映画「AVA/エヴァ」はジェシカ・チャステインが暗殺者を演じたアクション作品です。
どちらかといえば好みの容姿をしている彼女の美貌、そして細身の体からは想像できない派手な格闘アクションは素晴らしいと感じました。
が、作品として全体的に見ると、いまいちだったと言わざるを得ないと思います。
今回はそう感じた理由も含めてネタバレ感想をお送りしたいと思います。
映画「AVA/エヴァ」のネタバレ感想
映画「AVA/エヴァ」はジェシカ・チャステインがとある組織に属する女性暗殺者として主演を務めたアクション作品です。
彼女の美しさと各格闘シーンのアクションは目を見張るものがあります。
が、映画全体としてみた場合、彼女が演じるエヴァの2つの顔があまりにもかけ離れているように感じてしまいました。
本当に同一人物?と思ってしまうほど、個人として問題を抱えているエヴァと任務を与えられてそれを遂行するエヴァとの間に、大きなギャップを感じたのです。
一体、何のために彼女は暗殺者でいるのか?それが見えてこない映画でした。
エヴァを深みのあるキャラにしたい設定が作品をつまらなくした原因
映画の冒頭でエヴァの生い立ちが紹介されていました。
父親の姿が、写真の中でも全く出ていないのが、いわゆる伏線なのでしょうが、驚くのはエヴァの成績。
いわゆるオールA生徒で、文武両道。
だけでなくチェスクラブやディベートクラブにも所属し、フランス語、日本語、ラテン語なども学んでいました。
チアリーダー部に所属しキャプテン。フェンシング部にも入っていたようです。
容姿も淡麗で、そんなクラスどころか学校中の人気者になっているであろうエヴァは、奨学金も問題なく認められ、有名大学に進学することを予想されていたはずです。
が、飲酒運転で交通事故を起こし、それまでの学業での実績はすべてパーにしてしまうのでした。
学校でそこまで成功している学生、しかも優等生と考えられるエヴァが飲酒運転をするということに首をかしげたくなります。
それも伏線で実は家庭に問題があり、それが影響をしてこのような事件を起こしてしまったことは後々わかるのですが、このような学生時代の暗い過去は、エヴァというキャラクターを深みにあるものにするためには、必要な設定だったでしょう。
文武両道のスーパーウーマンのような彼女が、なぜ軍隊に入隊し、その後暗殺者になったのか、という生い立ちを説得力あるものにするための設定でもあります。
が、映画を見ていて感じたアンバランスさというか、おさまりの悪さ、というのが、このエヴァの過去の設定でした。
いわゆる優秀な生徒だった彼女が暗殺者という現場のスペシャリストになっていると、どうしても彼女がターゲットに対してしてはいけない疑問を抱くのは必然だ、と思われるのです。
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なぜ、ターゲットが消されなければならないのか?
その背後にあるものは?
ターゲットを消したことで誰がどのように得をし、世界はどう動いていくのか?
ただ殺すことだけが目的で、それ以外のことは関知せず、したいとも思わない。
そういった存在が組織にとっては一番都合がいいわけです。
でなければ、組織が必要だと感じている利害関係と、エヴァの感じている利害だとか倫理だとかがぶつかった際、組織の命令を聞かなくなってしまう可能性があります。
下手をすればターゲットに接触し、情報を漏洩し、組織のクライアントの存在にリスクが及ぶ可能性もあるわけですから。
そういったことを考えれば、サイモンが下した判断はあながち間違いではありません。
デュークは個人的にエヴァとの関係が濃いため、人情が働いて、彼女を組織員として正しい方向に導こうとし、即座に排除するという決定はしませんでした。
が、場合によってはデュークがエヴァの敵に回った可能性もあったわけです。
そのことを考えれば、エヴァを末端の暗殺者という地位で利用すると判断した組織のミスを指摘したくなります。
エヴァの個性をきちんと把握していられれば、彼女が持った疑問や興味は、遅かれ早かれ、起こるものと判断できたと思ったのでした。
組織が大きいのか?小さいのか?
エヴァに対して間違った判断を下し、その結果、問題が大きくなって排除の決定を下すことになりました。
が、組織の判断というよりは、サイモン一人の判断であったように思えてきます。
そう考えると、この組織とはいったいどれくらいの大きさなのか?ということでしょう。
だいたい、エヴァ排除の決定から実際にエヴァをしとめに行ったエージェントはたったの二人。
しかもその一人はサイモン彼自身です。
その他のエージェントとして登場するのは、サイモンの娘カミーユのみ。
デュークにやられた男性が数名いましたが、果たして彼らはエージェントだったのか、ただの護衛だったのか。
とにかく組織の人間の登場人物が少なすぎます。
もちろん映画として、むやみやたらと登場人物を増やすと収拾がつかなくなるという面は理解できますが、暗殺を目的とした組織にしては、サイモンの個人的な組織のような扱いで、今一つ、エヴァが巨大な敵に相対する、というスリル感を感じません。
サイモンが一人で始末しに来る理由が不明
だいたいサイモンのやられ方も意味不明でした。
一人でエヴァの部屋に襲いに来て、とどめを刺せず、負傷して歩いてその場を去り、挙句の果てにエヴァに尾行されて、大した反撃もしないまま、救援を呼ぶこともできないまま、やられてしまいます。
こういう状況になった納得のいく説明を考え付こうとしたものの、僕自身には無理でした。
そして同時に尻切れトンボの要は、クライマックスを盛り上げてあいて、「これだけで終わり」的な白け感を感じたのでした。
映画の最後にカミーユがエヴァに気づかれないように後をつけていました。
が、彼女が一人でエヴァに対抗できるのでしょうか?
それとも彼女が組織の新しいトップとして、エヴァに復讐をするのでしょうか?
組織としてエヴァに対さない限り、カミーユでは実力不足のように感じますが、続きを見たい、という気を起こさせる結末を描いていたものの、個人的にはあまりこの後の興味は湧いていないのが正直な感想です。
暗殺者のストーリーと家族や恋人の人間関係問題の組み合わせは面白くない
エヴァと彼女の家族との過去の清算もこの映画の要のストーリーでした。
確かに学生のころに父親に裏切られ、母親にも信じてもらえないという出来事を体験すれば、家族から離れるために家出もするでしょうし、アルコール依存症に陥ってしまうことでしょう。
特に優等生であったため、一人で生きていくだけの能力はあったという設定にも納得がいきます。
それでいて今までの順風満帆な生活が一気に壊れたことでアルコールに手を出し、それが問題となってもやめられないのも、わかる気がします。
ただ、暗殺者という立場になっていて、無力な母親や妹、元婚約者などが存在することがばれれば、報復の対象となりかねません。
エヴァ個人には危害を加えにくいとなれば、より無力でエヴァに対してダメージを与えることのできる彼らが標的になる可能性は高いです。
確かに話の途中までは、ボストンではエヴァの存在を知っている人物はおらず、組織とも敵対関係にはなかったので、だれもエヴァの家族を狙う必要のある人物はいませんでした。
だからこそエヴァも安心して家族と会っていたのでしょう。
ただ、暗殺者という裏の顔を持ちながら、表では家族間の問題を解決しようとする姿はなんとも言えない違和感を感じました。
偏見かもしれませんが、暗殺者に家族の心配など、似合わないと思うのです。
愛する人がいないよりいたほうがいいですが、現役の暗殺者という職業には愛する人がいることによるデメリットが大きいと思います。
そんな全く絡まない2面性を一つの映画で一人のキャラクターを通して描こうするのは、新しい試みであるとは思うものの、納得がいくほどの描き方ができている、とは感じませんでした。
映画「AVA/エヴァ」が面白くない・つまらない理由のまとめ
映画「AVA/エヴァ」は生い立ちに家族の中で問題を抱え、それから逃げ出して暗殺者になってしまった女性の物語。
8年の歳月を経て、家族と向き合う心の準備ができた時、組織の中から裏切者という判断を下され、送り込まれるエージェントとの死闘を潜り抜ける、というお話です。
今まで見た映画の中で、このような暗殺者の物語はなかったように思います。
そういう意味では家族との絆の回復と暗殺者としてのアクションを組み合わせた新しい感じの作品だと感じました。
が、残念ながら、2つのトピックを一つの映画の中に入れ、見事にブレンドさせようという試みは、上手くいかなかったように思いました。
同一キャラクターでありながら、場面によっては同じ人物なのか、と疑ってしまうような乖離が感じられたのです。
新しい試みに挑戦したは良かったものの、上手く調理しきれていない感想を持ちました
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