ゲームソフトとして世界的に大ヒットした「モンスターハンター」シリーズ。
この「モンスターハンター」シリーズを元にしたハリウッド映画の実写版「モンスターハンター」は、元ネタのゲームの知名度から、公開前から大きな話題となっていました。
が、海外で先行公開された結果、その内容が「ひどい」と大騒ぎになっています。
すでに知っている人も多いと思いますが、東洋人差別を連想させるセリフがあったというニュースも大きく取り上げられ、その結果、興行成績的にも爆死してしまいました。
今回は実写版映画「モンスターハンター」がどうしてひどい内容の映画になってしまったのかを考察していきたいと思います。
実写版映画モンスターハンターがひどい内容である理由
実写版映画「モンスターハンター」を見てみましたが、B級映画もいいところ、という感想しか持ちませんでした。
ストーリーや設定に関しても突っ込みどころ満載。
大体ゲームを元ネタにしているのであれば、人気が出たゲームの良いところを映画化すべきなのに、それができていません。
というより、ジャンルとしていかに大ヒットしたゲームの映画化とはいえ、もともと映画に向かないゲーム内容だったような気がします。
そこを無理して映画化してしまったがために、酷い内容になってしまったのではないか、と思えたのでした。
それでは詳しく一つずつ、見ていきましよう。
モンハンの世界観を壊して二兎を負った結果は最悪
もともと「モンスターハンター」シリーズは、数多くいるモンスターを狩り集めていく事を醍醐味としているゲームです。
その楽しさはやりこみ度にあるといえ、武器も違うタイプのものを使うだけで全く攻略法が違うということもあるくらいです。
その完成された世界観の素晴らしさが大ヒットした最大の理由であるのに、映画は主人公のアルテミスが異世界からモンスターハンターの世界に転送され、彼女が元の世界に戻ることが目的となったストーリーになってしまっているのでした。
ゲームはハンターとして自分のキャラクターを育てて、強くしていくという過程が楽しいのに、映画では大体ハンターが主人公ではない。
これはいただけません。
おそらくはゲームを全く知らない、やったの事のない層にも映画を見てもらうために分かりやすいストーリーにしたのでしょうが、それによって世界観を破壊し、映画を見に来たゲームファンの期待を裏切ってしまったのです。
そしてゲームを知らない層にとっても、現代の地球と思われる異世界からモンスターと前時代的な道具しかない世界にやってきた主人公という、取って付けたような安っぽいストーリーにしてしまったせいで、なんのわくわくもドキドキもない映画になり果ててしまっています。
ただ、巨大なモンスターが数種類出てきて主人公を追いかけまわす、というような映画で、「モンスターハンター」である必要がないストーリー展開になってしまっていました。
せめて映画を見に来たゲームファンを楽しませるに足るだけのストーリーに集中させていたら、と思わずにはいられません。
近代兵器が全く効かないモンスターが肉弾戦で倒される
世界観の破壊といえば、限られたものとはいえ近代兵器を「モンスターハンター」の世界に持ち込んでしまったのも、失敗だと感じました。
ガトリングガンや、グレネード、対戦車ロケット砲を至近距離で浴びてもほとんど傷付かないモンスターって、絶望感しか湧きません。
それが、ハンターたちが持つ弓矢や剣、斧、槍で倒せるのです。
この違いは一体何なのでしょうか?
ここまでくると滑稽でしかなく、派手なアクションにも説得力はなくなってしまいます。
「映画でのご都合主義」としか感じず、アルテミスやザ・ハンターが体を張ったアクションもそれが見事であれば見事であるほど、白けさせてしまうという逆効果。
どう考えても現代兵器を「モンスターハンター」の世界に持ち込んだのは、悪手でしかありませんでした。
アルテミスの一隊が、彼女を残して全滅する下りは、アクション映画でなくホラー映画か、と間違ってしまうほど、モンスター達の絶対感があったのに、アルテミスが一人となってザ・ハンターと一緒に行動し始めた途端、とんでもなく簡単にモンスターたちをあしらいはじめます。
このギャップがひどすぎるうえ映画のシリアス度を崩壊させてしまっていて、まじめに見ていられない感覚になってしまったのでした。
ストーリーが単純で突っ込みどころ満載
映画の前半はアルテミスがモンスターから逃げ惑う映画。
後半は、モンスターと戦い続ける映画。
この映画はそれ以上でも以下でもありません。
もっともらしく大団長を登場させ、スカイタワーが二つの世界を無理やり結び付けている元凶と説明しますが、その割に、映画の冒頭に、モンスターの目撃情報が多く寄せられる地域、という伏線もなければ、行方不明者多数発生地域、という伏線もありません。
モンスターハンターの世界のとっても、アルテミスの世界から迷い込んだ人たちが以前にいたとして、それらの人々はモンスターの餌食になってしまうだけで、それ以外何ら影響を与えるわけではないのに、迷い込む人々が世界に与える悪影響を心配するのはナンセンスでしょう。
モンスターが異世界に転送されるのであれば、モンスターハンターの世界にとって、より人々が住みやすくなるので、逆に都合がいいのではないでしょうか?
二つの世界を結ぶ力を不定期に発するスカイタワーという存在は、あまりに陳腐な発想としか老いも得ず、スカイタワーとその力がメインストーリーになってしまっているので、映画のタイトルは「スカイタワー」としたほうがいいくらいです。
モンスターやそれらを狩るハンターたちの存在は、ストーリーにとっては「ゴキブリと害虫駆除」という役柄でもいいくらい。
もう少し、何とかできただろうに、と思わずにはいられませんでした。
実写版映画モンスターハンターは興行的にも爆死
実写版映画「モンスターハンター」はハリウッド映画とはいえ、メインの市場は東洋に据えていたと思われます。
だからこそ、「バイオハザード」シリーズで主役を張ってきたラ・ジョヴォヴィッチを今回でも主役にし、タイ人俳優のトニー・ジャーを起用。
他にも中国系アメリカ人ラッパーのMCジンや日本人女優の山崎紘菜も出演しています。
大体、制作会社にソニーやテンセント・ピクチャーズ、東宝と日本や中国の会社が並んでいます。
もともと日本のカプコンが作ったゲームでもあり、市場として最大のターゲットは中国と日本であることがうかがい知れるわけです。
が、昨今のコロナの影響が出たことで、平時の時のような商業的成功は見込めなくなってしまいました。
とはいえ、コロナの件は「モンスターハンター」だけの問題ではなく、他の映画でも同じ事ですので、仕方ありません。
一番の誤算は中国当局による上映禁止処置でしょう。
映画で登場したMCジンのセリフが中国人を差別するものである、として公開二日目から上映禁止となってしまったのです。
近年の映画における中国マーケットの巨大さは、超大作映画を制作した場合、無視できないものであり、中国での失敗はその映画の興行的失敗でもある、という状況です。
それが、初日の公開でしか興行収入が得られないとなってしまっては、「モンスターハンター」は興行的な爆死としか言いようがないでしょう。
実際、世界的に日本の興行成績を覗いて3100万ドルしか稼げておらず、製作費6000万ドルの半分程度。
ちなみに1ドル110円と為替レートをした場合、3000万ドル稼ぐには33億円が必要となります。
内容がよければあるいは、という数字ではありますが、内容がひどいとすでに評判になっている実写版映画「モンスターハンター」ですので、かなり難しいと言わざるを得ないでしょう。
考察のまとめ
実写版映画「モンスターハンター」ですが、かなり残念な映画になってしまっています。
ゲームの最大の売りであった世界観を壊しており、ある意味、映画化するためには必要な賭けであったとも言えますが、それが全く持って空回りしてしまったという、致命的なミスをしてしまいました。
詳細なモンスターの描写は素晴らしいのですが、ある意味昨今のCGテクノロジーをことを考えれば、映画で描かれている程度の描写は、もはや当たり前のレベルです。
ゲームが大ヒットしたからといって、映画化すれば成功する、というわけでは、決してなく、特に「モンスターハンター」というゲームの内容から考えれば、映画化は非常に難しく、手を出してはいけなかったのではないか、と思ってしまいました。
コメント
近代兵器が効かないのに剣や槍が効くのがおかしい?
モンスターの素材で出来た武器なんだから効くに決まってんでしょうが。近代兵器がモンスターにダメージ与えてなかったことからモンスターの体のほうが強い=その素材で作った武器ならダメージ与えられる。
理解力がない人には楽しめないのかもね
らおさん、コメントありがとうございます。
なかなか素晴らしい理解力ですね。
そうやって楽しめばよっかったと分かって、勉強になりました。m(__)m
モンハンの世界の中の住人の話として普通にやれば良かったのに3rdみたいに平和な村の近郊にアシラのようなモンスターが出る様になって依頼された主人公パーティが調査していくと自然界では大変な事が起こっていました的な捻りのないストーリーの方が単純にアクションや演出に集中出来て良かったと思います。
コメント、ありがとうございます。
映画ならでは、の展開をしたかったのでしょう。
ですが、ご指摘の通り、ゲームに則した話にすればよかったのに、と感じずにはいられない出来になっていましたよね。