「塔の上のラプンツェル」はディズニー作品の記念すべき50作品目のアニメーション映画。
そのため、これまでのいわゆる「ディズニー作品テイスト」をいい意味で壊し、新しいスパイスを効かせた作品にすることに挑戦した映画でした。
その結果、今までのようなディズニーヴィランズとは一味違ったキャラクターであるゴーテルを作り上げることに成功しています。
関連記事:塔の上のラプンツェルのゴーテルはかわいそうな毒親?誕生までの裏設定を交えて考察!
同じように、本作品でディズニープリンスとなるフリン・ライダーことユージーンも、これまでのディズニープリンスとは違ったキャラクターにすることが試みられたのです。
関連記事:ディズニープリンスの一覧と選ばれていないキャラクターを選出理由とともに考察!
今回はそんな「塔の上のラプンツェル」のヒーロー、フリン・ライダーことユージーンのトリビアや制作秘話を紹介していきましょう。
トリビア!ユージーン・フィッツハーバートはもともと農夫だった
ディズニーアニメ「塔の上のラプンツェル」はグリム童話の「ラプンツェル」が原作の映画です。
原作の「ラプンツェル」には主人公ラプンツェルの恋人として王子が登場しますが、ストーリー自体は、地味で大きなイベントもなく、白雪姫やシンデレラ、眠れる森の美女のようにそのままのストーリーで映画にするだけのインパクトがありません。
そのため、1930年代から1940年代にかけてウォルト・ディズニーの手で作品化する話は持ち上がったものの、没になっていたという歴史があったのでした。
2008年に「ラプンツェル」の物語を映画化するという企画が再浮上した際、監督のバイロン・ハワードとネイサン・グレノは、ストーリーのスケールをより大きくし、ラプンツェルが外の世界で冒険をする話にしないといけないと考えたのです。
その場合、赤ん坊のころから18年間、塔の中でしか生活をしたことのないラプンツェルを塔の外へ出て冒険をさせることにします。
そして外の世界でラプンツェルを補佐する役目が必要ということになり、原作にはないフリン・ライダーことユージーン像が固まり始めたのでした。
また、「塔の上のラプンツェル」がディズニーアニメの50作品目ということもあり、これまでのディズニー作品のテイストをいい意味で破壊して新しくする必要があると考えられていました。
監督のバイロン・ハワードとネイサン・グレノも原作に登場するようなありきたりの王子よりも、新しいディズニーヒーローのほうが面白いだろうと考えており、その考えが最終的にフリン・ライダーことユージーンを泥棒という設定にしたのだそうです。
というのもフリン・ライダーことユージーンは、驚くことに、最初の設定では「イギリス人の農夫」だったそうです。
この設定は、ユージーン役の声優が決まり、レコーディングが開始された当初まで変更されることはありませんでした。
フリン・ライダーことユージーンの声優担当として決まっていたザッカリー・リヴァイは、イギリス訛りの英語を話すように指示され、その通りにレコーディングが始まったそうです。
が、その後、フリン・ライダーことユージーンはアメリカ英語を話す泥棒という設定に変更されたのでした。
「塔の上のラプンツェル」のフリン・ライダー誕生秘話
このようにもともと原作がありながら、ディズニーの50作品目としての映画とするにあたってはラプンツェルが長い髪の毛を持っていること以外は全く違った話にする方針となり、それに合わせるようにラプンツェルの恋人役もどんどんと重要性を増していったのでした。
原作で王子であったに対し、初期段階では農夫にする決まっていたものの、それも変更され、泥棒になってしまいます。
それに合わせてフリン・ライダーことユージーンの外見や性格なども決定しなおす必要が生まれたのでした。
フリン・ライダーのイメージづくり
フリン・ライダーことユージーンのモデルとして監督の二人の間でイメージされていたのはスターウォーズのハン・ソロのような、アンチヒーローだったそうです。
また、ハンソロを演じたハリソン・フォードのもう一つの代表的なキャラクター、インディアナ・ジョーンズもフリン・ライダーのイメージに影響を与えたとのこと。
さらに実在した俳優、アクションスターの「エロール・フリン」や「雨に唄えば」で有名なダンサー「ジーン・ケリー」らからインスピレーションを受けたことも明かしています。
盗賊名「フリン・ライダー」の「フリン」はこの「エロール・フリン」から取られていることも、監督はインタビューで答えていました。
ハン・ソロのようなちょいワル、いわゆるアンチヒーローのキャラクターが農夫ではしっくりこない、ということもあり、フリン・ライダーことユージーンは泥棒に変更されていったのです。
また、キャラクターづくりの際には、わざと「プリンス・チャーミング」路線に沿った外見にしておいて、性格はこれまでのディズニープリンスとは全く異なるものにすることで、これまでのディズニープリンスに対する風刺になることを期待したそうです。
そのため、フリン・ライダーの外見を決めるために、とんでもない労力を費やすことになるのでした。
監督たちがきつかったと漏らした「ホットマンミーティング」の詳細
フリン・ライダーの外見を決定するにあたって、大半の女性が超イケメンである、という感想を持つに堪えうる必要が出てきてしまいました。
世間知らずのラプンツェルの対比として、より強調されたように感じられるキャラクターにするために、超イケメンでナルシスト、自信家で皮肉屋。そして実力もあり、ユーモアもあるというフリン・ライダー像が監督の中で固まったからです。
が、大半の女性からイケメンと感じられるための外見が、具体的にどういったものなのかを決めることは困難を極めました。
というのも、個人や数人がイケメンだと感じるキャラクターは簡単に作れるものの、「大半が」ということになると、本当に多くの女性の意見を聞いて作成していかないと、必要としているキャラクターは出来上がらないからです。
そしてそのために召集されたのが、通称「ホットマンミーティング」と呼ばれる会議でした。
それは30人にも及ぶ「塔の上のラプンツェル」女性制作スタッフを全員集め、自分がイケメンだと感じる男性の画像を持ち寄って、フリン・ライダーの外見を決めるという会議だったのです。
そしてのちに監督のバイロン・ハワードとネイサン・グレノは、とんでもなくきつく大変な会議であったことを語っていました。
というのも、持ち寄られた画像はハリウッドやスポーツ界のありとあらゆるイケメンで、所狭しと会議室の壁に貼り付けられ、ケンケンガクガクの多彩な意見が飛び交ったそうです。
それだけではなく、持ち寄られた画像は破られてつぎはぎされたものもあれば、頭部を完全に取り換えられたものもあったり、目だけ替えられたものもあったりと、とんでもなく混沌としていたとか。
挙句の果てに女性陣は監督の二人を捕まえて、どの部分がイケメンでないかというダメ出しをし始めたのでした。
そんな会議を続けていく甲斐もあり、例えばサッカー選手のイギリス人デイビッド・ベッカムや「風と共に去りぬ」の主演男優で、アカデミー作品賞受賞作品に三度主演した数少ない俳優の一人であるクラーク・ゲーブルなどの幾人かのセレブを組み合わせてフリン・ライダーが誕生したのでした。
「塔の上のラプンツェル」はラプンツェルとユージーンが主人公
フリン・ライダーことユージーンというキャラクターを作り出すために、とんでもない労力が払われたわけですが、その努力は報われたといってよく、ほとんどの評価は好意的なものでした。
中にはそのナルシズムや自信家であるところから、不快に思う人も存在したようですが、おおむね、「ディズニーが作り出した新しいタイプのイケメン」として認知され、ファンも多いです。
しかしフリン・ライダーことユージーンが、最終的に彼の外見や性格を持つようになったのは、ユージーンがラプンツェルとともに行動をすることを前提で作られたからです。
ラプンツェルとの対比して見ることで、より面白いカップルに見られるようにした結果、といっていいでしょう。
映画「塔の上のラプンツェル」の英語の題名は「Tangled」
つまり「絡めとられた」という意味です。
これは、実際にユージーンがラプンツェルの長い髪の毛によってからめとられ、行動の自由を失ったシーンだけをさしているのではありません。
それよりも、ラプンツェルによって最初はいやいやながらお供をしていたものの、一緒に時間を過ごすことで心を奪われ、「絡めとられた」という意味を持っているのです。
もちろん「絡み取られた」のはラプンツェルのほうも、一緒ではありますが。
ですので、「塔の上のラプンツェル」のお話は、ラプンツェル一人のものでなく、ラプンツェルとユージーンの二人の物語なのでした。
まとめ
いかがでしょうか?
フリン・ライダーことユージーンが最終的にキャラクターとして決定したのは、実は撮影がすでに始まり、声優担当が決まった後の、しかも最初のレコーディングの後、という信じられないタイミングでした。
そしてラプンツェルのキャラクターをより際立たせるために、性格付けも外見も決められたのです。
そうやって対比の位置にラプンツェルとユージーンを置くことによって、それぞれのキャラクターの個性をより際立たせ、ついにはその二人が愛し合うようになることでよりロマンチックに感じられるようになったのでした。
コメント