映画ミナリの感想はいまいちつまらないのに北米では評価が高い理由を考察!

映画考察

映画「ミナリ」は2021年のアカデミー賞最有力と言われている作品です。

その映像は美しく、演じた俳優陣の演技も素晴らしいものばかりで、数多くの映画賞で多くのカテゴリーにノミネートや受賞をしてきました。


そんな前評判を聞いて実際に映画を見てみたのですが、正直な感想をいえば、面白かったし美しかったけど、今すぐ見返したい、毎日見てみたい、と思うほどではありませんでした

時間が経って思い返してみても、ストーリー的にハラハラドキドキというものはなく、家族愛は感じれたものの、至って淡々と進んだ気がします

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今回はどうして「いまいちつまらない」と感じてしまったのかの理由を考えてみましたので、紹介していきたいと思います。









映画ミナリはいまいちつまらない理由を挙げると



正直、映画「ミナリ」はいい映画でしたが、公開された後、映画賞レースをほぼ総ナメというほどのものは感じられませんでした。

逆にそのニュースばかりが大々的に宣伝されすぎていて、いざ映画を見てみたら、前評判が高すぎで拍子抜け、という気がしないでもありません。

では一体、何が原因でそうなったのでしょうか?

その理由を個人的に考察してみましたので、ひとつずつ詳しく紹介していきます。

家族愛は美しいが古い価値観が基準



舞台は1980年代。

日本でいえば昭和が1989年に終わっていますので、まさに昭和のお話です。


このころですとまだまだ古い価値観が幅を利かしているのですが、ジェイコブのふるまいはまさに昭和のお父ちゃんそのものですよね。


妻のモニカにろくに相談しない。

断片的な情報、それも耳障りのいいことしか話さない。

モニカが自己主張しようとすると、「くどい!」の一喝で会話を打ち切ってしまう。


こんな家長主義的な家族は日本だけか、と思うかもしれませんが、アメリカでも特に田舎ではその傾向がまだまだ強い時代です。

しかも主人公たちは儒教の教えがより強く残る韓国出身。

家の主で男性である父親の意見に、誰も反対を言えない文化は色濃く残っていたでしょう。


そんな中で母親は自分を押し殺して家族のために自己犠牲の精神で身をささげ続けました

徹頭徹尾人生逆転計画には反対で、離婚まで決心したにもかかわらず、映画の最後にはジェイコブに付き合って、アーカンソーにとどまっています。

美しい家族愛、といえばそうなんですが、どうしても自己犠牲の上に成り立たせている家族愛であり、今の時代から言うと、どうしても過去の産物と映ってしまいます。


つまり、あの頃はこんな感じで生活していたね、と昔を懐かしがるにはいいですが、自分自身があの頃に戻って、同じようにしてみたい、とは決して思えない思い出話の域を出ないストーリーであることが、「今一つ」と感じる理由なのでしょう。

ネットのない時代でしか味わえない孤独感



また、今と映画の舞台となった時代とでは決定的に社会インフラで異なるものがあります。

それはインターネット

それこそ貧乏人でもテレビはなくてもスマホは持っているというほど、無くてはならないアイテムになってしまいました。


そしてインターネットが与えてくれるグローバルなつながりと情報入手の手段は、インターネットがなかったころに感じた孤独感や不安感をもはや存在しないものにしてしまっています


今やネットの接続さえあれば、どこにいても母国でビジネスができてしまうほどの時代。

SNSで地球の裏側同士でさえ、つながっていられますし、顔を見ながら話をすることだってできます。

移民という立場の人々にとって、移民先の言語に不自由を感じるからこそ、母国のニュースを本国にいる人よりも詳しく広いジャンルに渡って知っていることも珍しくありません。


そんな時代に生きている我々が、ジェイコブやモニカのように、誰も知り合いのいない土地に行って、一から生活基盤を整える苦労やコミュニケーションが取りにくかったり文化の違いから感じたりする孤独感など、

    「そんな苦労もあったのね」

程度でしか、感じられないでしょう。


そうなってしまっては、感情移入がしにくくなってしまい、結果的に映画に入り込むというより傍観者の立場として視聴をしていることになっているのでしょう。

イベントが地味



ジェイコブがアーカンソーで農家として経済的に成功するためには、いくつもの困難が待ち受けていました。

・約束を守らない取引先

・水が枯れてしまった井戸

モニカとの確執もその一つですし、デヴィッドの健康問題もそうです。


挙句の果てに、新しい取引先を見つけ、野菜を納品して現金を手に入れられると思った矢先に火事で収穫物を失ってしまうという、まさに踏んだり蹴ったり状態。


ですが、映画というエンターメントでは、これらのイベントはあまりに地味。

しかも起こった問題のほとんどすべてが、昭和の価値観で物事を進めたジェイコブの自業自得と見えてしまうのです。

モニカが離婚を決意したのも、ジェイコブのふるまいに原因があり、ジェイコブ側に立ってフォローしたいとも思えないし、実際フォローできない最悪の状況にまで落ち込んでいます。


ここまで見てきた三つの理由が絡み合い、それぞれに相乗効果を生み出していい映画だけど今一つつまらないという感想を持ってしまうことになったと思ったのでした。

北米で評価が高い理由



映画「ミナリ」は北米ではとても好評価を受けています。

ボストンやニューヨーク、シカゴ、フロリダ、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市で開かれている映画賞で、作品賞や監督賞、主演男優賞や主演女優賞、助演女優賞や脚本賞など多くのジャンルでノミネートされ、さらにいくつかは受賞もしています

それはいったいなぜなのか、北米の歴史的背景を含めて考察してみましょう。

移民の国であるアメリカでは共感を得やすかった



北米の国、アメリカやカナダは移民の国です。

アメリカはここ最近、移民の数を制限する方向にいっていますが、移民がいなければ国が成り立たない歴史的背景がありました。


そんなアメリカで、映画の主人公であるジェイコブのように、他国から一攫千金を夢見てアメリカに移住してきた人たちが山のように存在します。

まさに1980年代に家族で移住し、できる仕事をしながら、より多くの収入を得られるチャンスを求めてチャレンジした人が無数にいたでしょう。

そういった人たちにとって、ジェイコブ一家が体験した問題は、映画の中の作り話では無く、彼らが生きてきた思い出の一コマなのです


そういった人たちにとって、この映画「ミナリ」はとても感情移入がしやすく、ノスタルジーを感じるにはうってつけの内容。

まさにこの点が、北米で多大な評価を受けている最大の理由でしょう。

移民の世代だけでなく二世もノスタルジーを感じられる



また、視点をデヴィッドに移してみましょう。

移民の二世の世代にもこの映画は、昔話を思い出させてくれます


映画内でデヴィッドは、祖母ソンジュと初めて対面していることからおそらくアメリカ生まれでしょう。

アメリカ人として生まれ、顔付は違うものの話す言葉も考え方も他のアメリカ人を同じ。

なのに、生活は苦しく、両親はよくケンカしているという家庭環境で、それでも時折、家族としての絆を感じられる楽しい時間も過ごすことができます。


実際にジェイコブを演じたスティーヴン・ユァンもアメリカに移住した韓国人を両親にもつ二世であり、ジェイコブを演じた際に、彼の中にある幼いころの思い出としての父親を参考にした可能性が高いと思われます。


こういった移民二世の世代にも、幼いころに体験した思い出を映画化した作品として、映画「ミナリ」は、とても受け入れやすかったに違いありません

自分の祖父母の昔話を聞いている感覚



そしてそれは何も二世で止まるわけではありません。

移民三世という世代にとっても、おじいちゃんおばあちゃんから聞いていた昔ばなしが映画として映像で見ることができるのです。


何も二世・三世と区切らなくても、移民を祖先に持つ大半の人々にとって、家族の中で語り継がれてきた新大陸での新しい生活という一大イベントが、大スクリーンの上で自分の目で見られるということは、とても心に響くことだったに違いないと思われます

こうして映画「ミナリ」は北米で好評価をもって受け入れらたのでした。

考察のまとめ



映画「ミナリ」について、前評判よりもつまらないと感じてしまう理由を考察してみました。

移民の国アメリカにおいて、ジェイコブ一家のような苦労はほとんどの人が体験してきたでしょう。

だからこそ、「ミナリ」という作品で描かれる一つ一つが、自分自身が体験した昔話に、大なり小なり関係している可能性が限りなく高いわけです。

そのことが、映画「ミナリ」が北米で好評価を受ける最大の理由だと思います。


が、日本人はというと、移民という立場になったことのある人はほんの僅かしかいません。
それも日本から他国へ行った、というケースのみです。

そのため、移民として新しい土地で対面する希望と困難を見せられても、自分が知っている生活と結び付けることはできません

そんな自分とは関係のないお話の一つとして見せられるわけで、しかも時代背景がネットもない、まさに昭和。

加えてジェイコブの行動原理も昭和の価値観で進んでいくため、家族愛の物語として見ていても、より自分とは関係のない話になってしまうことが、いまいちつまらない、と感じる理由だと感じました。












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