映画「ガンズ・アキンボ」は、「ハリー・ポッター」シリーズでハリー・ポッター役を演じてスターとなったダニエル・ラドクリフ主演のアクション映画です。
両手に一丁ずつ、大きな銃を構えて爽快に銃撃戦を繰り広げる内容は、正直見る人を選ぶ内容だと感じました。
多くの人が銃撃戦の中で死んでいく内容ですので、殺伐とした映画にならないよう、コメディー要素も多く含んでいる映画です。
派手な銃撃戦アクションが大丈夫な人には楽しめるのではないでしょうか。
今回は映画のタイトルでもある「アキンボ」という単語の意味について深堀して紹介していきたいと思います。
映画「ガンズ・アキンボ」のタイトルの意味は「二丁拳銃」!
映画のタイトルになっている「ガンズ・アキンボ」
ガンズはガン、つまり中の複数形で分かりやすいのですが、では「アキンボ」とはいったいどういう意味なのでしょうか?
ここで使われている「アキンボ」の意味は二丁拳銃。
つまり、左右の腕で一丁ずつ拳銃を持つスタイルのことを指しています。
もともとの「アキンボ」は英語の「Akinbo」で、「二丁拳銃」という意味のほかに、
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腰に両手を当てて足を広げて立つポーズ
という意味がありました。
単語自体は「強い決意を身体で表し、両足を広げて立つ」様子を表す副詞に当たり、
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He was standing akimbo at the door.
(彼はドアのところに仁王立ちしていた。)
という感じで使われます。
このとき、両手を腰に当てていることが「アキンボ」ポーズの大きな特徴。
腰に当てた両手は肘が「く」の字に外側に曲がっており、腰も前かがみではなく、胸をそらしていないといけません。
英単語「アキンボ」の語源と由来
語源は中世英語の kenebowe で、bowe は「弓、曲がる」という意味になります。
アキンボポーズでの両腕が、弓のように「く」の字に曲がっている所から生まれた言葉、が由来のようです。
では、これがなぜ「二丁拳銃」という意味にまで発展していったのでしょうか?
それは西部劇等で、決闘のシーンに腰の両脇に下げた銃を早抜きするた目の準備のポーズが、この「アキンボ」ポーズに似ていることから、でした。
映画ではダニエル・ラドクリフが演じるマイルズが両手に1丁ずつガンを携えていることから、タイトルが「ガンズ・アキンボ」となったわけです。
フィクション上で見られる「アキンボ」が意味する「二丁拳銃」
両手にそれぞれ銃を構えている二丁拳銃を扱うキャラクターは、多くの西部劇、アクション映画、アニメや漫画、更にはビデオゲームにまで幅広く見ることができます。
これはやはり見た目が派手で、更にキャラクターの印象を強烈にアピールすることができるというのが理由でしょう。
例えばゲームの世界で二丁拳銃のキャラクターといえば、「トゥームレイダー」の「ララ・クラフト」が真っ先に思い浮かぶでしょう。
他にも、もともとはスティーブン・キングの小説に登場し、その後、映画化されたキャラクター、「ダークタワー」の「ローランド・デスチェイン」も二丁拳銃を扱います
二丁拳銃を現実使用した場合の解説
「二丁拳銃」は映画の世界をはじめとして多くのメディアで、カッコよいスタイルとしてメインキャラクターが使いこなしています。
が、実際に両手に一丁ずつ銃を持つこのスタイルは、現実世界で役に立つのでしょうか?
二丁拳銃の歴史
実は古い時代、一人で二丁以上の銃を持つケースは、珍しくはありませんでした。
例えばアメリカの南北戦争時代に南軍の将軍、ネイサン・ベッドフォード・フォレストと彼の親衛隊が一人につき四丁のリボルバーを携帯していたという記録があります。
この理由は、その当時使用されていた銃は、再装填に時間がかかる作りであったため、一丁の銃を撃ち尽くしたら、再装填せずに次の銃を使う、という必要性があったためです。
しかし二丁拳銃もしくはそれ以上の銃の携帯は、6発しか装填できないリボルバーであったがための解決策でした。
その後、技術が発展し、マガジン交換が容易な自動拳銃が登場すると、上記のような理由から複数の銃を携帯する意味は無くなってしまい、逆にコストの面や重量の問題などで銃を複数携帯することはなくなっていきます。
もちろん、バックアップのために複数の銃を携帯する、というケースは現代にも見られます。
そして複数の銃を携帯している場合には、マガジンを撃ち尽くした時に、マガジンを交換するのではなく、別の銃を使用する方が良いケースも存在するのが実情です。
「アキンボ」スタイルで射撃した場合の問題点
とはいえ、これらのケースは、銃を複数携帯し、一丁を撃ち尽くしたら二丁目の銃を使用する、という理由がメインです。
つまり映画のように、同時に両手に一丁ずつ銃を構えて使用するという使い方はしていません。
この理由を説明すると、銃の発射時の衝撃は実際に射撃をしたことがない人には想像以上の物で、とてもではないが、片手でコントロールできるものではない、という事実があるからです。
下手をすれば手首や指などの関節を痛めます。
また、訓練の末、慣れて片手で撃てるようになったとしても、「狙いが定まるかどうか」という別の問題が発生してしまうのでした。
実際、アメリカのドキュメントテレビ番組で「アキンボ」スタイルで銃を発射した場合の実用性を実験したものがありました。
両手にそれぞれ銃を構え、映画などであるように交互に異なるターゲットを射撃した場合、同じ人が両手で銃を構えて打った場合に比べると格段に命中率が落ちるという結果になったのでした。
実際に「アキンボ」スタイルで射撃を行った人のインタビューでは、
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発射ごとに視線を目標に向けなおして撃たなければいけないことに思いのほか混乱する。
とてもではないが狙いを定める、というような芸当はできない。
と語っています。
こちらがそのシーンの動画になります。
(英語のみで日本語字幕はありません)
面白いのは、「アキンボ」スタイルであったとしてもそれぞれの腕に握られた銃を目標に向かって固定し、同時に両方の銃を射撃した場合、なぜか両手で一丁の銃を構えた際の命中率とそれほど変わりがない、という結果が出たことでした。
こちらがそのシーンの動画になります。
(英語のみで日本語字幕はありません)
命中率に関しての問題を解説してきましたが、それ以外の行動についても「アキンボ」スタイルは問題があります。
一番の問題は腕がふさがっているため、自動拳銃でもマガジンの交換がスムーズにできない、というものでしょう。
マガジンの交換という複雑な動きだけでなく、安全装置を解除するといった単純な作業でも両手に一丁ずつ銃が握られていた場合、上手くできないのです。
ちなみに先に紹介した「ダークタワー」に登場するローランド・デスチェインは自動拳銃ではなくリボルバーを使っており、映画の中ではどのように弾を再装填するのか、という描写もあるので、興味があれば見てみてください。
まさに映画の中だけで可能な動きで再装填しています。
現実世界ではまず不可能で、実用性はゼロですね。
まとめ
映画「ガンズ・アキンボ」の「アキンボ」というタイトルの意味は、ストレートに言えば、「二丁拳銃」となります。
主演のダニエル・ラドクリフが映画内のほとんどのシーンで両手に一丁ずつ拳銃を持たされていたことが、タイトルの出所になっているわけです。
「二丁拳銃」という意味で使用されている「アキンボ」ですが、もともとは腰に両手を当て、胸を張って立っている様子を表す言葉。
語源は「弓」を表す古代語で、この時のポーズで両腕の肘が弓のように「く」の字になっていることから派生言葉だといわれています。
その派手な見た目からフィクションの世界では、メインキャラクターがよく使用していますが、現実の世界で使用はされていません。
銃の性能に極端な制限のあった昔には、弾数の問題や再装填に時間がかかる問題を解決するために複数の拳銃を携帯することはありましたが、二丁の拳銃を同時に利用することはありませんでした。
その最大の問題として、片手では照準がつけにくい、というものがあり、また個々の拳銃を別々のターゲットに別々のタイミングで射撃するという行動は、よほど訓練しないと、行動そのものに人間の脳が付いていけない、という問題もあるからです。
このため、片手で狙いが定まりにくい上に、余計に的に命中させられないことになるのでした。
以上のような理由で、「アキンボ」スタイルでの拳銃射撃は、現実世界では無理ということになります。
そのため「アキンボ」という言葉は、
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「現実世界で実行しようにも不可能で無意味な行動」
という、うれしくない意味を持つようにもなったのでした。
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