映画ナイル殺人事件はつまらない?いまいちと感じたネタバレ感想!

ミステリー

映画「ナイル殺人事件」はケネス・ブラナー主演・監督のポワロ作品の2作目。

原作者アガサ・クリスティーが自身でも気に入っている作品であると公言している小説「ナイルに死す」を原作にしています。

そんな原作の小説は1937年の作品であり、それを2022年の世相に合わせてアレンジされた内容に変更されています。

そして何より、「愛」というテーマを中心にして描いた作品となっていました。


が、実際に視聴してみると、なんとなく今一つというか、つまらないという感想が無くもない後味になっていました。

一体それはなぜなのでしょうか?

今回は、どちらかといえばつまらない、今一つ、という感想を持った理由を考察したいと思います。







映画「ナイル殺人事件」はつまらないのか?

映画「ナイル殺人事件」はつまらないのか?

個人的な感想でいえば、つまらなくはありませんでした。

が、同時にミステリーとしてどうなのか?と考えこまざるを得ない、なんとも言えない何か引っかかるようなものがあったのも事実です。

それが一体なんであるのか、考えてみましたので紹介していきたいと思います

映画「ナイル殺人事件」のネタバレ感想

映画「ナイル殺人事件」は映画としては2度目の映像化でした。

第一作目は1978年という40年以上前の作品。

あの「ハリポタ」シリーズでミネルバ・マクゴナガル教授役を演じたマギー・スミスもミセス・バワーズ役で出演して、若き日の姿を披露しています。


そちらのほうは以前に視聴しており、また原作のほうも今回の映画「ナイル殺人事件」視聴後、確認しました。

それらを踏まえて感じたのは、この作品はミステリーとしてどうしてもこういう展開になってしまうのだな、ということです。

詳しく説明すると、殺人が起きるまでの時間が長く、殺人が起こってからの展開が目まぐるしい。

ある意味、事前の登場人物の相関関係を理解するために割かれた時間が長くて、人によっては退屈だと感じてしまう恐れがあるという点。

そして登場人物相関関係がしっかりと理解できないままだと、第一の殺人が起こったのち、立て続けに第二、第三と殺人が起こる展開に、誰が誰だかわからなくなってしまうという点。

さらに言えば、第三の殺人後、ポワロによって明かされる解決編への展開もあっという間に行われてしまっており、そこまで分かっているなら犠牲者が増える前に犯人捕まえておけよ、とツッコミを入れたくなってしまうのも原因でしょうか。


ただ、原作の小説からして、殺人が起きるまで全体の半分以上に登場人物の相関関係を説明しています。

ですので映画も同じような展開にならざるを得ないのは、仕方ない、というところでしょう。

逆に、この小説「ナイルに死す」は登場人物の相互関係を楽しむ作品と言われているほど。

それぞれの登場人物が織りなす人間関係抜きでは、この作品は読む価値が半減すると評されているのです。


が、それを映像で表現するにはかなり時間的に難しいと言わざるを得ません。

1978年バージョンは2時間40分という長さになっていましたし、登場人物数も削られていました。

今回の映画「ナイル殺人事件」は更に登場人物数と上映時間を削り、2時間7分にまとめ無ければならず、どうしてもストーリー信仰は駆け足にならざるを得ません。





リネットの人物像があやふや

一番に感じた違和感は主人公の一人、リネットの描かれ方でした。

彼女は第1の犠牲者であり、殺人が起こった原因でもあります。

そしてミステリーとして楽しませるために、容疑者と疑われるほとんどの登場人物らが何らかの動機を持っているという設定にするために、その状況にふさわしい性格が与えられるはずでした。

つまり、オリジナルの小説では生まれながらの上級国民で金持ち、自信家でほしいと思ったものはどのような手を使ってでも手に入れる強引な性格、という人物になっていました。

だからこそ、敵も多いのですが、敵が多くても全く気にしない図太い強さも持っているというとんでもない嫌な女だったわけです。

彼女が殺された、と分かったとき、読者のほとんどがある意味納得してしまうほど。

まぁ、アガサクリスティー作品ではよくある典型的な犠牲者人物設定ではありますが。


ですが、今回の映画「ナイル殺人事件」のリネットは果たしてそこまでの強さ、強引さを持ち合わせていた女性だったのか、今一つはっきりと描かれていないと感じました。

サイモンとの結婚も状況は略奪婚ですが、サイモンを親友のジャッキーからうばうために手管を尽くした感は、感じられません。

また、他の登場人物たちとも殺されるかもしれない因縁があったにもかかわらず、殺人が起きるまでそのようなそぶりは全く視聴者に紹介していませんでした。


結果、ポワロ以外の全員が容疑者、という展開にもかかわらず、誰も殺したいほど憎んでいたのか、というと疑問符が残ってしまったのです。

リネットの人物像の描かれ方が弱かった。

そのため、彼女が殺された後に浮き上がってくる、それぞれの容疑者が持っているいくつもの動機に対する説得力が薄くなった気がしたのでした。

いまいちと感じた理由は愛というテーマを重視し過ぎたから

今回、映画「ナイル殺人事件」は「愛」がテーマとなっています。

愛するがゆえに殺人も犯してしまう、というわけですが、それに対して登場人物が見せる異なった愛を絡めることで、殺人までしてしまう愛との対比を描いていたように感じました。


ただ、「愛」に重きを置きすぎたと感じてしまわざるを得ない部分もありました。

例えば、ウィンドルシャム卿とアンドリュー・カチャドーリアン。

彼らはリネットを、サイモンと結婚した後も愛していた、と証言します。

ただしそれは、セリフという言葉だけであり、行動で示してはいません。

時間的にそのようなシーンを入れることは無理でしたでしょうし、そのような話は原作にはなく、映画のために前後のストーリーに違和感を感じさせないようなエピソードとして挿入しなくてはならない、というハードルもあります。

だからこそ、セリフのみとなったのでしょうが、逆に取って付けた感が大きくなってしまった印象でした。

彼らのリネットに対する動機は単なる嫉妬や見つかってはまずい秘密の隠蔽という単純なものでよかったと思います。

なぜポワロはそこまで知っている?

登場人物それぞれが異なる理由でリネットの死から利益を得るという秘密を持っていました。

そしてそれらをポワロに指摘されることで、全員が容疑者となっていき、一体だれが犯人?というミステリーとして楽しめる展開になっていきます。

が、それぞれの秘密をポワロがどうして知っていたのか?と首をかしげたくなるような展開で言い当てている場面がありました。


1978年判ではしっかりとポワロがたまたま会話を聞いたり、噂話として他人から教えられたりして事前にリネットとの確執があることを知ってしまう場面を、きちんと描いていました。

が、今回の「ナイル殺人事件」では、特にミセス・バワーズの両親が没落した過去について、ポワロが以前から知っていた、という形にしています。

まぁ、そういう偶然もあり得なくはありませんが、あまりに唐突で、ご都合主義的な印象を上けてしまいました。

「オリエント急行殺人事件」の続編だったから

今回の「ナイル殺人事件」はケネス・ブラナー演じるポワロ作品の第2作目。

内容的に全く独立した話とはいえ、「オリエント急行殺人事件」の続編ということになってしまいます。

つまり、「オリエント急行殺人事件」を視聴した人々にとってみれば、前作が比較対象になってしまうという位置付けに置かれてしまうのではないでしょうか。


現に僕も、どうしても「オリエント急行殺人事件」と対比して視聴しないわけにはいきませんでした。

これまでに説明したとおり、「ナイル殺人事件」では殺人までに時間がかかっており、「オリエント急行殺人事件」とは違った作品展開となっています。

作品の差である、と言えばそれまでなんでしょうが、ミステリーとして犯人探しを楽しむためには、「オリエント急行殺人事件」的に冒頭で殺人が起こり、ポワロの調査とともに視聴者もだんだんと詳細が分かってくる、という方が謎解きの楽しさを十分に堪能できるでしょう。


「ナイル殺人事件」は事件発生から第二、第三の殺人が立て続けに起こり、その展開についていくので精一杯になってしまいます。

逆にこのような展開を利用して、謎解きで実はアリバイが完全だったジャッキーが、動機がないと思われていたサイモンを使って殺人を犯していたという驚きを持ってくることで視聴者の度肝を抜く、ということは可能です。


が、怒涛の展開と驚きの真相の興奮が冷めてしまうと、一体ポワロはいつから真実に気が付いていたのか、ということが気になってしまうのでした。

というのもポワロが真相にたどり着いた瞬間の描写はなく、そのため第二、第三の殺人が起こる前にから気が付いていたのではないか、という疑惑が浮かんできてしまいます。

とすれば、第二、第三の殺人は防げたのではない、と思ってしまい、逆に第二、第三の殺人が起こったことで犯人を特定できたことは何だったのか、と決定的な証拠を探さずにはいられません。

僕自身が辿り着いた、その証拠となりうるものは、第二、第三の殺人はサイモンとかかわったから起こったという事実だけです。

この事実をもってして、ジャッキーとサイモンの共犯を確信するのは、ちょっと弱いと思わざるを得ませんでした。


そういったあやふやな部分が見え隠れしている今回の「ナイル殺人事件」は、前作に当たる「オリエント急行殺人事件」と比べてしまわざるを得ません。

そうした場合、前作に比べてツッコミどころがある部分がいくつか見つかり、結果的に「前作よりも…」と思わざるを得ない感想になってしまったのではないでしょうか。

まとめ

映画「ナイル殺人事件」は楽しめる映画ではあります。

ただ、映画ならではのテイストを醸し出そうとして「愛」をテーマにしたのはよかったのですが、その結果、中途半端というか、ツッコミどころがいくつも目につくようになってしまったのが残念でした。


リネットの人物像の描かれ方が、はっきりとしなくなってしまッタように思います。

その結果、殺された理由が弱くなってしまいました。


登場人物全員が何らかの愛を持っていたことが描かれますが、時間的にも描き切れず、セリフだけで取って付けたような印象を持たざるを得ないキャラクターがいたのも興ざめでした。


「愛」というテーマを重く見せるために時間を割かざるを得ず、その結果、ご都合主義的にポワロが秘密をすでに知っているという見せ方も、名探偵というよりチートヒーローという感じがしてしまいます。


最後に「オリエント急行殺人事件」の続編ということでどうしても前作との比較対象になってしまうことは避けられず、結果的に「前作に比べて…」という評価で下回ったと感じた人には、より残念な作品と感じずにはいられないシチュエーションも影響したのではないでしょうか。

映画「ナイル殺人事件」を動画配信サービスで視聴する方法

映画「ナイル殺人事件」はディズニーが行っている動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」でご覧いただけます。

「Disney+ (ディズニープラス)」は前作の「オリエント急行殺人事件」も配信しており、入会すれば課金することなく視聴を楽しめるのです。

「Disney+ (ディズニープラス)」への入会の方法はこちらのページで紹介していますので、興味がありましたら、ご覧ください。

関連記事:Disney+ (ディズニープラス)の入会方法解説









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