映画「ゲット・アウト」は恋人の実家を訪れた黒人青年が、奇妙な家族の振る舞いに
不信を抱き、それが確信に変わる時に、自身に降り掛かった災難に恐怖するというホラー
映画です。
その映画の主題は黒人差別がまだ根強くアメリカの中に残っているという、この映画が
デビュー作となる黒人監督でコメディアンのジョーダン・ピールの考えがあるのですが、
そんな重い内容の映画と裏腹に、監督がコメディアンの血があることを隠し通せなかった
のか、怖いだけでなく、面白みもある映画に仕上がっています。
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キャストの紹介
クリス・ワシントン: ダニエル・カルーヤ
幼いころに両親をなくし、天涯孤独の黒人写真家。ローズと4ヶ月前から付き合い始めている。
ローズ・アーミテージ: アリソン・ウィリアムズ
クリスの彼女、白人女性。彼を両親に紹介を兼ねて実家に招待する。
ディーン・アーミテージ: ブラッドリー・ウィットフォード
ローズの父親。脳神経外科医。ローズがつれてきたクリスを歓迎する。
ミッシー・アーミテージ: キャサリン・キーナー
ローズの母親。精神科医。催眠術を取り入れた治療法を使う。
ジェレミー・アーミテージ: ケイレブ・ランドリ・ジョージ
ローズの弟。柔術を駆使するスポーツマン。
ネタバレあらすじ
映画の冒頭は、夜の住宅街を一人の黒人男性が歩いているところから始まります。
向かいから車が近づいてきますが、その車はUターンしてその黒人男性の脇に止まるのでした。
気味の悪くなった男性は回れ右してもと来た道を引き返しますが、いきなり後ろから首を
絞められ、大した抵抗もできずに、ぐったりしてしまいます。
その黒人男性を車のトランクに入れると、車はどこへともなく走り去っていくのでした。
黒人写真家のクリス・ワシントンは付き合って4ヶ月の彼女、白人女性のローズの実家へ、
週末に泊りがけで行く準備をしていました。
その際中、クリスはローズに、両親にクリスが黒人であることを伝えてあるのかを聞き
ますが、ローズはまだそのことを両親には伝えていませんでした。
しかし、両親はそんなことを気にするような、差別的な人間ではないと安心させます。
彼女の実家は町からも遠く離れた場所にあり、そこを目指して森の中をローズの運転で
進みます。会話を楽しんでいた二人ですが、急に鹿が飛び出してきて接触し、交通事故を
引き起こしてしまいます。
幸い、助手席側のヘッドライトのカバーが割れ、サイドミラーが壊れてしまいましたが、
二人に別状はありませんでした。念のため、警察を呼んで事後処理をしますが、その際、
白人警官が、助手席に乗っていただけのクリスの身分証明書の提示を求めます。
面倒なことにならないように、それに応じようとしたクリスですが、ローズはきっぱりと
警察官の要求を断り、助手席に乗っていただけのクリスに対して、身分証明書を提示する
義務はないはずと、反論します。
ローズのその毅然とした態度に恐れをなしたか、警察はクリスの身分証明書を確認する
ことなく、二人を解放するのでした。
ローズの実家に到着すると、両親から過剰なくらいの歓迎を受けます。
心配していたクリスは拍子抜けしますが、一方で、黒人の男女、ウォルターとジョージーナ
の二人が、使用人として住み込みで働いていることに、多少の違和感を覚えるのでした。
初めて会うローズの恋人ということで、クリスは両親や弟のジェレミーからいろんなことを
根掘り葉掘りと聞かれます。タバコを吸う事を見破られ、禁煙するためにミッシーの催眠
療法を勧められますが、その場ではクリスは丁重に断るのでした。
その夜、タバコを吸うために外へ出ますが、そこで家の周りを全力疾走するウォルターと
窓を鏡代わりにして自身の姿を眺めているジョージーナの行動を目の当たりにして恐れを
いだきます。
寝室に戻ろうとした際に、催眠療法に使用している書斎にいたミッシーに見つかり、禁煙
のための催眠療法を受けるように再度勧められるのでした。
断れきれなかったクリスは、催眠療法を試してみますが、ミッシーはそんな彼の過去の
出来事、母親がひき逃げ事故で亡くなった夜のことに触れ、その時の恐怖と悲しみを思い
出させるのでした。
その時の思いをさらけ出したクリスですが、急に体が地面の中に沈み込むような感覚に
襲われます。真っ暗な空間の中に落ち込んでいき、視界の外に広がる景色が遠く離れて
スクリーンに写っているように見えるのでした。
必死に叫ぶのですが、声にならず、ミッシーが近づいてきてまぶたを閉じさせると、
全くの暗闇の中に取り残されてしまいます。
と、次の瞬間、目を覚ましたクリスは、ベッドの上にいることに気がつきます。
悪い夢を見たのかとも思いましたが、起きてみるとタバコの臭いに強烈な嫌悪感を抱く
ようになっており、一概に夢ではなかったような気もします。
その日、ウォルターと庭で話す機会があったのですが、同世代の黒人青年であるはずの
彼とまったく黒人同士の話ができず、違和感はどんどんと強くなります。
やがて、アーミテージ家にどんどんと来客が到着してはじめます。
年に一度のパーティーがその週末に予定されていたことをローズが忘れていたものでした
が、そのメンバーは年配の白人カップルがほとんどでした。
ローズとともに参加者に会って自己紹介をするクリスですが、なんとなく会う人会う人の
コメントや行動に違和感を感じます。
たとえば、ゴルフを趣味にしていた老人はクリスにゴフルスイングをして見せてくれ、と
言い、とある女性は体つきを調べるようにクリスの二の腕や胸板を触ってきたり。
そんな中で唯一黒人の招待客として来ていたローガンに気づき、自己紹介をしますが、
彼も同年代の黒人でありながら話し方がおかしく、しかも一緒に来ていた女性は遥かに
年上の白人女性でした。
クリスは部屋に戻って、運輸保安庁の勤める友人のロッド・ウイリアムに電話をしようと
しますが、充電器につなげておいたはずの携帯が外されていることに気がつきます。
パーティーが始まる前、庭にいる時にジョージーナが部屋にいたことを窓から見たことを
思い出したクリスは、彼女の仕業かと疑いますが、その理由がさっぱりわかりません。
白人の彼女を持っていることに対する嫉妬からの嫌がらせ、とも考えますが、説得力に
とぼしいとも思うのでした。
電話にでたロッドにパーティーのこと、催眠療法のこと、何処かで見た覚えのあるローガン
のことを話すのですが、ロイは催眠術にかけられて中年白人女性のツバメにさせられて
いるのだと、決めつけます。
そしてクリスも同じように洗脳されて、ツバメとしてこき使われるに違いない、と脅す
のでした。
クリスはパーティーにもどり、ローガンの写メを取ってロッドに送ろうとしますが、自動で
フラッシュが付くような設定になっていたのを忘れていたのでした。
しかしそのフラッシュでローガンの様子がおかしくなります。急に動かなくなったと思うと
鼻血を出し始め、次の瞬間、クリスに向かって「出て行け、今すぐここから出ていくんだ!」
とすごい形相になって、掴みかかってくるのでした。
驚いたクリスでしたが、ローガンは他の客に取り押さえられ、ミッシーの催眠治療をうけ、
落ち着きを取り戻します。
急に取り乱したことを皆に謝るローガンは、特にクリスに対して驚かしたことを謝罪する
のでした。
謝罪を受け入れたクリスですが、あまりのショックに少し歩いてきたいとパーティーから
抜け出します。ローズも心配してついていきますが、クリスはローズに一連の奇妙な出来
事に対して、ここにはとどまれない、と正直に打ち明けます。
家族と彼氏の間に立つことになったローズですが、クリスと一緒に今晩、帰ることに同意
するのでした。
一方、その頃パーティーでは、クリスの大きな写真を前に、参加者全員が参加しての
サイレントオークションが開かれていました。
家に戻って荷物をまとめ、一段落付いた時点でクリスはロッドにローガンの写真を送ります。
ロッドから直ぐに電話がかかってきて、知り合いの妹の彼氏、アンドレだとわかります。
しかし、その姿は以前のアンドレと似ても似つかない風貌になっており、着ている服装や
髭を剃って、全く変わっていたのでした。
電話を切った後、クリスはローズのクローゼットの中で、とある箱を見つけます。
開けて中を見てみると彼女が幼かった頃の写真が入っていましたが、その下にも何枚も
写真があり、成長した彼女とツーショットで映っている数多くの黒人男性との写真が
出てきます。
そして最後の3枚には、ローガン/アンドレと写るローズ、ウォルターと写るローズ、
ジョージーナと写るローズの写真があるのでした。
動揺するクリスですが、ローズが戻ってきたので、平静を装って下に降りていきます。
ロッドに面倒を見てもらっている飼い犬が病気になり、明日朝一番で医者に連れていかなけ
ればならないという嘘の理由をでっち上げますが、ディーンとジェレミーが明らかに
尋常ではない雰囲気でゆっくり近づき、ローズも態度を豹変させてクリスが家から逃れ
られないよう、車の鍵を渡そうとしません。
意を決してジェレミーに飛びかかりますが、ミッシーがティーカップをスプーンで叩いて
音を立てると、クリスは催眠術にかかって意識を失ってしまうのでした。
クリスは気がつくと家の地下の一室でソファーに縛り付けられているのでした。
目の前にテレビがあり、クリスが気がつくと同時に映像が映し出されます。
そこに映るのはローズの祖父で、彼もやはり脳神経外科医でした。
そして彼が確立させた脳移植の技術で年老いて死んでいく肉体を持った裕福な白人相手に、
ローズ一家は若い命を提供していることを明かします。
移植先は黒人の若者で、犠牲となった彼らは、彼らの意識を失うことなく、クリスが
ミッシーに初めて催眠療法を受けた際に、落ちていった暗闇の中に閉じ込められ、自分の
肉体が何をしているか、自覚することができるのでした。
そして、言葉やフラッシュなどによって、一時的に閉じ込められた意識が戻って肉体の
コントロールを取り戻すことができるのです。
これが、クリスがアーミテージ家に来て以来、他の黒人達との会話などで体験した数々の
奇怪な違和感の真相なのでした。。
クリスの肉体は既にオークションで落札され、盲目の画廊経営者が手に入れることに
なっていて、ディーンの手で手術が行なわれる準備が着々と進んでいました。
その頃ロッドはクリスが見たアンドレが、数か月前から行方不明になっていること、
そしてクリスにも急に連絡のつかなくなった事などからクリスを心配し、警察に行きますが、
警察は真剣にロッドの話を聞いてくれません。
仕方なくロッドは職場のデータベースやこれまでの知識を総動員させて、一人でクリスを
助けるべく、調査を開始します。
手術の準備が整い、ジェレミーが意識を失っているクリスを手術室に運ぼうとやって
きます。
ソファーに固定させるための拘束具を外し、クリスを車椅子に乗せようと脇を見た瞬間、
クリスは立ち上がってジェレミーの不意をつき、卒倒させます。
床に横たわるジェレミーの上に、クリスは耳に詰めた綿の耳栓を捨てるのでした。
その耳栓はソファーの外側を破いて引っ張り出して手に入れたのです。
一方、手術の準備が整ったのにクリスをつれてジェレミーが戻らないことので、ディーンは
様子を見に廊下へでます。
そこに、とらわれていた部屋の壁に飾ってあった鹿の頭部の剥製を抱えたクリスが、その
鹿の角をディーンの頸部に突き刺します。ディーンはフラフラと手術室に戻って倒れます
が、その際に、床に立ててあったろうそくを倒し、その火が引火して火事が始まるのでした。
地下室から脱出したクリスはミッシーに鉢合わせします。ティーカップで催眠術にかけ
られないように、机の上のカップを弾き飛ばし、ナイフで襲ってくるミッシーに手に平を
傷つけられますが、力で勝るクリスはナイフを奪い取ってミッシーに突き立てます。
外への扉を開けて出ようとした瞬間、まだ生きていたジェレミーに首を絞められます。
完全に極めて意識を無くさせようとするジェレミーでしたが、クリスはミッシーに突き
立てたナイフを掴むことに成功、ジェレミーの足に突き刺し、絞めから逃れます。
そしてこんどこそ、ジェレミーにとどめを刺すのでした。
外に出たクリスはジェレミーの車を奪って逃げ出そうとします。しかし、庭で
ジョージーナを轢いてしまい、車を止めてしまいます。
過去に母親がひき逃げで亡くなったこと悲劇から、地面に横たわるジョージーナをそのまま
見捨てて走り去れません。
結局、放ってはおけず、助手席にジョージーナを乗せて再び走り出すのですが、その物音に
気がついたローズが猟銃を構えて家の中から出てきます。走り去る車をみて、後を追い
かけるのでした。
ジョージーナはすぐに意識を取り戻しますが、彼女はローズの祖母に乗っ取られていました。
ジョージーナは運転中のクリスに飛びかかりますが、そのせいで車は道路脇の木に激突、
その衝撃でジョージーナは死んでしまいます。
さらにダメージを負ったクリスは、ローズの狙撃から逃れようと車を降りますが、
度重なるダメージのため、足元が定まりません。
そのクリスに向かってローズの祖父に乗っ取られたウォルターが飛びかかります。
必死に抵抗しますが、ほとんど余力のないクリスは、ポケットにあるスマフォをなんとか
取り出し、ウォルターの顔の前でフラッシュを焚くのでした。
その光に一瞬ウォルターの動きが止まります。そして静かに立ち上がります。
銃口をクリスに向けるローズに、自分がとどめを刺す、と銃を受け取りますが、その顔に
は、鼻血が流れ落ちていました。
銃を受け取ったウォルターはすぐにローズに向けて発砲。弾は彼女の胴体を貫通します。
そして今度は自分の頭を撃ち抜き、自殺するとともにローズの祖父も、その手で始末する
のでした。
まだ息のあるローズのもとに、クリスは近づきます。
恋人同士だったときのように愛を囁いて助けを求めるローズに対し、クリスは首を絞めて
とどめを刺そうとします。が、フラッシュライトとパトカーの警報に、その手を離さざるを
得ませんでした。
観念したように手を上げて立ち上がるクリスと、助けが来たことにほほ笑みを浮かべる
ローズでしたが、なんと、そのパトカーは運輸保安庁所属のもので、おりてきたのは
クリスを心配して駆けつけたロッドでした。
クリスは車に乗り込み、変わり果てたクリスを見たロッドは、「白人の彼女の両親の家に
行くことはよした方がいいと、言っただろう。」とつぶやきます。
そうして車はUターンをして森の暗闇の中に遠ざかるのでした。地面に横たわったローズは
遠ざかる車のライトを見ながら、やがて動かなくなったのでした。
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