映画「ザリガニの鳴くところ」は湿地帯に一人で住む少女カイアの成長の物語。
彼女にひかれた二人の青年、テイトとチェイスとの三角関係のロマンスを絡めたミステリー展開で視聴者の興味をぐっとひきつけます。。
ある日、チェイスが死体で発見され、殺人が疑われました。
そしてその容疑者としてカイアが逮捕され、殺人罪の裁判にまで発展してしまいます。
ネタバレですが、結果を言ってしまえばカイアは証拠不十分で無罪となりました。
その後、テイトと結婚し、老衰死するまで幸せに暮らしたカイア。
しかし彼女の死後、彼女の所有物を整理していたテイトがカイアがチェイスを殺したと察せられる文章と行方不明になっていた貝殻のネックレスを見つけます。
これによってチェイスを殺したのはカイアであったことがわかるという結末でした。
しかし本当にカイアはチェイスを殺せたのでしょうか?
映画を見終わった後、そんな疑問を持ったので、実はカイア以外に真犯人がいるのではないか、という考察をしていきたいと思います。
映画「ザリガニの鳴くところ」チェイス殺害の真犯人考察
真犯人がカイアのほかにいるのではないかという考察を始めるにあたって、ストーリーのあらすじからカイア犯人説のおさらいとその説に対する疑問点を述べていきたいと思います。
カイアが殺したことを指し示す証拠
映画の中でチェイスを殺したのがカイアであるということを指し示す証拠は、
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生き残るために捕食者を排除しなければならない
というカイアが書いた文章と
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チェイス殺害現場から行方不明となっていた貝殻のネックレスを隠し持っていた
という事実でした。
また、アリバイのあったとされるカイアは深夜1時のバスでバークリー・コーヴに戻ってこれるし、深夜2時のバスでグリーンビルに戻れるので犯行が不可能というわけではないことが示されます。
さらにチェイスがカイアを襲おうとしたとき、反撃したカイアがチェイスに対して叫んだ、
「二度と近づくな、今度近づいたら殺してやる!」
という言葉もカイアに対して不利な証拠として、裁判で問題視されました。
カイア真犯人説の疑問点
しかし裁判でカイアの弁護を担当したトム弁護士が指摘したとおり、1時間でチェイスを殺害することができるのか?という大きな疑問もありました。
バス到着が深夜過ぎの1時。
グリーンビルに戻るためのバスのしゅぱつが約一時間後の2時。
しかもどちらのバスにもカイアと思われる人物が乗っていたという目撃証言はない、というおまけつき。
深夜2時にバスに乗る乗客の全員を運転手が覚えられないほど、大勢いたとは考えにくいですし、逆に大勢いたのであれば、乗客の誰かがカイアの存在に気づきそうなものです。
さらに疑問に思ったのは、深夜1時にバスで帰ってきたカイアがどのようにチェイスを探し出し、火の見やぐらに誘い出すことができたのか?という点です。
時は携帯電話もない1970年代。
今のように簡単に個人を捕まえて呼び出せるような時代ではありません。
しかもカイアに対する目撃者はおろか、チェイスが火の見やぐらに出向く姿を見た目撃者も全くいないということでした。
これはつまり、カイアはバークリー・コーヴに戻ってからチェイスを探し出すために誰の手助けを得なかった、ということにもなるわけです。
バークリー・コーヴの町中から火の見やぐらまでどれだけ離れていて移動にどれくらいかかるのかははっきりしていません。
小さな子供たちが自転車で行けるほど距離であるとは思いますが、1時間しか町に滞在できないのでカイアが自力で移動して誘い出したチェイスに手を下すことはむつかしいと思わざるを得ないのでした。
カイア以外の容疑者と真犯人考察
では、カイア以外にチェイスを殺すことのできた人間で、殺人の動機を持っている容疑者はいるのでしょうか?
よくよく考えてみると実は二人の人物が容疑者となりうることがわかるのでした。
その二人とは、
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ジャンピン(ジェイムズ)
テイト
の二人です。
では、この二人が犯人である可能性を考察していきましょう。
ジャンピン(ジェイムズ)
カイアが幼いころから利用していたローカルショップ。
いつしか主人のジャンピンとメイビルはカイアを実の娘のようにかわいがるようになりました。
そんなカイアのことをつけ狙い、エスカレートすれば彼女に傷をつけかねないチェイス。
そんなチェイスを、カイアのために葬り去ってしまおうという気持ちになったとしても不思議はありません。
つまりジャンピンには動機があったと考えられます。
しかし一方で当時のアメリカ南部での黒人差別はひどいものでした。
そんな黒人のジャンピンがチェイスをどのような口実を設けて呼び出したのか、ちょっと想像が付きません。
町の名士の家族に属するチェイスが黒人のジャンピンの呼び出しで深夜に火の見やぐらに出向いたのか?
この点は大いに疑問が残ってしまいますし、とても不自然な行動だと思います。
テイト
テイトもチェイスを殺す強い動機を持っています。
それは言わずと知れた「カイアを守るため」というもの。
彼女のために大学の地位も捨ててバークリー・コーヴに戻ってきた程ですから、チェイスを殺すこともできると考えられます。
また、彼がカイアにグリーンビルでの出版者との夕食会に出向くように説得した張本人。
うがった見方かもしれませんが、カイアにアリバイを持たせ、万が一の場合、彼女が逮捕されたり、裁判で有罪になったりしないように、というのが真の目的であった可能性も考えられます。
さらに言えば、チェイスを探し出せる可能性も、またチェイスを呼び出して火の見やぐらに出向かせることができる人物としての可能性も高いといえるでしょう。
カイアを口実にすれば、チェイスが誘いに乗ってくる可能性があるような気がするからです。
以上のことを考えた場合、テイトが真犯人である可能性は全くゼロではないといえるでしょう。
では、映画の最後でカイアの文章と貝殻のペンダントを見つけた時の驚きは何だったのでしょうか?
テイトが犯人だとした場合、カイアに話をしていないということは考えにくいと思います。
そうだとして、カイアがチェイス殺害に関する、告白文ともとれるような文章を残していたことに驚いたのではないでしょうか?
ペンダントをチェイスから奪って持ち去ったのは、テイトが捜査をくらませることを目的にしたため、と考えられます。
完璧なアリバイのあるカイアに疑いの目を向けさせておいて、証拠不十分での不起訴を勝ち取るという作戦です。
一つこれに難点があるとすれば、カイアのことを心底愛しているテイトがわずかでも彼女に疑惑の目が向くことを良しとしたか?という点です。
しかし、もしカイアがチェイス殺害のことを知っていた場合は、テイト一人に疑惑が向かないようにテイトに貝殻のネックレスをとってくるように言ったということで筋は通ります。
何はともあれ、テイトが真犯人であれば、カイアの場合のような時間的制限がなくなるので、余裕をもって確実にチェイスの息の根を止めたのではないでしょうか。
カイアは殺人事件と無関係?真犯人は誰?
カイアが一切関係がない、ということはないと思われます。
というより主犯格として迷宮入りにしてしまうほどのトリックを思い付けるのはカイアのほうが適任だと思うのです。
また、カイアが下手人ではないとしても彼女に疑いの目が向けられるような出来事、「今度近づいたら殺す」という発言を聞かれていたことは起こっていました。
そういった出来事を逆に利用し、疑惑の目は向けられても、最終的には逃げ出せる方法を考えた上で実行した可能性があるという想像も膨らんできます。
この場合は、計画を立てたのはカイア、実際に手を下したのはテイト、ということになりますね。
まとめ
いかがでしょうか?
映画内で語られた方法でカイアが密か町へ戻ってきて手を下したというのは、可能だが机上の空論といわざるを得ません。
あまりに目撃者に見られる可能性が高くてリスクがありすぎます。
また、どうやってチェイスを誘い出したのか?という問いにうまく答える回答が考えられませんでした。
事前に呼び出しておくというのも、カイアのあの精神状態から考えにくいです。
手紙などで呼び出した場合、それが手掛かりとなって残ってしまうリスクがあります。
それらを考えると、テイトが代わりに手を下したと考えるほうがより自然な感じがしてくるのでした。
もう一歩踏み込んで考えるとテイトとカイアの共犯、という線もあり得ます。
バスを使って帰ってきたことに、検察は言及していますが、テイトが車で迎えに行って犯行後、また送り届ける手助けをしていれば、「犯行には短すぎる時間」というハードルがなくなりますので。
映画内ではテイトが車を運転しているシーンはありませんでしたが、住んでいるエリアと彼の年齢を考えれば運転ができて不思議はないと思います。
原作である小説では、より詳しくはっきりとカイアが殺意を固めた心の動きが読み取れるように描かれています。
そのため、犯人はカイア以外ない、とより強く感じられるのでしたが、映画では上映時間の関係上、そこまでのカイアの描かれ方がされていませんでした。
だからこそ、本当にカイアが犯人なのか?という疑問を感じられるようになっていたと思います。
彼女の単独犯としての物理的な条件もかなり厳しいので。
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