映画「ニューミュータンツ」はこれまでのスーパーヒーロー映画とはちょっと一線を画している作品でした。
ストーリーはとても面白い試みだと思いましたが、2点だけ残念な部分があり、
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「映画の出来がある程度までしか達していないのでは、」
というのが、見終わった後の感想となってしまいました。
一言でいえば、もう少しうまくできたのではないか、とちょっと残念になってしまった映画ではないでしょうか。
映画「ニューミュータンツ」のネタバレ感想
これまで数多く存在したスーパーヒーローものの中で、青春ホラーと銘打っているだけあって、少し毛色の違う話で楽しめました。
が、とても残念なことに、映画の最大のネタバレとなるべき秘密が、開始30分ほどで簡単にわかってしまうのです。
ホラー的なストーリー展開は新鮮味があって面白かったけれど
ストーリーに与えられた設定として、ミュータントとして特殊な能力を持つ若者5人が病院と称する隔離施設に入れられ、能力の制御が可能になるまで、一般人の安全を考慮して施設から出られなくなっています。
もちろん、能力を制御できない彼らですので、彼ら自身の安全のための隔離でもあるのですが、「病院」というよりは、怪しげな監獄プラス研究室のある建物は、結構おどろおどろしい雰囲気を出していました。
ここら辺はホラーという舞台設定を感じさせる効果的な演出だと感じたところです。
すでに施設で暮らしているイリアナ、ラーネ、サム、ロベルトに加えて新入りでダニエルが施設に入ったところから物語は始まります。
ダニエル以外の4人はそれぞれ自分の能力がなんであるか知っており、イリアナのようにほぼ完全に自分でコントロールできるメンバーもいれば、ダニエルのように全くコントロールできず、他人を傷つけることを恐れているメンバーもいるような状況でした。
つまり大なり小なりの違いはありながら、暴走し始めたら自分でも自分を止められる自信がない、という4人でしたので、明るくふるまっていたとしても常に何かにおびえていたのです。
そしてその恐怖が、なぜか具体化し始めて、4人に襲い掛かってき始めるのですが、ダニエルの能力がまだ何かわからない、と病院の医者として5人の面倒を見ているセシリア医師が調査をしているのと並行するかのように恐怖が襲い始めてしまうのでした。
ストーリーの展開上、ダニエルが入所する前の4人にこのような恐怖体験が降りかかっていたのかはわかりません。
が、彼らのリアクションから、これまで幾度となく思い出し、その度に嫌な思いをしていた過去の出来事ではあっても、それは消してしまいたい、忘れてしまいたい嫌な思い出というレベルを超えてはいないように受け取ったのです。
それが夢か現実かが、はっきりしないレベルとはいえ、それまでの思い出して嫌な思いになっていたよりははるかに具体的な出来事として降りかかるようになっているのですから、多くの人は察しがついてしまうでしょう。
ネタバレ ダニエルの能力であることは容易に想像がついた
このようなストーリー展開になると、よほど鈍感でない限り、ダニエルの能力で恐怖が具体化して襲っているのでは、という予想は簡単についてしまいます。
そしてその予想は、何の一捻りもなく、そのまんま事件の真相であるとしてエンディングまで行ってしまうのでした。
映画のクライマックスはダニエルの恐怖から具体化したデーモンベアとの戦闘シーンとなり、4人がそれぞれの能力を開放してスーパーヒーロー戦闘を繰り広げます。
スーパーヒーローものの映画として特殊能力を駆使した大掛かりな戦闘シーンは外せないとはいえ、ここまで来てしまうともうホラーでも何でもありません。
さらに興ざめなのが、デーモンベアを退治する方法が「ダニエルによる恐怖の克服」という点。
あまりに王道過ぎて、展開がもろバレ状態で続いていくので、よく言えば安心して、悪く言えば白けたままストーリーはエンディングに向かうのでした。
ダニエル以外の4人のミュータントは、そこそこキャラクターに深みがあったように思いました。
特に男性二人のサムとロベルトは、過去に起きてしまった自身の能力によって他人を傷つけたことへのトラウマとその恐怖をよく表していたと思います。
その一方でイリアナに関しては、少し納得がいかず、疑問が残りました。
子供のころに怖がっていたスマイリーマンのことを大きくなった今でも怖いと思うことはわかります。
が、僕には彼女は自分自身の能力を理解し、一番うまく制御して利用していたように見て取れました。
であれば、スマイリーマンが具体化して襲ってきたとしても、さっさと戦闘モードに変身し、なぎ倒していけばよかったのではないでしょうか?
それができないほどのトラウマとなっていて、映画内で見せた思考停止状態で悲鳴しか上げられないのは、子供のころの恐怖が軽すぎるように思えて仕方ありません。
実際映画でも一度サムを置き去りにしてテレポートで逃げた後、戻ってきたイリアナはそれまでの恐怖がウソのように堂々と戦っていましたし。
つまり彼女だけはホラー映画のキャラクターとしてふさわしくないような描かれ方をしていて、無理やりホラー映画で怖がる面を見せたことで、戦闘シーンのイリアナと全く違うキャラクターでは、と思っているほどアンバランスを感じてしまったのです。
X-MENシリーズ初の青春ホラーは半分成功
「青春ホラーのX-MEN映画」という触れ込みはに関しては納得がいっています。
多感な年ごろの若者が、自分はどういったアイデンティティを持っている存在なのか、と悩み、そして未知で制御不可能な自分の能力に恐怖する様は、スーパーヒーローものの映画としてはとても興味深かったです。
そして若者にありがちな色恋事も映画には含まれており、きちんと青春ものの映画として成り立っていました。
一方で「半分成功」としたのは、ホラーの部分に引っかかるところがあったからです。
というのも、スーパーヒーローものであるために、登場人物は何らかの特殊能力を持っていることになります。
そしてその特殊能力を制御できるようになって駆使し始めれば、そこからはホラーテイストではなくなってしまいますから。
現に実際の映画の最後は5人が5人とも特殊能力を駆使し、デーモンベアに相対しています。
つまりデーモンベアが登場した時にはすでにホラーの色は消え失せてしまい、スーパーヒーローもののお約束であるド派手な戦闘となってしまったのでした。
なかなか特殊能力を持つスーパーヒーローを中心に話を進めていこうとすると、ホラーというジャンルの雰囲気はうまく出すことができないのかもしれません。
エンドロールを見ながら、もっと他のエンディングがうまくいったのでは、と想像を膨らませてみたのでした。
ネタバレ感想のまとめ
スーパーヒーローもののでホラー映画を。
なかなか興味深い試みだったと思います。
そしてその試みはミュータントである登場人物たちが自分たちの特殊能力がなんであるか、理解でいていない状態であったり、分かっていてもうまく制御できない状態では、驚くほどスーパーヒーローものとホラーの融合が上手くいっていたと感じました。
ところがこの映画がホラーであり続けるために必要な、ネタバレしてはいけない秘密は、それはそれはとても簡単に誰にでも想像がついてしまう程度のもの。
そしてなんのひねりもなく、謎は想像通りだった、としてエンディングまで行ってしまう点がとても残念で仕方ありません。
さらに謎が分かってしまうと、容易に展開が読めるようになり、その分、怖さも半減するようになってしまっていました。
そして最後はスーパーヒーローもののお約束、ド派手な戦闘シーン。
そのころにはホラーの恐ろしさも怖さも全くなくなってしまっており、そのままめでたしめでたしのエンディングとなってしまうのでした。
題材がかなり面白いだけに、
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もう少し練ったストーリーにすることができれば、
とか
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もっと予想を裏切るようなひねりのある謎だったら、
とかを思わずにはいられません。
もったいない映画となってしまったな、と思った次第でした。
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