「思い出のマーニー」で登場する信子。
杏奈が療養に訪れた先で、杏奈より1歳年上の、しっかりとした面倒見のよさそうな、恰幅のいい少女でした。
しかし、一方で人見知りの激しいというより他人とのかかわりを持ちたくないと思っている杏奈に対して、どんどんと杏奈が不快に思ってしまうほどの積極性で入り込んでくるという描写もされています。
その性格は、恰幅のいい外見とも相まって嫌な少女と映ってしまっていると感じました。
今回はそんな信子の性格と杏奈との間にできた溝について見ていきたいと思います。
思い出のマーニーの信子は嫌いな少女?それとも面倒見のいい子?
「思い出のマーニー」に登場する信子は学級委員を務めるほどの活動的な少女です。
夏休みに子供たちでゴミ拾いを企画して、その音頭を取っているなど、行動力抜群といった感じ。
しかしそんな性格が、他人とは距離を置きたい杏奈にとっては、逆に苦手に感じてしまい、ついには、とんでもない暴言を吐いてしまうのでした。
信子のすごいところは、その暴言に対して見事な切り返しをしたところ。
ただ、余りに的確過ぎて、さらに杏奈を傷つけてしまっていました。
杏奈が嫌った理由
杏奈が信子を嫌った理由は、信子個人に問題があったからではありません。
杏奈が他人とかかわりたくない、と殻に閉じこもっていたのが最大の原因です。
療養先に到着したばかりの杏奈は、大なり小なり、他人に対して悪態をつくことで一人でいたいという気持ちを表していました。
親切な大岩セツと清正夫婦のことにも「おせっかい」だとか「ひとんちのにおいがする」などの独り言を言っています。
心を閉ざした杏奈にとってみれば信子だけでなく、他人であれば誰でも関わりたくない、と嫌う対象であったのでしょう。
信子は面倒見のいい子
杏奈との一件以前に映画内で描写される信子はとても面倒見のよさそうないい子です。
学級委員を務め、ゴミ拾いのリーダーも任されて、自分より小さい子供たちの面倒を見ていました。
おそらくちょくちょく見かける杏奈のことも気が付いて気になっていたと思います。
そして数日前にここにやってきたばかりの少女と知り、話相手の友達もいないことで、自分がまず、手助けできれば、と思ったに違いありません。
七夕祭りに向かっているシーンで信子とその友人二人、そして杏奈の計4人で歩いていた場面でも、会話に入れないでいる杏奈の隣にまでいって、質問をしています。
これは会話のきっかけを作ってあげることで、話しやすい雰囲気にしようという心配りからの行動です。
性格の不一致が原因では
とはいえ、それを知らないから、とはいえ、信子もかなりずけずけと杏奈に絡んでいっていた、と感じました。
そこはまだしっかりしているとはいえ、13歳という若い年齢のせいなのでしょう。
七夕の願いのための短冊に何を書いたのかを聞くまではいいでしょうが、杏奈の手から短冊を横取りして内容を確認するという行為は、行き過ぎです。
さらに杏奈の青みがかった目のことに気が付いて、それを指摘するタイミングもどうかと思いました。
相手の性格などお構いなしに、自分のペースで、親切だと思って絡んでいっているのですから。
それに対し、ついには杏奈も溜まっていた怒りが爆発してしまいました。
ただ「放っておいて」ときつめにいうだけならまだしも、外見を揶揄するような「太っちょブタ」は、完全に杏奈に非があることになってしまい、まずかったですね。
このように杏奈が信子を嫌った理由としては、どちらが悪いというより、不幸なめぐり合わせだと言えるでしょう。
合わない性格の二人が同じ時間を過ごさなくてはならなくなったために起こった事故だったと思います。
信子の母がカッターナイフの嘘をついた理由とは
続いて、信子の母がカッターナイフのうそをついた理由について、考察していきたいと思います。
七夕祭りの後の信子の母の主張
七夕祭りの後、信子の母が大岩家に怒鳴りこんできました。
その際に信子の母が主張したのは以下の通り。
-
・信子が泣きはらして帰ってきた
・杏奈に「太っちょブタ」とののしられた
・杏奈は信子に対し、カッターナイフをちらつかせた
確かに杏奈は信子に対し、「太っちょブタ」と発言しています。
ですので、この点に関しては真実でした。
しかし杏奈の暴言に対する信子の返しから考えてみると、
「泣きはらして帰ってきた」
という主張はどうもにわかに信じられません。
さらに最後の「カッターナイフをちらつかせた」という主張は、そんなことを杏奈が信子に対して一切していないし、大体浴衣を着ていた杏奈がカッターナイフを持っていたことも不自然だといえます。
一応、浴衣の袂に入れてはおけますが。
いったい、これら
-
「泣きはらして帰ってきた」
「カッターナイフをちらつかせた」
という嘘はどこから出てきたのでしょうか?
信子が母に嘘をついた?
信子の性格から考えると、そんな嘘を母親に言って泣き落としをするとは考えられません。
どちらかといえば、信子の母親が娘可愛さに針小棒大に怒鳴りこんできた、というのが真相のような気がします。
大岩セツさんの話では信子の母親はセツのところに来ている杏奈のことが気になって仕方がない、と言っていました。
田舎ですので、変わったことが起こるとその噂はあっという間に広がります。
そしてより詳しいことを知りたいと、都会では考えられないくらいの好奇心をもって、非常識と感じるくらいに踏み込んだ質問をし、時には干渉してくることがあります。
おそらく信子の母親も、信子の性格から見て、同じような性格なのでしょう。
そう仮定すると、祭りから帰ってきた信子に対して、杏奈と一緒に行った祭りはどうであったか、真っ先に質問したに違いありません。
おそらく信子は母親が主張したように泣きはらして帰ってきていなかったと想像します。
しかし質問されたことで、母親に愚痴を言った可能性は高いでしょう。
特に祭りに杏奈を誘うように言い出したのは母親でしたから、母親のせいでいやな思いをした、とあたるような口調だったのかもしれません。
娘に文句を言われ、さらに自分の娘を侮辱されたことで怒りが爆発して飛び出した、という流れだったのではないでしょうか?
祭りに誘ってあげた好意を仇で返して、という気持ちもあったのかもしれません。
信子の母が嘘をついた可能性
ではカッターナイフについてはどのような流れで口に出たのでしょうか?
信子が杏奈とカッターナイフを見たのは、杏奈とセツが信子のお宅に訪れた後。
塾からの帰り道、土手に座って鉛筆をカッターで削っている杏奈を見かけました。
その後、自宅に帰った信子に母親が明日、杏奈を誘って七夕祭りにいくようにと話題を振ります。
そんな杏奈に関しての話題の中で、
-
その子ならさっき郵便局の近くの土手で絵を描いている姿を見た。
カッターナイフで鉛筆を削っていたな。
くらいの発言はしているでしょう。
これによって信子の母は、杏奈がカッターを使っていることを知ることになります。
そしてそんな会話を信子としていたことを思い出し、怒鳴りこんだ興奮状態も手伝って、相手の非をさらに並びたてて攻撃したくなっての、でまかせをいってしまった。
そんなところではないでしょうか。
信子の母は物事をさらに厄介にする、めんどくさい性格をしているようですね。
こんな感じでカッターナイフのうそが出来上がったのだと思います。
まとめ
信子は面倒見のいい、積極的な性格をした少女でした。
ただ、その長所は欠点にもなり、誰とでもすぐに友達になれる、という性格ではなかったようです。
他人と一定の距離を置きたい、と感じていた杏奈の思いに全く気が付かず、信子は自分のペースで接していきました。
それは杏奈側から見ると、ずかずかと土足で踏み込んでくる、といった印象を受けたに違いありません。
そしてカッターナイフのうそ。
あれは信子の母が娘可愛さに、彼女自身の性格から口に出てしまった嘘だと感じました。
清正が「苦手だ」と評していたのも納得がいきます。
杏奈に対する限られた情報の中で、カッターナイフを使用していたことを聞いたために、興奮状態ということもあって口から飛び出したでまかせだと思います。
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