ディズニーアニメ「塔の上のラプンツェル」はディズニーアニメの記念すべき50作品目。
そしてディズニープリンセス映画としては初の3D作品です。
そんな「塔の上のラプンツェル」ですが、他の多くのディズニープリンセスのように原作はあったのでしょうか?
あったとすれば、どれくらいストーリーはアニメように変更されているのでしょうか?
今回は「塔の上のラプンツェル」の原作の紹介と、アニメとの違いを一覧の表にして紹介していきたいと思います。
「塔の上のラプンツェル」の原作紹介とあらすじ
「塔の上のラプンツェル」の原作は、「白雪姫」や「シンデレラ」、「眠れる森の美女」などで有名なグリム童話の中にある「ラプンツェル」というおとぎ話でした。
ウォルト・ディズニーが「白雪姫」や「シンデレラ」、「眠れる森の美女」をアニメ映画化し、成功を収めていきましたが、その過程で1940年代に「ラプンツェル」も映画化しようとしたそうです。
が、話の内容があまりに大人向けであり、冒険味に乏しいこともあって、その当時はこの企画は没になってしまったのでした。
「塔の上のラプンツェル」の原作あらすじ
その原作「ラプンツェル」のあらすじはこのようになっています。
あるところに夫婦がいた。
長年子供がいなかった2人だが、ある時やっと子供を授かる。
妊娠した妻は隣に住むゴーテルという魔法使いの庭のラプンツェルを食べたくてたまらなくなる。
食が細ってやつれた妻に「ラプンツェルが食べられなければ死んでしまう」と懇願された夫は、妻と生まれる子のために魔法使いの敷地に忍び込むとラプンツェルを摘み取りにかかるが、魔法使いに見つかってしまう。
しかし夫から事情を聞いた魔法使いは、好きなだけラプンツェルを摘んでもいいが、子供が生まれたら自分に渡せと言う。
やがて妻が生んだ女の子は、即座に魔女に連れて行かれる。ラプンツェルと名付けられた娘は、森の中に築かれた入り口のない高い塔に閉じ込められる。
魔法使いはラプンツェルの見事な長い金髪をはしご代わりに、窓から出入りしていた。
そんなある日、森の中を歩いていた王子が美しい歌声に引かれ、塔の中に閉じこめられたラプンツェルを発見。魔法使いと同じ方法を使って塔に登る。
はじめて男性を知ったラプンツェルは驚くが、やがて愛し合い、魔法使いに隠れて夜ごと王子を部屋に招き入れるようになる。
その結果ラプンツェルは妊娠する。
その事実を知って激怒した魔法使いはラプンツェルの髪を切り落とし、荒野に放逐する。一方、何も知らずラプンツェルを訪ねてきた王子は待ち受けていた魔法使いから罵られる中で全ての顛末を知って絶望し、塔から身を投げて失明する。
7年後、盲目のまま森をさまよっていた王子は、男女の双子と暮らしているラプンツェルとめぐり会う。うれし泣きするラプンツェルの涙が王子の目に落ち、王子は視力を回復する。
王子はラプンツェルと子供たちを伴って国に帰り、皆で幸せに暮らす。
(引用:ウィキペディア
)
更に詳しく調べてみると、原作「ラプンツェル」は5度の発行で内容が変化していました。
初版では「魔女」ではなく「妖精」と表記されています。
また、妊娠についてですが、初版では以下のやりとりで妊娠が発覚し、妖精に塔から追い出されていました。
-
ある日ラプンツェルは妖精に言いました。
「わたしのお洋服きつくなっちゃって、わたしのからだに合わなくなっちゃたの。どうしてかしら?」
一方で第2判よりこの記述は以下のようなセリフに変更されていたのでした。
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「おばあさんを引き上げるのは王子さまよりずっと重い。」
これによって妊娠が発覚したことから塔を追い出されたのではなく、男性を連れ込んでいたことが分かったので塔から追い出されたことになったのでした。
とはいえ、その後、子供を出産している表記がありますので、そういうことをやっていたことは同じなのですが。
ただ、文面だけを見れば、妖精はラプンツェルが誰かと男女の行為をしていたことを気づくことになるセリフを聞いているのに対し、魔女は見知らぬ男性が彼女には内緒でラプンツェルのもとに通っていることだけがはっきりとわかるセリフにとってかわられていたのでした。
「ラプンツェル」の名前の由来
ところで「ラプンツェル」の名前の由来ですが、そのヒントは原作にははっきりと表記してありました。
「ラプンツェル」という名前はドイツ地方を中心に食されている葉野菜の名前なのです。
こちらがその「ラプンツェル」の画像。
塔の上に閉じ込められたラプンツェルは、実の両親から魔女のもとに、魔女が育てていた野菜のラプンツェルと引き換えに、引き取られたため、魔女がその女の赤ん坊を「ラプンツェル」と呼んでいたからでした。
しかしこの部分も含め、原作の設定は、童話とはいえ、かなり無茶がありますよね。
-
・魔女が普通に隣に住んでいる。
・魔女のものを盗んだとはいえ、その償いとして赤ん坊を差し出す。
・取り換えた野菜の名前をそのまま名付ける。
・塔の上に監禁しておく。
・王子が一人で森の中を放浪している。
・ラプンツェルが追放された原因となったことを悔いて自殺未遂をする。
・7年間、王子不在でも問題の起きない王国。
・7年音信不通の王子戻っても問題なく受け入れる王室と国民。
と、まぁ、突っ込みどころ満載。
ディズニーアニメの「塔の上のラプンツェル」が大幅に変更されたことは、もはや必然だったように感じてしまいます。
それでは、次は原作とアニメ版の違いを表にして比較していくことにしましょう。
アニメと原作の違い一覧
こちらが「ラプンツェル」の原作とアニメ版の違いになります
原作 | ディズニーアニメ | |
---|---|---|
ラプンツェルの生まれ | 庶民 | コロナ王国のプリンセス |
ゴーテルがラプンツェルを手に入れた方法 | 家庭菜園野菜との交換 | 誘拐 |
名前の由来 | 交換した野菜の名前 | 不明 |
髪の毛の特殊能力 | ただ、極端に長いだけ | 歌を歌うことで光り、傷を治癒する |
ゴーテル | 魔女 | 魔法を使う描写はなし 400歳前後 |
ラプンツェルの恋人 | 王子 名前無し 自殺未遂で盲目に | ユージーン フリン・ライダーという泥棒 ゴーテルに刺される |
敵役 | 明確ではない | ゴーテル |
ラプンツェルの涙 | 王子の目を治す | ユージーンを生き返らせる |
ストーリーの上で亡くなったキャラ | 無し | ゴーテル 魔法の髪の消滅による老衰 |
一つ一つ、詳しく見ていくことにしましょう。
ラプンツェルの生まれ
ラプンツェルは原作では普通の庶民の夫婦のもとに生まれた娘でした。
一方で、ディズニー版では、コロナ王国のプリンセス、一人娘として生を受けています。
ゴーテルがラプンツェルを手に入れた方法
原作では、妊娠中のラプンツェルの母親のつわり偏食症のせいで、隣に住む魔女が、家庭菜園で育てている葉野菜のラプンツェルが無性に食べたくなったことが発端になっています。
偏食症がひどくなりすぎて、命を落とす危険も出てきたため、夫が魔女の庭から野菜を盗んで妻に食べさせたのでした。
ところが、妻の偏食は収まるどころかひどくなり、夫はもっと野菜を盗まなくてはならなくなります。
結果、魔女に知られることとなり、魔女の許しを請うための条件として、生まれた赤ん坊を魔女が引き取るということになったのでした。
一方、ディズニー版では「魔法の金の花」の若返りの力を独り占めにしていたゴーテルでしたが、妊娠中の王妃の治療のために、「魔法の金の花」が摘み取られてしまいます。
そのかいもあって無事に治癒し、女の子が生まれますが、ラプンツェルの金髪に「魔法の金の花」の魔力が宿ったこと知ったゴーテルが、若返りの力を得るために、誘拐していったのでした。
しかし、ゴーテルは、魔女ではない女性の立場で、よく夜中に城に侵入し、赤ん坊を誘拐して城を抜け出したものですね。
さらに突っ込めば、赤ん坊の金髪を見て、髪の毛に魔力が宿っていることをどうやって見抜いたのでしょうか?
ゴーテルがある程度、魔法に精通しているのではないか、と感じさせる場面でした。
名前の由来
原作では交換した野菜から、野菜の名前を付けて呼んでいました。
ディズニー版では、ラプンツェルの名前の由来については言及はありません。
ある意味、「ラプンツェル」が元ネタであることを現すため、ではないかと感じられました。
髪の毛の特殊能力
原作では、普通の人間が持つことができないほどの長髪を持っていました。
しかしそれだけで、これといった特殊能力はなく、ディズニー版のように、髪の毛を鞭のように使うこともありません。
ディズニー版は歌を歌唱することで、髪は金色に光ります。
そして髪の毛で覆っていた傷は、完全に治癒するのでした。
ゴーテル
原作では魔女でもあるゴーテル。
しかし魔女とはいえ、悪事を働いたキャラクターではありません。
ただし、魔女という無言のプレッシャーがあったのでしょう。隣夫婦の盗みを許す条件に、生まれる赤子を渡すように要求した時、隣夫婦は断り切れませんでした。
また、後にラプンツェルが王子を招き入れていることを知ると、ラプンツェルの長髪を切り落として、追放していますが、殺すことも呪うこともありませんでした。
いわゆる敵役なのか、と考えると、そうとも断言できないキャラクターではあります。
一方でディズニー版では、完全にディズニーヴィランズとなっています。
しかも、これまでのディズニーヴィランズとは一味違った敵役に仕上げられているのでした。
関連記事:塔の上のラプンツェルのゴーテルはかわいそうな毒親?誕生までの裏設定を交えて考察!
ラプンツェルの恋人
原作では、閉じ込められていたラプンツェルの歌声を聞いた王子、となっています。
あまりに美しい歌声に、興味を持った王子はラプンツェルが塔の上に監禁されていることを知り、一計を案じて塔に侵入、ラプンツェルと対面することになります。
原作の、しかも初版では王子とラプンツェルは恋仲になり、ラプンツェルは妊娠までしてしまいます。
ディズニー版では、城から宝を盗んだフリン・ライダーことユージーンが森の中に逃げ込み、隠された塔を見つけて身を隠すことから、ラプンツェルと出会うことになります。
はじめはラプンツェルのことを足手まといで邪魔だと感じていたユージーンでしたが、徐々に惹かれだし、ついにはラプンツェルを助けて恋人となるのでした。
関連記事:塔の上のラプンツェルのフリンライダーことユージーンのトリビアと制作秘話紹介!
敵役
原作を読んでみると、シンプルな勧善懲悪の物語でないことが分かります。
魔女は心優しいキャラクターではありませんが、完全な悪の敵役か、というとそうは言い切れません。
ラプンツェルが塔から追い出された理由も、どちらかといえばラプンツェルに非があるようにも見えますし。
逆に最後には結ばれて幸せな生活を送ることになる王子も、完全にヒーローなのか、というと、どうやらそうでもなさそうです。
外の世界を知らないラプンツェルに対して、王子が初めて出会ったときから常に精神的に優位なマウントを取って終には妊娠してしまう関係を持ったようにも見えました。
ディズニー版は、そこの部分を完全に明確にし、勧善懲悪を分かりやすいように、演出していました。
冒頭からエンディングまで、一貫してゴ-テルがディズニーヴィランズですし、最後。ゴーテルが亡くなるのも、それが自然で一番しっくりくるようにストーリーが展開されていました。
ラプンツェルの涙
どちらかといえば、違いというよりは、ディズニー版「ラプンツェル」で髪の毛を失ったラプンツェルが命を失いかけたユージーンを救うために使われた演出のヒントだと思います。
つまり原作でラプンツェルの涙によって「失明した王子の視力が回復した」ため、同じようなシチュエーションを作り上げることができたのではないか、と思いました。
ストーリー上、亡くなったキャラ
こちらも敵役の違いからの異なる結末となっています。
原作では、敵役がはっきりせず、だれも罰を受ける形で命を落とすキャラクターはいません。
ディズニー版ではゴーテルがディズニーヴィランズですので、やはり最後にこれまでの悪事の報いを受けないといけないのでしょうね。
また、400歳前後の年齢を重ねているキャラですから、そろそろ終活を迎えてもよかったのではないか、と勝手に僕は思っていました。
ストーリー変更の理由
「塔の上のラプンツェル」はウォルト・ディズニーが活躍していた時代に、アニメ化を企画された童話作品の一つでした。
しかしあらすじを見ていただくと分かるように、地味なストーリーであるため、映画化を断念したという歴史があったのでした。
ラプンツェルが生まれる前は、魔女と夫婦の話であり、ラプンツェルが生まれた後は、塔の中に閉じ込められたラプンツェルの生活だけが映像で映し出されることになってしまいます。
ラプンツェルが塔から追い出された後も、王子が悲嘆して自殺未遂をし、死にきれずに盲目になったさまようこと7年という悲惨な展開が続きます。
ディズニーアニメによくある手に汗握る冒険物語とは正反対のようなストーリーとなっています。
しかも原作では、王子によるラプンツェルの妊娠という部分も含まれており、どう考えても子供向けではありません。
実際に監督を務めたバイロン・ハワードとネイサン・グレノは、この映画化の企画を本格化するにあたって、
- 一番最初にしたことは、完全に話を変える必要がある、と決意したこと
とインタビューで語っています。
それによって、各キャラクターの設定も変えられ、特に原作とは完全に違ったものとなるラプンツェルの恋人として、「アラジン」のような泥棒がヒーローとなったのでした。
まとめ
「塔の上のラプンツェル」は有名なグリム童話の中にある「ラプンツェル」を原作にしたディズニーアニメです。
とはいえ、原作の「ラプンツェル」から、多くの設定がディズニーアニメにふさわしいように変更された作品でした。
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・ラプンツェルという主人公の名前
・ゴーテルというラプンツェルの継母の名前
・ラプンツェルが塔の上に暮らしていたという設定
これくらいしか、原作と同じものはありません。
あ、もちろんラプンツェルがとんでもないほどの長髪を持っていたことは、原作と一緒です。
でも、その理由は完全に違っているのでした。
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