イギリスのコメディ映画「フリー・ファイヤー」は2016年、第41回トロント国際映画祭で
ミッドナイト・マッドネス部門の最高賞にあたる観客賞を受賞しました。
10人以上の悪党が罵声を発しつつ約90分、銃撃戦を繰り広げるのですが、なぜこの内容で
コメディ映画だと紹介されているかについては理解に苦しみます。
風刺的な要素もあり、それも含めていいのであればコメディ映画なのかもしれませんが。
予告動画はこちら
キャストの紹介
ジャスティン: ブリー・ラーソン
IRAメンバーのクリスト武器商人ヴァーノンを引き合わせた人物。
クリス: キリアン・マーフィ
IRAメンバー。ジャスティンの紹介で武器を買いにきた。
フランク: マイケル・スマイリー
IRAメンバー。
ヴァーノン: シャルト・コプリー
武器商人。ジャスティンの紹介で武器を売りに来た。
オード: アーミー・ハマー
ヴァーノンの仲間
ネタバレあらすじ
ステーヴォとバーニーがIRAメンバーの二人、クリスとフランクに会うためにキャンピングカーを
運転しています。ステーヴォはバーニーに昨日、若い娘を痛めつけていたらその従兄弟という
男に殴られたと、アザになった顔を見せるのでした。
待ち合わせ場所のボストン郊外の倉庫には仲介者のジャスティンとクリス、フランクがすでに
待っていました。二人が到着するとすぐ、売人側の一人オードがやってきて5人を倉庫の中に
連れていきます。
中には武器商人のヴァーノンとその仲間、マーティン、ハリー、ゴードンがいました。
取引を開始しますが、ヴァーノンがクリスの頼んだ武器と違うライフルを持ってきているのが
わかり、異様な雰囲気が2グループの間に生じ始めます。が、クリスは武器を購入する事に決め、
代金の詰まったブリーフケースをヴァーノンに渡すのでした。
ステーヴォは昨日、男に殴られたわけですが、その張本人がヴァーノンの仲間の一人、ハリーだ
ということに気が付きます。ハリーから気が付かれないように避けていましたが、ハリーの
方もステーヴォの存在に気が付き、詰め寄ります。
それぞれのグループがステーヴォとハリーを止め、ステーヴォがハリーに謝る事になりますが、
ステーヴォがハリーに、どのようにいとこの女性を痛めつけたかを挑発するように自慢したため、
周りが止めてももう止まりません。
ハリーがステーヴォの肩を撃ち、それを合図にそれぞれが銃を抜いて銃撃戦が始まります。
お金の入ったブリーフケースを持っていたマーティンが頭を撃たれて倒れ、大金が地面に
転がっている中での銃撃戦という様相になり、ヴァーノンが必死にブリーフケースの確保を
仲間に命じるのでした。
武器を持たないバーニーが怯えて出口に向かいます。が、ヴァーノンが背後からバーニーを
撃ち殺します。その後すぐ、二人の狙撃手が2階から両グループめがけてライフルを発砲し
始めます。
混乱する2グループでしたが、協力して反撃をしたため、狙撃手のうちの一人、ジミーが
倒され、もう一人も傷ついて助けの声を上げたことでオードが知り合いのハウイーである
ことに気が付きます。
ハウイーは雇われてここにいる全員を皆殺しにし、お金を持って逃げるはずだったことを
告白し、だれに雇われたかを言おうとしますが、クリス側の誰かによって撃ち殺されるの
でした。
クリスは仲介人のジャスティンをこの場から無事に逃がすことを提案します。ヴァーノンも
それに同意し、彼女が2階へにげますが、ゴードンが彼女の息の根を止めるために追いかけます。
銃撃戦のさなか、工場の電話が鳴り響きます。このことで電話が行きており、それを使って
仲間に救援を呼べる事が可能だと気付きます。
電話のある部屋に向かってフランクが移動しますが、ヴァーノンがそれを追いかけて行きます。
フランクはヴァーノンを火攻めにすることには成功しますが、ヴァーノンの弾丸がフランクを
捉え、フランクは絶命してしまうのでした。
ジャスティンは出口近くまでたどり着きますが、ゴードンが追いすがってきます。待ち伏せ
してゴードンの銃を弾き飛ばすことに成功しますが、そこで弾切れ。二人はもみ合って、
ゴードンの銃を自分のものにしようと争い、先に銃を手にしたジャスティンがゴードンを
射殺するのでした。
クリスとステーヴォ、オードとハリーが銃撃戦を続けている最中、突然マーティンが飛び
起きます。売り物のライフルを充填させてオードとハリーを撃ち始めます。
彼こそがジミーとハウイーを雇って皆殺しにし、お金を独り占めしようと計画した張本人で
した。ブリーフケースを持って出口に向かいますが、頭の傷が限界に達し、そこで絶命します。
マーティンがオードとハリーを追いかけ回している間に、クリスはフランクの後を追います。
やけどで虫の息だったヴァーノンの息の根を止め、フランクの様子を確認しますが、すでに
亡くなっています。
その後、電話で救援を呼ぼうとしますが、オードが間一髪で電話線を切ってそれを阻止します。
ジャスティンがジミーのライフルを奪って工場内に戻りますが、傷のせいで気を失います。
クリスの仲間の一人が倉庫に到着し、銃撃の音を聞きつけ、仲間を助けるために倉庫の中に
入ります。ハリーに不意打ちを食らって銃を落としますが、肉弾戦で痛めつけている最中に
反撃を食らって死んでしまいます。
ハリーはブリーフケースを持って車に乗り込み、逃走を図りますが、ステーヴォがそれを
阻止すべく車に乗り込みます。殴り合いと噛みつき合いを繰り広げ、ステーヴォは車から
蹴落とされてしまいます。床に転がるステーヴォをハリーは車で轢き殺すのですが、その間、
ステーヴォが乱射した弾の一発がハリーにヒット、刺し違える形になるのでした。
フランクがつけた火が燃え広がったため、消化用のスプリンクラーが作動し、辺り一面水浸し
になります。唯一生き残ったクリスとオードは争いを止め、金を持って警察が来る前に
逃げ出そうとします。
突然の銃声でオードが倒れ、クリスも胸を撃たれて床に転がります。ライフルを持った
ジャスティンがブリーフケースを拾い、虫の息のクリスに別れを告げて出口にむかいますが、
外に出る前に、パトカーのサイレンが近づき、無数の赤い光がドアの隙間から見えることに
気がつくのでした。
ネタバレ感想 1 風刺映画なのか?バイオレンス映画なのか?
見終わってなかなか自分の中で、どう評価していいかわからない映画でした。
仲間がやられたことでグループ対グループでの銃撃戦がエスカレートしていくのですが、
最初は取引を無事に終わらせることを誰もが重要だと考えて、ハリーには落ち着かせよう
としていましたし、望みもしない揉め事を起こしたステーヴォはフランクによって制裁を
受けていました。
それがハリーがステーヴォを撃ち、反撃をしたステーヴォの弾がヴァーノンに当たり、
ヴァーノンも打ち返し始め、フランクとクリスも銃を抜く。マーティンも頭をやられて
倒れるし、オードも自信を守らないといけない。
挙句の果てに銃撃戦を好まないバーニーがその場から逃げようとしたらヴァーノンがその
背後からバーニーを射殺してしまう。
ここまで来るともう、相手を倒さないと収まりがつかない、という感情に支配されるので
しょう。
第3者として見ているとそこで互いに武器を収めて撤収すればいいのでは、と思う場面も
ありましたが、頭に血が上っていると冷静な判断ができなくなるのでしょうね。
最後もジャスティンがわざわざ戻ってきて、お金を持って逃亡しようとしたが遅かった
というオチになっています。戻ってこずに逃げていれば捕まることなく命も助かったで
しょうが、やはり大金に目がくらんで戻ってきてしまったのでしょうね。
おそらくオードとクリスがお金を持って工場を出たとしてもタイミング的にはすでに
アウトだったと思います。
こんだけドンパチして殆どが死んでしまって、生き残った人は警察に捕まって終わり、
というのはブラックユーモアが効いているな、と思ってしまいました。
ネタバレ感想 2 なぜIRAがアメリカで銃撃戦?
IRAとは1970年台アイルランドの独立を旗印にテロ行為を行っていた団体です。話によると
グループとしてもタガが外れてしまって、下の方の活動家が幹部やリーダーの言うことを
聞かないようになってしまったため、頻繁にテロや銃撃戦が起こっていたと聞いています。
その頃は、一般人が爆弾テロに巻き込まれても、一種の諦め感があったそうで、たとえば
走っていてパンクしたとか、駐禁の切符をきられたというのと同レベルに「運がなかったね」
で済まされてしまうほどだったと聞いたことがあります。
そんな過激な連中が主に活動していたのはヨーロッパだと思っていましたが、ボストンで
今回の映画は銃撃戦を行ってしまっています。
どうしてかと思って調べてみましたら、こんなことがわかりました。
過激組織IRAが戦うための装備を整える必要があるわけですが、その武器を輸出してIRAに
提供していたのはアメリカとリビアが有名だったそうです。
へぇ~、そうなんだ、と感心していましたが、よくよく思い出すと昔のアメリカのドラマ、
「刑事コロンボ」でもアメリカで調達した武器をアイルランドの同士に届けるという
ストーリーをバックボーンに殺人事件が起こったエピソードがあったことを思い出しました。
そういう意味ではテレビの題材にもなるほど、有名だったのでしょう。
しかし、今回はボストンでアメリカの東海岸からですので、武器を手に入れた後の輸送は
シンプルだったでしょうが、「刑事コロンボ」だとロサンゼルスから船で運ぶことになって
いましたので、パナマ運河を通る必要があると思います。
その時の検査で武器が出てきたら問題があるのではとおもわず、心配してしまいました。
まとめ
賞を取ったといっても「ミッドナイト・マッドネス部門」ということで、バタバタの映画
内容です。
銃撃戦とはいえクライムアクションではなく、弾丸を体のあっちこっちに被弾していて移動も
使える手足で這って進むことしかできませんので、爽快感もありません。
なかなか好き嫌いがはっきり別れる映画ではないかなと思います。
コメント