映画「野生の呼び声」は1903年に発行された同名の小説を再映画化した作品です。
小説は初版10,000部を即日完売したほどの人気で、今でもその人気は衰えていません。
作者のジャック・ロンドンは世界でも有名なアメリカ人小説家の一人として数えられています。
映画かもこれまで数回にわたってされており、今回が6作目。
人間の主役としてハリソン・フォードを起用し、満を持しての公開となりました。
映画「野生の呼び声」の予告動画はこちら
映画「野生の呼び声」の簡単なあらすじとキャストの紹介
それでは映画「野生の呼び声」の簡単なあらすじとキャストの紹介です。
映画「野生の呼び声」の簡単なあらすじ
ハリソン・フォードが主演を務め、アメリカの文豪ジャック・ロンドンが1903年に発表し、過去にも映画化されたことのある名作冒険小説を新たに映画化。
地上最後の秘境アラスカで地図にない土地を目指し、ひとり旅する男ソーントンが、犬ぞりの先導犬としてアラスカにやってきた犬のバックと出会う。
やがてソーントンとバックの間には友情が生まれ、かけがえのない相棒となっていく。
「スター・ウォーズ」シリーズなどで数々のカリスマ的ヒーローを演じてきたフォードが、主人公ソーントンに扮した。
監督は「リロ&スティッチ」「ヒックとドラゴン」といったアニメーション映画で言葉の壁を越えた友情を描いてきたクリス・サンダース。
引用「映画ドットコム」
映画「野生の呼び声」のキャスト紹介
バック: テリー・ノートリー(モーションキャプチャー)
ジョン・ソーントン: ハリソン・フォード
ハル: ダン・スティーブンス
ペロー: オマール・シー
マーセデス: カレン・ギラン
ミラー判事: ブラッドリー・ウィットフォード
引用「映画ドットコム」
映画「野生の呼び声」のネタバレ‐映画ロケ地はアラスカではなくカリフォルニア?!
映画「野生の呼び声」は1890年代に起こったカナダのクロンダイク・ゴールドラッシュ時代を舞台として、犬ぞり用の犬としてさらわれた犬バックを主人公とした物語です。
カリフォルニアのサンタクララバレー、今でいうシリコンバレーに暮らしていたセント・バーナードとスコットランドコリーの雑種犬バックがさらわれて売られたところから物語は始まります。
そり犬の価値は100万円!?
この当時、丈夫なそり犬の需要はとても高く、その当時のお金で100ドルから300ドル程度で取引されたそうです。
アメリカドルに対する、1800年から2019年のインフレ計算機サイトがありましたので、試しにそこで、1890年から1900年のアメリカ100ドルが、いくらくらいになるのかを計算してみたところ、約30倍という結果が出ました。
つまり3000ドルから9000ドル、日本円に換算すれば大体、30万円から100万円くらいの値段ということになります。
それくらいの大金が手に入るわけですから、犬を盗み出す犯罪が行われていても、何ら不思議はありませんね。
ちなみにそのサイト、こちらになりますので、もしよかったら参考にしてみてください。
妙に人間じみた表情を見せるバック
映画の中でずっと気になったのは、バックの豊かな表情。
犬というよりは、人間とほとんど同じ感情を持った生き物として描かれており、僕個人としては感情移入がしやすかったというより、得体のしれない生き物を見ているようで、なんとなくムズカユイような印象をずっと受けていました。
それもそのはず、この映画の撮影では犬は一切使われておらず、すべてがCGIで作成されていたのです。
ですので、犬の表情、特にバックが人間のように表情豊かに画面で描かれているのが、納得できると思います。
つまりバックはモーションキャプチャーされて作られたキャラクターで、犬を演じたのはモーションキャプチャー俳優として有名なテリー・ノートリー。
彼はこれまで、数多くのモーションキャプチャーを使った映画にかかわってきたその道の専門家です。
テリー・ノートリーのプロフィールはのちに詳しく紹介しますので、そちらを参照ください。
撮影ロケ地はカリフォルニア!
バックが本物の犬を撮影に使用せずに、モーションキャプチャーによってCGIで作り出された犬であることが分かりましたが、実はこの映画「野生の呼び声」、撮影はすべてカリフォルニアで行われており、アラスカやカナダのユーコン準州でのロケーション撮影は一切されていません。
つまり、あの大画面に映る美しい自然は、すべてCGIで描かれたものなのです。
映画の最後に流れるキャストロール。
あちらを注意してみてもらうと、非常に長いうえに携わった人がどれほど多いかが分かると思います。
そのほとんどが美術関連であり、アニメーターやグラフィック担当の人間です。
つまり、それだけの人間を駆使して、コンピューター的に作り上げられたのが、あの映像ということになるのです。
映画「野生の呼び声」の感想
映画「野生の呼び声」ですが、僕個人の感想としては平均的なお話だな、と思いました。
可もなく不可もなしと思った理由
僕自身、小説のことは知らず、その前情報なしで見に行った状態で、唯一持っていた情報は予告編映像だけ。
ポスターからも分かるとおり、ハリソン・フォード主演を前面に押し出していて、アラスカが舞台の自然アドベンチャーだと思っていたのですが、実際の主人公は犬のバック。
ちょっと拍子抜けした気がしました。
そこに加えて表情豊かなバックというキャラクターのせいが、あまりに豊かすぎる表情がゆえに、感情移入するよりも、得体のしれない生き物のように見えてしまい、ストーリーに入り込めなくなってしまったのです。
また1890年代にカナダでの話とはいえ、フランス系の黒人が先住民族であるイヌイットの女性と一緒に郵便配達の仕事で、犬ぞりを引いているという設定に、そんなことがありえたのか、という疑問のほうが気になってしまいました。
カナダはアメリカほどでないにしてもやはり黒人差別がありましたし、先住民族に対する偏見や差別、軽蔑なども、残念ながらありましたし、今でもあります。
小説ではソーントンはインディアンに殺されてしまいます。
その当時の時代背景では、この話の流れが何の疑問もなく受け入れられていたほど、先住民族に対するステレオタイプ的な見方があったはずなのに、郵便という公的な職業に就けていたのか、と思ってしまったわけです。
2020年の現代において、政治的に正しいポリティカルコレクトが大きく叫ばれていますが、だからといって過去にあった悲しく残酷な差別という真実をゆがめてしまうのはどうかと思ってしまうのは、自分だけなのでしょうか。
人も犬も仲間や家族が必要
映画の後半はソーントンとバックが二人だけで地図に書かれていない外の世界へ旅立つことになります。
人と交わりたくないソーントンはそれでいいのかもしれませんが、バックは別にほかの犬と関わり合いを持ちたくないわけではありませんでした。
落ち着いた先でバックはオオカミの群れと出会い、その群れの中で信頼を勝ち取ってやがてリーダーとなります。
そのころになってソーントンも家族のもとに戻ってもいいという気になっているのですが、ある見方をすればバックがソーントンに仲間や家族が必要であることを教えたような気になりました。
バックはオオカミの群れの中でしか、自分の居場所を見つけられなかったわけではないでしょうけど、人に飼われ、使われて生きる生涯よりも自分に合った生活を見つけたのだと思います。
そういう意味ではソーントンがバックにより良い環境に出会える手助けをした、実はモブキャラだった、という見方もできるでしょう。
残念ながら、ソーントンは逆恨みしたハルによって命を落とします。
最後に少し突っ込みたいのですが、自然に対する知識も薄く、経験も少なくて、仲間や犬を殺してしまうような決定をし続けていたハルが、一人でソーントンの後を追跡し、その地にたどり着けたことが不思議でなりません。
ソーントンが下ったあの急流の川をハルもカヌーで無事に下れたのでしょうか?
地図にも載っていない広大な地域でどうやってソーントンが住んでいる小屋を見つけることができたのでしょうか?
ヒグマやオオカミの群れがうろついているような世界ですよ。
この部分は、感動的というより、突っ込みのほうが大きくて、「おいおい」と思ってしまいました。
バックを演じたテリー・ノートリーについて
上記でも紹介しましたがバックはモーションキャプチャーによって演じられ、それをCGI加工で作り上げられた犬のキャラクターです。
実際の犬を一切使っていません。
そしてモーションキャプチャーをするためには、それを演じる役者が必要ということになります。
バック役としてモーションキャプチャーを演じたのはテリー・ノートリー。
彼は俳優であり、スタントコーディネーターであり、スタントマンとして活躍する人物です。
これまでも数多くの有名な映画にかかわってきました。
テリー・ノートリーが映画に携わるきっかけ
テリーはもともと有名なカナダのサーカス集団「シルクドソレイユ」のパフォーマーでした。
2000年に公開されたジム・キャリー主演の「グリンチ」の映画で監督のロン・ハワードがシルクドソレイユのパフォーマーを映画に雇います。
その時のメンバーにテリーが加わっていたのですが、パフォーマーの仕事の見事さに感激したロン・ハワード監督が、テリーに対して役者に動きについて教えてほしいと依頼することになるのでした。
撮影にかかわった映画
その後、テリーはティム・バートン監督が撮影した2001年公開の「猿の惑星」に参加します。
テリーはロサンゼルス動物園に通い、類人猿の動きを勉強し、撮影に臨みました。
2009年に初めてモーションキャプチャー役として映画に出演します。
その映画は「アバター」
この映画でナヴィ族の動きを総括し、ナヴィ族の一人として出演したのでした。
「猿の惑星」シリーズには引き続き参加し、ロケット役で出演。
その他にも「ホビット」シリーズ、マーベルシリーズの「ハルク」や「アベンジャーズ」の2作など数多くの作品に参加しています。
まとめ
映画「野生の呼び声」は同名の有名小説の6度目の映画化で、全編をCGIを駆使して作り上げられた作品です。
アラスカはおろか、屋外でロケを一度もすることなく、カリフォルニアのスタジオ内だけで作り上げられました。
その映像は素晴らしいものですが、ストーリー的には、僕には可もなく不可もなし、というものに感じられてしまい、平均的な映画だったと思いました。
視聴した後で調べたのですが、制作にかかった費用が1億2500万ドル~1億500千万ドルであったのに対し、2020年2月26日の時点で全世界を合わせて4570万ドルの興行収入しかなく、1億ドルのマイナスとなってしまっています。
この結果に対しても、個人的にはなんとなく納得してしまうところがある映画だったのかな、と思いました。
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