映画「HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ」を視聴してきました。
青春映画なんですが、それまで目立たなかった高校生が、ある夏休みの経験からその後の一生を大きく変えてしまった話です。
そこまで劇的に、という驚きもありましたが、見終わってから改めて考えると人生ってそういうものかもしれないなって、考え直しました。
青春映画ですが、予告動画から受ける「ひと夏の忘れられない思い出」を映画にした、という印象とは裏腹に、見終わったあとにあまりスッキリな気持ちにならない内容でした。
予告動画はこちら
簡単なあらすじとキャストの紹介
「君の名前で僕を呼んで」や「ビューティフル・ボーイ」で一躍世界から注目を集めるティモシー・シャラメが主演を務めた青春映画。
1991年、最愛の父を亡くしたショックから立ち直ることができないダニエル・ミドルトンは、夏を叔母の家で過ごすため、美しい海辺の小さな町ケープコッドにやって来る。
周囲の人たちとなじむことができないダニエルは、複雑な家庭の事情を抱え、地元ではワルで有名なハンター・ストロベリーとつるむようになる。
町で1番の美女と称される妹のマッケイラを守ることには命をかけていたハンターからの「妹には近寄るな」との言葉に怯えながらも、ダニエルはマッケイラと秘密のデートを重ねていく。
マッケイラと過ごすひとときはダニエルが自分を解放できるかけがえのない時間だった。シャラメのほか、「イット・フォローズ」のマイカ・モンロー、「ザ・リング リバース」アレックス・ローら若手俳優陣が顔をそろえる。
監督は本作が長編デビュー作となるイライジャ・バイナム。ダニエル・ミドルトン: ティモシー・シャラメ
マッケイラ・ストロベリー: マイカ・モンロー
ハンター・ストロベリー: アレックス・ロー
エイミー・カルフーン: マイア・ミッチェル
フランク・カルフーン: トーマス・ジェーン
引用「映画ドットコム」
ホット・サマー・ナイツのネタバレ 主人公に同情したくなるところはあるけど
映画「ホット・サマー・ナイツ」はある夏休みに、それまでに経験したことのない出来事から、調子に乗ったために、その夏を取り返しのつかない人生の転換期にしてしまったお話です。
主人公のダニエルが、まったく冴えない上に、父親をなくしたことで精神的にダメージを受け、引きこもりのような生活をしていました。
そんなダニエルを心配したのでしょう、母親は夏休みの間、おばの家に厄介払いします。
友達もいない土地で、しかも夏休みの間だけ避暑にやってくる多くの金持ち家族が増える町。
よそ者の上、金持ちでもないダニエルが、居場所がないと感じるのは当たり前です。
が、そんなダニエルが、町で有名な悪、ハンターと知り合い、彼がやっている大麻の密売を自分から進んで手伝うことになると、何故かそちらの方面で才能があることがわかり、大儲けして、ビジネス規模を広げることに成功します。
おそらく、それまで自分の存在意義などを見いだせなかったダニエルは、増え続ける現金を目の前にして、自分に自信を持ち始めたのでしょう。
これまた、ひょんなことから知り合いとなった、町で有名な、ちょいワルセクシー系のマケイラに積極的にアタックしていきます。
ところがこのマケイラ、ハンターの妹で二人は家族の問題から長い間口をきいていない間柄。
マケイラは優等生でなく、素行は悪いほうですが、兄の大麻密売を心の底から憎んでいる、という状態です。
兄のハンターは自分の行いのせいで家族に迷惑と深い悲しみを与えたことを後悔しつつ、妹を守ろうと彼女に近づく男に目を光らせています。
つまり、ダニエルはマケイラと付き合うようになったあとも、マケイラにはハンターとの関係を、ハンターにはマケイラとの関係を、話すことができない状況でいました。
面白いもので、大麻の密売ビジネスが上手く行っているときは、マケイラとハンターへのそれぞれの秘密が露呈することもなく、二人との関係をうまく保ってきていました。
が、調子に乗って、大麻だけでなくコカインの密売にまで手を出そうとしてしまいます。
これにたいしての、明確なダニエルの動機は明かされていません。
おそらく、どんどんと稼ぐことのできるお金を見ていて、もっと稼ごう、それによって自分自身に自信をつけようと無意識に思ったのではないかと思います。
あの時点で経済的に、それ以上ビジネスを広げてお金を稼ぐ必要は二人にはなかったはずです。
ただ、ダニエルは、それまで存在していたのか、していなかったのかわからないような若者だったことを、消し去りたい、そのためにはより大きな金額のお金を稼ぐことで、自分に自信をつけたかったのだと思います。
まぁ、あと、多分にこれまでうまくやってきていたのだから、これからもうまくいく、と調子に乗っていた部分は大きかったでしょう。
しかし、その慢心がとんでもない結末を迎える結果となってしまいました。
ホット・サマー・ナイツの感想 まさに「好事魔多し」
青春映画といえばそうでしょう。
若者だからこそ、憧れていた華やかな存在、華やかな世界をいっぺんに手に入れてしまったことで、リスクについて考えを及ぼすことなく、イケイケドンドンでいって、これまたいっぺんにすべてを失ってしまいます。
おそらく、大麻の密売で稼いだ大金の一分は持っての逃避行になったのでしょうが、この成功体験と挫折は、今後の彼の人生にどんな影響を与えることになったのでしょうか?
密売ビジネスのチャンスとリスク
薬物売買のビジネスは、なぜ暴力団や半グレ等によって取り仕切られているのか?
その理由の大きなものの一つに、恐怖による保険があると思うのです。
ダニエルが、コカインを仕入れに行きますが、そこではいいように扱われ、お金を奪われただけで、追い返されてしまいました。
これはダニエルのバックに対して、やばいことをしたらこちらがやばい、と思わせるものがなかったからだ、と思うのです。
もしダニエルにギャングのような犯罪組織で数の暴力という背景があったら、ダニエルとの商売で、ダニエルを騙して搾取しようと考える相手はまずいなかったでしょう。
コカイン売買の取引に来たダニエルに対して金だけ奪って追い返したシェップですが、もしダニエルに園仕返しをするだけの背景が存在していたら、そのようなことはしません。
逆にダニエルがハンターとつるんで大麻密売をしており、その供給元であるデックスはダニエルがやろうとしているコカイン密売のことを知らず、それを知ったらダニエルがやばい立場になる、という情報が筒抜けであったがために、いいように利用されてしまいました。
その結果、命を守るためダニエルは夜逃げをしなくてはならなくなり、ハンターはそのとばっちりとしてデックスに始末されてしまいます。
そう考えると、デックスはダニエルとハンターに対して、かなりフェアな商売をしていたと逆に思ってしまいました。
なにはともあれ、違法薬物の売買ビジネスのチャンスとリスク、これをしっかりとダニエルが把握していなかったように思います。
チャンスは、大金が稼げる可能性があること。
同じ時間給換算しても、どんな他のまともな仕事よりも楽して稼げるでしょう。
逆にリスクは、揉め事になったときの解決方法が、弱肉強食のルールしかないこと。
シェップがやった行為は金銭の強奪です。
通常の商売上で起これば、ダニエルは警察に駆け込みさえすればOKです。
ところが薬物ビジネスをしている以上、相手が商売上でのルールを破ったとしても警察に泣きつくわけにはいきません。
自分で解決しなくてはならないのです。
そんな状況で、シェップがあくどいことをしたとしても、ダニエルには報復処置を取る方法がない、という見通しが立てば、相手に対してなめた態度をとっても安全である、と判断するでしょう。
事実そう判断して、行動し、ダニエルは自分の命を危険な状態にしてしまったのですから。
やはりなんでもうまく行っているからといって調子に乗ったり、自分の実力以上のことをしようとすると、足元をすくわれるのですね。
マケイラとの関係
マケイラとの関係ですが、ここもきちんと分析ができていなかったと思います。
マケイラにハンターと薬物の密売ビジネスをしているということは知られるわけに生きませんでした。
なぜならマケイラがハンターを毛嫌いしている理由は薬物の密売をまだ続けているから。
若くして死んだ母親の、ハンターに対する最大の望みが薬物の密売をやめること。
それが果たされないからこそ、ハンターと口をきこうとはしません。
そんな状態のマケイラに、ダニエルはハンターとともに密売ビジネスを大きくしているということは、口がさけて言えないわけです。
これは、ハンターにマケイラとのことがバレるよりも致命的です。
というのも、ハンターにバレたら、痛い目をすれば住むでしょうが、マケイラにバレれば、それまで楽しい思い出やお互いの気持は霧散して、別れになってしまうからです。
現に映画内でも、ハンターとダニエルの秘密を知ったマケイラは、ダニエルに言い訳を言う機会も与えずに、その場を去っていってしまいました。
僕には、ダニエルがマケイラと時間を過ごしている間、付き合うようになってからも、ただ単に「楽しいな、うれしいな」だけしかなく、嘘をついていることについて、どうしたらいいのか、を真剣に悩むことはなかったと見て取れました。
まぁ、高校卒業してすぐの10代にそのことまで思いを巡らせろ、というのは、無理な相談かもしれませんが。
ダニエルとマケイラのその後、幸せになれる?
映画を見終わってしばらくは、ダニエルとマケイラのその後に思いを巡らせていました。
ダニエルはすべてを失いましたが、もともとそんなに多くのものを持っていたわけではありません。
母親や彼自身の家族との関係まで、断ち切ってしまわなければならなかったのか、デックスのその後の追跡の度合いにもよると思います。
ただ、映画で見る限り、それほど家族との絆が深かったようには描かれていませんし、デックスもお金を奪われたわけではないでしょうから、今のダニエルにとってはそこまでダメージになっていないのでは、と思ってします。
逆に、大麻の密売で稼いだ大金をすべて使い果たしたわけではないでしょうから、ある程度のお金は持って逃げられたのではないでしょうか?
事故した車から荷物を回収できたのであれば、という条件は付きますが。
お金があるのであれば、新しい土地、それこそカルフォルニアのような西海岸へ移ってしまえば、ある程度安全でしょう。
ただ、お金を稼いだのが、大麻の密売という経験からですので、身を隠した先でも同じことで生計を立てていくようであれば、あまり幸せな人生は送れなかったのではないか、と心配してしまいます。
なかなか人間って、成功したことをもう一度、と思ってしまうものですから。
一方でマケイラですが、もともと町を出たい、という思いがありました。
それが、今回の兄の死で、完全に決断するになったわけで、今回のことがあってもなかっても、遅かれ早かれ、町を出ていったように思います。
ただ、兄との関係を改善できそうな雰囲気はありましたので、ダニエルとハンターが知り合わなければ、それが叶えられたのだろうかということは考えてしまいます。
マケイラこそ、今後、彼女の力だけで生きていかないといけません。
そう考えると、ダニエルよりも厳しい未来が待っているようにも思えます。
ただ、ダニエルのように、犯罪に手を染めて大金を稼ぐという成功体験をしていないだけ、今後犯罪に手を染める可能性は低いのかな、と思えるのが救いでしょうか。
なにはともあれ、マケイラは強い女性としての印象を受けましたので、ちょっとやそっとのことでへこたれなさそうです。
最後に、この夏休みが二人にとって、将来歳をとったあとでも忘れられない夏休みになるのでしょう。
そして、この夏休みのことを思い出す際に、いい思い出だったと思うまではいかなくとも、いいこともあった夏休みだったな、と微笑むことができるような、これからの人生を送ってほしいと思えてなりません。
まとめ
青春映画と銘打たれていますが、日本人が「青春」と聞いて連想する内容とは、少し離れていると感じたのは僕だけでしょうか?
スケールがアメリカ、という感じの犯罪絡みの青春映画でしたね。
たしかにダニエルがマケイラとはじめて時間をともにしたドライブは、それまで女性とろくに話したこともないだろうダニエルの初々しさが良かったです。
そして犯罪で大金を手に入れてからのダニエルの変わりようは、危なっかしいな、と思いました。
結末は案の定でしたが、特になんとなく憎めないマケイラの将来のことを思うと、ふたりとも幸せになってほしいな、と思わずに入られません。
同じ時期に見た青春映画「エイス・グレード 世界で一番クールな私へ」とのギャップが面白かったです。
もしよければ、そちらも記事を書いていますので、ご覧ください。
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