映画「ラブソングができるまで」はヒュー・グラントとドリュー・バリモアがダブル主演のラブコメストーリーです。
1980年代を彷彿させる映画のために作成されたミュージックビデオで幕開けする映画は、しょっぱなから笑いを狙う気満々。
事実、あまりの薄っぺらいクオリティの出来に、80年代のミュージックビデオってこんな感じだったなぁ、とノスタルジアを感じながら大爆笑してしまいました。
ストーリーはというと、その後も笑いを取ることを忘れずに、ラブコメ路線の王道を突き進む感じで見ていて楽しかったです。
もちろん途中に急速に惹かれあった二人の仲が引き裂かれそうになるハプニングもあり、そしてそれを乗り越えて結ばれるエンディングに、安心してみていられました。
「映画ラブソングができるまで」のネタバレ
王道のラブコメ映画ですのでネタバレを一言でいえば、
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仕事を一緒にする時間を通し、お互いのことを知り、惹かれあう二人。
が、理想論の彼女と現実的な彼氏の間で衝突が起こり、破局の危機。
彼氏が自分にとって一番大切なものは何かに気づき、それを彼女に伝えてよりを戻しハッピーエンド。
となります。
とまぁ、簡単に言ってしまえばそれだけなんですが、それだけでなく、この映画ならではの見どころというべきネタバレを紹介していくことにします。
過去にとらわれている二人がそれを乗り越えて結ばれるストーリー
ヒュー演じる主人公のアレックスは80年代に友人のコリンとともにPoP(ポップ)という名のバンドのメンバー。
代表曲の「恋は突然(Pop! Goes My Heart)」およびその当時の楽曲は今でも30代後半から40代前半の女性に大人気。
しかしPoPの解散後、ソロでもヒット曲を飛ばし、香水などのプロデュース業にも成功したコリンに比べ、アレックスはイベントなどで過去のヒット曲を歌う営業くらいしか仕事がありません。
実はアレックスもソロでアルバムを出したのですが、全く評判にならなかったという過去があり、それがトラウマになっていたのでした。
バンド時代はおもにアレックスが作曲をし、コリンが作詞をしていましたが、ソロアルバムは作詞作曲ともに手掛けるしかなく、そしてそれが大失敗に終わったことで曲を作ることができなくなってしまったほど。
ちなみにコリンのソロでのヒット曲は二人で作ったにもかかわらず、コリンが一人で作り上げたということで世に出ており、成功を独り占めされたのでした。
一方でドリューが演じるソフィーは、もともと物書き志望で大学も文芸を専攻していました。
そしてそこで出会った講師スローンと付き合うことになったのですが、実はその講師には婚約者がいたのです。
婚約者がヨーロッパに留学していたことをいいことに講師は不倫を楽しんでいたわけですが、突然帰国したことで修羅場となり、ソフィーは捨てられてしまいます。
それだけでもひどいのですが、破局から1年後、スローンはソフィーとの交際を元ネタにした小説を発表し、それがベストセラーになってしまいます。
そしてその小説の中でソフィーをモデルとした「サリー・マイケルズ」を小説家として「成功したいがために近づいた打算的な女」で、「なんだかんだと理由をつけては書けず終いの失敗者」に仕立て上げていたのでした。
それにショックを受けたソフィーは、何も書けなくなるほど傷付いてしまったのです。
今を時めくスターのコーラから新しい歌の作詞作曲依頼がアレックスに来た時点での二人の状況は、過去の挫折から立ち直ることができないまま、収入を得られるものをこなして生きていただけでした。
アレックスはこのコーラからの仕事に成功すれば、再びショービジネスの世界で成功者として生きていけると考えます。
そして偶然に見つけ出したソフィーの才能に賭けることにして、作詞作曲を二人の共同作業で作り上げることにしたのでした。
ソフィーのほうはというと、作詞に対して全く乗り気ではありませんでした。
が、アレックスのあの手この手の口説きに負け、協力することにします。
とはいえ、「愛に戻る道」という題名での曲を作詞をするに当たり、表面的な言葉のつなぎだけで曲を作ることはできないと主張。
一緒に曲を作るにあたってアレックスのことを深く知りたいとバンド「PoP」の人気が陰りだしたころからのことを話すように言います。
こうしてもともとそんなつもりがなかったのに、ソフィーはアレックスの一番苦しかった時期のことを知ることで、アレックスという人物をより深く理解することになっていくのでした。
アレックスはどちらかといえば、キャッチーで耳障りの言い韻を踏んだラブソングの詞さえできればいい、と思っていました。
ですので、詩の中にどのような思いや背景があるか、などということは気にしていません。
それよりもコーラからの曲の提出期限が1週間もなかったことから、とにかく早く形にしたいという思いしかありませんでした。
が、ソフィーと一緒に仕事をして過ごす時間が長くなるにつれ、ソフィーの人柄や過去のトラウマを知ることになります。
そんな彼女のトラウマも曲を早く作るためのモチベーションにするくらいにしか、気にしていませんでしたが、知らず知らずのうちに、彼女のために、彼女が立ち直るにはどうしたらいいのか、を考えることができる情報を得ていたのでした。
商業的成功よりも恋愛を取ってハッピーエンド
「愛に戻る道」という曲を作り上げ、コーラに聞かせます。
コーラはとても気に入り、2人の曲を採用することに決めたのでした。
この時点でハッピーエンドなのですが、映画としてそれで終わっては面白くありません。
ストーリーの盛り上がりとして、コーラは提供された「愛に戻る道」を彼女の好みにアレンジしてしまいます。
出来上がった曲は、2人が作り上げた曲とは似ても似つかないものに。
ここでソフィーは曲のイメージの大切さを主張して、コーラに意見しようとします。
が、アレックスはコーラに反対意見を言うことで曲の採用の決定が覆ることを恐れ、コーラのやりたいようにさせるべき、という態度を取るのでした。
確かにここで自我を押し通そうとしてコーラに嫌われたら、提供した曲を使ってもらえなくなり、もくろんでいた復活ができなくなる可能性が高くなります。
再度成功するためのラストチャンスを無にできないアレックス。
反対にソフィーはショービジネスの世界で生きていく気はないため、自身が作り上げた曲のイメージを大切にすることが、最重要事項になっているのでした。
ここにきて二人の意見は対立してしまいます。
そしてアレックスと一緒に自分たちが納得する曲を作ることを目的としていたソフィーは、曲が変わるのであれば、そして曲を変えることにアレックスが反対しないのであれば、曲作りに興味はない、と曲作りを降りてしまいます。
さらに追い打ちをかけるように、ソフィーのことが気になりだしていたアレックスはスローンの「サリー・マイケルズ」をひそかに読んでおり、途中で投げ出すソフィーをみて、小説のサリーはスローンのいう通り、ソフィーとそっくりだ、と言ってしまうのでした。
ソフィーは大きなショックを受けてアレックスのもとから立ち去ります。
傷付いたソフィーは仕事の関係でフロリダに引っ越すことを決意するのでした。
しかしアレックスはソフィーの思いを無視することができず、コーラを説得します。
そして二人が作った曲のままの「愛に戻る道」をコンサートで披露し、姉に連れられてきていたソフィーはアレックスの謝罪と彼女への思いを受け止めるのでした。
おそらくここは、コーラがかつてPoPのファンであったこと。そしてコーラの両親が離婚して傷付いていた時に「恋は突然」で救われたことを伏線にしていたと思います。
だからこそ、アレックスが傷つけたソフィーの心を取り戻したいので協力してほしいという願いとともに、「愛に戻る道」を二人が作った形で発表させてほしいと頼んだことを了承したのでしょう。
映画「ラブソングができるまで」の感想
映画「ラブソングができるまで」の感想は一言でいえば、
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「安心してみていられる王道のラブコメディー」
です。
ある意味、ストーリー展開は予想の付くもので、あまり目新しさはありません。
が、ハッピーエンドで終わって、映画の途中で大笑いできる作品として、奇抜なストーリー展開は必要ないでしょう。
楽しく見ることができ、ほんわかする結末のラブコメディー
王道のラブコメディーであるため、ストーリーにひねりも、あっと驚く展開も必要ありません。
王道であるが故、安心してみていられます。
しかしワンパターンのどこにでもあるつまらない映画という印象を持たないのは、ひとえに本気で笑いを取りに来ているコメディーパートにあると思います。
一番の山場はミュージックビデオ付きの「恋は突然」
今見てみるととても陳腐なストーリーが混ざった、バンドもおかしな衣装におかしな髪型で、まさに80年代に流れていたと感じさせるクオリティを再現させています。
そして今となっては人気もどん底のアレックスが、一部のファン層にはいまだに熱狂的に迎えられているのも面白い演出でした。
とくにファンではなかった人たちは、歌を歌ってもリズムに乗ってもくれないし、手拍子もしてくれない。
同窓会や遊園地での営業シーンは、熱狂しているおばさんたちと白けている他のお客のコントラストが、とんでもなくひどいのに笑ってしまいました。
ヒュー・グラントの歌声が思いのほかよかった
映画の中で驚いたというか、かなり意外で「へぇー」となったのがヒュー・グラントの歌声。
あまり声音は大きくないけれど、結構あま目の歌声で悪くない、と感じました。
映画の冒頭に流れる「恋は突然」のミュージックビデオですが、80年代の安っぽさ、そしてドラマチックなストーリーを下手な芝居で演じる部分も漏れなく入っている完璧のクオリティーでした。
これは1980年代前半のニューロマンティックといわれるムーブメントやMTVブームの火付け役となったイギリスのバンド「デュラン・デュラン」のミュージックビデオを参考にして作られたそうです。
また、映画の撮影に際し、ヒュー・グラントは歌とピアノのレッスンを、ドリュー・バリモアも歌のレッスンを受けて望んでいます。
が、ヒューは当初、音楽がロマンスの大きなキーとなるストーリーの映画で歌手という役を演じるにもかかわらず、アレックスが歌を歌う場面で、自身が歌わずに誰かの声を当ててもらえばいい、と考えていたそうです。
たとえ映画の中だとしても、大勢の人前で自分の歌声を披露するのはやはり恥ずかしい、と思っていたのだとか。
ですが、歌のレッスンを受けるうちにだんだんと歌を歌うことに気持ちよくなり、自分の歌声を披露することにためらいはなくなっていったのでした。
そして撮影の際にはアレックスが歌を歌うシーンで、ヒューが本当に歌を歌うことを楽しむようになったのです。
ついにはエンディングのコーラとのライブコンサートもヒュー自身で歌い上げる、と宣言するほどでした。
が、実際の撮影ではヒューの歌声はとんでもなく外しまくってしまい、あまりの下手くそさ加減に、反対に観客役のエキストラがとても楽しんでしまったほどだったとか。
映画で使われた音源は、撮影以前に録音されたテスト音源のもので、それを映像にかぶせて「愛に戻る道」は歌われたのでした。
加えてヒューに関するトリビアをもう一つ。
映画に際してヒューはピアノのレッスンも受けていました。
が、アレックスがピアノを弾いているシーンの音源は、ヒューが弾いたものではありません。
実際のピアノの音源は、ヒューとドリューに歌のレッスンをしたマイケル・ラフターでした。
「めでたしめでたし」で全てが終わることを薄いと感じるかも
映画のストーリーは大きなどんでん返しもなく、王道といっていいラブストーリーとして進んでいきます。
才能のある二人でしたが、過去の失敗をずっと引きずっており、それが原因で折角の才能を生かすことができないでいました。
そんな二人が出会って、一緒に作品を作り上げていくことで、眠っていた才能が生かされ、全く赤の他人だった二人も惹かれあうようになっていきます。
しかしこの展開は、主人公の二人がかなり完成された才能を持っていないと成立しないお話です。
特にドリュー演じるソフィーは、文章を書く練習を大学時代までしていたとはいえ、それまで世に問うた完成作品はありません。
人よりも洗練された表現方法を持つことも才能ですが、それをまとめて一つの作品にすることもまた別の才能だと思っています。
ソフィーは文章表現の才能がずば抜けてあるものの、それをまとめて歌なり小説なりの一つの作品に仕上げるという経験はまだありませんでした。
同じくアレックスも曲の才能はありながら作詞のほうはそれほどでもなく、そんな状態で作り上げたソロアルバムの世間の評価はさんさんたるもの。
そんな二人が足りない才能を補いながら、素晴らしい曲を作り上げて、恋も仕事も成功させたわけですが、そう考えると才能がなかったらこの話は成立していないのでは、ということになってしまいます。
ついては「この二人だから成立した話」ということになってしまい、取り立てて才能のない一般人には、おとぎ話になってしまうのではないでしょうか。
つまり、スーパーマンとスーパーウーマンのお話で普通の人が努力と出会いで成長していくというものではなく、ひいてはキャラクターが薄い、人間味がない、と感じてしまうかもしれません。
コーラ役ヘンリー・ベネットのデビュー作品
個人的には主人公のアレックスとソフィー以外に3人のキーキャラクターが登場しました。
アレックスのマネージャーであるクリス。
ソフィーの姉であるローンダ。
そして主人公の二人が曲を提供したスターシンガー、コーラ・コーマンです。
偶然の一致なのでしょうが、映画内でソフィーとローンダは7歳違いという設定でした。
ローンダを演じたクリステン・ジョンストンとドリュー・バリモアも実年齢は7歳違いでした。
ちなみにヒューとドリューの年齢差は14歳だそうです。
コーラを演じたのはヘイリー・ベネット。
実はこのヘイリーは、このコーラ役が女優としての最初の仕事で、「ラブソングができるまで」が彼女のデビュー作品となるのです。
プロの女優になってから3度目に挑戦したオーディションがこのコーラ役。
それに見事受かり、大抜擢をされました。
映画でコーラ役として自身の歌声でいくつもの曲を歌いあげ、映画のサントラにも彼女のソロ曲として3曲が含まれています。
映画公開の翌年2008年にはロサンゼルスでライブコンサートも開き、歌手活動もしていました。
惜しむらくはコーラというキャラクターは人としての個性というか、彼女がどのような人物であるか、という見せ場はほとんどなかったように思うところです。
ですので、スピリチュアルな世界観にはまっている不思議なスターシンガー、という一面だけしか感じることができませんでした。
「愛に戻る道」を彼女風にアレンジしたものの、最終的にはアレックスの説得でオリジナルに戻したことも、アレックスの言葉による説明だけで終わってしまい、コーラというキャラクターをより深く見せるエピソードとしては使われなかったのは残念です。
キーキャラクターでありながら、クリスやローンダに比べると薄っぺらいキャラになってしまっていたと感じたのでした。
そんなデビューを飾ったヘイリーですが、この後も女優として活動をつづけ、2014年にイコライザー、2016年には「ガール・オン・ザ・トレイン」、「マグニフィセント・セブン」(日本での公開は2017年)に出演。
2019年には「スワロウ」(日本公開は2021年)で主演を務めました。
その後もさらに女優活動を精力的につづけています。
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まとめ
映画「ラブソングができるまで」は王道といっていいロマンスストーリーに、かつて大ヒットを飛ばしたものの今では落ちぶれた元アイドルの姿を面白おかしく描くことで多くの笑いをちりばめることのできた、楽しい作品です。
ただ、ど真ん中のラブコメストーリーですので、深みといったものは感じることはないでしょうが、安心して楽しく見ていられる映画ですので、恋人同士で見るのには最適なのではないでしょうか。
主演のヒュー・グラントとドリュー・バリモアの歌声も楽しむことができますし、音楽も素晴らしいので、リラックスして視聴するにはおすすめの映画だと思いました。
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