映画トップガンマーベリックの「ダークスター」極超音速航空機について解説

アクション

映画「トップガン マーベリック」でマーベリックがトップガンに戻る前についていた任務。

極超音速機「ダークスター」のテストパイロットでマッハ10で飛行することを目標としていました。

空軍内の極超音速機開発か自動飛行可能な戦闘機の開発かの予算分捕り合戦で負けてしまい、極超音速機開発は停滞を余儀なくされ、マーベリックもテストパイロットを首になってしまいました。

その現状を見越してアイスマンが助け舟を出し、トップガンに教官として戻る、というストーリーが映画の中で描かれています。


ところでこの「ダークスター」という名前の極超音速機、実際にアメリカ空軍内での研究が存在するのでしょうか?

今回は、極超音速機開発と「ダークスター」について調べてみましたので、紹介したいと思います。







映画「トップガン マーベリック」で冒頭に登場する実験機

映画「トップガン マーベリック」の冒頭に登場する実験機。

通称「ダークスター」と呼ばれる極超音速航空機です。

極超音速航空機「ダークスター」

映画内では、極超音速航空機「ダークスター」はマッハ10での飛行を可能にすることを開発目的としていました。

では、

    「ダークスター」と呼ばれる極音速航空機が実際にアメリカ空軍で存在するのか?

そしてそもそも、

    極音速航空機とは一体どういう飛行機で、どのような目的で開発されることになったのか?

が気になりませんか?

それではその点についてを紹介していきます。

極超音速機とは

飛行機を軍事的に利用する場合、対空ミサイルによる撃墜をどのように防ぐか、という問題があります。

ミサイルで撃墜されないよう、レーダーに映らないような性能を持たせる、というのが一つの解答で、この技術はステルス機の開発、という形で実現していきました。


もう一つの解決策として、たとえミサイルが発射されたとしてもミサイルよりも速い速度で飛行できれば、ミサイルが当たらない、というものが考えつきます。

これが極超音速航空機の開発ということにつながるのでした。

超音速航空機の開発

超音速航空機の開発には1960年に起こったU-2撃墜事件というものが深くかかわっていたのです。


アメリカ空軍所属のU-2と呼ばれる亜音速偵察機はしばしば高高度での亜音速巡航でソ連領内に侵犯し、偵察任務を行っていました。

U-2は成層圏(高度2万5,000メートル)飛行が可能。
領空侵犯も成層圏飛行で行われたのです。

それに対して、ソ連防空軍はMiG-19P迎撃戦闘機などで幾度となく迎撃を試みました。

が、当時のソ連の戦闘機は成層圏での飛行ができなかったため、実質的に撃墜は不可能だったのです。


そのため、ソ連軍は成層圏飛行をしている航空機に対して攻撃可能な地対空ミサイルを開発します。

そしてU-2を見事撃墜。
パイロットは緊急脱出できたものの、ソ連兵に捕まってしまうという事件に発展していったのです。

この事件を受け、アメリカはミサイルを振り切るだけの速度を出せる極超音速航空機の開発を進めることになったのでした。

そして出来上がったのがSR-71だったのです。

SR-71

SR-71は超音速で高高度を飛行することが可能にしました。

U-2に代わって偵察機としてベトナム戦争などで活躍したのです。

が、

    ・高速飛行に特化した性能を維持するための整備費
    ・飛行にはパイロットの高度な技術が必要なことからのパイロット育成費
    ・敵地上空を飛行することの撃墜リスク

などが問題となってしまいます。

偵察衛星の発達により、より安い経費で偵察活動が可能となったこともあり、1989年に退役が決定してしまいました。


が、湾岸戦争で実際に偵察衛星での偵察では迅速な情報の入手が難しいことが分かり、また、北朝鮮の核調査拒否問題が起こったことでSR-71復活配備が検討されたのです。

その後3機のSR-71配備用の予算が可決され、実際に配備までされるのですが、1998年に当時の大統領だったビル・クリントンによって拒否権が発動されたため、実際に使用されることなく、再退役となってしまったのでした。


その後、SR-71の後継機としてSR-72開発計画が持ち上がることになるのです。

モデルとなった航空機「SR-72」

極超音速航空機「ダークスター」は今現在、アメリカ空軍で実在はしていません。

この「ダークスター」はアメリカ空軍航空機SR-72をモデルにしていると言われいますが、SR-72は今現在、試作機開発中となっています。

ちなみにこちらSR-72は「戦略無人偵察機」であり、パイロットが搭乗して操縦するように設計されていません。

ですので、「ダークスター」のモデルとなってはいるものの、完コピというわけではないようです。


ダークスターは2013年に計画が発表され、2018年に試作機の完成及び初飛行が予定されていました。

完全に完成させ、運用を開始されるのを2030年に目標としていましたが、今現在試作機が完成したという発表はなされていません。


コンセプトとして映画内で表現されていたように、マッハ10という極超音速で飛行することで、ミサイルを振り切って撃墜を防ぐという点を重視し、ステルス性はそれほど意識していない設計になっています。

アメリカの有名な航空機メーカー、ロッキード・マーティン社が制作しており、その中のロッキード・マーティン先進開発計画部門として有名なスカンクワークスによって設計・開発を担当しているのでした。

ロッキード・マーティン社のスカンクワークスがデザイン協力

実は映画「トップガン マーベリック」の「ダークスター」をデザインするに当たり、映画製作チームはロッキード・マーティン社のスカンクワークスに連絡を取り、協力を求めたそうです。

スカンクワークスもその申し出を快諾し、「ダークスター」のデザインをしていくにあたって、全面的な協力をしたのでした。


更にデザインが決まった後、実物大の模型を組み立てあげるほど。

これにを撮影に使用し、よりリアルなビジュアルを作り上げたのでした。

スカンクワークスとは

スカンクワークスとはアメリカ合衆国の航空機メーカーであるロッキード・マーティン社の一部門「ロッキード・マーティン先進開発計画(Lockheed Martin’s Advanced Development Programs)」の通称です。

軍用機開発を主な任務とし、担当する開発の性質上、秘密、独立、迅速が求められました。

通常、数十名の設計者と百数名の技能職従業員によって構成されています。

ナチス・ドイツのMe 262戦闘機に対抗するための戦闘機、XP-80を開発する為に設立されたのが始まりでした。


名前の由来が面白いので紹介しておきます。

設計室として設置したテントが、とある加工工場の隣だったため、常に室内が異臭が漂っているという環境だったそうです。

そのため、電話をとった従業員が「はい、こちらスコンクワークス」という冗談で応答したのでした。


スコンクワークス(Skonk Works)とは、アルフレッド・ジェラルド・カプリン作の漫画であるインディアン・ジョーに登場する怪しげな飲料を製造する蒸留所の名前でした。

部門長はこれを聞いて激怒したものの、従業員は部長のいない間は「スコンクワークス」と電話に出続けたため、ロッキード本社側でも「スコンクワークス」と呼ぶ様になってしまいました。

その後、漫画で登場する固有名詞を勝手に使用しているとのことで訴えられたため、発音や語義の似かよった「スカンクワークス (Skunk Works)」という名称で商標登録されたのでした。

中国も気になった?

映画が公開されるに際し、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー氏は、ダークスターの模型についての面白いエピソードを明かしていました。

撮影中に海軍から連絡があったそうです。

その内容とは、中国の衛星が航空機を撮影するため、ルートを変更したことを知らされた
というものでした。

模型であることを知っていれば、笑い話で済むかもしれませんが、アメリカと敵対している国にとっては、極超音速航空機の試作機完成は、とても脅威となる重要な情報なのでしょうね。

まとめ

映画「トップガン マーベリック」で登場した極超音速航空機の「ダークスター」

今現在アメリカ空軍で開発中の極超音速無人偵察機「SR-72」を意識して設計された実在しない航空機でした。

その精密さを再現するために、映画製作陣は「SR-72」を開発しているロッキード・マーティン社のスカンクワークスに協力を求め、最大限のリアリティ度をもって「ダークスターを設計したのです。

それだけでなく、撮影のためもありましたが、実物大の「ダークスター」の模型まで作ってしまったのでした。

その精巧さは本物と見間違うほどで、中国軍が偵察衛星を使って「ダークスター」を偵察したほどだったのです。









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