映画ユダヤ人を救った動物園アントニーナが愛した命のネタバレ感想とあらすじ!

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ネタバレ感想 1 ルッツ・ヘックがアントニーナに持った愛情が戦時中でなかったとしたら

第二次世界大戦のヨーロッパを舞台にしたお話ですし、ユダヤ人をナチス・ドイツから
守ったジャビンスキ夫妻の話として、草の根の英雄ということになるとは思います。

制作はアメリカとイギリスの共同ということになっており、「シンドラーのリスト」の
ような映画ではありますが、おそらく欧米ではナチス・ドイツに対して命がけで友人を
含む多くのユダヤ人を救出させたということで、その行為に対して賞賛の意味という
ことでこの映画が作成されたのではないかと思います。

しかし僕には主人公のアントニーナの美しさに心惹かれ、同じく動物学者として、動物園の
管理者として夫のヤンとも友人であったルッツ・ヘックの人間性に強く興味を持って
しまいました。

というのも、映画の冒頭、1939年ではアントニーナの美しさだけでなく、動物に対する
愛情にも大きく心奪われつつ、既に人妻である彼女に対して、友人として以上の接し方は
しているようには見受けられませんでした。

戦争が始まってドイツがポーランドに攻め込んで来た時には、自分の立場、ヒトラーにも
覚えの良い動物学者として自分の持てる力を使ってアントニーナの役にたとうとしています。

ある意味、いいとこを見せたい、という欲求もあったのように感じましたし、ワルシャワ
動物園にいる貴重な動物を自分のベルリン動物園へ移してしまいたい、という下心も
あったようには感じましたが、戦争が終わったら返すと約束しているところを見ても、
そこまで悪巧みを凝らして、という感じではありません。

結局自分が思っていたほど、ナチス党内での権限があるわけでないのが、残った動物の
処刑命令に対して、結局止られなかったわけですが、、、。

そんな彼の振る舞いに傲慢さが出始めたのは、オーロックスと呼ばれるかつてポーランドに
住んでいて1627年に絶滅してしまった野生の牛を蘇らせようとし始めたときでした。

ある意味、神様にしかできないような種の創造であり、そうそううまくいくわけはないと
思われることを自信満々に自分にならできると話していたシーン。

ここを見て、当時、ナチス軍の快進撃や、ヒトラーが唱えるゲルマン民族の優位性などに
あわせてか、自分も失敗するはずがない、というわけのわからない自信を語り始めて、
性格が変わってしまったかと思わずに入られませんでした。

これに関して、僕が思うのにはルッツ個人の性格が悪いのではなく、そういう雰囲気に
毒されてしまったのではないか、と。
いわゆる周りからおだてあげられて天狗になってしまい、その結果大きな失敗をして
しまうというのと同じようなものだと思うのです。

その後、何かと動物園にやってくるルッツは、征服者であるナチス・ドイツを背景にして
いるため、彼の機嫌を損ねないように、というジャビンスキ夫妻の気苦労が感じられました。

一方で彼らもルッツをおだてあげて、彼の持つナチス・ドイツの中でも比較的高い権限を
自分たちに都合のいいように、使い始めています。

もちろん、その使用は迫害されている罪なきユダヤ人を助け出すといった、正義の行為の
ためにでしたが、それでもルッツが持つアントニーナへの好意を利用して、彼女の中に
存在しないルッツへの愛情を、偽って彼に見せることで出来ているのですから、ひどい
ことをしていると思うわけです。

愛してもいない人を愛していると偽り、その人からの愛を利用して、都合よく使って
いる。一昔前に流行った「アッシー君、メッシー君」として行為を持っている男性を
便利使いしていたのと全く同じなのではないかと。

戦争でルッツとジャビンスキ夫妻の間柄が単なる友人から征服者と被征服者になって
しまったため、起こった悲劇だと思わざるを得ないのでした。

そうでなければ、ルッツもアントニーナへの好意は自分の中にしまっておいて、友人と
して接し続けることができたでしょうし、アントニーナも彼の思いを知っても、それで
もって自分の都合のいいようにルッツを操るようなことをせず、友人として以上の関係に
なるような隙は見せないかったでしょう。

僕がルッツはいいヤツでかわいそうだな、と思ったのは彼がジャビンスキ夫妻のしていた
ことを知り、そのためにアントニーナが偽りの愛を返していたことも知る羽目になった
あと、裏切られた復讐に息子を殺さなかった点に対してでした。

自分なら騙されていたショックに、理性を失い、思わず引き金を引いてしまったかも
しれません。たとえ自分が立場を利用して、相手が拒絶するという選択肢を取れない
状況下で迫ったという事実があったとしても。

よく聞く話ではありますが、人は集団の中で行動をエスカレートをさせがちになると
いうことがあります。

集団暴行で人が死んでしまう理由の一つとしてよく上げられますし、先の大戦でも
外国に進軍した日本兵が現地の民間人を面白半分に虐殺した、なんて話も聞いたり
します。そんな兵士は、実は近所の気のいいおっちゃんで普段そんなことをする
ような人ではない、ということも珍しくありません。

もちろん日本軍に限らず、戦争となればどこでも同じ様な話は出てきます。

そんな状況下で、ルッツも他のドイツ兵の視線を意識する場面は多かったはずですが、
自分を失うことなく、映画内で誰一人殺していないのは、じつは彼が本当に自分自身を
律することができる人間だということなのでしょう。

そしてルッツが自分の願望を叶えるために、立場を利用した卑怯な方法を取ったという
ことに気がついていたかどうかはわかりませんが、間違いなく彼も戦争によって
振り回された一人だったに違いありません。




ネタバレ感想 2 戦争で動物園が攻撃対象になるのでしょうか?

ドイツ軍によるワルシャワの空爆によって戦争がはじまり、映画内では動物園にも爆弾が
投下されていました。

その結果、死傷した動物もいますし、檻が壊れて街中に逃げ出した動物もいました。

確かに戦争中、動物園に爆弾が落ちて、ということも起こり得るでしょうが、ちょっと
考えると不思議な気がします。

というのも、動物園を攻撃して何のメリットがあるのか、ということです。

戦争開始でポーランドの首都ワルシャワを攻撃するのはわかります。
攻撃する方としてはできるだけ被害を少なくして戦果を大きく上げたいのは、自明の理
だと思います。

そうすることで、速やかに占領ができることと、次に起こるであろう作戦に支障なく
速やかに移行できるからです。

となると、最初の攻撃で潰したいのは相手の反撃能力でしょう。
空港なら滑走路を破壊して相手の飛行機が飛び立てなくするとか、川にかかる橋を壊して
援軍が来れなくするとか、砲台を叩いて攻撃能力を無くすとか。

そんな状況下で、動物園を攻撃し、動物を殺したり、檻を壊して動物を街に逃したり
しても何の得にもなりません。
猛獣が逃げ出した結果、相手にパニックをおこさせる、ということも考えられますが、
爆弾での攻撃の場合、逃げ出すよりも死んでしまうという可能性もあり、確実性が疑われ
ます。

つまり何がいいたいのかというと、本当に動物園が攻撃されたのか、ということです。
もちろん狙った爆弾投下が外れて動物園内に落ちた、ということはありますが、最初から
動物園を狙って攻撃したのは、納得がいきません。

ノンフィクションが原作でもありますし、映画の映像効果として動物園が攻撃され、動物
が逃げ出し、中には射殺された動物もいる、というシーンを取りたくて、出来上がった
のかもしれません。

それで思い出すのが、2001年に公開されたディズニー映画「パール・ハーバー」であった
とんでもない描写の数々。
ここでは詳しくは述べませんが、戦争の悲惨さと主人公の行為の正当性を強めるためとは
いえ、映画という影響力を考えると史実に基づく描写はしてほしいと思います。

ネタバレ感想 3 ジェシカ・チャステインの魅力と映画を彩った動物たち

主人公であるアントニーナを演じているのはジェシカ・チャステイン。先月公開された
「神の見えざる手」でも主演をつとめ、そちらではやり手のロビイストを怪演しています。

「神の見えざる手」では、勝つために手段を選ばず、使えるものは他人はおろか、自分
自身さえも、感情を考慮することなく、最大限に利用する女性でしたが、今回も生きる
ために利用できるものを、自分の中で罪悪感を感じながらも利用して生きていく、強い
女性を演じています。

戦争中ということもあり、メイクも控えめな感じで、ともするとすっぴんに近いのかな、
と思えるシーンもありますが、それでもやはりおきれいな女優さんです。

愛していないルッツを愛しているふりをして、命がけでユダヤ人を匿い、逃している
のですが、たとえ罪のない多くの人を助けるためとは言え、自身の思いを偽り、ルッツを
騙し続け、そのせいで愛する夫ヤンから嫉妬を受けてしまう。

遂にはその苦しさに耐えきれず、感情を爆発させてしまうという、普通の女性が生きる
ためにギリギリの状態で無理を重ねていることも、きちんと視聴者に見せてくれています。

また、動物園が舞台ということで数多くの動物が出演していますが、驚いたことに
すべての動物は、すべて本物を使用し、どれ一匹もCGを使うことはありませんでした。

ポスターにも映っているライオンの赤ちゃんも本物で、ジェシカ・チャステインは
本物のライオンの赤ちゃんを抱いているのです。
また、驚いたことに象の出産シーンも本物を使用して撮影をしているのです。

動物は全て本物ですが、撮影場所はワルシャワを舞台としているにもかかわらず、
どのシーンもポーランドで撮影されることはありませんでした。
全ての撮影はチェコのプラハで行われていたのです。











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