ネタバレ感想 1 今までと一味違うゾンビ映画 希望が持てるその後の展開
ゾンビ映画である「ディストピア パンドラの少女」ですが、今までのゾンビ映画とは
一味違うなという感想を、視聴し終わって感じました。
古い種が新しい種に取って代わられるという過程を描いており、古い種が築き上げた文明を
新しい種がなんとか受け継いでいこうとするラストに関心しました。
今までのゾンビ映画での典型的なエンディングだと、ゾンビたちを一掃してめでたしめでたし
と思いきや、まだ隠れて残っていて騒動は終わっていない的なものが多かったような気が
します。
僕自身、すべてのゾンビ映画を見ているわけではありませんが、本当にハッピーエンドで
終わった映画で思いつくのは「ウォーム・ボディーズ」くらいで、あとは「アイ・アム・
レジェンド」と「ワールドウォーZ」が最後でゾンビに対抗しうる解決策を見つけて終わる
ため、希望が持てるエンディングだったくらいだと思います。
この「ディストピア パンドラの少女」が、ここまで飽和した感のあるこれまでのゾンビを
題材にした映画において「新しいゾンビ映画」と評価を受けているそうですが、それは
我々人間が爆発的に増えたゾンビに対抗して、元の生活を取り戻すことをメインストーリー
にしておらず、実はゾンビの中でも半分人間のようなハイブリッドという存在が本当の
主人公だったことから得た評価だと思います。
だからメラニーが生き残ったパークスやヘレンを助けて、やがて人間をゾンビ化する病気の
治療法が見つかる、という展開を期待していた人には釈然としない結末になってしまった
かもしれませんが、見方を少し変えると、このようなエンディングも有りなのでは、と
思えるようになると思います。
ネタバレ感想 2 ハイブリッド同士の戦い バットに象徴されること
ギャラガーがハイブリッドの子供達に襲われて殺された後、助けに来たヘレン、パークス、
メラニーが襲われて、メラニーが子供達のボスと戦うシーンでおやっと感じたのが、ボスの
持つバットでした。
なぜバットを持っているのか、そしてなぜそのバットを戦闘に使用するのか、考えてみました。
そこで一つ思いついたのが、はるか昔に見た「2001年 宇宙の旅」で人類の祖先である
類人猿の一頭が骨を道具代わりに使い始めたシーンです。
それは人間が進化の過程で他の動物ができなかった道具を使い始めるという象徴的な
シーンであったと記憶しています。
つまり人と動物とを区別する際の目安の一つに、道具を使うかどうか、というものがある
わけですが、ハイブリッドの子供達のボスだけがバットを持っているということは、ボス
だけは1レベル高い存在なのだということを見せつけているように思えたのです。
メラニーとの戦闘中でもそのバットを使っていますが、結末はバットをメラニーに奪われ、
そのバットで殴り殺されてしまいます。
つまり、メラニーがバットを奪うことでボスの優位性を取り上げることができる存在で
あることを示し、さらにそのバットでボスのとどめを刺したということで、新たなボスの
存在になったのだということを示したのだと思うのです。
腕力で優劣を決めるのは、たぶんに動物的ですが、群れで暮らす動物に近いリーダーの
決め方は、街で暮らすハイブリッドの子供達の生活レベルにあっており、有効なのでしょう。
ネタバレ感想 3 ヘレンの涙の意味は?
ラストシーンでヘレンが、メラニーが集めたハイブリッド達に授業を始める前に、寝転んだ
ままひとしずくの涙をこぼします。
初めて見たときには、その意味を掴み損ねていて、一人生き残った哀しみなのか、と思い
ましたが、その後、授業を始めたため、そんな意味ではないのでは、と深読みしてしまい
ました。
でもその後にハイブリッド達に授業を始めるに当たり、そんな単純な涙ではないのでは、
とも思いました。
ただ、よくよく考えましたが、根本にあるのは哀しみだと思います。
やはり、人間として生き残ったのは彼女だけですし、今後助かる、助けが来る可能性は
ゼロに等しいでしょう。
胞子は撒き散らかされたため、ラボから出られることはありませんし、そうなるとヘレンの
存在価値はハイブリッドに教育を与え、今後彼らの時代になったとき、知性のある存在と
していてほしい、動物のような存在にはなってほしくない、という思いだと思います。
ただ、それが成功したとしてもやはり、ヘレンは外には出られません。
結局はヘレンは滅びゆく種族なのですから、虚しさや哀しみに襲われても不思議ではない
と思います。
これまで地球上で数え切れないほどの種が、滅んでいきました。しかし滅んでいくことを
理解していないので、ちょっと立場が違うわけですが、彼らは自分の死がすなわち種の
滅亡、という事実を知らないわけです。
ヘレンはこれまで誰も経験のしたことのない立場に、望んだわけではないですが、たつ
ことになってしまったのでした。
僕ならその重圧に耐えきれないでしょうね。
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