映画「ビバリウム」で永遠に同じ風景が続く不思議な場所「ヨンダー」
そこに誘われて連れてこられ、迷い込んだジェマとトムは抜け出すことができずに、ヨンダーに閉じ込められてしまいます。
そこで人間とは思えない男の子を世話することになるのですが、結末はとてもすっきりとはしない、もやもや感が残るものでした。
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ところでヨンダーに閉じ込められてしまったジェマとトムですが、このヨンダーから抜け出せる方法はあったのでしょうか?
あったとすればどのような方法だったのか、そんな疑問に考察していきましたので、ご覧ください。
映画「ビバリウム」で登場するヨンダー
映画「ビバリウム」で登場するヨンダーですが、とても奇妙な場所です。
同じデザインで同じ外見の家が延々と並んでいる分譲住宅地。
僕なら正直、とても購入して住みたいとは思いません。
ちなみに「ヨンダー/Yondaer」という聞きなれない名前ですが、実はこの「Yondaer」には「彼の地」という意味があり、その元ネタは古い英語の単語だったのです。
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そんなヨンダーですが、映画内ではジェマとトムが抜けだそうとしても同じところとグルグルと回り、結局元来たところに戻ってきてしまうのでした。
映画内ではこのヨンダーに閉じ込められた二人は、結局抜け出すことができずに終わるという結末を迎えてしまうのですが、果たして二人がこのヨンダーから抜け出す方法はあったのでしょうか?
ヨンダーを作り出しているのはマーティン!?
「ヨンダーから抜け出す方法」
これを考察していくにあたって、ヨンダーとはどういう場所なのかということを知るのは大切だと思います。
インタビューでは監督のロルカン・フィネガンは故郷アイルランドでバブル時代に乱立した分譲住宅地が、そのバブルが破裂した2008年後の不況でゴーストタウン化した風景を見て、映画の舞台に利用することを思い付いた、と語っています。
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ですので、問題の「ヨンダー」は買い手がいない空き家が並ぶ分譲住宅地だと考えていいでしょう。
が、行けども行けども終わりのない、最果てのない世界というのは一体どういうことなのでしょうか?
これも不動産屋のマーティンや主人公の二人が育てることになった少年についての監督の考えが、考察のヒントになると思います。
監督は、人間ではない存在であり、幽霊などではない、と答えています。
人間になり切れていない存在で、人間性は持っていないが、人間を模倣するだけの知性を備えている。
加えて時空を操る術を知っている、という設定も明かしていました。
となると、ヨンダーという場所は、実際には存在しているゴーストタウン化した分譲住宅地である、と考えるのが妥当でしょう。
そして他との差別化を図るため、本当に同じデザインで同じ色の家を並べたのだと思います。
監督のコメントにあるように、ヨンダーはジェマとトムが感じたような、延々と続く場所ではなかったのでしょう。
二人に延々と続く出口のない場所で、脱出しようとしても同じところに戻ってきてしまうと認識させたのは、明らかに二人を罠にかけたマーティンだと思われるのです。
ヨンダーから脱出する方法‐誰がヨンダーの時空を操っているのか?
ヨンダーは、おそらくある程度の広さの、同じデザインの並ぶ分譲住宅地だったと思われます。
そしてそんな景色を利用して、マーティンが時空を操ることで、獲物となったジェマとトムをどうしても同じ場所に戻ってくるようにして、ヨンダーに閉じ込めました。
ここでおそらく考えられるのはヨンダーという場所そのものに時空を狂わせる力があるとは思えないことです。
いわゆる「呪われた土地」的な感じで、土地そのものが迷い込んだ犠牲者を閉じ込めてしまう、というような場所ではないでしょう。
もしそうであれば、住宅を建設した人たちで犠牲者が出ていなくてはおかしいことになりますから。
それよりも獲物を見つけたマーティンがヨンダーに連れ込んだうえで、時空を狂わせて閉じ込めてしまうと思われるのです。
その理由として、閉じ込められた二人が男の子の赤ん坊を育てることになりました。
映画の最後のほうを見れば分かりますが、この赤ん坊はマーティンの跡継ぎに当たる存在です。
そしてマーティンが赤ん坊を育てない代わりに犠牲者を閉じ込めて強制的に育てさせていると考えられ、そうであればなおさら、マーティンによって犠牲者であるジェマとトムが逃げ出せないよう、ヨンダーに閉じ込められていたということになり、つまりはマーティンがヨンダーに入った二人の時空をゆがめているということになるわけです。
脱出する方法はない?
ジェマとトムがヨンダーから抜け出すためには、狂わされている時空を元に戻す必要があります。
事実として映画の最後に、ジェマとトムが死んだ後、成長しきって青年となった存在は、ジェマの車に乗り込んでヨンダーを離れています。
これは時空のゆがみさえ直せば、簡単にヨンダーから抜け出せることを示していると考えられるでしょう。
ということを念頭に考えると、ジェマとトムがヨンダーから抜け出せる可能性はほぼゼロに等しかったことが分かります。
というのも、ジェマとトムをヨンダーに閉じ込めているのはマーティンであり、ヨンダーの外からヨンダーの中にいる二人の時空を狂わせているからです。
マーティンに時空を操ることを辞めさせるには、マーティン自身に何らかのコンタクトが必要であり、ヨンダーに閉じ込められているジェマとトムには、マーティンが彼らのもとに現れない限り、マーティンに手出しができない為です。
つまり、二人がヨンダーから脱出する方法は、例えばマーティンが不慮の交通事故か何かに巻き込まれて時空を操ることができない状態に陥らない限り、全くなかった、と言えるでしょう。
脱出する方法がある!
とはいえ、二人が脱出をする方法が全くなかったのか?というとそれは違うと思います。
映画の最後で青年が不動産屋に出向くとマーティンは老衰で亡くなっていました。
つまり、その時期が近づいたからこそ、犠牲者を罠にはめて、ヨンダーに閉じ込め、跡継ぎを育てさせたのだと思います。
そしてヨンダー内にジェマとトムを閉じ込めていたのはマーティンだといいましたが、果たして老衰死間際まで時空を操ってジェマとトムをヨンダーから抜け出せなくさせていたのでしょうか?
僕はこの答えはNoだと思います。
その根拠は、トムを亡くした後、ジェマが青年を殺そうとしてヨンダーの時空のはざまに足を踏み入れたシーンです。
おそらく事の時にはマーティンはすでに時空を操るだけの力は残っていなかったのでしょう。
そしてマーティンの代わりにヨンダーの時空を操っていたのは、成長した青年だと考えられます。
だからこそ、ジェマに襲われてダメージを受けた青年が、時空のはざまに逃げ込んだ際、ジェマも青年を追いかけて、別の時空へ入り込むことが可能にできたのでしょう。
もしこの時、マーティンが健在でヨンダーの外から時空を操っていたのであれば、ジェマに時空のはざまに入り込ませるようなミスはしていなかったはずです。
ジェマが時空のはざまに入り込むことができたのは、ダメージを受けた青年が、この時点で時空を操っており、ダメージを受けたことで、その制御にほころびが生じたのでしょう。
そのため、ジェマも青年を追いかけて時空のはざまに入り込んでいったわけです。
このことを考えると、ジェマが青年を襲ったあのタイミングで青年を亡き者にできていたら、時空のゆがみは元通りとなり、ジェマがヨンダーから抜け出せることができたのでしょう。
おそらくは、二人が家から追い出されてころ、マーティンではなく青年が時空を操っていたのだと思われます。
というもの、その時点で二人に殺されたならば、二人がヨンダーから抜け出せることとなり、情報が外に漏れる恐れがあります。
それを回避するために、二人に襲われるリスクを少なくしようと家の外に追い出したのでしょう。
考察のまとめ
映画「ビバリウム」でヨンダーに閉じ込められたジェマとトムが、脱出できる方法があるのかどうかを考察してみました。
監督が映画の舞台としてヨンダーと呼ばれる分譲住宅地を選んだ理由、二人がヨンダーに閉じ込められないといけないわけ、そして映画の後半のクライマックスとしてジェマが時空のはざまに入り込んだ描写のことを考えると、いったい誰がどのように二人をヨンダーに閉じ込めたのかが推察されます。
それはマーティンが自分の跡継ぎの世話をするカップルが必要だったからで、だからこそマーティンによって時空が操られて二人はヨンダーに閉じ込められた、という結論が導き出されるのでした。
そして二人がヨンダーから抜け出す唯一の可能性は、時空を操っている人物にそれを止めさせることであり、マーティンが老衰死して成長した青年が時空を操っているタイミングで、青年を倒せば、ヨンダーから抜け出すことはできたのでしょう。
ただし、そのリスクについて、きちんと情報の共有はされているようで、それが証拠に青年は二人を家の中に入れなくしていました。
おそらくはあのタイミングで、マーティンから青年に時空の管理は引き継がれていたのではないでしょうか。
惜しむらくはジェマが青年を襲ったとき、怪我どまりであったことでしょう。
あそこでとどめを刺せていたら、おそらくジェマは元の世界に戻れたに違いありません。
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