それにともなって途中で亡くなる人の数も跳ね上がりました。

一方で近年、メキシコからの不法移民の数が減り、それに伴い、アメリカで労働者不足が
問題になっているというニュースが叫ばれだしました。

いろいろな要因があるようですが、メキシコも少子化で移民を試みる年齢層の人口が減った
事、不法移民がどれだけ危険であるかの教育が浸透してきたこと、さらに密入国の手助けを
していた業者に払う報酬が値上がりして払える人達が減ったことなどがあげられるそうです。

メキシコとアメリカの賃金格差。メキシコからアメリカに行きたい理由。

それでもメキシコからアメリカに不法移民したいと思う人達が、今もいることも事実です。
何がそんなに魅力かと言うことを調べてみました。

まずは収入。

メキシコの最低賃金は2017年現在で時給80ペソ。1ペソが約6円になりますので、約480円
ほど
になります。

一方でアメリカの最低賃金は&7.25ですが、州によって更に高い値段に設定されている
ところもあります。カルフォルニア州やアリゾナ州は時給$10.00。ニューメキシコ州は
$7.50、テキサス州は$7.25でした。

今の米ドルとメキシコペソの為替レートは大体$1=18ペソ程度です。これで計算すると
$10が180ペソ、$7.5が135ペソ、$7.25でも130.50ペソとなります。

もちろん不法移民に対し、最低賃金を払う理由もないので、大体が安い賃金で雇われる
事になりますが、メキシコの最低賃金である時給80ペソは、米ドル計算すると約$4.45。
$5ドルの時給を貰っていても、メキシコで働くよりも多くの収入が手に入ることになります。

2016年のとある記事には減り続けるメキシコ人労働者に屋根の修理をしているこの会社は
2015年の時点で時給$17.65を支払っており、2016年に入って時給は$20を超えた、と
しています。

これほどの賃金格差があると、命の危険を犯してでもアメリカに来たいと思うことも
不思議ではありません。

更にアメリカの現在方では不法移民であってもその子供がアメリカで出産されれば自動
的にアメリカ国籍を持つ
ことになります。更にその子が21歳になるとその両親もアメリカに
移民できる権利を有する
ようになります。

もちろんその間、肉親に不幸があっても帰国することはできません。実際、親がなくなった
ものの葬式に行くこともできず、泣きながら仕事をしているメキシコ人がいたと、とある
会社の社長はインタビューに答えています。

最低賃金で働きますか?

さて、そうやって米国に来て最低賃金やそれ以下の賃金で底辺と言われるきつい肉体労働を
しているメキシコ人ですが、本当にアメリカ人の職を奪っているのでしょうか?

トランプ氏が大騒ぎし、それに浮かれた貧困白人層がいたのは事実ですが、彼らの思いは
メキシコ人を追い出したところで、そう簡単に解決する単純な問題ではありません。

まず、最低賃金で3kと言われるきつい肉体労働をアメリカ人がするか?ということです。
僕のいるカナダでも例えばファーストフード店で働いているのは、アジア人がとても多い
です。白人の労働者もいますが、シニア層の方が大半です。

先に紹介した屋根の修理会社でも全く同じようで、85人いる屋根職人のうち、白人は3人で
20年以上働いているベテラン、2人が経験1年未満の黒人、残り80人がヒスパニック系だ
そうです。

最後に白人を雇ったのは14年でしたが、一人は4ヶ月で音を上げたそうです。もう一人は
薬物検査に引っかかっていなくなり、最近黒人が求人の質問には来たが、応募はして
こなかったと語っています。

つまり、この会社から80人のヒスパニック系の移民がいなくなったら白人なり黒人なりが
その空いたスペースを埋めに来るか、というとその可能性はゼロにちかいというのが
現実
なのです。

時給$20以上の仕事で、現実はこうなのですから、最低賃金やそれ以下の仕事に対して
求人に応募してくるアメリカ人がいるか、ということになるわけです。

では、更に賃金を上げれば応募数は上がるのでしょうか?

これに関しても、あまり期待しないほうがいいのではないでしょうか。実際にやって
みないとわかりませんが、そうすると新しい問題が出てきます。

つまり、上がった賃金分を何処かでカバーしないといけないため、物価が上がらざるを
えないということになるから
です。

今の物価であるために、今の賃金で落ち着いていますので、この賃金が上がれば、その分、
値段に反映せざるを得ません。そうなると、購買意欲が下がり、景気が後退する可能性が
出てきてしまうのです。

まとめ

今のアメリカの経済を支えているのは不法移民の安い労働力です。この労働力がなくなれば、
経済は根底から崩れて行くでしょう。

国境で壁を作って不法移民を全員強制送還したところで、解決するほど単純な問題では
ないのです。

そういった労働力がなければ立ち行かない経済モデル。

最低賃金では生活ができないような物価。

このような問題は解決すべき本質なのでしょう。僕だって1時間オレンジをかき集めて
500円しかもらえないのであれば、そんな仕事をしたいとは思いませんし、お金を稼げ
なくても他のことをしていたい、と思ってしまいます。

この映画ではアメリカとメキシコの問題としてストーリーに組み込まれていましたが、
日本も労働力不足が叫ばれて、輸送業や飲食業で支障がきたしつつあります。

遠くない将来、アメリカの問題だ、と言ってられなくなることも近いのではないでしょうか。










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