1969年に人類初の月面着陸を成功させたニール・アームストロング船長の物語です。
1995年公開の「アポロ13」など、宇宙開発や宇宙からの帰還を題材にした映画はすでにたくさんあるのですが、このファーストマンはそれと何が違うのだろう?と疑問に思っていました。
実際、視聴し終わった後、アポロ計画自体に、そしてその頃の時代背景に非常に興味を持ちました。
ただ、「不可能と思われたミッションを成功させ、万歳!」で終わるような映画ではなく、かなりいろんなことを考えさせられる映画だったと感じたからです。
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簡単なあらすじとキャストの紹介
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督&主演ライアン・ゴズリングのコンビが再びタッグを組み、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマ。
ジェームズ・R・ハンセンが記したアームストロングの伝記「ファーストマン」を原作に、ゴズリングが扮するアームストロングの視点を通して、人類初の月面着陸という難業に取り組む乗組員やNASA職員たちの奮闘、そして人命を犠牲にしてまで行う月面着陸計画の意義に葛藤しながらも、不退転の決意でプロジェクトに挑むアームストロング自身の姿が描かれる。
アームストロングの妻ジャネット役に、「蜘蛛の巣を払う女」やテレビシリーズ「ザ・クラウン」で活躍するクレア・フォイ。
そのほかの共演にジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー。
脚本は「スポットライト 世紀のスクープ」「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」のジョシュ・シンガー。ニール・アームストロング: ライアン・ゴズリング
ジャネット・アームストロング: クレア・フォイ
エド・ホワイト: ジェイソン・クラーク
ディーク・スレイトン: カイル・チャンドラー
バズ・オルドリン: コリー・ストール
引用「映画ドットコム」
ネタバレ感想 1 実際のアームストロング船長を描いたために
映画を見終わった後、少し映画について調べてみましたところ、今回の「ファーストマン」がこれまでの「宇宙競争時代」の映画と少し違うテイストを醸し出している理由が理解できたように感じました。
デイミアン・チャゼル監督や脚本担当のニコール・パールマンはニール・アームストロングの二人の息子やニールを知る友人、当時のプロジェクト関係者、NASAの技術者にまでインタビューをしてリサーチを徹底したとのことです。
だからこそ、ライアン・ゴズリング演じる映画のニール・アームストロングは本当に映画のような感じでミッションに取り組んだのでしょう。
そこには、自分の持つ情熱を静かに隠しつつ、どんな困難にも諦めない強さがある半面、仕事のことに関して、家族にも同僚にも言葉で語ることがない、淡々とした印象を受けました。
意思は強いものの、それを熱く語ることはなく、世間を沸き立たせるわけでもなく。
ミッション成功後は、成功したからこそ、英雄として迎えられましたが、映画では沸き立つ世間をよそに、無事帰還できたことを家族と静かに喜ぶところで終わっています。
まるで一人で成功させたかのように振る舞ってもいいようなものの、そんなところは微塵も見せないことに奥ゆかしさを感じたのです。
ネタバレ感想 2 ラストで二人が何も語らなかった理由を考察
ラストでジャネットが数週間ぶりにニールと無事再会したシーン。
かなり印象的でした。
その少し前にはメディアが自宅に押し寄せ、全国からファンレターや贈り物などが届いていて、あっという間に超有名人のような生活になっていたジャネットを映し出しています。
メディアがいる以上、笑顔で応対しないといけないものの、ニールの歴史的な成功やそれに対する世間の反応のことを考えると常に笑みがこぼれてしまう表情になってもおかしくはありません。
ですが、いざニールと会うために施設にはいった瞬間から、なぜまだそんなに不安なのかと心配するほど、思いつめた表情をしていて、それはニールとガラス越しで対面してからも変わった印象は持ちませんでした。
ニールも相変わらず、ちょっと何を考えているのかわからないような表情のままですし、そんな二人を見てとても不安になってしまったのを今でも覚えています。
こんな重圧にはもう耐えきれない、と別れを切り出しかねないようなジャネットの思いつめたような顔つき。
はたまた、この成功ですべてが終わりとなったわけではなく、平穏で夫の無事を心配しないでいい生活が手に入るわけではないことを心配している。
なんとも言えない重苦しい雰囲気が伝わってきます。
それでも、最後にはニールのガラス越しのキスとジャネットと再会できた嬉しさからの微笑みを見れたのは救われました。
そんなニールの心中を察したのか、ジャネットもできる限りニールに寄り添おうとします。
ただ、最後の最後まで彼女の表情は優れたものにはなりませんでした。
おそらく嬉しさよりも、無事ニールが帰還できたことへの安堵のほうが強かったのだと思います。
そして、この成功でニールが今後、危険なミッションをしなくても良くなったわけではないことも感じ取っていたのではないでしょうか?
二人が言葉を掛け合わなかった理由。
ただ単に、二人を分け隔てているガラスが厚くて、言葉が伝わらないから、だけかもしれません。
それよりも、映画全編から感じた寡黙であまり話をしないように描かれたニールの性格とこれで終わりではないと心配している部分があるジャネットの不安を言い表したかったから、というのが、ボクの感じた印象でした。
実は映画を見てからいろいろと調べてみて、面白いことがたくさん見つかったのですが、その中で1つ残念な事で結構驚いたことがありました。
それは、ニールとジャネットは38年の結婚生活後、離婚していたことです。
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ネタバレ感想 3 月の上を歩いたからって、
アポロ計画の前後、アメリカとソビエトの間で宇宙開発競争が行われていました。
それは、まさに国の威信をかけてどちらが先に成功させるか、ということだけに焦点を当てているように見える、バカバカしいまでのに無駄遣い、とも言えるのではないでしょうか。
最終的にニール・アームストロングが月面を歩いたところで、それまでに使った研究費や失った人的資産を上回る経済的価値があったのか?
もちろん、未知へのロマンを満たしてくれる素晴らしい成果ではあるものの、そういったものを度外視し、純粋に使っただけのお金を回収できたのか、ということを考えると、果たしてどうなんでしょう。
実際、この宇宙開発競争が後のソビエト崩壊の大きな理由の1つと考える専門家もいるようです。
と、まぁ、夢のない話をしてしまいましたが、映画の途中で反対運動をしているグループのシーンで流れていた歌の歌詞は、かなり切実に国民の思いを表していたと思います。
「(黒人の)俺たちには電気代を払うお金がない、医者に行くお金がない。それでも白人は月に行きたがる。」
その日の生活にも困っている貧困層にとってみれば、人を月に送ることがどれほど重要なのか?と、当然思うはずです。
それはあたかも、今現在、落ちぶれてきているアメリカの中間層の人々が、自国民を助けずに、なぜ難民を助ける?国外の戦争に首を突っ込む?と思うのと何ら変わりはありません。
月面着陸に成功して月を歩行したから良かったものの、そうでなければどれだけ叩かれていたか。
そういう事をわかっていたからこそ、アームストロング船長は生前、自分のことを語りたがらなかったのかもしれません。
ネタバレ感想 4 家族としてはたまったものではない
寡黙ながらミッションへの情熱は人一倍強い。
一見するとかっこいいのですが、それに振り回される家族にとってみたらたまったものではないのかもしれません。
まさに国家機密レベルのことですので、ニールとしても家族に、今日何があった、こんなことが起きた、なんてことは話せないのでしょうが、朝出かけていった父親が、昼間、1つ間違えば、宇宙の塵になっていたかもしれないことをしらずに、夜になって家に帰ってきたニールに対して「おかえり」と挨拶しているとしたら。
知らないからとはいえ、なかなかのストレスです。
年齢が小さくて理解ができていない子どもたちはまだしも、留守を預かる奥さんの心労は如何ばかりでしょう。
特に同僚が実験事故で亡くなっていき、その葬式に年4回も参加していれば、次は自分の夫の番かも、と不安になって当たり前です。
とはいえ、そんな姿を子供たちの前で見せられないし、宇宙飛行士の妻よりも歯医者の妻がいい、というのは冗談半分ではないのでしょうね。
この件で、とある台詞を思い出しました。
司馬遼太郎氏の作品「竜馬がゆく」の中にあった千葉重太郎の言葉です。
「女性を幸せにできる男は俺のような平凡な男さ。箸にも棒にもかからないがね。」
幕末の激動時代に英雄として名前をはせた坂本龍馬でしたが、彼を好いてしまった女性は、女性の幸せ、「所帯を持って子供を生んでともに育てる」ことは不可能でした。
一人の女性としては英雄の妻として、夫亡き後に称賛されることより、家族として平穏に一緒に暮らせたほうがよっぽどいいのでしょうね。
だからってわけではないですが、月へ向かうために自宅を離れる夜、ニールが息子二人にきちんと向き合おうとしなかったところは残念でした。
妻ジャネットにきつく言われ、なんとか息子と話すことになりますが、逆になぜニールは子どもたちと話をすることを躊躇していたのでしょうか?
誰もが、もしかすると二度と帰ってこれない、これが今生の別れの可能性があることに疑いは持たないと思います。
であれば、もしもの時のために話をするのは親として当たり前のような気がしますが。
一方で、彼は宇宙飛行士という特殊な人種でもあります。
自分のやっていること、これからやろうとしていることに意味があるのか?などという疑問はまったく感じることはないのでしょう。
感じてしまうようであれば、宇宙飛行士にはなれていないと思うのです。
先にも書きましたが、宇宙飛行士が宇宙にいったことによって、経済的な儲けがすぐに発生することはありません。
極端なことをいってしまえば、宇宙に行きたいという自分のエゴのために、どれだけでも時間とお金をかける事ができなければ、優秀な宇宙飛行士には、なれないことになります。
となると、自分自身でも失敗する可能性がある、と感じていても、成功しかしない、と無理やり信じさせることをする生き物なのではないか、と思うわけです。
そんな自分自身の心の中でバランスを欠いた状態だったニールは、家族に自分の思いを話することはできなかったのかもしれません。
だからって、子供と話さずに行かれて帰ってこなかったら、残されることになる妻としてはたまったものではないでしょうけどね。
ネタバレ感想 4 映画の演出で思ったこと
1960年代後半の話ですので、セットはもちろん、その頃のものです。
車も洋服も、家もそうですし髪型も。
実際に当時の映像を映画内に使用してより臨場感を出していたと思うのですが、映像の色合いまでも妙に60年代後半のようにしていたような気になりました。
せっかくなので、もっときれいな現代的な明るさを使ってほしかった気がします。
あと、他でも言われていますが、ハンディカムでの撮影の多いこと。
画面が揺れる、揺れる。なぜ、そんな演出をしたのか。
ボクはそこまでではありませんが、中には気持ち悪くなった人もいたのではないでしょうか。
この部分は、もっとしっかりと固定して撮ってもらって、落ち着いて見られるようにしてもらいたかった気がします。
逆にあの演出でなにか特別な効果があったのでしょうか?
ボクにはわかりません。
ネタバレ感想 まとめ 人間としての宇宙飛行士
宇宙開発を話のメインに持ってきている映画にしては、達成感や高揚感みたいなものはあまり感じませんでした。
それよりも宇宙飛行士、しかも宇宙開発初期の頃の宇宙飛行士の人間としての葛藤であったり、ドラマであったりが見事に描かれていて、良かったです。
宇宙飛行士というと、やはり英雄というイメージが浮かんできます。
しかしそんな派手で雲の上の存在のような宇宙飛行士でも、一人の人間として悩んだり、悔やんだり、不安になったりすることを教えてくれました。
それでいて、自分の信じたものをやり通す信念の強さは、さすがに常人離れしています。
そんな彼らの家族となってしまった妻であったり子供であったりが、彼らしか感じることのできないものもキチンと描かれていて、見事でした。
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